とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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 寝れなくてコンビニへ行ってコーヒー牛乳二本買って飲みながらダラダラ書いたので長くなりました。


三章 11話『キス島の後始末』

 

 同日 十三時 十一分

 

 執務室を出て自室へ戻るべく廊下を歩く者がいた。それは芙二だ。

 

芙二「は~あ……つっかれた」

 

 たった今解放されたばかりの芙二は今朝のことをふと思い出していた。

 あの後は三樹と柏、それに川内達と泊地に戻るとしかめっ面の冷葉がいた。

 

 

 その隣にはオロオロしている足柄もいた。更に二人の後方には本営から来たであろう救護班の車両が数台止まっていた。この状況から導き出される答えはただ一つ。

 

芙二(まだ謹慎期間だから……もしかしてどやされる?)

 

 とはいえ、今は保護した人物らを救護班へ引き渡さなければならない。

 だから一旦冷葉は無視して、川内たちに指示を出した。まずは三樹と柏を担架で運んでもらう。

 

 救護班の隊員から人数が合わないから、そのへんを聞かれた。

 

 芙二はこれから連れてくるから待っていてほしい、と伝えるとまた川内たちと共に中へ入って行こうとした時冷葉もついてきた。

 

 芙二の肩を叩きながら『この状況を後で報告しろよな?』とニコニコしながら言ってきた。

 

芙二「事細かく話してやるよ」

 

 そういって船内の奥へ進む。奥には死体が寝かせてあった。それを蘇生させる――のだが、どうも魂が近くにない。だから無理矢理呼び寄せて、肉体へ定着させる。

 

 一体、一体にすごく気と体力を使う。

 やっぱり慣れないことはするべきではないなと思った。

 

 三体の蘇生を終えた芙二はそれぞれを担架に乗せて運び出す。

 あとは救護班の隊員に任せて、見送った。

 

 と、いうわけで未明に来た一本の間違い電話から始まったものは幕を閉じた。

 芙二は溜息を吐き、腕時計を見ると時間は既に八時近くなっていた。

 

芙二「よし、川内たちは解散! 一旦、工廠行って明石と夕張に艤装の修復をお願いして来て、風呂行ってこい! それとその服はくれてやる。なんか質問があったら俺の私室を訪ねてくれ」

 

 と、朝から手伝ってくれた艦娘達を解散させる。『提督もお疲れ様ー』とか『眠いから一旦寝るねー』とか言いながら工廠へ向かっていった。

 

 

芙二「よし、で冷葉さん? なーんでそんなに怒ってるんですかい?」

 

冷葉「なんでそんな重要な時に俺を叩き起こさなかった?」

 

 言葉の節々から至って静かに感情を爆発させないように、しているのが伝わった。

 芙二は謝罪する。そして『お前さん、零時過ぎてまでも執務してたろ? だから二時、三時に来た連絡で起こすのを躊躇ったんだよ』という。

 

冷葉「人名救助は深海棲艦を沈めるのと同じくらい大事な事だぞ」

 

芙二「分かってる。本来はお前も呼ばなくちゃならんのは、そうだな。だが、俺もそういうことは学んだし、実際に体験している。そりゃあ謹慎中の身で勝手した事は謝るさ、たまたま起きていた川内たちにも感謝だな」

 

 言い終えると、冷葉は芙二をジッと見ている。

 この様子は始末書を書かされるやつか?なんて考えていると冷葉は深いため息を吐きながら、口を開いた。

 

冷葉「キス島周辺の深海棲艦はどうした。制海権は取ったか?」

 

芙二「もちろんよ。きちんと倒してから保護した者と共に帰投しましたとも」

 

冷葉「予定を繰り上げるのは……いや今日明日は海域攻略の出撃なしにしよう。でも哨戒と遠征は行ってもらうが」

 

芙二「ありがとう、冷葉。あと俺、今夜出かけるから」

 

冷葉「ハァッ?! お前……反省してないな? つーか、お前につける艦娘は決めてんのかよ」

 

 という質問に対して『響だ。出る時に、声をかけてくれと言われている』と答えると冷葉は首を捻って唸る。しばらく唸っていたが考えても仕方ないと思ったようだ。

 

冷葉「分かった。その旨も書類にまとめてくれ。という事で行こうか、執務室へ」

 

 さっきのような笑みを浮かべながら冷葉は肩を叩いたのだった。

 

 その時の様子をたまたま目撃していた艦娘H氏によると――『自分達の提督が人外だという事は分かっています。ですがあの時の補佐の表情は満面の笑みでした。それに背後に鬼が居て目を光らせていました』と言っていたそうな。

 

