とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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空襲に怯える民間人の気持ちを作者なりに書きたかったけど、
もっといいものがあったはず。

勉強してかないとなって思いました。はい。



三章 22話『黒ゐ鳥の群れ』

 

 

 

 午前六時 二十分過ぎ 東第一泊地周辺に深海棲艦からの空襲が予想され、被災するであろう地域に警報が発表された。朝早起きの住民以外は、けたたましいサイレン音で目が覚める。

 

 広報から『空襲警報が発令されました。ただちに避難を――』とサイレン音と共にずっと繰り返される。

 

 周辺地域の住民は寝巻のまま、防空壕へ、家を出て必死に山の中へ駆け込む。

 

 バタバタと状況がよく分からず、困惑しつつも大人たちに従う子供。

 まだ眠い、寝かせろと家の中に残る者。突然のサイレンに驚き、腰を抜かし青ざめる者。

 

 空襲警報を聞いて、ワクワクしながら高台へ向かう者、またこのような痴態を招いた海軍に憤る者など様々だ。

 

 未だ空襲警報は鳴り響き、皆がありとあらゆる物を使って避難しようとする。車、自転車、バイク。それらは逃げ道を潰す愚策である。大通りが詰まる。何が何でも逃げようと必死の形相で、他人を足蹴にしても進もうとする。

 

 それらがまた人災を呼ぶ。

 状況を理解した者は、静止を呼びかけ、ある者はこの状況を愉しむために他人の恐怖心を煽る。

 

 錯乱し、どうにもこうにも行かなくなるとついには暴力が振るわれる。

 誰も悪くないのに、未知の恐怖は人の心を侵食しおかしくさせた。

 

 

『早く、どけ!! 俺が先に、避難するんだ!』

 

『いいや、私こそが――――』

 

 その言い合いこそ醜く、避難の時間を奪う。

 全員が落ち着いて避難すればいいがそれは叶わない。

 

 『あーッ!』と誰かが空へ指を差して叫ぶ。

 

 一部の者はその声につられて、見る者もいた。

 逆に一方でもう来てしまったかと血の気が引いて、その場に座り込む者も続出した。

 

 

 そんな中、目に何が何でも生き残ってやるという意思を宿した一人の青年がいた。紺色の学生帽と学生服を着ていた彼は周りが争い、諦めるなか自分だけは、と諦めることなく、後ろを振り向かず走った。

 

 全力疾走したのか汗を流し、息を切らす。道中は倒れる人に、物に当たりながらも走った。

 

 

 しばらくすると家族と待ち合わせの防空壕の前まで着いた。

 

 はぁ、はあと荒く呼吸する。

 見向きもせずに登り切ってか青年には下を見る力もなく、ずしゃと座り込んだ。

 

 もう少しだ。もう少しで、と思った時だ。

 

『おーい! あと少し!! はやく、こちらにおいでー!』

 

 と誰かが声を掛けた。

 

 

 聞きなれた声を聞いて、ゆっくりと振り向くとそこには幼馴染が手を振っていた。

 

『はやく! あと少しだから――――あっ』

 

 すでに疲労が蓄積された身体を持ち上げ、幼馴染の方へ向かう時。

 

 幼馴染の表情が変わった。自分の背後を見て、目を丸くしている。

 しかし次第に青ざめ、白くなっていた。自分の背後でなにか起こっているのだと、幼馴染の方へは進まずに振り返った。

 

 

 そこには目を疑う光景があった。

 

 空から水平線が見えなくなるくらいまで、無数の黒い鳥のようなもので埋め尽くされていた。

 

 青年は初めて深海棲艦の艦載機を目の当たりにした。

 視界に見えたのは飛行機の形などしておらず、丸い球体のようであった。

 

 言葉を失っていると、空から向かい来る艦載機に対抗して水上を滑るように進む人影があった。

 

 それを瞬時に艦娘と理解した。ニュースや海軍広報で知った存在であった。

 無数の艦載機に対して、数えただけだが十人満たない戦力で迎撃するなど、不可能だと思った。

 

 

 でもそれは違った。

 

 艦娘が海上に現われてから、すぐに空が橙色に染まった。

 上空へ黒煙が上がり、残骸が海へと散っていく。

 

 

 絶望を砕いたような衝撃は青年の瞼裏に色濃く焼き付いた。

 

 ぼーっと目の前の光景を見つめる青年を現実に戻したのは幼馴染だった。

 背中を叩き、正気に戻させると青年の腕を引っ張って防空壕へ向かったのだった。

 

