とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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慈悲 拒絶 断頭


三章 23話『no survivors』

 徐々に元凶との距離を一歩、一歩と詰めていくなか、深海棲艦らが目につく。

 だから芙二はこちらへ進行してくる深海棲艦を片っ端から殺して回る。

 

 勿論、魂と怨念を分離させて回収するという最初の目標は忘れていない。

 

芙二(ふーむ、どこからこんなに湧いてくるんだ? やはり向かう先にいる姫級が関係しているのだろうか?確か、五隻だっけか。姫級。そんなにいたら、中規模、大規模は免れないよなあ)

 

 

 リ級やル級、ヌ級と複数の駆逐で構成されている水上打撃部隊と遭遇するも難なく滅していく。先ほどから振り回している大鎌の刃に目をやっても、全く刃こぼれしていない。

 

 それを見てか、芙二は『ようやく付与術師(エンチャンター)として出来てきたってことか?』と呟くもそれは全くの見当違いであった。

 

 芙二自身が作成した大鎌の一部分でしかなかった、と後に思ったのであった。

 

 

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 鎧を着た人型に屠られていく個体が見た最後の映像は、廃村内にいる港湾棲姫たちの元にいるヲ級へ全て送られていた。

 

 

 それはヲ級はもちろん、その場にいる全員に衝撃を与えた。

 海を歩く人型の異形は仲間を巨大な鎌でひと斬りしていく。

 

 それが進むたびに仲間がバラバラになっている現状を見せられた。

 

 港湾棲姫や北方戦艦神水姫はそんな生物を見たことがない。これが海軍の兵器ではないと見抜くには時間は掛からなかった。

 

 歩いた場所が凍り付く。どうみても異常な事態だ。

 海上を移動する我々にとって、天敵とも言える存在に見えた。

 

 港湾棲姫は信じられないと言った様子で、動かなかった。

 ヲ級は言葉を失い、小さくなっていた。

 北方戦艦神姫はなにか、裏があると思いずっと更新され続ける映像の端から端まで見ていた。

 

 

『ホッポチャン…………』

 

『安心シロ。アイリノ実力ナラ……貴様ノ妹ハ無事ダ。ソレカ迎エニデモ行クカ?』

 

『イイエ。ワタシハココデ待ッテマス。アノ子ガ帰ッテ来ルマデ……』

 

 そうか、と北方戦艦神水姫は頷き一度映像から目を話し、窓際へ向かった。

 

 

 窓を開けると、冷たい風が室内へ入る。

 風を見に受けながら水平線を見つめるも何も変化はないので、

 まだ自分が動く時ではないと思った。

 

 

 そっと窓を閉じ、港湾棲姫に向かって退室の旨を伝え去った。

 

 

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 深海棲艦レーダーが強く反応を示す。

 その反応に待ってました、と言わんばかりに映った数と位置を把握しようとする。

 

芙二(あれ思ったよりも数が少ないな。大きな反応を囲うように二重の円が出来ているな……もしかして姫級の誰かのお出まし?)

 

 その予想は的中する。

 うっすらと向こうに深海棲艦と浮いている護衛要塞が見えた。

 

芙二「おっとぉ、護衛要塞! え、誰だ? ここは北方海域だから、北方棲姫か? いや違うか?」

 

 前世でしか見たことのないものを現実で見て、実物の雰囲気を鎧越しで感じて目を輝かせる。

 しかしヘルムの中からではその表情は伝わらない。ただ行動には出ていたようで、向こうに見える深海棲艦の動きから警戒されたのだと分かった。

 

 前衛にいる深海棲艦達が横に逸れていく。

 奥から護衛要塞に護られながら出てきたのは、北方棲姫だ。

 

 

 

 容姿は前世散々見てきた。

 巡洋艦三隻、空母三隻を編成させ出撃させると確実に北方棲姫の居るルートを通った。

 

