あー、今年が終わる。やばいな。ほんとに。書き方も忘れるし、最悪や。
待たせてすみません。
翌日の午前五時〇二分。艦娘達は目を覚まし、各々で行動していた。
既に支度を済ませており食堂へ向かっている者、寝起きでまだ眠たそうにしている者。
食堂へ着き、間宮と伊良湖が作った食事を頬張っている者、工廠へ赴き、自らの装備を確認している者。
妖精さんと会話し、かつての仲間を討つ準備をしている者。
そして――執務室も然り。既に起きて作戦の準備を行っている冷葉と大淀。結局空襲は来なかった。それらを冷葉に伝えると芙二は少しだけ休ませてもらう、といい自室へ向かった。
冷葉は大淀に向かって昨日作成した書類をくれ、と指示をして彼女から書類を受け取った。
ペラ、ペラリと何枚かめくった先にほしい情報があった。それを頭のなかに叩きこんだ。
冷葉(これから。これから――本番だ。なんとしてもサラを、サラトガを取り戻すんだ)
書類から目を外し、そう思っていた。
最終的には芙二が何とかしてくれるだろう。でもそれまでの足掛かりを作るのは自分達だと自分に言い聞かせる。前半戦もとい昨日の戦いは芙二の力に頼りっぱなしみたいなもんだから、と。
大淀「冷葉補佐。大丈夫ですよ。きっと――戻ってきます」
秘書をしてくれている大淀の言葉が冷葉の気持ちを引き締める。そうだ、俺達はやれる。
艦隊全員で彼女を救うんだ。
書類を置き、出撃メンバー表を片手に呟く。
冷葉「これから――作戦開始だな」
意識を切り替え、放送室へ向かい出撃メンバーを招集したのだった。
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出撃した艦娘らは連合艦隊を組み、海上を進む。東第一泊地の艦娘にとってはこれが初めての連合艦隊だった。第一艦隊の旗艦は長門、随伴は陸奥、赤城、夕立、叢雲、曙。
第二艦隊の旗艦は川内、ヴェールヌイ(以下ヴェル)、如月、神通、青葉、霞だ。
彼女らは器用に艦隊同士、無線でやり取りを行っていた。周囲に気を使いながら海上を征く。
速力を上げず、ただ進軍していく。敵機は見えず、嫌な緊張が艦隊を蝕んでいた。
がしかし、それは一瞬にして崩れる。
赤城「こちら、赤城! 北三百の位置から敵艦載機群が接近! 私は艦載機を発艦し、制空権を取りに向かいます」
長門「了解した。こちら長門。赤城の指示は聞いていたかッ? 艦隊全員、対空射撃――始めッ」
赤城の言う通り、黒や白い色をした骸骨のような艦載機が迫って来る。バラララ、と音を立てて敵機撃墜させにいく艦載機。妖精さんが操縦しているのだ。艦載機から出る機銃が敵機を撃ち落としていく。
艦娘も何機か打ち漏らしているが、一つ一つ落としていく。
川内「霞ちゃん! 危ない!」
霞「え!? ――どこ」
青葉「仲間には爆弾一つ、触れさせないよ!」
ドォン!
青葉の撃った弾と霞目掛けて落ちてきた弾とがぶつかり少し上で爆発した。被弾していたら、小破以上はしていたろう。気がついた川内と撃ち落とした青葉に礼をいう霞。
川内「いいって! いいって! ――! こちら川内! 私から見て南東二百に敵水雷戦隊を発見! 会敵はすぐだろうから、戦闘を行うよ。あとからすぐに追いつくから、第二艦隊はちょっと離脱!」
長門「こちら長門。川内、了解した。こちらも向かって来る敵補給部隊を殲滅後、合流しよう」
無線を介して、旗艦同士のやり取りが行われた。
話はまとまり両者は別々に指示をして動き出したのだ。
泊地のある海域を抜けてからというもの、敵の数が異常に増えた。
互いに陣形を取って、敵の殲滅に専念するしかなかった。
敵は際限なく、襲って来る。意思を持たぬ
第一艦隊も第二艦隊も連携を取り、敵機を落とし先に進む。だが、全部落としていると弾と油が勿体ないので節約しながらだが。おかげで危ないシーンもあった。
ヴェル「川内! 小鬼群が魚雷を打ってきている! 回避しないと危ない!」
川内「ありがとう、ヴェールヌイ! 全員、速力を上げて回避して!!」
青葉「わわっ! 真横に補給艦たちと敵水上艦が多数! とりあえず撃ちます!! ッてぇ!」
神通「青葉さんの言う通り……ッです。私たち挟み撃ちされてしまいます……川内姉さん! 撃ちながら速力を上げて突破しましょう」
川内「分かってるけど……ッ! !! みんな! 北百から再度敵機が――接近!! 周りに気を取られて気が付かなかっ――」
四面楚歌になりつつあった状況下。敵の数に負けそうなとき後方から敵機の音ではない艦載機の音と砲撃音が聞こえた。
川内「――え?」
ブロロロ――ドォン! ドォン! ドォン!
