とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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綺麗に終わらんかった。今年ももう終わりますね。


三章 30話『(かそけ)し光芒』

 

 一時的に改二となった長門が陸奥と繰り放った一撃で鬼と姫の部下は全滅した。しかし、そこへ現れたのは深海海月姫が呼んだ装甲空母姫と戦艦棲鬼の二隻であった。彼女らは既に満身創痍の長門らを見てけらけら、クスクスと笑う。

 

長門「くぅ……! それでそのままやられに来たのか? そんなわけはないよな?」

 

陸奥「長門! 今は安静にしてっ!」

 

 ぎりぃと歯を食いしばって装甲空母姫と戦艦棲鬼を睨む長門。左手には徹甲弾が握られており、相手の返答を待たずに準備しようとしていた。

 

『マァ待テ、死ニ急グ必要ハナイ。ソウイエバ、アレガ居ナイガ今ハ留守カ?』

 

『モゥ!アレナンテ略シ方デ伝ワルワケナイジャナイ! 確か……フジ?ダッケ。貴様タチヲ指揮スル人間。一目、見テミタイケド……留守ノヨウ』

 

 戦艦棲鬼が徹甲弾を装填しそうな長門を制す。ついでに芙二について聞こうとするも装甲空母姫が訂正して長門らに聞いた。

 

『ダンマリ、カ。ココハ取リ敢エズ貴様ラヲ嬲リ殺ス! トカ言ッテ全員殺シタラ来ソウカ?』

 

『サァネ。ソノ時ハ凄イ剣幕デ来ソウ。私タチ、アノ新人ニ貸シガアッタカラ来タケド……殆ド戦力ヲ削ッタモンミタイダシ……帰ロウカシラ?』

 

『オッソウダナ! ココニハアノ人間ガイナイ。帰ッタラ鍛錬ダ。付キ合エヨ、装甲空母姫』

 

『イヤヨ。今日ハ統括会議ガアルッテ言ッタデショ。ソレジャア――――』

 

 そう言って鬼と姫が帰ろうとした時だった。後ろを向いたまま、装甲空母姫が低く冷たい声で「ソコノ艦娘!」と誰かを指した。続けて「ツインテールノ貴女ヨ。白交ジリダケド……ウチニ来ナイ?片割レモ見ツカルワヨ」と言ったが瑞鶴は速攻拒否を示した。

 

『アラ残念……? オイ、艦娘ドモ! 上ヲ警戒シロ!!』

 

『チィッ! アノ新人!! 私タチ事沈メル気カァ!!!!』

 

 瑞鶴の言葉を聞いて少し残念そうにしたのも束の間、装甲空母姫が上を見上げて怒鳴るように叫んだ。彼女には何かが見えたらしい。戦艦棲鬼も装甲空母姫が見つけたモノを見たそうで悪態をつきながら砲が合体した篭手を取りだした。

 

夕立「なにが起きているっぽい?!」

赤城「長門さん! 正面 三百の方から無数の艦載機が向かってきます! 対空射撃をッ!!」

 

長門「あぁ。全員、赤城の指示に従え! 無理そうだったら回避に徹しろ! 瑞鶴達も対空射撃を!」

瑞鶴「言われなくッとも! 艦載機発艦!」

 

瑞鳳「瑞鳳の航空隊……敵艦載機を捕捉! これから迎撃に入ります!!」

サラ「私たちは長門さんたちを送り届ける義務があるのですから……」

 

涼月「吹雪さん、潮さん。私たちもやりましょう」

 

吹雪「はい、涼月さん。練度の違いを見せてあげます」

潮「久しぶりだけど……やってみせます!」

 

 各々が向かい来る艦載機を落とさんばかりに気をつかう。自分達の周りを囲まれかけているのに気がついていない。数秒後、弾を撃つ音、迎撃する音、爆発し水飛沫とが合い混ぜになり無線機を介さないと伝わらないほどになっていた。

 

瑞鶴「くぅ! 艦載機の数が多い!!」

蒼龍「瑞鶴さん! そっちは危ないです!」

 

 数に押されていたとき、それは起こる。瑞鶴の死角から敵艦載機の爆弾が落ちてきた。それを蒼龍が庇い……被弾してしまった。しかしそれすら周りには聞こえず、掻き消えた。

 

