言い訳するとリアルがごたごたしてしまい、けっこー忙しくてですね。
まとまって書く時間が取れなかったです。しかも久しぶりに書いた所為で長くもなってしまった……!
瑞鶴たち東第三鎮守府の支援によりネ級改を含む敵艦隊の撃退に成功した長門ら連合艦隊だが、ある問題に直面することになった。
それは連続的な戦闘により消費した弾薬と燃料が予想よりも多く、次激戦となった場合に敵の物量に押し負けてしまうことが考えられる。そのことにいち早く気がついたのは艦載機を飛ばし制空権確保に動く赤城だった。
彼女に至っては残りの艦載機とボーキサイトが乏しく次、航空戦となった場合確実に負け抵抗叶わず被弾することが分かっていた。今は東第三鎮守府の支援があるとはいえ、彼女らもずっとついてくれるわけではないだろう、と。
瑞鶴たちはあくまでも戦闘支援。赤城や長門らに補給する為ではない。このままでは瑞鶴達に負担を掛けてしまう――と考えるうちに無意識で親指の爪を噛んでいた。
赤城(どうする? このままだと瑞鶴さんたちにかなりの負担を強いることになる。彼女らも最後の最後まではいないでしょうし……長門さんに――――いや彼女もそれは分かっているでしょう。ここは大淀さんに知らせるべき――――)
吹雪「! 瑞鶴さん! 南五百の方に反応があります! 一隻だけですがこれは――――中型、船? 深海棲艦の可能性があります。今すぐに索敵機を!!」
瑞鶴「吹雪、了解。瑞鳳さん、彩雲を飛ばして確認してもらえる? サラトガさんと蒼龍さんは各々艦攻と艦爆をいつでも発艦できるよう準備を」
瑞鳳「はい。分かりました。……蒼龍さん? どうかしました?」
吹雪から伝わった情報のもと瑞鶴からの指示にサラトガは答えるも仲間の蒼龍からの返事がなく、彼女の方を向く。蒼龍は俯いていた。サラトガの視線に気がつくと申し訳なさそうな表情をさせ、無線を介して瑞鶴に了承の返事をした。
蒼龍「! 瑞鶴ちゃん、こちらに向かってくる船の正体は――――」
彩雲からの情報で瑞鳳は驚きの声を漏らす。彼女は一体なにを見たのだろうかと気になりだす、瑞鶴含む東第三の面々と長門ら連合艦隊の面々。
しばらくの沈黙の後、瑞鳳が話そうとするとき吹雪が電探で発見し瑞鳳が彩雲で見た船がこちらへ向かって来るのが分かった。船は一見観光船のように見えるが決定的に異なる部分がある。それは黒々とした小型ガトリング砲を四つ搭載しているのだ。
そして甲板に軍服を着ており、紺の帽子を深くかぶった人物がこちらを見ていた。正体は――――隠すも何もまぁ芙二なのだが。
え?誰が操縦してるかって?
