次回から艦娘も出てきて、話が進みます。
中学一年生となった過去の自分の表情はとても暗かった。テストで悪い点を取ったとかなんか悪いことをしたとかそんな考えを彷彿とさせた。
表情を暗くさせたまま自室へ向かい、勉強机に突っ伏してしまった。それを見ていた芙二は余程のことだろう、と思った。しばらくは沈黙の映像が続く。画面では机に突っ伏し続ける自分がいた。
黙ってみていたが、やがて沈黙は破られた。過去の自分のすすり泣く声によって。
『ううう……なんでこうも、上手くいかないんだよ。合格してから、お父さんとお母さんの圧力は強くなったし……××も受かってたら……』
しばらく愚痴をいいすすり泣いていたが、泣き止み鞄からノートを取り出しせっせと何かをやり始めた。時々「ここの解は~」と聞こえてくるので数学でもやっていると思った芙二は映像を飛ばした。
このまま宿題の映像を見ていても意味がないと思ったからだ。
時が経ち、十三歳の誕生日を迎えた。が、去年と同じで過去の自分だけは誕生日会に参加させてもらえなかった。理由は「進学校に行ってほしいから」それだけだった。
楽しみにしていただけあってショックだった。誕生日当日の夕方からは軟禁状態のように未履修の教科を勉強させられ始めた。何か言い返そうにも両親からは極度の期待の圧が課せられ、逃げる事も隠れる事もできなくなっていた。
芙二「うわぁ……公立の中学へ行った××、めっちゃ表情ええやん。弟を見下すことはないようだが、この差は我ながら酷い。ちょっと前にすすり泣く理由は他にもあるだろ」
ほとんど友人のいない状態みたいだし、クラスで浮いてるとかその辺か?
そこから過去の自分が独り事を言うようになった。兄と弟で対応の差がある両親の元にいるので、上手くストレスが発散できず、また思春期ということもあり敏感な年頃になっていた。
『どうして、××ばかり……アイツも受かっていればぼくばかりこうはならなかったのに』
食卓で会う兄の表情は穏やかで、すれ違えば小学校の頃共に仲の良かった友人の会話を聞く。それが苦痛のように感じているようだ。飴と鞭。両親の教育は極端なのだ。兄には飴8割、鞭2割。過去の自分には鞭9割5分、飴は5分もない。故に嫉妬と羨望が心を支配していく。
敏感な年頃に極端な対応を目の当たりにしてきた自分が荒んでいく過程が見て分かった。ここでか、と思った。あの頃は全く回りが見えていなかったらしい。
芙二「無理もない。思春期はこう、敏感な年頃だろ?心を形作る時間だし、それにホルモンバランスも崩れやすいんじゃないかな」
そういう背景には顔のニキビが多くなってきた過去の自分に対し、父親が「醜い」といいボディタオルで擦られたりした日々が続いていた。ニキビは潰してはいけないのは調べたので分かってた。
『辞めてって! ニキビは潰しちゃダメなんだ!』
『このっ醜い顔でひと前に出るな!』
力強く顔を掴まれ、ボディタオルで擦られる。傷口が悪化し、膿んでいく。冷たい水をつけゴシゴシと洗われ、嫌そうな表情をしていた。無視し、雑に洗うとバスタオルを投げつけて立ち去った。
浴場でボロボロと大粒の涙を溜めやがて声を押し殺して泣く。そんな虐待じみた日もあり、心に澱んだ感情が生まれつつあった。
『……とりあえず、またケアして、勉強して、寝ないと』
芙二「こんな事をされても、恨まないのは凄いな。過去の俺。今の俺だったら確実に殺していた」
なんて感想を言いつつも、映像の中の自分は黙々とケアしやる事をこなしていく。そういえば最近、妹たちの様子を、なんて思っていると扉がゆっくりと開く。
『お兄ちゃん、怪我大丈夫? ! 顔が腫れて……! ▽▽! 何か冷やせるものを』
『いいんだ、◆◆。ぼくが、利口だったら……いいや。××はまぁいいとして。◆◆と▽▽はぼくみたく