時雨「支援艦隊――旗艦、時雨。これより第一艦隊及び第二艦隊を支援する。他は第一艦隊の支援を。僕は――いやボクは第二艦隊が合流できるよう動くだけ、かな」
『『了解です!』』
たった六名しかいない支援艦隊の大半が第一艦隊の支援へ向かった。ただのどこにでもいる時雨がそういったら、艦隊は大混乱に陥るだろう。しかし皆に指示を出した時雨の実力はそこらの艦娘、深海棲艦の存在を凌駕する。
道を作るだけなら時雨一人で事足りるのだ。時雨の指示の後に龍驤と隼鷹が艦載機を発艦させ、敵機を撃滅させていく。見えなくなっていく仲間と艦載機を確認すると時雨の纏う雰囲気がまた変わった。
黒い髪から白混じりの髪に、目つきも変わっていた。仲間に話しかけるような優しいものから、獲物を見つけた獣の様だった。
時雨「川内、ボクが道を作るからそこへ速力を上げて進んで。深海海月姫の元までは最低限で済ませて。これは提督からの指示ね。長門の元へは離脱した子たちが伝えてくれていると思うから」
川内「了解! 時雨ちゃん、その姿は……」
時雨「大丈夫。この前でものにしたから。でもそうだな、連鎖的に消し飛ばすにはもう一押し必要だ。ボクの事は気にしないで数発撃って」
ヴェル「もとよりそのつもりさ。時雨」
時雨の言葉のあと、ヴェルが砲撃を行った。
直撃した一隻の艤装からは火花が上がり、ドン!と小爆発を起こした。身体から出血し、動かなくなったのを時雨は見逃さない。
時雨「今が攻め時かな。見ててよ、ちょうど川内達を囲もうとしていていい密度だ」
少し愉しそうな声色が、やけに耳に残った。敵が砲弾、魚雷を装填する音の方が鮮明に聞こえたのにも関わらずだ。実際に時雨の表情を見ていないからなんとも言えないが、舌なめずりをしてるような気もした。
時雨「ボクの邪魔をしないでくれるかな。矮小で意思を持たない――人形の分際で」
バチン、と大きな音と共に時雨が弾きだされたような速度で先ほど負傷した個体の元へ向かう。
負傷している個体の付近の深海棲艦らは時雨に標準を合わせ、砲撃するも一発も当たらない。
そして――負傷している個体目掛けて魚雷を放った。ほとんど零に等しい距離で。
このままでは時雨も巻き込まれそうだと第二艦隊の面々は思った。だが、時雨は微笑むだけで回避行動をとることはなかった。
バシュゥゥゥゥ――――ズドーン!