 蒼龍の艤装からはメラメラと炎と黒煙が上がり、戦えなくなった。瑞鶴側に空きが生まれ、そこを重点的に攻めら始めた。艦載機の爆弾がいくつも降っては海上を揺らし、恐怖を与えた。

 

瑞鶴(このままだと私も被弾してしちゃう、でも……)

蒼龍「ず、瑞鶴ちゃん。よく聞いて」

 

瑞鶴「蒼龍さん、あまり喋らないで! 今にも……!」

 

 二の句は繋げない。蒼龍の顔色はとても悪く、出血しているのか色が白い。沈みそうなほどの損傷を受け、今にも命の灯が消えそうだった。ハァ、ハァと苦しそうな息遣いが聞こえてくる。

 

 意を決しここで撤退をしようと、口にしたときだ。

 

蒼龍「実はね……瑞鶴ちゃんが怖かったの。あの時、翔鶴さんを守れなくて」

 

 ゴホっと吐血する。抱えていた瑞鶴の服に血がつく。撤退のタイミングは今しかない、と無線機向かって声を荒げた。そんな中でも蒼龍は瑞鶴について本人が感じていたことを話していた。

 

蒼龍「だから、深海化しつつある涼月ちゃんに撃たれて死にかけたとき提督は泣き叫んでくれたけど……それが報いで受ける罰だと感じたの」

 

瑞鶴「もういい、もういいからっ! 喋らないで! 愚痴なら、後で聞いてあげるからっ!」

 

 涙声で訴える瑞鶴。戦場にいるせいですぐ隣にいる瑞鶴の声が聞こえていないのか蒼龍は二の句を繋げて、ゆっくりと話そうとした時。

 

 一個の爆弾が落ちてきた。それは瑞鶴に直撃し、二人を後方へ飛ばした。

 

 

 

 

瑞鶴「……っぅ……」

 

 うっすらと目を開けて周囲を確認する。傍には蒼龍はおらず自分のみとなっていた。艤装は燃え、全身はひどく痛むせいで立ち上がるのもやっとだ。

 

瑞鶴「そう、りゅうさん……蒼龍さんは!」

 

 足がいうことをきいてくれず、ガクガクと揺れながらもゆっくりと歩いた。空は赤くなり、周囲からは轟音が聞こえてくる中でも不思議と精神的冷静に探し出せていた。

 

 一応、もう一度撤退命令を下そうとしたときだ。「瑞鶴さん! その怪我は……」と東第一の霞に声を掛けられた。思っていたよりも酷い印象を与えたのだろう、と瑞鶴は思った。声を掛けた彼女もまた被弾したのか、傷を負っており額から血が出ていた。

 

瑞鶴「蒼龍さんは…あの人を今見失ったら、後悔するっ」

 

霞「今旗艦の長門さんが深海海月姫との戦闘に移行しています。大鳳さんたち本営の支援艦隊が間に合って他の方々も司令官の待つ待機所へ向かっているとのこと。なので――」

 

 ボロボロと涙を流す瑞鶴を見て、霞は生存について絶望的だろうと口にせず、今の状況を伝える。また速吸たちを送ってきた芙二が水上で停泊しており、吹雪たちも向かっていると伝えた。

 

霞「途中まで、送ります。その後はすぐに私は戻りますので。司令官と妖精さんの指示に従ってください」

 

 そこまでいうと瑞鶴は肩を借りて、ゆっくりと戦場から離れた。自分が居た所は中心から大分離れていたのか、意識を失う少し前までは大きな音が気が付けばとても小さな音に変わっていた。

 

 

 

 芙二が停泊させている船が目の前に見えてきた。深海海月姫が出現しているのに、海はとても穏やかで自分達が先ほどまでいた所とは天と地の差があった。

 

霞「司令官! 霞よ。大破している瑞鶴さんを連れてきたわ。中に入るけどいいわよね?」

 

 デッキの方を向いて話している。瑞鶴は霞む眼を凝らしてみるが、そこには芙二の姿はなかった。また妙ちきりんな術を用いてるのではと考え、さほど気にしなかった。それよりも全身に鉛を括りつけられたかのように重いと感じていた。頭もズキズキと痛み、息苦しさも感じていた。

 

霞「勝手に入れって、もっと言い方があるでしょ!」

 

瑞鶴「ぅ……ぐ」

 