そら、勿論妖精さんやね。報酬は
ほんとだよ。いつも過剰気味に渡すから今回は自重してるよ。ちなみに飴ちゃんだよ☆
芙二「あー、あー……こちら東第一泊地の芙二だ。報告を聞いてたら、そろそろそんな気がしてきたので来てみりゃドンピシャだ。
と無線に向かって話す。すると船内から短めの黒い髪に、深緑色の目。それに他の艦娘と違って白色のジャージをきたスポーツのマネージャーのような艦娘、速吸。それと駆逐や潜水艦娘の制服とはまったく違い特徴的な服装を着ている。神威岬から名を付けられたアイヌっぽさのある艦娘、神威。
彼女らは皆の艤装に補給をしていく。慣れた手つきで行い、空いた時間で芙二と共に作った握り飯とお茶の入った小さめのペットボトルを一人一人に渡していく。握り飯の数は一人四個だ。
明石「あー結構キズ出来ちゃってますね~。提督ー、アレくださいー!」
芙二「はいよー。ほれ、明石。艤装終わったら、みんなに飴ちゃんを一個ずつあげて」
明石「分かりましたっ!」
芙二から艤装を直すための道具と小さな飴と化した高速修復材。バケツの中身が飴となったがそれはまだ開発段階にあり効果はあまりない。高速修復材の本体を利用したものは完璧に直るが、飴の状態だとせいぜい中破だと小破未満に。小破だと無傷の状態に戻るだけだ。
辺り一面を見渡しながら、ふぅ、と小さな溜息を吐いたのも束の間。
ビーッ ビーッ ビーッ
船内から三回、警報音が鳴る。この音が鳴るということは近くに深海棲艦が出現したか、こちらに向かってきている個体がいるということだ。
芙二「……ふむ。明石! 全員分の修復はまだかかるか!」
明石「は、はい! まだかかります! あと五……いや八分はかかります!」
芙二「なるほど。次に神威と速吸! 全員分に握り飯を配り、補給を終えたか!」
速吸「はっはい……速吸、皆さんの艤装に補給をし終えました!」
神威「神威も同じく、です! 皆さんに配り終えましたっ。芙二提督、どうされまし……た」
芙二「運悪く深海棲艦が近くに出現したらしい、このままではまた傷つきかねない。だから
瑞鶴「な、なによ!急に大声で呼ばないで!」
芙二「あとで吾の説明と口封じを任せた! 直に吾の実力を知っているだろう? 吾が説明するよりもずっと早い! これより来たりし、敵を穿つ!」
ぽかんとする速吸、神威。芙二の恐ろしさを知る艦娘は顔を青くしていた。特に
速吸「えっ!? う、潮さん!! どうかしたんですか?」
潮「あぁ……あの盾はいやだ、あの盾は……!」
涼月「芙二提督殿、私たちも対空射撃した方がいいですか?」
芙二「うーん、気持ちだけ貰っとく。深海神姫の寵愛と空間干渉を並行利用……んー、俺を中心とした半径五百メートルにいる深海棲艦の姿を全て表示っと。ぅわ!?」
すると、青かったスクリーンにぶわっと赤い点が脳内に表示される。その数はとても多く、瞬く間に全て赤一色で埋め尽くされてしまった。その数に思わず、笑ってしまう。
その笑い声を聞いた艦娘全員の視線が刺さる。なにをこのヒトは笑うのだろうか、そう表情に書いてある者もいた。
芙二「いやー、失礼、失礼。あまりにも数が多くて笑ってしまった。これは……」
吹雪「どのくらいの数なんですか?」
芙二「んー、分からないけど少なくとも千、いや千五百かな? 空を含む上には四百、下には千近くいるよ。こりゃ骨が折れるよー。向こうもオーバーキルもいいところだよ、ホント!」
神威「あ、あのっ話しててもいいんですか!? そ、そんな数、私たちでは捌き切れないですって!!」
芙二「焦る気持ちは分かる。まぁ実際凄い数だし。そこで吾の出番ってわけ。あ、不壊状態を付与しておくね。これで当面は沈むことはないよ。それが死を指す意味なら猶更!」
長門「それでは我々は握り飯のお代わりでもしてようではないか。提督、船の中に残りはあるか?」
芙二「あるとも。そうそう、気が抜けないのが戦いだけど今は休憩時間なんだし。だから少しだけ休憩しててよ。観戦するに値するかと言われたら、個人的にはあまり。まぁ娯楽がないところだから最悪船の中で寝ててもいいよ」
呑気にお代わりを要求する長門にみな驚く。芙二は『魔竜騎装』と唱えると漆黒の騎士鎧を纏う。背には巨大な刺々した鎌を携えていた。突然の早着替えに皆、声を上げるタイミングを逃す。目を見開き、口をぽかんと開けていた。