 

 =====

 

 

 同日 二十時 四十二分 寮前にて

 

 

 普段の格好からかなりラフな格好をしていた芙二は寮内へ入り、響と敷波の部屋へ向かう。

 

 部屋に行く前に何人かの艦娘とすれちがっては挨拶したり、軽く雑談をしながら部屋へ。

 

秋雲「で、提督はこれからどこにいくの?」

 

芙二「んー、内緒☆ 風俗でもなんでもないよ。ちょっと野暮用」

 

秋雲「え、提督って人間とか秋雲さんたちで()つの!?」

 

芙二「どうかな。好きな相手が人外でも人間でも行為をしたいと思ったら勃つんじゃないかな。まぁ実際にそうなったことはないから分からないけどさ」

 

 へぇ~と物珍しそうに頷く。そのあとに『提督ってなんだかんだでちゃんとしてるんだね』と言って自分の部屋へ戻っていった。

 

 芙二は『そのへんは考えてもなかったな。人間だった頃は叢雲が最推しだが、他にも推しはいたしなぁ』と考えていると服の裾を引っ張られる。

 

 誰だろうと思っていると、そこには響が少し顔を赤くして見つめてきていた。

 

芙二「こんばんは、響。すまない、秋雲と話していたら部屋に行くのが遅れてしまった」

 

響「いやそんなことはいいんだ。そ、その道の往来でそういう話はしない方が……」

 

芙二「そういう話? 俺の好みのはなs……ああナニが勃つとか行為とかその辺か?」

 

 顎に手を当ててそう呟くと、響の耳に届いたようで頬を赤らめて帽子を深くかぶる。

 響の見せる初心な反応が芙二の嗜虐心を刺激した。

 

 どこまで初心なのかは分からないが――っとそうじゃない。

 嗜虐心がどうとか言ってる場合ではない。

 

芙二「や、話が逸れたね。時間も惜しい。工廠へ行こうか」

 

 と話しかけるも響は帽子を深く被ったまま動かないのでお姫様抱っこして工廠へ向かった。

 

 途中、元の状態に戻った響が降ろせと言い始めたので、その場にそっと降ろす。

 

 工廠へ着くと走って艤装を取りに行く。芙二も芙二で少しだけ工房へ行こうと思い、向かい中へ入ると紫月が作業していた。凄い集中しているのか、芙二が近くを歩いても目もくれなかった。

 

芙二(何を作ってんのかね~?)

 

 と、思いながら大鎌を取り出す。

 柄は黒く、半円を描く刃は紫色の光を放っている。

 

芙二(見てくれは奇麗だけど、これ結構危険なモノなんよね~)

 

 なんて思いながらしまうと、背後から視線を感じる。

 ん、と振り向くと紫月が自分の作業を一時中断してまでも芙二に話しかけてきた。

 

紫月「ふ、芙二君、今の鎌は一体……」

 

芙二「あの大鎌? 最近見せた時はボロボロだったじゃん。だから俺なりに付与したり混ぜてみたりしたらああなった。俺以外は扱えないよ、死人が出る」

 

紫月「そ、そうなんだ。鎌に何を混ぜたらあんなに禍々しくなるのか聞いても……?」

 

芙二「ん~話すと長くなるから短くいうと天獄龍が殺した神が持っていた力と【その側面】かな?」

 

紫月「それじゃああの鎌は死んだ神の力を吸収した……武器という事かい!?」

 

芙二「そうなるね、っとすまない。紫月殿。入口で響が覗いているから、今日はこの辺で」

 

 と言って、入口へ向かう。紫月は『響さんがこっちを向いてる……?』という言葉に引っかかって入口を見ると確かに顔を半分だけ出してこちらを見ていた。

 

 が、紫月はまったく驚かずただただ頷いて会釈すると作業に戻るのだった。

 

 

 

 

   二十一時 三十九分  キス島周辺 海域

 

 

 芙二は響を担いで、陽のあるうちに上陸したキス島へ降り立った。

 辺りは真っ暗で何も見えない。

 孤島というだけあって、耳を澄ませば波の音と動物が移動する音が聞こえる。

 

芙二「とりあえず暗いと何も見えんからライトで照らすね」

 

 そういうと泊地から持ってきていた木の棒先からソフトボールくらいの大きさの光る球が四つ出現した。ふよふよと浮きながら、光るが眩しい光というわけではなく優しい光だった。

 

響「ますます司令官が人間でないことを実感していくよ」

 

芙二「ふふ、そうだろう。今の俺は付与術師(エンチャンター)だからな。この手はおちゃのこさいさいなのだよ、響クン」

 

