とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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 なんとか、書けました。
 だけど、長くなりました。

 あと二、三話で三章後半に入れそう。
 あれ、前半っつたのはいつだっけな?


三章 18話『情報伝達、各所へ』

 

 同日 十一時 三十七分 本棟 空き部屋にて

 

 

 現在、芙二は各方面に応援要請するための書類を作成していた。

 本来は執務室で秘書艦や大淀、冷葉と共にするべきなのだが、今回は別々にやっている。

 

 つい一時間前に遡るのだが、冷葉と大淀、芙二で明石の元を訪れた。理由は艦娘達に使わせる装備の一覧を確認しようとした。

 

明石「おや、冷葉補佐と大淀だけだと思いましたけど提督も来るとは……あ、倉庫に案内します」

 

芙二「俺が来ることが意外に思えたのか? ま、ほとんどいないしな」

 

 明石と共に倉庫へ向かい、艦種別に分かれている装備をひとつひとつ確認していった。

 そこで分かったことが艦娘の装備が若干足りていない事と、改修が出来ていなくほとんど初期状態で使わせていたことだ。

 

明石「あちゃ~……苦戦しなかったのは奇跡ですね。あ、提督の力も凄いのでしょうけど……」

 

大淀「提督も凄いですけど、時雨さんを筆頭に化け物染みた子たちもいます。その子たちに触発されてか、皆さんの練度や技術レベルが上がっているのが主な原因かと」

 

冷葉「なるほどな。でも、その子たちにそうなるよう、手解きをしたのは芙二か?」

 

芙二「俺は大してやってないぞ。時雨達の学習能力によるものもあるんじゃないのか? それか八崎さんから受けていた、とかな」

 

 箱の中にあった小口径の主砲を一つ持ち上げて見ると、そこには【時雨専用】と彫ってある。

 芙二はこれが明石の言っていた専用装備か、と思いながら数値を見てみる。

 

 元の数値とどれぐらい違うのかが気になっていた。

 間違っても数値で、どうとかは言いたくないものだ。

 

 これはプログラムされているゲームではなく、現実そのものだ。

 数値以上の力を引き出せるだろう、と思っている。

 

 明石のいう艦娘専用装備がどの程度のものなのか、今後の付与の参考にしたかった。

 

芙二「どれどれ…………は?」

 

冷葉「どうしたんだ? 芙二、素っ頓狂な声を出して」

 

芙二「あ、いやこれ」

 

冷葉「12センチ連装砲C型改二じゃないか。これがどうかしたのか?」

 

芙二「これ、明石が作った専用装備なんだけどさ。持ち主は時雨なんだよね」

 

冷葉「ほぉ……明石ー? これが前に報告書で言っていた装備か?」

 

 と、明石の方を向いて声を掛ける。

 明石はそうですよ、と返事をかえすがこちらへは寄ってこない。

 

 大淀と話し込んでいるっぽかった。

 何の話をしているのかは分からないが、まぁ装備改修とか近代化改修の話だろう。

 

芙二「【火力+15】【雷装+9】【対空+7】【装甲+5】【命中+11】【夜戦補正 ---】……って書いてあるけど結構イカレてんなぁ。あーでも、強力だけど装備枠がひとつ削れる、とデメリットがあると思えば――いやそれがあっても意味はないな」

 

 そっと、時雨専用装備を箱に戻す。

 夜戦補正が未知数なのはゼロだからか、状況によって変化するからか。

 

芙二「ほかの子たちの装備はどうなってんだろうか」

 

冷葉「芙二ー、明石が装備の改修と艦娘の近代化改修、それと装備を開発していいかって許可してもいいよな?」

 

芙二「あぁ、構わない。それとこの際だからあれも許可しよう。艦娘専用の装備を作ってもいい、だが本人と相談して作れ」

 

冷葉「いいのか? 資材結構食うぞ、あれって。全員いるから、誰を呼び出す?」

 