芙二「それじゃ、ちょっくら行ってくる。殲滅する頃には……ボスだけになってるだろうな。でも警戒は怠るなよ。深海海月姫のみなんて絶対にないからな」
ヘルムから赤い光がぼぅっと光ったように見えた。
そして芙二は深海棲艦の元へと向かった。
彼が行ったあとの艦隊の空気は何とも言えないくらいのものだった。
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芙二「あ~~やっと殺せる。千を超える数で遊べるなんて、北第八でやり損なったことができるじゃん!」
などと言いながら、深海棲艦の艦隊の中へ突っ込む。最初に遭遇したのは空母棲鬼と空母水鬼が率いる連合艦隊で数は百七十五隻とかなり大型の艦隊だ。
鎧を着た人物に注意せよ、と言われていたので視界に入る前も後も警戒し、注意していた。
相手が人語を介す化け物でもそうでなくても空母棲鬼たちには関係がなかった。
だから砲撃を許可し、弾を浴びせようとしたときだ。急に身体が、指が、声が出せない状態になった。こんなことは初めてだった。喉に力を入れようとしても全く声は出ない。それは空母水鬼もヲ級もタ級も、みんな同じ事だった。
芙二「ブレイン・ジャック」
鎧を着た人物から何かくぐもった言葉が聞こえた。動けず、敵に隙を与えている状態に空母水鬼はひどく不快な気持ちになった。
芙二「動けないよね。どう?魂を縛られてる感覚は……ほんとはそのまま喰らってもいいんだけどね。前に出来なかったことをやってのけようかと思ってね」
目と鼻の先で何やら話しかけられているが言い返すことも表情を変える事すらできない。
黒く刺々しいヘルムの中にいる人物の表情はどんなものか、と思っている反面、自分達はとんでもないものを敵に回したのではないかと恐怖しだしている。
芙二「で、まぁうん。これからだけどー君たち、百七十五隻もいるんだね。それはそれで……面白そうだ」
くくく、と自分達を笑う幻聴がこの人物から聞こえてきた。
そこまで精神がやられた、のかと。この短時間で寿命が縮まった気がする。
チャプン、チャプンと水上を歩く音が遠ざかって行く。脅威は去ったのかと思った矢先だった。
ドシュウゥゥゥゥゥゥゥウ!! ドガァァァァァン!!!!
空母水鬼の後方からそんな音が聞こえてきた。あの鎧が何かしたのかと思って再び前を向くがそこにはもう誰もいない。
すぐまた大きな爆発音が聞こえ、熱を持った強風がうなじを撫でる。
場所へ向かうと何かがパチパチと音を立てて燃えていた。
タ級「ッ! アァァ……艦娘ジャナイ?! 何故、私ハ仲間ヲ撃ッタ?!」
そこには仲間から距離を置かれて茫然としているタ級がいた。
空母水鬼が話しかけても『アレハ艦娘、艦娘ダ』と繰り返すばかりで応答しない。
『一体、何ガッ! 起キテイルノダァ!』
そう叫ぶも直後、あちらこちらで爆発と悲鳴が聞こえる。仲間内でなにやら争っているのは見えたがどうして争うのかが理解できない。そこに空母棲鬼が入ってきて「絶対ニ鎧ヤロウノ所為ダ! 二人デ統制ヲ――」と言ったとき彼女に向かって集中砲火を浴びせられた。
『ナァッ!? 空母棲鬼! オ、己ェ!! 貴様ラ自分達ノ上司ヲ撃ツトハ何事ダ――』
そう怒りの声をした時、
姫級と鬼級の断末魔を聞き終えるとキープしていた十隻の深海棲艦の肉体から黒い光を放つソフトボールくらいの大きさの核……即ち魂を取り出して砕く。砕かれた深海棲艦は力なく倒れ、沈み始めた。
芙二「あーあ、一個砕いちまった。そのまま黄昏の欠片に吸い込ませとけば、多少はよかったか?まぁいいか、こいつらを使って残りを共食いさせるか!」
沈みかける深海棲艦に不壊状態を付与し、更に【マッド・マリオネット】と呟く。
倒れていた死体に生命が宿ったかのように動き、ピンと直立し姿勢を正す。ほうほうと興味深そうに頷き、試しにル級の顎を持ち目を見る。
芙二「うーん、目が死んでるか」
と言いながら空いている手で胸をもむ。死後間もないが、こうして関節が動くのだからと思っていたが死後硬直は始まっているようで柔らかくもどこか硬いそんな感触だった。
