とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

168 / 260
わかりにくいけど、三章の最終話からの続きです。


叶ってしまうかも?

 

 あの日の夜、如月は芙二を探していた。途中、冷葉補佐に出会い執務室にいると聞いた彼女は足早に向かった。扉の前まで到着し、ノックしようとした。

 

 そんな時部屋の中から「提督は私たち艦娘と、その……結婚する気はあるんですか?」と言葉が聞こえてきた。言葉を聞いて、如月はノックすることを辞めた。

 

如月(結婚……? 誰かと結婚? でもこの声は……)

 

 扉からそっと離れて、声の主を考えようとした。しかし考えるまでもなく分かった。それはサラトガである。彼女は最近、深海海月姫となったが皆の力で艦娘に戻ったのだ。そんな彼女の口から司令官が()()()をしたことを話していた。

 

如月「えっ?! し、司令官がサラトガさんと?!」

 

 思わず大声を出しそうになるのを抑えられても動揺していた。最近行われた宴の中で東第三鎮守府の艦娘と交流する機会があった。そこで艦娘と人間は結婚しないと聞かされたときは驚いた。

 

 そこでふと東第三鎮守府の吹雪と話した内容を一部だが思い出した。

 

如月「――それで吹雪さんは神城提督とはケッコンとかはしないんですか?」

 

吹雪「しないですよ。上限解放のための儀式は行ってますけど。それに私は惣五郎さんの時に建造されましたので。その頃だと惣五郎さんはもう奥様がいるようでしたし」

 

如月「惣五郎? それは神城提督が就く前の前任者の名前ですか?」

 

吹雪「そうですね。神城惣五郎。現提督の陸翔提督のおじい様ですね。なので、かれこれもう四十年は艦娘として生きているのではないでしょうか」

 

如月「よ、四十……!」

 

吹雪「そんなに衝撃的でした? 私たち艦娘は人間とも、他の生物とも根本的に違う。妖精さんの力と整備さえあればほぼ百年単位で動き続けれます。ですが元々戦争で使われる道具なのでずっと早く壊れてしまうと思いますが」

 

如月「それでも、好きな人とする恋愛は……」

 

吹雪「相手がだれか分からないので何とも言えませんが、人間でしたら辞めた方がいいです。人間は私たちよりもずっと傷付きやすい。それにすぐに壊れて動けなくなり、思ったよりも早くに死んでしまいます。ですが――芙二提督殿なら如月さんの願いを叶えられるのではないでしょうか?」

 

如月「それは、そうだけど……」

 

吹雪「断られるのが恐ろしい?それはそうでしょう。人の好みはそれぞれ。もし振られたら慰めてあげますよ」

 

如月「一度、司令官に聞いてみます。吹雪さん、色々教えてくれてありがとう」

 

 会釈するとパタパタと音を立てて会場を後にした。去って行く彼女の背を見つめ吹雪はかつて自分にもそんなときがあったのだろうかと考えた。

 

吹雪「それにしても……如月ちゃんも夢見る乙女ですね。見ているこちらが…っと。あなたは――」

 

 『何言うのさ。僕たち艦娘はみんな夢見る乙女だよ』と言いながら吹雪の隣の椅子に腰を下ろした。

 

吹雪「盗み聞きですか。感心しませんよ、時雨さん」

 

時雨「途中からだよ。それも終わり頃。如月と何を話したか分からないけど、すれ違った時の表情が忘れられなくて声掛けちゃった」

 

吹雪「艦娘(私達)に甘い芙二提督殿なら、大丈夫な気はしますが」

 

 突拍子もない言葉に時雨は「え?」と聞き返すも吹雪は話題を変えてるのだった。

 

 

 

 『そんなこともあったわね』と思った如月だが、失敗した後なんて考えても意味がないと思ったので意を決して扉にノックしようとしたときだ。

 

『吾は艦娘と結婚する』

 

 会話を聞いていないのでどうしてそうなったかは分からないが、提督の口からそんな言葉が飛び出してきたことは如月の恋心に衝撃を与えた。

 

 告白しに執務室まで来たが、先ほどの発言を聞いたら胸が高鳴っていくのを感じていた。艦娘の誰か、なんて今はどうでもいい。可能性がある、そう思っていたら声を出して驚いてしまいそうだった。

 

 なのでここから離れようと思い、走り出した。行き先は寮内の皐月との相部屋へ。遅い時間だからか誰ともすれ違うことなく着いた。

 

如月「明日からどう接すれば……」

 

 中々寝付けなかったが、楽しい事を考えていたら自然と寝ていた。

 朝になり、皐月に起こされ身支度を整える。

 

 食堂へ向かっているとき、昨夜のことを誰かに話すべきか、黙っておくべきかと悩んでいた。後ろから声を掛けられ、振り向くとそこには夕立と時雨が挨拶をしてきた。

 

時雨「おはよう。二人とも。あれ、如月? 顔色が良くないよ。どうかしたの?」

夕立「ほんとっぽい! 医務室へいくっぽい」

 

皐月「ほんとだ! 如月ちゃん、医務室までついて行くよ」

 

時雨「皐月、それには及ばないよ。君は今日、夕立と一緒に哨戒任務があるだろう? 幸い、今日僕は非番なんだ。僕がつれていくよ」

 

皐月「ありがとう、時雨。如月ちゃん、今日は大人しく休養した方がいいよ。それじゃまた後でね」

 

 夕立も手を振って皐月と二人で食堂へ向かった。

 少々寝不足で顔色の悪い如月に時雨が労わるかのように声を掛けた。

 

時雨「如月。君は昨日の夜、吹雪さんと何を会話したんだい?内容は恋愛とか、結婚とかその辺かい?」

 

如月「そうよ。艦娘が恋をしちゃ、いけないっていうの?」

 

時雨「思わないよ。それは自由さ。でも僕は提督のことが好きだよ。誰にも一番は譲りたくないくらい」

 

如月「!」

 

時雨「そうそう表情を強張らせないでよ。寝不足なら医務室に行って少し寝てればいいさ。寝付けなかったら、少し話そう」

 

 そういうと如月を連れて医務室へ向かったのだった。




恋模様を書くのってとても苦手。だけど、まあ勉強ということで。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。