芙二「構わん。これから仲間を取り返す戦いをするのだ。生半可な優しさや躊躇などいらん、深海(そこ)よりも陽の元(こっち)の方が心地良いと分からせてやるわ」

 

冷葉「――――ということは、サラは生きているのかッ?! どこだ、どこにいる!!」

 

芙二「サラの魂がこの世に在ることは分かったが、残念ながら正確な場所までは分からん。サラの魂があることは分かるが、肉体は別の存在が使っているらしい」

 

冷葉「深海棲艦になっているのか――――ほんとうに」

 

芙二「そうだな。並みの深海棲艦なら、俺が直々殴り飛ばせば解決する。しかしそれは出来そうにない。こちらの世界ではない者が何やらしているからな」

 

冷葉「それは、あのカインってやつがまた――『そうじゃない。まぁ十中八九、同郷人(アレ)の仕業だろうね。この世界にあそんな技術を持っている奴がいたら驚くわ』 誰のことを指しているんだ?」

 

芙二「ん、いやそのうちドンパチするよ。先日、南西諸島海域での死闘くらいの出来事が起きる。俺の記憶の中にひとつ気になることがあるんだよね」

 

冷葉「それはサラのことか? 俺も資料でちらっとだけしかないが――それの存在が初めて確認されたのはなんせ三十年以上も前のことだぞ」

 

 芙二も冷葉も、サラトガが深海化して姫級となったら十中八九、それになるだろうと分かっていた。

 だから、同時に正体を明かした。

 

『『深海海月姫(しんかいくらげひめ)』』

 

 

冷葉「そうだよな。そうなるよな、はは……」

 

芙二「冷葉、深海海月姫の規模がどれくらいかは分からないが、他の姫級もセットになって来るぞ。どうしようもなくなったら、無線機で俺を呼べ。道を作るくらいはしてやる、それとサラを底から掬いだしてやる」

 

 冷葉の目を見て、伝える。ここに泊地の最終兵器がいるということを。

 分かっていてもきちんと伝えなければ、と思っていた。

 

 仲間が負傷して、沈みかけて、冷静さも理性も失った状況下ではそれすら分からないかも知れない。

 危惧しておいてもそれは確実に起きるとにらんでいた。

 

 

冷葉「…………そうだな、俺も戦場(そと)に出なくてはならないかもな。よっし、誰も失わないでまた揃おう。な、芙二!」

 

芙二「そうだぞ、全員揃って、こそ東第一泊地ってもんだぜ。誰かが欠けちゃあならんのさ」

 

 と、拳同士を合わせる。コツンと音が鳴り、骨の硬い感触が一瞬だけした。

 

 

 冷葉は大淀と明石に『すまんー! ちょっと大事な話してた! しっかり許可取れたから。――それと…………』と言いながら向かって行った。

 

 死亡フラグが立ちまくっている会話だったと振り返る。

 そしてさっきセリフが最後だとは言わせないがね、と目を伏せながら倉庫を後にした。

 

 

 

 ――――とまぁ一時間前のあらましなのだが、うん。

 

芙二「今回、完全に俺隠し玉役じゃんか。ああ言った手前だけど、ガチの深海海月姫を見てあの艤装を触りッ! ……この手で屠りたいんだよね」

 

 誰もいない空き部屋に一人悔しそうに言いつつも……書類の上を走るペンは止まる所を知らない。

 一枚、二枚と前世ではなかった事務処理スキルを発揮していく。

 

 

芙二「俺のスキルに触手系があればなあ……深海堕ちみたいなことをできるのにな。……同人誌のような展開も――――できるな? 俺、昨日ビス子といる時、腹いせで……あぁクソっ!! 結果が分からない!」

 

 

 一旦書くのを止めてペンを握りしめ、ビキビキとペンが音を立てる。

 艦娘とやりた――――いやその時は死だぞ、俺の煩悩よ。

 

芙二「…………ここで一服。」

 

 ペンを置いて、窓辺で煙管を吸う。

 吸い口を外して、煩悩と共に白い煙を吐く。

 