『わっ!? 時雨ちゃん――!!』
魚雷が炸裂して、水しぶきと黒煙が上がり海面は大きく揺れる。誰かの悲鳴が虚しく響く。
一連の行動だが深海棲艦にとって絶好の隙だというのにも関わらず、撤退や攻撃する素振りを見せなく向こうも驚いている様だった。
水しぶきが消える頃には
あの個体を切り捨てて撤退、それか艦娘を撃滅すればよかったのに。
『ちょっとビリっとくるよね? ネェ??』
クスクスと何かを嘲笑う声が聞こえる。
煙が晴れると爆発で飛び散ったであろう個体を掴む時雨がいた。
魚雷が炸裂したのか、虫の息になった個体と影響を受け半死半生でいる個体。
時雨は掴んだまま、力を強めて頭部の一部を粉砕して命を絶った。
その光景には川内達すらも短い悲鳴を上げた。
時雨「さて、道を作る道具は手に入れた。川内、ボクから少し距離を取って。あ、みんなもネ。あー、深海棲艦は動けないはずだから。砲撃するなら、今だよ? 動かない的のど真ん中を射るのは簡単だろう? 子供でもできる事だ、そんなこと」
またもクスクスと笑い、既に死んでいる深海棲艦を麻痺して動けない個体の元へ放り投げると少しの衝撃で爆発を引き起こした。それは連鎖し、次々に爆発していく。
時雨「アハハ! これは楽しい! ま、とりあえず道は作ったから進みなよ。残りはもうすぐ消えうせるから。背後を気にしなくていいよ」
何十体が消し飛んだようで艦隊が動けるだけのスペースが出来ていた。そこを指差し、早く行けと指示をする。川内たちは異様な光景に何とも言えないでいたが、時雨に感謝しながら進むのだった。
時雨「さて、これで心置きなくやれるね」
未だに麻痺していて動けない深海棲艦を見て、ニコリと微笑む。
せっかくだから楽しもう、と思う時雨だった。
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第一艦隊は第二艦隊と同じくして被弾の危機にあったが、なんとか龍驤たちが到着して誰か一人でも被弾する難を逃れつつ進軍していた。
長門「……ふむ。それで一人少ないのか。時雨にそんな力が秘められているとはな……。提督から知らされてはいたが、半信半疑だったな」
龍驤「せや、とりあえずうちらは時雨の安否を見に行くわ。うちらは一旦離脱するけど、また別のがあるが、警戒を怠らんといてや」
長門「あぁ分かっているとも。先ほどはありがとう。これで第二艦隊と合流できそうだ」
礼はええって。仲間やから、当然やろと言いながら龍驤は他をまとめて時雨の元へ向かった。
長門は振り返って鼓舞する。川内からの連絡によるとすぐに合流できるらしい。
長門「合流次第、目的地へ――――」
『長門さん! 空が、空が!』
川内に指示を出していた長門だが、曙の声により何事だと上を見上げて絶句する。
空の色が赤く染まりつつあったのだ。先ほどとは違い、赤い空。
夜に輝く赤い月の影響で空が赤くなるのとはわけが違うと誰もが理解した。
この現象は――――近くにボスが出現するという合図だった。
ボス、すなわち深海海月姫。
気がつけば、生物の気配が消えうせ気味の悪いほど静寂に包まれていた。
異様な緊張が艦隊に走る。
そんなときだ。赤城が艦載機から送られてきた映像に声を荒げた。それが静寂を破った。
赤城「な、長門さん! 北東四百、深海海月姫と思われる影が――――そんな、あ、ありえない!!」
長門「ついにお出ましか」
赤城「彼女が、いや彼女の形をした深海棲艦がこちらへ進軍してきます!! 一人だけで、です」
夕立「え、それはサラトガの事っぽい?!」
叢雲「うそ、ありえないわ。そんなこと…………」
長門「……全員警戒し、単縦陣を組め!! 第二艦隊が来る前に、戦闘が始まるかもしれん!!」
そう、声を張り上げる。川内との無線は音のままなので、情報は筒抜けだった。
無線の向こうで第二艦隊の全員が言葉を失っていた。
だって彼女は青葉の目の前で自害したのだから、そんなことはあり得ない。
皆が異様に警戒し、うっすらと黒い影が見えると一層気を引き締める。
この世に存在していないはずのものを目の当たりにしたのだ。
やがてくっきりとした姿を見るとゾゾゾ、とさぶいぼが立つ。
肌や髪は白くなっているが、形は沈む前の彼女そのものだ。
『…………おはようございます。皆さん、そんな表情をしてどうしたのですか?』
深海棲艦の姿のまま彼女はそう言った。
誰もが残酷な現実に表情を曇らせる中、叢雲はひとり苛立ちを募らせていた。
次とその次、多分一万字いくか、いかないかくらいに長くなりそうです。
ご容赦ください。