とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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今回は前後半あります。なんか長くなった。


三章 9話『キス島付近で遭難した者共を救助せよ 1』

 五月 十六日 未明

 

 夜明け前の僅かな時間に執務室の電話が鳴りだす。ジリリリと何回か鳴った後に切れる。

 それでも何度も執務室の電話はひっきりなしに掛かってきた。

 

『? 電話が鳴っていやがんな……』

 

 たまたま執務室の前を通りかかった芙二が気づいて、部屋の中に入る。

 けたたましく鳴り続ける電話の受話器を取って耳を傾けた瞬間……

 

『やぁっと繋がった!! ――さん! やっと警察に繋がりました! あっそうじゃなくて! もしもし?! そちらは警察署で間違いないですか!?』

 

 若そうな声が聞こえてきた。しかし何処か切羽詰まっている様だった。

 

『や、違います。間違い電話っぽいのでそのまま切りますね』

 

 受話器の向こうは掛けた場所を警察署と勘違いしていた。

 なので違っていると、あちらの間違いを訂正してガチャ切りしようとしたときだ。

 

『な、ならそこは何処なのですか!? あ、――――さん?! そ、そんなに怒らないでください! 遭難信号はさっき出しましたから!!』

 

『おーい? もしもーし? 何やら取り込み中のようだけど、落ち着いてから掛けて――――』

 

 雑音で聞き取れないが、受話器を持った人間とその仲間内で揉めているようだ。

 このままでは埒が明かない。だから切ってしまおうかと考えたときだ。

 

『おい変われ! あっ――さん! そんな雑に扱わないでください!』

 

 最初に掛けてきたお仲間さんはかなり怒っているようだ。芙二は黙ったまま通話を繋げて、メモを準備していた。まだ二人の声が同時に聞こえる。何やら争っているようだ。

 

『おいっ! てめえはどこの誰だ!! 電話の向こうが警察じゃないんならどこに繋がってんだってんだァ!?』

 

『ここは東第一泊地です。大本営……海軍の管轄する施設です。こんな夜更けに何かありましたか?』

 

『東第一泊地……? お、おい! なんで海軍に繋がってんだよ! これだと――』

 

『海軍に繋がっちゃあまずい事でもしてんです? それならどうして警察を頼る必要がある?』

 

『キス島から物資を調達して帰る途中に深海棲艦の襲撃に遭っちまったんだよ。『なるほど。麻薬か何かですか? いや何処かの島に遭難してるんですか?』 おい、会話を被せてくるんじゃねえよ!』

 

 海軍を頼ってはいけない? なのに警察を頼ろうとしている。

 なにか裏で大きな力が働いている気がしますけど。

 

 まぁ知らぬがホトケということで。

 あ、でも名乗ってしまったから後々苦情を入れられても困る。

 

 本当は明日から攻略のはずだけど……仕方ない。

 起きてそうな奴と共に向かうか。

 

 艦娘らが拒否することはないと思うけど、戦闘面は自分が出てもいい気がする。

 

『――――おい、聞いてんのか?』

 

『失礼しました。少し考えていまして。それで場所は? ――いえ、キス島でしたね。現在の状況を教えてください』

 

『手配は――『なるべく早くしますので』 わ、分かった』

 

 

 さっきまで怒っていたのに、今はしおらしくなっている。

 それほど危険な状態なのかと勘繰ってしまう。メモ用紙に書く準備が整った。

 向こうにどうぞ、というと話し始めた。

 

 

『俺らがキス島で物資を得て……いや昨日の夜、キス島を出て本土へ向かう途中、海上で深海棲艦に襲われたんだ。幸いボートがあったから乗組員は全員無事だ。しかし物資と食料は海の底へ沈んじまった』

 

『なるほど。あなた方が何を運んでいたのかは今は聞かないでおきます。食料は持ちそうですか』

 

『まだなんとかなりそうだが……こちらには負傷者が三人いる。なるべく早くの救援を……ザザッ』

 

 ノイズが入ってきている。通信環境がよろしくないようだ。

 それに負傷者がいると情報を貰った。早めに対処したい。

 

 俺が直接出るか、精鋭を叩き起こして……いや先に通報した方がいいな。警察はこの際当てにならないだろうし。救急か?それとも本営の救護班か? 