 青い空を見ながら霞んでいく、自身の中の煩悩を見送って煙管を箱に仕舞おうとしたときだ。

 

 ピリリ ピリリ ピリリ と携帯からの着信音が聞こえてくる。

 ディスプレイに表示されていたのは大鳳の名前だ。

 

 昨晩のことか、と思い対応する。

 

『こんにちは、芙二提督殿。今、お時間は大丈夫ですか?』

 

芙二「大鳳さん、こんにちわ。えぇ今ちょうど休憩に入ろうとしていたので大丈夫です。」

 

『なるほど。それは良かったです。昨晩のことを提督に知らせました。提督達は現在、第一艦隊と第二艦隊を連れて共にショートランド泊地へいるのですが許可を出してくださいました。ただ、今言った通り、第一艦隊と第二艦隊の方はいません』

 

芙二「それでもありがたいです。大鳳さん、こちらも一つ言わなくてはならないことがあります。それはサラが、深海棲艦として出現しました。名は――――」

 

『それは、本当なのですか? で、では芙二提督殿は彼女を処刑、するのですか』

 

芙二「はい。彼女には悪いですけど、これが我々のできる最後の弔いです。艦娘達には情け容赦なく行えと言いつけてあります。昨日は仲間でも、明日は分かりませんから。この戦いは特に」

 

『…………』

 

芙二「大鳳さんが、彼女を、サラに黙祷を捧げてくださるのであれば、彼女もきっと……」

 

 と、しんみりとした口調でいう。

 まあ最終的には芙二が無理矢理連れ戻すだが、電話向こうの大鳳にはそれを知らせない。

 

 余計なことを増やしたくないからだ。

 今、黙っているのは本当に黙祷しているからか、泣いているのか。それとも。

 

芙二「……。

  (戦場という個の命が軽い場で人間や艦娘に奇跡を見せる必要は――――)」

 

 いやよそう。

 まだそのときではない。

 

 俺が神ならば、存在を知らしめるために天災でもなんでも招いたが――あいにく座にはいない。

 

 今ある力を仲間のために揮うべきだ。

 それがもっとも旨い結果を生む。

 

『芙二提督殿、失礼しました。これで彼女も安らかに眠れるでしょうかね?』

 

芙二「そうだと思います。支援は一つお願いしたいです。前衛支援です」

 

『了解しました。準備が出来次第、再度連絡します』

 

芙二「はい、よろしくお願いします。大鳳さん」

 

 ピッ と短い音が鳴り、通話は終了した。

 これで大鳳さんのところの支援艦隊は来てくれる。

 

 本来は自分のところで組みたいが、組めないのが現状だ。

 大鳳さんが優しくて助かった。他だったら何かしらを要求されるかも知れない。

 

 さて、次は……と今度は自分からある所へ連絡する。

 これから掛けるところが承認してくれれば、始まりがリアルタイムで分かる。

 

芙二「もしもし、お忙しいところ失礼します。私は東第一泊地の芙二です。 観測所の山方さんはいらっしゃいますか」

 

『山方ですか? すみません、今確認をしてみます』

 

 と、保留の音楽が流れ始めた。

 南西諸島海域の観測所職員の山方に頼み込んで北方海域と南西諸島海域を並行して観測してほしい、というのが今回の内容だ。

 

 リアルタイムで確認して、艦隊に状況を伝えるのは大淀か、冷葉か、あるいは自分か。

 誰でもいいが、冷葉に言った手前だからこそ、自分が伝えるのがいいかもしれない。

 

芙二「…………。

(ま、最悪はあの人に丸投げしますけど。戦闘が癒着状態でうんともすんとも行かなかったら、どうにかできる奴が動いた方がいいでしょ)」

 

 

『もしもし、芙二提督殿ですか? 電話変わりました、山方です。私に用事とはなんでしょうか』

 

芙二「こんにちは、山方さん。今日は大事な話がありまして、内容はとあることに協力してほしい」

 

『……とあることとは、なんでしょう?』

 