 可愛い見た目とは裏腹に大体被弾させられた。

 

 頭の上側に低く緩い一対の角、駆逐艦娘や海防艦にも遜色ないちんちくりんな体型。

 それを覆うAラインワンピース、その両手に鍋つかみミトン――は装着していない。

 

 その代わりにごつごつとした手甲を装着していた。

 

 戦場だし、それもそうか。

 

 そして警戒心いっぱいに見開かれた大きな瞳。

 

 見た目はただの幼女である。

 見た目は!! ただの白髪の幼女だ。大事な事なので二回……っとそうじゃない。

 

芙二(この雰囲気は…………切れてるな。ガチギレって感じだ。北方棲姫自体はあまり好戦的ではない、はず……話し合いは行けそうか?無理だったら、沈めるが)

 

 一歩踏み出そうとするとき、北方棲姫の前に先ほどの前衛にいた深海棲艦が間に入る。

 

 自分が大鎌を持っているからか、それとも旗艦を護る為か。

 

芙二「そもそも――――話し合いをしようなんて、雰囲気じゃあないよな。向こうは確実に殺しに来てるって感じだし」

 

 深海棲艦は自身の使える姫に危害を加えさせないために、芙二に砲門を向けたまま静止していた。

 動こうものなら、瞬間的にハチの巣に……いや肉塊にする気だ。

 

 前衛の深海棲艦から何が何でも近づけさせない意思を感じた。

 

 それすらも屠って行くと先に――――北方棲姫、護衛要塞が数機、それを護るように深海棲艦らが陣を組んでいた。初対面だというのに北方棲姫の目には殺意と敵意が宿っている。

 

芙二「部下を殺されて、激怒という感じ? あー、その辺りは申し訳ないかな。だってこれ戦争だし。お互いが武器を――――完全に捨てなくてもいいが自衛できるくらいには持っていた方がいい。……コホン、話を戻そう」

 

 

『汚ラワシイ……オマエハ、人間ト艦娘ノ味方ナノカ?』

 

芙二「もちろん、今は、だが。(オレ)が提督であるうちは人間と艦娘の味方さ。んー、一応一部の深海棲艦の味方でもあるかな」

 

『何ヲ言ッテ……嘘モ休ミ休ミ言エ、化ケ物メ! オマエノヨウナ…化ケ物ガ我ラノ味方デアルカ! ナラバ、如何シテ味方ヲ殺ス! 既ニ矛盾シテル!! 人間ノ皮ヲ被ッタ化ケ物!

  ……スグ楽ニシテヤル』

 

芙二「そら、ま。早い決断で……しかしいいので? その決断は部下の命のみならず、北方棲姫。お前の命も失うぞ? まだ互いに話し合うことはあると思うが――――」

 

 

 決裂した話し合いの答えを聞いて最終確認し、警告する芙二と速戦即決を考えた北方棲姫。

 まだ話し合いの余地はあると言った瞬間、真横を横切る砲弾。

 

『クドイ。オマエトハ話シ合ウ必要ハナイ。ソレトモ命乞イカ? 化ケ物ノ癖シテ、見ットモ無ク土下座デモスルカ? コノ見タ目ニ騙サレテカ知ラナイガ……ソノママ死ネ!』

 

 北方棲姫は軽蔑するように笑って芙二に言う。

 周辺にいる深海棲艦の表情に嘲るような雰囲気が出始める。

 

 しかし芙二は黙ったまま、聞く。

 何も動かないし、物言わないので部下と護衛要塞に砲撃指示を送る。

 

 ガコン、と音が揃う。

 それっきり何も音が鳴らない。

 

 合図となる挙動が確認でき次第北方棲姫を含む砲撃、爆撃が芙二に襲い掛かる。

 個を屠るには過剰とも言える戦力だが、北方棲姫は躊躇わない。

 