 目の前が滲むように歪み、瞼がゆっくりと閉じた。その瞬間霞の肩を借りてなんとか立っていた瑞鶴だが、全身の力が抜けて前のめりに倒れた。

 

霞「瑞鶴さん!? し、司令官! 大変、瑞鶴さんが――

 

『あぁ分かってる!』」

 

 音に気がついた霞が倒れたまま動かなくなった瑞鶴を見て悲鳴を上げた瞬間、血相を変えた芙二が現れた。すぐに抱えて、容態を診るも意識を失っただけのようで安堵の息を漏らした。

 

芙二「損傷が酷いな。船内で傷は治しておくが、本人を起こさない方がいい。霞は戦場に戻って合流してくれ。撃破後の仕事はしっかりこなすからサラを任せたぞ」

 

霞「えぇ司令官も心労で倒れないようにね」

 

 会話を終え、瑞鶴を送り届けた霞は長門たちの元へ戻った。芙二はデッキへ上がり船内にある一室へ入り、そこに瑞鶴を寝かせた。そこには吹雪や潮、涼月、サラトガがおり瑞鶴を見るや否や駆け寄ってきたが「安静にさせてやってくれ」の一言を告げるだけだった。

 

 彼女が寝ている隣のベッドには蒼龍の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 長門らは苦戦を強いられていた。相手は深海海月姫のみではない。姫を護るように護衛要塞が四機漂っており、弾同士を相殺したりこちらの艦載機を落としてくる始末だ。

 

長門「くそ、キリがないな……全員、後何発くらいあるか把握しているか!!」

 

陸奥「私はあと十発……右のリ級を撃つ! 

 

 ドォン!

 

 ……九発かしら?」

 

赤城「私はまだまだ艦載機を繰り出せるのですがっあの、護衛要塞が邪魔過ぎて本体を叩けないですねっ」

夕立「夕立は魚雷だけっぽい!」

 

叢雲「私は……いや夕立と同じく魚雷だけね」

 

曙「まだ弾も魚雷もあるわ! でも小鬼群の数が多くって……キャアァァ!! 痛つつ……こちら曙、中破したわ。まだやれる、喉元へ食らいついてやるわ!」

 

 きゃはは、クスクスと笑うPT小鬼群。その小さな体躯でうろちょろと動き回るせいでまともに攻撃が当たらない。下手に動くとこちらが被弾してしまう状況になっていた。

 

ヴェル「逃がさないよ」

 

『ぴきゅ!?』

『キュキュッ!?』

 

青葉「ナイス、ヴェールヌイさん! 曙さんの仇は取りましたね?」

曙「ちょ、ちょっとアタシはまだ死んでないって!」

 

 なんて会話をしている青葉と曙。ヴェルが機銃を構えて、次々に的確に撃ち落としていく。小さな爆発がいくつも起こり燃えていく。

 

川内「敵機の残数、二十一! 長門さん、まだ追い詰められている訳じゃない! 反撃はこれからっ!」

 

神通「川内姉さんの言う通りです。むしろ向こうは追い詰められている。このまま行けば確実に倒せます……川内姉さん、向こうのタ級を頂きます」

 

 川内と神通が長門の問いに答えつつも、各々で動く。第二艦隊は大丈夫か、と思った矢先

 

赤城「長門さん! 護衛要塞の様子がおかしいです! 二機が震えて……こちらに向かって来る!! それと複数の艦載機も!」

 

長門「全員、対空射撃を! 震えてる二機には特に注視しろ!」

 

『こちら、大鳳。分断した敵をすべて撃滅しました。すぐに合流を……』

『大鳳さん! あの護衛要塞、自爆特攻しに来てますって! 秋月、磯風! 私と共に対空射撃を行え!』

 

 長門が持つ無線機の向こうから、そんな声が聞こえた。護衛要塞と共に来る艦載機の高度が低いのは自爆特攻で巻き添えにするつもりで諸共という腹積もりらしい。

 

 

『数機、逃した!』『まずい!!』『回避しろ! 護衛要塞が光っ――――』

 

 

 再び無線機そんな言葉が聞こえてきたと思えば、自分達の上がカッと眩い光に押しつぶされた。反射的に身を低くできたのはほんの数名で連合艦隊と大鳳たち支援艦隊の半数以上は声を出すことが出来ず、猛烈な熱風、肌を焦がす炎によって中破以上の損傷を受けた。