芙二「吾はネクロマンサーじゃないからなぁ……あぁ向こう帰ったら本格的に冒険者になるか……っとそうじゃない。おまえ達にに命令を出す。一応、頭の中のデータを渡すからそれを元にして殲滅させろ。付与しているし、箍も外しているから無問題か?」
一瞬考える素振りを見せるも、何事もなかったかのように深海棲艦の傀儡に「行け」と一言。
各々の考えで動き始めるが出力された力が大きい為か、豪快に水飛沫を上げて去った。
芙二「んー、ついでに新スキルのお披露目をしたかったけど無理っぽいし。あ、あの十隻を対象として行えばいいか?」
と考えていると、背後や左右から爆発音が木霊し始めた。
こりゃ、すぐに終わりそうだなと思い、長門達がいるところまで歩いて向かった。
【魔竜騎装】を解除し、元の格好へ戻った芙二が戻ると心配そうな顔をした長門達と瑞鶴達に声を掛けられた。中には鎧姿を見ただけで卒倒する者、興味深そうに頭からつま先まで眺めている者もいた。
芙二「とりあえず終わったよ。吾が試したいことは一回しか出来なかったけど、まぁいいか」
川内「提督が試したい事ってなに?」
芙二「一言で完結させると同士討ち。もっというと共食いをさせたよ」
瑞鶴「うわ、中々えげつないことをしますね……私たちが対象でしたら壊滅は避けられないでしょうし」
芙二「そうかもな? もう一度謀反を起こすか? 瑞鶴、吹雪、涼月、潮?」
んん?と言いなが目を細め嗤う。名を呼ばれた中でも涼月以外の表情は凍っていた。目を背けたかったが背けた瞬間「そうか、キミらはまだ可能性を探っていたのか」と首元に氷を当てられそうと思った。
恐怖ゆえに本人を凝視する。そんなとき、涼月が否定の旨を口にする。芙二は「そうか、まぁしない方が得策だな」と頷き明石たちの元へ向かった。
芙二「明石、全員分の修理は終わったか?」
明石「はい。終わりましたので、いつでも泊地へ帰還できます」
芙二「そうか。ではあと少ししたら吾らは帰還しよう。速吸と神威は東第三鎮守府へ送り届けよう」
速吸「え!? あ、はい。分かりました。芙二提督殿」
神威「そのぅ……芙二提督殿のお姿が変わったのって」
芙二「それは東第三鎮守府の面々……いや神城提督殿に
そういうとちらりと瑞鶴の方を見る。芙二と目が合い、目を丸くしながら固まっていた。潮の顔色が悪く、吹雪が声をかけていた。その様子を見ていた当時、あの場に居た東第一泊地の面々は懐かしそうに頷いていた。
芙二「ということで吾らはお暇――――
『え?! こちらに向かって来る敵性個体が十隻!! 全員、砲を構えて!』
っあー、もう帰ってきたのか? 予想よりも随分早かったな」
蒼龍「え、芙二提督殿、今なんと?」
曙「そうよ! 提督は余裕なのかもしれないけど、このまま会敵したらっ」
芙二「被弾して、か。吾がいる間は不壊状態だから大丈夫だけど、いなくなったら応急女神のように変化する筈だ」
霞「応急、女神?」
芙二「聞いたことないって顔だな、おい。あー、要はダメコンだ。ダメコン。その艦隊に大破がいなかったら発動するみたいな応急処置だ。うろ覚えだから、大淀とか冷葉に聞いてくれ。沈むほどの一撃を受けたとき、その女神さまが一度だけ助けてくれんのさ。しかも負傷の傷まで癒してくれる」
霞の問いに芙二が答えながら、向かい来る敵性個体の情報を思い出していた。みんな、そんなアイテムがあったのかと見合わせて話しているなか、芙二たちの元に青葉の言う敵性個体が出現した。
ガコン ジャキ
十隻の深海棲艦を前に連合艦隊、支援艦隊は皆、いつでも攻撃が出来るようにした。しかしいつまで経っても動かないそれに不気味だと思い、旗艦の長門は艤装を展開したまま一隻の個体に近づこうとした。
そのとき、芙二が待ったをかける。
芙二「長門、お前の読みは正しい。俺が、ちょいと細工をしたまでだ。……さてとりあえず終わりにしよう。おまえ達、ご苦労であった」
長門が理由を問おうとした時、芙二は『ブレイン・イーター』と呟くと長門の目の前の一隻を除く全員の首から上が破裂して倒れるとき魂も回収してそのままにした。
急な出来事で悲鳴を上げ忘れた面々も芙二の非道な行いも目を疑っていた。そんな中でも本人は気にしない素振りで長門の前にいる個体に目をやっていた。