芙二「なぁ、ホントに後悔しない? (オレ)と話し合わなくて……今、それなりに譲歩してんだけど。それも無意味に終わりそうだし、無駄みたいだし。もういいよね」

 

 やれやれと鎧を着たまま呆れた声で言う。

 北方棲姫は『やれ』と低い声で合図すると、芙二の居た周辺に巨大な水柱が生じた。

 

 砲撃、爆撃の音は止まない。

 一通りが撃ち終わると交代し、また弾が切れるまで撃ち尽くす。

 

 航空隊もそうだ。過剰とも言える爆撃を行う。

 合計二百機の攻撃が全て一つの地点に降り落ちた。

 

 

 絶え間ない攻撃によって生じる衝撃は激浪を作り、轟音はその場にいない物を引き付ける。

 その中にはこちらへ向かってきている艦隊も含まれる。

 

 

 榛名達が急いで到着する頃には北方棲姫の攻撃は一旦終わり、水飛沫と黒煙で芙二の周囲が見えなくなっていた。

 最後に攻撃を行った航空隊は、勝ちを確信して自分達の基地へ戻ろうとした時だ。

 

 

『グリム・リーパー』

 

 小さな声でそんな言葉が呟かれたかと思うと、

 ザンッと音が鳴るほどの強風が吹きつけた。

 

 完全に油断していた北方棲姫は強い風に身構えて、驚きのあまり目を瞑ってしまう。

 

 不意を突かれた北方棲姫は、恐る恐る目を開けてから気づく。

 

 自分の周りにいた護衛要塞にタ級らがいないと。

 頭がない個体、顔半分で立ち尽くす個体。いずれも絶命しているのに、倒れない。

 

 脳漿も、血も飛び散っているのに倒れないことに声にならない悲鳴を上げる。

 そしてハッとする。目の前にいる化け物がゆっくりと大鎌を振り上げていることを。

 

 

 北方棲姫はどうにかして回避策を練っていた。

 しかし芙二はそんな様子を見てか満足そうに、黒いヘルムの中で獰猛な笑みを浮かべて一言。

 

芙二「グリムッ…………リーパァァアァッ!」

 

 言い終えると目にもとまらぬ速さで振り下ろす。

 ビュウッとまた強い風が吹きつける。

 

『…………クッ! 勢イガ……サッキヨリモ強イ!!』

 

 突風は北方棲姫を後方に吹き飛ばす。

 誰も受け止める事はなく、ベシャと海上に倒れる。

 

 ぐぐぐ、と顔を上げる頃には海上に生存する命は自分だけになっていた。

 その事実に息を呑んだ。

 

 ありえないと叫んだ。

 しかし芙二はなにも言わず、ゆっくりと北方棲姫に近づいた。

 

 何も言わず、鎧を着たまま海上を歩く化け物を前に完全に恐怖で固まる。

 

『来ルナ! コノ化ケ物!! オマエナンカ――――』

 

芙二「これは慈悲だ。お前は今二つの道を示されている。情報を吐いて、殺されるか。慈悲を受けず死ぬか。死んだ後は消える直前で留めて記憶を拝借するがな」

 

 ヘルムを外すことなく淡々と接する。

 北方棲姫がなにか言う前に彼女が身動き取れないように氷漬けにした。

 

 元々寒いところ出身の北方棲姫は耐性があるように、見られた。

 それでも芙二は辞めずにゆっくりと氷漬けにしていく。

 

 

芙二「ハハッ!まるで断頭台だな。ギロチンのようにスパっといける。さぁ、どちらだ?」

 

『敵ニ情報ヲ売ルクライナラ…………断ル!』

 

芙二「そうか。残念だ。直接その命を奪う事になってしまうことが、な」

 

 

 触れたものの命を奪う大鎌を北方棲姫の細い首目掛けて振り下ろした。

 

 

 

 




書いてて思ったけど、支援艦隊要らなくない?
でも今後絶対に必要になるしなあって。

ちゃんとまとめれるかな。
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