 

 

長門「ぐっ……む、陸奥よ。まだいけそう、か?」

陸奥「な、何とか。砲門がどろどろに溶けてる……艦娘じゃなかったらきっと即死だと思うわ」

 

曙「赤城さん! 返事をしてください!」

 

叢雲「曙! 曙ったら! そうよ、そう。まずは落ち着いて、まだ息はあるわ。でも、この火傷は……不味いかもしれないわね」

 

 赤城が気を失っているらしい。あの爆発を諸に受けたのだろう。飛行甲板が一部焼け熔け、手や腕、足に酷い火傷を負っている。取り乱す曙を叢雲が落ち着かせていた。それと同時に第二艦隊にいるヴェルへ無線機を介して連絡するが反応はない。

 

青葉「ども、青葉です。私と霞さん以外、全員大破で戦闘が行えません。……司令官の施してくれたものがなかったらきっと沈んでいました」

 

叢雲「青葉さんの損傷はどの程度?」

 

青葉「私の損傷は小破です。ついでに霞さんもですが、次が来たらきっとみんな耐えられないです」

 

叢雲「そう。深海海月姫はどうなっているか分かる?」

 

青葉「さっきのが全力攻撃だったと思います。あれの周りには二隻の護衛要塞しかいないようですし。でも――――」

 

『なるほどな。ならば、今が攻め時か。撃てる状態で良かった。二発。二発で護衛要塞を壊しつつ、ダメージを与える。ただ一回撃った後に、少し間が空く。だから攻撃させる隙を与えないでくれ』

 

 叢雲と青葉の会話を聞いていたのか、長門が入ってきて意見を述べた。この状況で長門に待て、だなんていう艦娘はいないだろう。

 

 次、攻撃されたら確実に死ぬ。支援艦隊の状況は全員小破で動ける状態らしい。なので、青葉と霞以外の第二艦隊の面々を芙二の元へ送ろうと決めた。

 

『アァァアア……ナンデ生キテイル!? アレダケノ爆発、アレダケノ炎ヲ受ケテドウシテ立ツ!』

 

『防御ヲ捨テテ、確実ニ奪ウ!! ツギハギ ブッサイクナ玩具ニシテヤルヨ!!』

 

 渾身の一撃を放った深海海月姫は予想以上にしぶとい長門たちを見て、苛立ったように声を上げる。一応のためと残しておいた護衛要塞をも突撃し、目の前で爆発させようと思い始めた。

 

 ヒステリックに叫ぶ深海海月姫を尻目に長門は指示を出す。撃ち込めるように、負傷者を提督の元へ送り届けろと。ついたら提督の指示に従ってくれと。

 

 

川内「いてて。青葉ちゃん、長門さんと共に勝利を……サラトガさんをお願いね」

 

青葉「! は、はい。分かりました。鳥海さん。川内さんたちをお願いします」

 

 こくりと頷き、戦場を離れていった。しかしまだ深海海月姫は諦めていないようで動き始めていた。

 

青葉「霞さん! 念のため鳥海さんたちのサポートをお願いします。霞さんが先導になってくれたら迷子にならないと思うので。空きはちゃんと私が入って尽力するのでご心配なく」

 

霞「……分かったわ。長門さんに伝えといて」

 

青葉「はい! ではあとでまた泊地で。サラトガさんと一緒に!」

 

 霞が抜けたあとに一人近づいてくる。それは大鳳だ。

 

青葉「あれ、大鳳さん!? 皆さんと司令官のいる場所へ向かったはずですが……」

 

大鳳「いえ、私も残って戦います。そうではないと意味がありませんので。彼女にもう少しだけ寄り添えたら……抑えられたかもしれないですし」

 

青葉「それじゃあ赤城さんは誰が?」

 

大鳳「摩耶さんに抱えて行ってもらってます。彼女、ああ見えて結構力持ちなんですよ。と、そうではありませんでしたね」

 

 はっとして手で口を覆う。すぐに話題を戻して話を続けた。

 

大鳳「私もあと二十機ほどなら出撃させられます。

 なので隙を与えたり作ったりは出来ると思います。

 

 ドォン! ドォン! ドォン! ドォン!