 

 ======

 

 

 榛名を旗艦に龍驤、足柄、磯波、朝潮、時雨が空襲警報を後ろに敵の大元へ向かっていた。

 

 冷葉からの指令は北方海域にいる敵空母機動部隊へ壊滅的な被害を与えろ、というもの。

 

 小一時間前に『命令』が下されてから艦隊の雰囲気が変わっていた。

 いつもの和気あいあいとしたものではなく、ピリピリとした空気に変わっており皆の眼差しが戦意に溢れていた。

 

 

 芙二が敵の艦載機を撃墜させていく、というのは驚異的であった。自分達の役割を取られるかも知れないが、確実なのだ。撃ち漏らしで仲間が被弾するわけでもない。

 

 頼りっきりになってしまうが、そのおかげで自分達は目標を達成することだけに尽力できる。

 泊地から基地航空隊が何機か送られてくるというのも知らされてからは、心強い気がした。

 

 

龍驤「榛名! うちらから見て、北西に四百五十メートル。敵艦隊が進行中や、どうする? 放置して司令官に頼るか?」

 

榛名「いえ、まだ敵はこちらに気づいていないようです。だから磯波ちゃんたちで魚雷を先に撃ち込んで混乱させましょう! このまま気配を顰めたまま近づき、沈めましょう」

 

 その意見にみな賛同して、作戦を決行する。

 互いに電探で探知できる距離にいるのに深海棲艦は気が付いていないのか、ただまっすぐに進んでいた。だから、奇襲という形で混乱させ、こちらが有利なまま戦闘に持ち込むことが出来た。

 

 

 深海棲艦らが気がついたときには遅く、そのまま押し切られてしまった。

 砲弾が炸裂し爆発した身体は焼けながら沈んでいく、がそれらを見送る前に、次へ進む。

 

 

榛名「やりましたね! 龍驤さん、ナイスです」

 

龍驤「榛名も、連撃が決まったな。流石の火力やな」

 

朝潮「このまま順調に目標まで近づければ、こちらの思惑通りに行きますね」

 

足柄「でもそれが通用することはないのが戦場。でも基地航空隊……来なかったわね。位置情報が読み取れてないのかしら?」

 

時雨「それはどうかな。足柄さん。多分冷葉補佐のことだ、ちゃんと考えてやっていると思うよ。! 電探に反応があった! 前方、約百弱に艦載機群を確認!」

 

磯波「了解です! 機銃、構え良し!」

 

榛名「いい感じですね。時雨ちゃん。全員、対空射撃用意――――」

 

 バラバラとヘリコプターのような音を立てて現れる無数の深海機体。

 声を溜めた榛名は、一番の勢いで張り上げ、指示を出した。

 

榛名「敵機体、捕捉! 撃てェッ!!」

 

 対空射撃が敵機体を撃ち落とす。しかし数機、逃してしまい攻撃をもらい被弾する。

 

龍驤「うわっ!? 流石、敵機動部隊や~…………ちょっち被弾してもうたわ」

 

朝潮「龍驤さん! 大丈夫ですか!?」

 

龍驤「朝潮、心配すんな。うちはまだ艦載機を発艦できるで。これくらいで動けなくなるようなヤワじゃないわ」

 

磯波「時雨ちゃん! 電探には何か反応はあった?」

 

時雨「いいや、いない! 磯波、大淀さんから指示してもらったところに今の状況を送って!」

 

磯波「りょ、了解です! 大淀さん、こちら敵機動部隊殲滅隊――」

 

 大淀に説明するなか、艦隊は少しだけ速度を落として情報を確認する。

 

 観測所から聞いた情報を整理しながら、現在自分達のことと照らし合わせていく。

 

 

 遭遇した敵艦隊の数が明らかに少ない。

 まだ十戦いかないくらいしか戦っていない。

 

 まだ燃料、弾薬はともに残っている。

 遭遇し忘れた敵艦隊が泊地へ向かっているのでは、と悪い想像をしてしまう。

 

 しかし後方にいる味方を、最前線で戦っている自身の司令官を信じて前進したのだ。

 

 




それをあまり知らない人はこういう風に例えるだろうな、
と思ってサブタイトルをやってみました。

前半:自分達では敵わない絶望が希望によって打ち砕かれ、
無辜の民に希望の光を与えるシーンをイメージしました。

後半:出撃した艦娘達とのやりとりです。

 もっと勉強しないと、自分のイメージを文章に表せないなあって。
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