芙二「っと、一隻だけ残ったな? 技の不発は初めてだが……待てよ? 深海棲艦だけに絞って行ったが、それに該当しないというと一つだな」
叢雲「司令官、それって……」
もしかしなくてもそうだな、と一言呟くとその個体が光り出した。カッとまるで爆発寸前のように小さな光をいくつも作り出していた。次に何が起こるか理解していない者は先ほどの非道な芙二の行いが今更起きたのかと思い、咄嗟にしゃがみ込んでいた。
『夕雲型駆逐艦四番艦、長波サマだよ!さーいくぜ、オーッ!』
と元気な掛け声と共に一隻の駆逐艦娘が現れたのだった。
芙二は意外そうに頷き、ドロップ艦というのを目の当たりにした艦娘は驚いていた。深海棲艦から自分達の仲間が出てくるなんて信じられないという風に見えた。
いや長門もそうでしょ、などと思ったが口には出さないようにしていた。
爆発が来ると思ってしゃがみ込んだ者たちは光が収まっても何もないのでゆっくりと周囲をしながら立ち上がる。
瑞鳳「あ、あれ爆発は……?」
速吸「なんともないようですけど……あれ? 長波さん?」
長波「うぇ!? な、なんでアタシの名前知って……いやさっき自己紹介したな? でもアタシを知ってる風だけど、だれ?」
瑞鳳の発言で長波が驚くも変に納得していた。
首を傾げている長波と長門たちの間に微妙な空気が流れてきたので、芙二が明石たちに[帰還しよう」と伝えたことで微妙な空気はなくなった。
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芙二たち補給班がドロップ艦の長波を連れて帰った矢先、一際違う雰囲気が立ち込め始めた。
一同、雰囲気のする方に目をやるとそこには深海海月姫が立っていた。
表情はニコニコと余裕そうではなく、眉間に皺を寄せてとても苛立っていた。長門たちを見つけると何か呟きながら白いクラゲのような護衛要塞を八機出現させ、うち四機からは飛び魚に似た艦載機が数機放ってきた。
長門「全員、構っ
『長門さん、私たちが勝手に動くことをお許しください』
なにっ!」
吹雪、潮が深海海月姫が繰り出した艦載機をほとんど撃ち落とした。撃ち漏らした艦載機は涼月が落とし、不意打ちは完全に無駄となった。
『チィッ! 貴様ラモ、アノ可笑シナ人間ノ仲間ダロウ!?
深海海月姫の頭部装甲から何か発せられたらしい。彼女の背後の水面がざわざわと慌ただしく音を立て始める。そして出現したのは戦艦棲鬼と装甲空母姫の鬼と姫の二隻。それが従える二十二隻の深海棲艦だ。
『遊ンデアゲル♪』
『エェ……イヤナンダケド? アンタダケデ、遊ンデヨ!!』
『マタ喧嘩スルカ? 困ッタラ、アノ方ニ縋る事シカ出来ない暴力女ァ!』
『アァ!? 上等ヨ、外面女!! ット、新人ニ呼バレテ来テミレバ……コレハ大所帯ダナ?』
『ソウダナ。コイツラガ居タラ、オイオイ喧嘩モ出来ナイダロウ。深海海月姫ェ! ゴミノ最終処理ハ任セタ! 時間ガ惜シイ。始メヨウカ?』
急に口喧嘩を始めた二人だが、落ち着いたのかこちらを見て目つきを変えた。深海海月姫のことを新人と言ってる辺りこの二隻はずっと居たのだろうと一同思った。それと同時に強敵とも。
『キャハハッ! ジャア、始メヨウカァッ!!』
『意外カモ知レナイガ、私ハコッチガ専門ナンダナ。撃ツヨリモ穿ツ! 撃ツシカ能ノネエ艦娘ナンザ、拳一ツデ十分!!』
そうは言っても犬猿の仲に見える二隻は奥へ引き下がり、残る二十二隻が前へ出てきた。
全員がエリートクラス以上の眼光を放っていた。その中でも数隻は黄色の瞳の中に青色が混じってより強い個体だと瞬時に理解した。
自分達よりも格上の相手と対峙して長門は覚悟を決めた。ただならぬ様子に陸奥が声を掛けようとするも長門は被せるように叫んだ。
長門「ならば、提督から貰ったものをここで砕くまで!!」
手には赤い玉が握られており、それを砕いた。その瞬間、長門からは眩い光が溢れその場の全員を覆った。長門以外の全員が条件反射で顔を覆った。一撃を与える隙だったのかもしれないが、それは叶わなかった。
光が収まる頃には、長門の姿は改二へと変化していた。まだ改である陸奥は驚いていた。姿の変わった姉からはとても強い力が放たれていた。それとは打って変わってとても辛そうな表情だったからだ。
長門「艦隊、全員――――戦闘開始だ!!