響「エンチャンターってなんだい? 司令官」

 

芙二「何かに付与したりできる人かな。ほら、少し前に俺が冷葉へ大技ぶつけただろう?」

 

 響はそういえば、そういうこともあったなと言っていた。

 芙二は続けて『普通だったら当たり前だが死ぬ。そこで俺は冷葉に【不壊(フエ)】というバフを付与したわけだ』というが意味がイメージ出来てないようでチンプンカンプンであった。

 

 だから【不壊】という状態がどういうことか海上にいる深海棲艦で実験することにした。

 

芙二「まー、あんまり深く考えないでくれ。俺が付与できる物の範囲は未知数だからな。知るためには奴らと同じ轍を踏まないといけなそうだし」

 

 海岸から海上へ話し歩きながら移動する。ふよふよとライトが照らすため敵には丸見えである。

 

 キス島周辺を哨戒している深海棲艦の艦隊は突然現れた光源を不審がる。

 とりあえず陣形だけ指示をして、いつでも戦闘を展開できるようにしておく。

 

 

 『~~で』『そうなんだね』という会話を耳にして旗艦は即座に仲間に警戒態勢に入れと命令する。

 

芙二「で、まぁそうなるんだけども」

 

響「ふ~ん。そういえば、私に艤装を持たせたのって戦闘をさせるため?」

 

芙二「いんや、そういうわけじゃない。とりあえずこの中に居て」

 

 と響の周囲三メートルを結界で囲う。そこで『これが【不壊】だ』といって結界に向かって手をかざす。手からは青い光が放たれ、結界全体を覆うと消えていった。

 

響「この状態だとどうなるんだい?」

 

芙二「俺は守らんから、的にでもされれば分かるよ」

 

 と、いうとおぼろげに消えていく。響は芙二の言葉の意味をすぐに理解した。

 

 ガコンと音が聞こえた。音の方を向くと目と鼻の先に深海棲艦の艦隊がいた。

 

響「的ってそういう――――」

 

 と言いかけたとき、響に向かって砲弾が幕となって降り注ぐ。

 響は余りの恐怖にその場でしゃがみ込んでしまう。

 

 しかしさっきから痛みがこないのでどうしてだろうと顔を上げると自分の周辺はまったく変化がない。

 むしろそれ以外が黒煙や水飛沫で全く見えなかった。

 

『それでこれが――――【不壊】という付与が肉体に与える変化だ』

 

 芙二の言葉が聞こえてきた瞬間、海上が異常に静かになった。

 さきほど、自分に向かって砲撃してきた深海棲艦の音は全く聞こえなくなった。

 

 煙も晴れて、波も落ち着いてきたときだ。

 

響「えっ」

 

 思わず声を漏らす。深海棲艦の背後から芙二が鎌を振り上げていたからだ。

 深海棲艦は自分達の身の危険に気が付いていないのか、まだ響に砲先を向けていた。

 

 そして平行に振り切った。一体のネ級を除いて、残りは上半身と下半身が二つに切断され声を上げることなく倒れた。ネ級は何が起こったのか分からない様子だった。それは響も同じ気持ちだった。

 

響「え、いま、何が……」

 

 足元には深海棲艦の血と臓物が広がっていた。

 しかし結界があるおかげで触れることはなかった。

 

 『やっぱ、これ使いどき限られるわ』と言いながら青い血の海の中を歩きながらネ級と響の元へ近づく。ネ級は芙二へ砲撃を試みるも砲先を掴むとぐにゃと(ひしゃ)げさせる。

 

 弾を装填していたのか、ネ級の手先は光始めて爆発する。

 普通ならこれで致命傷を負っているはずだ。

 

 しかし火傷をするだけでネ級は生存していた。片方の艤装は壊れて燃えてしまったがもう片方で殺害を試みたようで攻撃してこようとするとき、突き飛ばす。

 

『ッ!?』

 

響「司令官? 一体何を……」

 

芙二「いやぁなに、試し切りだよ。実はこれ生物の命を奪う性質があってね。まだ不壊は解除してない。あー、響。多分結界壊れるから動かないで」

 

 と、言い切ると再び大鎌を振りかぶる。ピカリと刃が赤く光りを放つ。

 そしてネ級と響のいる場所ごと薙ぐ。

 

 バリン!! ガシャン!!と音を立てて結界が崩れた。

 響は息を呑んだ。ネ級は切られた箇所から青い血を流し、痛みに喘ぐ。

 

芙二「ふ~む。不壊の限界はこの辺だろうな。しかし神の一撃とも変わらぬ攻撃(モノ)を二度耐えれるとは俺も成長してるんだろうな」

 