勉強を中断して、姉の方と話していたがこれ以上長くなると予定に支障をきたすと思い切り上げる。別れ際にお願いをして扉を閉じた。
姉の方はびっくりした顔をして何か言いたそうにいたがすぐに伸ばした手を降ろした。妹が冷やせるものを持ってくると扉をノックしようとするが姉が止める。
『なんで? 持ってきてっていったじゃん』
『いい。いいの。お兄ちゃんはもう……』
それ以上は言わなかった。妹は扉の向こうにいるもう一人の兄へ心配そうな表情を向けていた。
芙二「おっふ。これは結構精神がやられてますね。や、要らんことを言うつもりもないけど……あの目はダメだろ」
死んだ目をしている。いや今にも死にそうな、と言った方が正しいだろう。
今のところ両親から
また時間が流れたようで次は十四歳の誕生日を迎えようとしていた。この頃になるとそこそこ友人も出来てまた教育の賜物なのかそこら辺にいる頭のいい学生の部類に入っていた。
『……来年か。来年が勝負だ』
教室にいるようだが、自分しかいない。時刻を確認すると午前七時十四分ととても速い時間に登校していた。これも洗脳……いや教育の成果で、自分に
破ると寝起きに冷水を浴びせられ、暴言混じりの説教から始まる。躾と称して愛の鞭という暴力紛いな事を受けるうちに次第に覚えていった。しかし痛みは恨み、怒りに変わり公立に行った兄の方が成績がいいという比較は心をボロボロにした。
『……もう少しだ。もう少し。もう少しで……』
逃げられる、と思っていた。遠くの進学校に行けば、寮付きの進学校に行けばぐちゃぐちゃになった心の悪意を兄や妹たちに向けなくて済む。その時は両親への復讐など遠回しにしており日を重ねるにつれ増える肉体、精神の傷。それらが生み出した悪意などを暴発させぬよう鋼の意思でボロボロになっても勉強を続けていた。
芙二「はぁー……まじか」
我ながら居た堪れない気持ちにさせられる。過去の自分が不憫でならない。心が捻くれ、狂う原因は両親の間違った教育だったのか、と思うと変わって復讐したくなる。だが、当時は洗脳され反抗の意思を挫かれていたと思うとやるせない。
この頃は兄や妹たちのために……か。でも今の俺がいるってことは、心が生み出したモノが暴発。あるいはそれが原因で発狂したというわけだ。
芙二「この時点でふつーに病んでるな。それに変に達観してそうだな。あとストレスが尋常じゃなさそう」
『ぐっ……オエェェ……気持ちが――オエェェェッ』
映像の中の時間が進んでいたようだが、突然ゲーゲーと吐き始める。とうとうストレスで胃が壊れたのかと思うもどうも違う様だった。
『あのクソ女!
吐いて涙目になりながら怒鳴り声を上げる。この頃になると精神的な荒れ具合が性格や言動に影響してるようだ。眼をかっぴらいて挑発に乗ろうとしているように見えた。
「うっぷ」とえずきつつも制服のボタンをブチブチと雑に脱いで投げ捨て、部屋に置いてあるタオルで拭いていく。そしてスマホを開き、ある画像や動画を見ては吐き、瞼を閉じてはそれらが蘇りどっと汗が噴き出ては慣れるように、自身の精神に慣らすように力を注いでいた。
芙二「あーあ。この歳でこんなもの見ちゃあ、将来ダメになるわけだ」
それらは人の教育によろしくない。精神的にイカレているなら猶更。トラウマになっても文句を言えないし、それで死んでも仕方ない。
『あぁ、ぁぁあああ! あとは進学校に受かって……そこから賢くなって、両親共々嫌がらせしてきた連中を皆殺しにしてやる……!!』
芙二「うは、やっぱり溜まってたんだな。そうだ、吐いちまえ、吐いちまえよ。これまでの鬱憤。俺が許してやるよ」
画面の向こうで瞳に殺意と悪意が混じった瞳で物騒なことを吐く、自分へ伝える。それが通じたのか、偶然かニヤと笑みを浮かべていた。