(クッ! この状態はキツい……全身が締め付けられる感覚だ。気を抜くと頭が割れるほどっ)」
鬼気迫る表情で合図をしだすとまた戦いが始まった。
状況は拮抗していた。だが、こちらが被弾し、戦力が落ちているのを見るとやはり相手の方が練度が高い。駆逐、補給艦には攻撃は通るも空母や戦艦級はほとんどダメージを折っていない。
そこで長門はある手段を思い出した。もしも、を話した陸奥に目で合図を送る。瞬時に陸奥は理解した。長門は【一斉射】を撃つようだ。それは数回しか打てない必殺技のようなもの。
しかも一度撃てば、しばらくは使えなくなる。使用した本人の弾薬と燃料を多く消費するからだ。芙二からはまだ試作段階だから、と言われいたが長門は頷いていた。本当の決戦前だが、それも覚悟の上なのだろうと陸奥は理解した。
陸奥「いいわ、長門。あなたの覚悟、受け取ったわ」
長門「あぁ陸奥よ、頼んだぞ」
一言ずつの会話を終え、砲を敵先に向ける。瑞鶴達も支援してくれている、だから撃てるのだ。あの舐め腐った姫と鬼に目に物を見せてやろう。最後には深海海月姫も――――
長門「陸奥よッ! この長門に続けッ! 狙いは
そのとき、長門の声は戦場の中で一番大きく響いた。
砲撃の音も波の音、艦載機の降らす爆弾、爆発する音を差し引いて。
装甲空母姫と戦艦棲鬼直属の深海棲艦は目の前の一隻に釘付けになる。それは初めて生命の力強い叫びを聞いたからだ。最初の数発で何隻かが中破もしくは大破する。
仲間の悲鳴を聞いてハッと思い直してももう遅い。
現世を生きる長門の意思は死の者として語られる深海棲艦を魅了しているのだ。その救いのような
『……』
喜んだようにすっと手を差し出して一撃を受け、大爆発を引き起こした。一隻が燃え上がると他の負傷していた個体も巻き込み連鎖が起こる。瑞鶴は目の前の光景に息を呑む。
かつての自分達ならいざ知らず、今では全く皹を入れる事すらできなかったのに。
長門は無茶をして負かしたのだと思うと改めてあの怪物が指揮を執る泊地の艦娘は自分達とはまったくの別物だと思った。
長門「ぐぅっ! がぁぁっぁあ!! はぁっ、はぁっ……限、界だ」
苦悶に満ちた声を上げて、その場にしゃがみ込む長門。傍に駆け寄る陸奥。東第一泊地の仲間は周囲を警戒しつつ、声を掛け始める。自分達もそこへ行こうとした時、パチパチと拍手の音が聞こえた。
瑞鶴「ッ!! ま、まさか」
『ソノマサカ♪ イヤー、部下ガ全員ヤラレルトハ……思ワナカッタワ、コレ』
『ソウソウ! アノ長門ハ、ドウ見テモ……ネェ??』
クスクスと笑う戦艦棲鬼と装甲空母姫がニコニコしながら出現したのだった。
疲労困憊の長門の目にまた戦意が宿る。
撃ててあと二発程度の力を使おうとしていたのだった。
次が最後(予定)です。大晦日前に一本投稿したいなぁ…