 フハハハハハ、と嗤う。響は驚きすぎて言葉に詰まっていた。

 さっきから痛みに喘いでた深海棲艦が一言も発さなくなっていた。

 

響「司令官……流石にそれは引くよ。それに奴らってもしかして」

 

「そうだ。お前さんが思っていることで間違いはない。今回のようなネ級を捕まえて()()()()まで実験だろうな。生きたサンドバックだな」

 

 ああなる、とはなんだろうかと思いネ級の方を見るとしりもちをついて涙を流している。

 身体を震わして、怯えきった眼差しで芙二に対して何かを懇願していた。

 

『ァ……ィ……グ……ミ……』

 

 ブツブツと呟くだけで聞き取れない。

 そこで芙二が腕を動かすとビクっと大きく震え、そこ一点を注視している。

 

響「司令官、解放してあげたら? それとも魂を喰らってしまうのかい?」

 

 眉を八の字にして解放してあげたら、と同情したようにそう、言った。

 芙二は髪の毛を弄りながら、少しだけ考えた。

 

 そこで一つの案を考えついた。それは――――

 

芙二「おい、ネ級。お前さんに一つの道を提示してやる。一つは死んで、お姫さんのいる深海神域で安らかに眠る。もう一つは艦娘として俺の仲間になるか、だ。好きな方を選ばせてやろう」

 

『……前者ハ……』

 

芙二「お前さん、話せるんだ? 前者は、死ぬな。死んで、成仏みたいな感じになる。深海棲艦は死ぬといつもは俺に食い物にされるか輪廻転生だかなんかの輪に還るだけだが、俺に会えたことはある意味で幸運だな」

 

『後者ハ……ワ、ワタシモ……艦娘ニナレルノ……? デモ、イマハ』

 

芙二「俺だったら確定で艦娘にさせられる。まぁ元々がないとダメだがね。ネ級は重巡級だから――重巡級の艦娘ってわけじゃない。艦娘の誰になるのかは、俺も分からん」

 

 先ほどと打って変わってすらすらと会話するなぁと思っていた。

 響はなんども殺されたから、精神が振り切れたのでは?と思いながらやり取りを見ていた。

 

芙二「あー、多分これ俺が手を下すわけもなく勝手に艦娘になるわ。だって、お前さんなんか光り始めてるぞ」

 

 と指差しながらいう。響も気づいてあっと声を出した。

 ネ級は自分の手を見て目を丸くしていた。

 

『私ハ……()()()()()

 

 言葉が片言ではなくなった瞬間、光はより一層強くなる。

 響は思わず手で目を覆うが芙二は聞いたことのある声に戸惑っていた。

 

芙二「なんッ?! 我ながら……こりゃあすげえの引いたな」

 

『私が、戦艦長門だ。これからよろしく頼むぞ。響と提督よ』

 

 

 先ほどのネ級は長門へと姿を変えた。目に輝かせて、握手を求めてきた。

 芙二はそれに応じるとぎゅっと握手したのだった。それは響もどうようだ。

 

芙二「長門、俺は東第一泊地の提督だ。ネ級のときの記憶はあるのか?」

 

長門「なるほど。ラフな格好をしているが、キチンと提督だったのだな。ネ級の時の記憶はぼんやりとだな。まあ現在進行形で水に沈まぬ人間を見ていれば、問わなくとも納得するものだぞ」

 

 

 とりあえず時間も遅いので帰る事になった。

 そこで芙二は長門と響の手を手に取り、泊地へ転移した。

 

 初めての長門はまったく驚かなくて、逆に目を輝かせていた。

 

 響は時間が既に零時を越えていたという理由で芙二の部屋で寝かせろと言ってきた。

 ま、付き合ってもらったからいいかと思い了承した。

 

 工廠へ艤装を置きに行くといい、一度向かった。

 その間、芙二は長門を見ながら朝、冷葉にいう言い訳を考えていた。

 

芙二「こりゃ……冷葉になんて説明しよう」

 

長門「む? 提督よ、そのままでいいではないか。海域でネ級をシバいたら長門が出た、と」

 

 当の本人からそう言われた。

 それでもいいかな、と諦めた芙二であった。

 

 




 新キャラクター:艦娘

 長門型一番艦:長門

 概要:芙二がネ級に拷問じみたことをしていたら、いつの間にかネ級に自我が芽生え不壊を解除しなくてもドロップ艦となった。
 今の所の特殊な状態はない。wikiみてたら敵戦艦との殴り合いは任せておけ、とかいてあったのでステゴロを採用しました。

 ちなみにネ級から誰にするかは、ルーレットくん決めました。
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