 

 

 きゃっ! もう始まったようなので、会話はここまでにして、と」

 

 最終攻撃が始まったようだ。駆逐艦や長門たちの砲撃音が聞こえ、少し遠くで深海海月姫の悲鳴が聞こえてきた。会話を終えると、すぅと一呼吸した大鳳の目つきが変わる。

 

 覇気を飛ばしている、そんな印象を与えた。身体がキラキラと輝き、飛行甲板に数機の艦載機がセットされ始めていた。それでは、と一つ置いたあと放たれた大鳳の声は青葉の記憶に残るものだった。

 

 

 

 

 

 

 一斉射の一発目を放つ。ビキビキと身体にひびが入るような痛みに襲われる。意識が朦朧としかける。途切れそうなとき、深海海月姫の悲鳴が聞こえ戦場に戻された。それで知った。一撃目は成功したのだと。しかし肝心の護衛要塞は堕とせずにいた。

 

長門(不味い……今のでひびが入ったか? 脳内麻薬のおかげでまだ何ともないが、切れたら死ぬかもしれんな)

 

 ふと、自身の提督を思い浮かべる。すると人相の悪そうな顔で励まされそうだ。死んでも、無理矢理蘇生されそうな気すらする。それに――と少し後ろにいる妹を見る。

 

長門(こうやって出会えたのも何かの、縁か。こうして、任されて戦えるということに感謝しないとな)

 

 次弾を装填し始めたとき、胸の中でバキンと何かが砕けた。それに長門は気が付かなかった。

 

 

長門「全員、あともう少しだけ時間をくれ。陸奥よ、準備してくれ。次で最後だ。叢雲達も切れる物はすべて切って奴に攻撃の隙を与えるな!」

 

叢雲「了解! 夕立、曙! 魚雷を全て深海海月姫に向けて撃つわよ! 長門さん! それ外したら、承知しないから!!」

 

 そう言って夕立と曙へ指示を伝え始めた。ブロロロロロと艦載機の音がいくつも重なって聞こえる。赤城は意識不明の重体だ。ならば誰だと誰もが思った。そこへ青葉が登場し「大鳳さんが残って時間を作ってくれてます」と伝えてくれた。

 

 この機を逃しては、大鳳に面目ない。叢雲達に続いて、青葉も雷撃を放った。深海海月姫の元へ行き、大爆発を起こした。これだけの撃たれたのだ、きっとボロボロに違いないと青葉は思ったが想像以上にタフのようで所々損傷が見られても、まだ瞳に光が灯っていた。

 

曙「チィ! 火力が、足りない!!」

叢雲「私の力を……」

 

夕立「叢雲ちゃん、そんなことしたらこの場が混沌とするだけっぽい。だから、止めて」

叢雲「……そうね」

 

 

 そこに大鳳が放った最後の攻撃が加わる。火薬を沢山積んだ護衛要塞の一つを向かわせて、両者の間の上空で爆破させた。熱風は両者の頬を撫でるだけに終わり、深海海月姫がもう一隻を向かわせようとしたとき、長門の最後の一発を撃ち込んだ。

 

 

 相殺を図ろうにも、間に合わない。回避もできず、致命傷は避けられず深海海月姫は撃沈した。断末魔が聞こえることなく荼毘に臥した。

 

 

 

 

 これで深海海月姫との戦いは終わった。

 長門達の勝利である。負傷者は出たが、だれも死なずに終えたのだ。

 

 長門の艤装に入っていた亀裂は大きくなり、やがて砕けた。同時に長門がその場に座り込む。陸奥がフォローに入り、言葉を掛ける。

 

 短く「ありがとう」と返し、妹に身体を預けた。陸奥はなにも言わず、頭を撫でた。そこに叢雲、夕立、曙、青葉、大鳳が加わる。皆一同に、深海海月姫の沈んだ場所を見つめていた。

 

 大鳳は何とも言えない気持ちを抱えていた。そこからすぐに目を離し、空を見つめていた。

 

大鳳(遥か遠い所へ行ってしまった、サラトガさんへ。どうか、安らかにお眠りください)

 

 

 

 

 

 

 しかしこれからである。

 

 死んだものは生き返らないのが、世の理である。艦娘もほとんどが当てはまり、一度沈んだら二度と同じ個体は、同じ人物は目の前に現われない。だが、東第一泊地に着任した男はそれを可能とするのだ。

 

 

 

『提督よ、その力……見せてもらおうか』

 

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