四章で語る芙二君の過去編は次回で一応終わり予定です。
芙二君に関する辻褄を合わすために若干変更しました。大きな変更は死ぬ前は学生だったが、そうではなくなったみたいなものです。学科の有無ともないです。
誕生日会後の暗い表情は祖父の死を思い出しているのかと思っていたが、目を疑う光景がある。正確には六月の某日。学校から帰宅後「ただいまー」と玄関を開けるとこの時間なのに父親がいた。
普段この時間には絶対にいないはずだ。「おかえり、凌也。××や◆◆、▽▽が帰ってきたら書斎へ来なさい。ついでにそう伝えてほしい。頼むよ」そう言い父親はどこかへ行った。
幼い自分は「なんだろう?」と頭に疑問符を浮かべていた。映像を見ている側からだが、今なら分かる。これが現在の自分を作り上げる分岐点なのだろう。
芙二「不気味な笑顔だな。言葉の端々から悪意ではないが、何かやらせようとしている気がする。この先、何が――思い出せん! このまま見ているしかないようだな」
自分の兄、妹たちが帰宅したので言われたことをそのままいう。兄も妹たちも「なんだろう??」という顔をしていたが父の書斎へ連れて行くとそこには父と母がいた。
『おかえり。急に呼んでごめんね。今から大事な話があるの。××と凌也は特に、関係があるからよく聞いてほしい』
『う、うん』
母親の言葉に兄も妹たち、幼い自分も頷いた。そこからの話は長かった。簡単に纏めると「中学受験をしてほしい」という内容だった。中学受験なんて別に特別な事ではない。誰だってやるだろうし、何も不思議でもない。
『だから××と凌也はこれから■◆中学へ入学するために受験勉強を始めよう。友達と遊べなくなるかもしれないが、中学受験というのは大事なことなんだ。いいね?』
兄も妹たちも頷くが、幼い自分は嫌そうな表情をしていた。すぐに返事がないのが、気に食わないのか父親が立ち上がり映像の中の自分の元へと進み肩を掴んだ。
『返事をしなさい。これは重要なことなんだ。遊ぶのは大人になってからでもできる。分かったか?』
『……う、うん』
父親の声は低く、威圧するようであった。そのため怒られたくないと思ったのか、沈黙のあと頷いていた。両親は××と自分に過度な期待をしているかのように見えた。
兄も妹たちも何も言わず、書斎から自室へ戻っていく。そして母親が退室すると父親が『期待してるからな』と目を細めて言った。途端に言葉に出来ない恐怖を感じ、そそくさと自室へ戻った。
芙二「うーん。自分で言うのもなんだがこうも性格が捻くれてるのが、引っ掛かる。まさか俺だけ受験に失敗したか?」
足を組みながら、自己分析を行う。芙二が呟いている時に、映像は切り替わる。そこには紙を持ち不安、恐怖が混じった表情をしている自分がいた。
『ど、どうしよう。このままだと……』
紙には模試の結果が表示されているようで志望校判定は【B】となっていた。両親からは【S】を取るように徹底されていた。こんな結果を見せるとどうなるか分からない。
半年前は結果が【A】であった。そのときは自分の分だけご飯が少なかったり、寝る間を削って勉強をさせられた。兄も妹たちにも迷惑をかけないように自分なりに頑張ってきたのに……とそんな事が表情に見て取れた。
コンコン
『凌也。模試の結果が出たようだが……返事がない。入るぞ。なんだ、いるじゃないか。ん?どうした、泣きそうな表情をして』
入室してきたのは父親だ。ぎょっとした表情をしてあまり良くない結果が書かれた紙をくしゃくしゃに丸めてズボンのポッケにしまおうとするが、父親は目敏く、入れる寸前のところで手を掴まれる。
『何を隠そうとして……凌也。この結果はなんだ?』
『……』
『黙っていても分からない。どうしてそこまでやって、B判定なんだと……はぁ凌也。おまえは私がいいというまで勉強していろ。誕生日会もナシだ』
『そ、そんな! 誕生日会は年に一度の……』
『黙れ! 誕生日会なぞ、毎年やるではないか。後で持ってくる原稿用紙に反省文を書きなさい』
『で、でもみんな今日はどこか食べにいくんでしょ? だったら――』
『行かないぞ。馬鹿な
兄を憐れむかのように言葉を続け、反対に自分を蔑むかのように視線を送る。それだけで十二歳の自分が悪いのだという考えに取りつかれた。
バタンと扉を閉め、父親はどこかへいった。毎年誕生日を祝ってくれる兄や妹たち、両親に申し訳ないという気持ちでいっぱいになりその日は食事を摂らずひたすら反省文を書かされた。
芙二「はぁ。別にいいじゃんかよー。模試の結果が【B】判定でも。そこまで追い詰めなくてもいいと思うんだけどなー。まぁ親には親の教育方針があるのだろうし、今じゃもう分からんけど。ほら、泣いてるぞ?」
でもお姫様に助けられたときはゲームのタイトルを覚えていたから直前は消せなかったのかな。テロリストみたいな映像があったからどっかで狂うんだろうなと思うけど……。
芙二「他人と比べられて蔑まれるのって結構クるぞ。兄弟間なら猶更。変な意識が芽生えてきたらどう責任取るんだっ……てな」
頭上見上げ悪態をつくも目の前の映像は次に切り替わる。次の映像の自分の表情は去年よりも悪化していた。それだけでなにがあったか分かってしまった。先を見たくないと思い、思わず一時停止を押してしまった。
芙二「あー……こりゃ落ちたか」
だが、捻くれ狂う前の貴重な自分だから見ておこうと思い、再生をした。そこには自分の答えを否定する出来事があった。しかしそれが芙二自身の奥底に眠る渇望……その始まりだった。