芙二「単刀直入に申しますと、北方海域と南西諸島海域の二つの海域を観測してほしい。それと特定のチャンネルに逐一報告してほしいです」

 

『なるほど。うちは元々、両方観測はしてます。けど、芙二提督殿がこうやって頼みに来るという事は…………奴らか。ついに奴らが動き出したのか』

 

芙二「そうですね。発生源は北方海域だと思われています。現在そちらの職員の方にお聞きしたいのですが、聞けますでしょうか」

 

 山方の言葉を聞いて、前者はクリアした。

 後者がクリアできれば、支援艦隊を送り出すときが分かるだろう。

 

 また保留音が流れ始めると、今さっき山方が発した『ついに』という言葉の意味を考える。

 

 なにか含みのある言い方だったので、ずっと観測し続けていた山方らにとって自分の依頼はなにかとんでもないことに繋がるのでは、と思った。

 

 しかし誘拐され、ブチギレて取り返す。実験台にされた挙句龍神となった少女との戦闘。

 それに未回収の同郷人。そして今回の件。

 

 すでにとんでもないことに発展しているような気がするので、さっきのことは考えるのを辞めた。

 

芙二(無駄だ、無駄。俺が人間じゃないのもあるけど、考えるだけ無駄)

 

『もしもし、芙二提督殿? 北方海域のところの職員と連絡をしたが――ついさっき動きがあったようだ。見たことのない深海棲艦の姫級が四体、そして北方AL海域にいる姫級が一体、それの後ろに角が生えて、巨大な爪を持つ姫級…………』

 

芙二「ふむ、ふむ。…………あまりよろしくないな。

 (おいおいおい、サラを救うとか言っておいてバチバチの戦闘になるじゃあねーかよ!)」

 

『あと、スーツを着た人間……いや深海棲艦か? そんなのが一体。それの横に海月のようなものを周囲に連れている姫級が一体。これは、本部に知らせた方が』

 

芙二「知らせるべき内容だと思います。やはり、そこに…………。

   (スーツを着た人間……深海棲艦?ル級もそんな感じだったと思うが……もしかしてな?)」

 

 

『了解しました。さきに本部へ報告したあとにまた連絡します』

 

芙二「はい。分かりました。山方さん、よろしくお願いします」

 

 これで下準備は終わりだ。それにしても見たことない深海棲艦の姫級、か。

 俺の知らない深海棲艦だろうか。それと北方棲姫と港湾棲姫、深海海月姫。

 

 その三体は確定でいるのか。

 うーん、決戦支援も頼むべきだったか?

 

 それとスーツを着た人間みたいな深海棲艦、ね。

 めっっっちゃ気になるじゃんか。

 

芙二「まぁそのうち分かるか。敵だったら徹底的にやるし、そうじゃなかったら放置でいこう」

 

 携帯をしまうと、少しストレッチをする。

 そして再び書類の元に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同日 同時刻 東第三鎮守府 執務室

 

 窓から差す、陽の灯りが室内を照らすなか一人の青年と一人の艦娘が、椅子に座り真剣な表情を浮かべていた。

 

 それは現提督の神城とその秘書艦の長門だ。

 二人はかれこれ三十分はこうして、話せずにいる。

 

 内容は昨日、東第一泊地の補佐から支援艦隊の要請があった。

 それに対する回答を待ってもらっている。

 

 自分だけで決めるのは、些かどうかと思うので秘書艦の長門にこうして質問をしていた。

 

 

 

神城「長門、今回の件お前だったらどうする?」

 

長門「そうだな。私だったら芙二提督殿に悪いが断る、な」

 

神城「そうだよな。うちはまだ休業中だし……あぁそれでもっ」

 

長門「あのサラトガが気になるのか。分からないわけではない。しかし我々は……」

 

神城「……」

 

長門「提督、芙二提督殿をここに呼ぼう。電話口だけだと不安なのでな。現状を知ってもらってから、どうするか決めようではないか」

 

 その案に頷くと神城は携帯の連絡先の中から芙二を探して、連絡するのだった。

 

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