 

 

『すぐに手配しよう。だから待っていてほしい』

 

 さっきなるべくと言ったが訂正しよう。これは急を要する案件だ。

 

 ノイズが入ってきて、マトモに聞き取れているか分からないが伝える。

 砂嵐の中で最後に『了……解』とだけ聞こえてきて、通信が切断されてしまった。

 

 

芙二「ふぃー……徹夜明けの朝にこれはかなりヘビーだなぁおい……」

 

 通信が終わる頃には四時を越えていた。

 芙二の肉体的な疲労はないが、精神的な疲労はあった。

 

 ま、それでも関係ないけどさと言って携帯端末から初めて本営の救護班へ連絡する。

 コール音が鳴り続ける中、誰か起きてないかなぁと思っていると繋がったようだ。

 

『こちら本営直属の救護班です。いつどこで何があったのかを聞かせてください。まずは落ち着いて――――』

 

 声の低い女性が応答したようで、内容を聞いてきた。会話を被せるのは悪いと思うが急を要するので被せて用件を伝えた。

 

『夜分遅くに失礼します。私は東第一泊地の芙二であります。先ほど、こちらに救護要請が届きましたので手配してほしく連絡しました。昨夜、物資の運搬をしているとき深海棲艦に襲われたという事です』

 

『なるほど。場所などは聞いてますか?』

 

『はい、場所はキス島です。向こうは三人負傷していると聞きました。あまり遅くなると命に関わるので、遠征明けの艦娘に頼んで共に保護しに向かいます』

 

 ここまで言い終えたので、次は起きている艦娘を探そうとしたときだ。

 携帯端末から聞こえてきて声は女性ではなく、男性の声だった。

 

『で、我々はその保護した者に適切な対応をしてほしいと。最初に東第一泊地と言ったかね? そこには救護班の職員は誰もいないのかね?』

 

『はい。まだ誰もいません。だからこちらに掛けました』

 

『なるほど。その件はまた後でにしておこう。すぐに手配しよう。だが、それなりに距離があるため時間は掛かってしまうが『構いません。では、よろしくお願いします』……ガチャ』

 

 

 芙二はとっとと切ってメモを握りしめて部屋を出た。

 向かう先は寮だ。誰か起きててくれーと思いながら向かうのだった。

 

 

 芙二と話した救護班の男性職員は『東第一泊地の提督は随分若いな……』と驚きを呟くと女性職員がそれを拾って『そこの提督はまだ二十歳ですよ。補佐も含めて』といい椅子を立ち、待機している面々に連絡をし始めた。

 

 男性職員は『俺よりもひと回りもしたか……』と小さな声で呟きながら部屋を出て、救護隊員の手配をしたのだった。

 

 

 

 同日 四時 二十七分 泊地内 寮前にて

 

 

芙二「誰か起きててほしいなぁ……」

 

??「おや、司令官じゃないか。どうしたんだい、こんな時間に」

 

??「あら? 本当ね。どうしたの、司令官? まだみんな寝ていると思うけど」

 

 振り返るとそこには響と叢雲がいた。

 二人は不思議そうな顔をしたまま、芙二を見つめていた。

 

芙二「ちょうどいい所に!」

 

 と、そこそこ大きな声を出すと二人の方へすぐに近寄った。

 二人はお互いに顔を合わせた後に、近寄って来る芙二を注意した。

 

叢雲「ちょっと! まだみんな寝てるじゃない! 声なら抑えた方がいいんじゃなかしら!」

 

 ぼそぼそと芙二に話すと少しの間が空き、そうだったとわざとらしく驚いているように見えた。

 

響「それで何がちょうどいいんだい?」

 

 聞かれて、芙二は二人に話した。さっきのことをところどころかいつまんで。

 

 響は『誰か起きていないかというよりも、全員叩き起こした方がいいのでは?』といい、叢雲は『さっきまで川内さんや足柄さんが起きていたような気がするから見てくるわ!』と言って寮内へ駆け込んでいった。

 

 

芙二「いんや全員はいい。キス島周辺って少々特殊な海域なんだよね。今回は遭難者を助けるのが目的だから、戦闘は俺に任せてくれれば……ってなんだい。響? いやヴェールヌイの方がいい?」

 

 

響「どちらでも構いやしないさ。いいのかい? これは人の命が掛かっているのだろう?」

 

芙二「んー……俺の直感が言ってんだよね。怪しいって。海軍に見つかるとやばいっていうのに警察はいいってなんか怪しいだろ? 最近のことも相まって余計に邪推が進んでしまうよ」

 

響「警察、か。それは裏で何かしていそうだね。手配はもうしたのかい?」

 

芙二「勿論。負傷者がいるっていうからね。俺らは保護をしに行くだけ。こっちに戻ってきたらすぐに手渡ししちゃおう。書類関係は俺が大淀さんか、向こうに聞いてやっちまうよ」

 

 そうかい、と響は興味なさそうにいう。

 芙二は早速出番がありそうだ、と言いながら虚空に手を突っ込んでいじっているとそこへ叢雲と誰かが走って来た。

 

川内「提督! 夜戦なの? ……いや人命救助なんだね? それで提督も行くの?」

 

芙二「勿論だ。そこにいるのは夕立と足柄か? こんな夜更けにありがたいよ」

 

 川内の問いに答えながら、叢雲が連れてきた残りに目をやると眠そうな夕立と漲っている足柄がいた。

 

夕立「ふわぁ~……提督さん、どこかいくっぽい……?」

 

足柄「提督、人命救助に行くのなら私も手を貸すわ。普段は深海棲艦ばかりだけどこういうのもきっと仕事のうちだろうし」

 

芙二「ありがたいが足柄すまない。今回は川内を旗艦にした水雷戦隊で向かう予定なんだ。だからここで待機してこれから起きてくる冷葉とか他の艦娘に伝えてほしい」

 

足柄「それなら全員叩き起こした方がいいのでは?」

 

芙二「それもいいけど……これから来る波に備えて、温存してほしいっていう意味もあるよ」

 

川内「波? それってどういう……」

 

芙二「そのうち分かるよ。だからそれまでに力を少しでもつけてほしい……最悪は俺が嬉々として戦場へ降臨する可能性があるが」

 

足柄「提督がそれをやると私たちの存在意義が……」

 

芙二「大丈夫。そんなにやらんよ。俺も俺でやる事がありそうだし。それじゃ、緊急の任務だ。旗艦を川内。随伴を響、叢雲、夕立とする。足柄は昨日出撃したからお休みね」

 

 足柄は『やっぱりそうじゃない。そんな気がしてたわ』と言って手を組んでいた。

 夕立は急に名を呼ばれて、驚いて敬礼する。それを見て川内と叢雲は笑う。

 

芙二「おはようさん、夕立。目は覚めたか?」

 

 と言いながら頭を撫でる。響は少しうらやましそうな表情をしていたのに芙二は気がついていたが、また後でやってやろうと思い五人を工廠へ連行する。

 

 朝五時、足柄は母港から海へ出た五人を見送ると一度、寮内へ戻るのだった。

 

 




 ゲームは現在進行形でイベント真っ最中です。
 まぁ二ヶ月ぶりの艦これなので全部丁(最低難易度)で行きますけど。

 バケツもない資材もない……艦娘の練度も低い……
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