とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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難しいなぁ


四章 6話『平和な妄想』

 現在、如月と時雨は医務室にいる。それは睡眠不足で顔色の悪い如月を寝かせるためである。だが、どうにも当の本人である如月は寝付けそうにない。

 

時雨「寝れなそうだね。どうする? 話の続きでもするかい?」

 

如月「そうね。その、時雨は提督のことが本当に好きなの……?」

 

時雨「うん、好きだよ。まだ運営を初めて二ヵ月くらいだっけ? 僕は二ヵ月とは思えないくらい濃い日を過ごしたからね。間近で魅せられてきたから惚れるのに訳ないよ」

 

如月「それは少し羨ましいわね。私はそういうのはあまりなかったから……でも好きな事には変わらないわ」

 

時雨「うんうん、良い事だと思うよ。誰が誰を好きになってもいいと思う。それに恋は大切な事だよ。で、如月は吹雪さんと何を話していたの?」

 

 改めて自身の提督への気持ちを再確認した二人。興味津々に時雨が聞いてくる。吹雪と話した内容は誰にも話していない。それと提督が艦娘とケッコンカッコカリではなく、結婚すると言い切ったことも。

 

 どちらを話そうかと思っていたが、先に吹雪と話した内容について喋ることにした。後者は言ったら恋敵に塩を送るような気がした。

 

如月「吹雪さんに色々質問したのよ。艦娘として長い生を歩んでいるもの、いい機会だと思ったから」

 

時雨「うんうん、それで? ケッコンカッコカリについて話したの?それとも人間同士で行う愛の契り?」

 

如月「吹雪さんはケッコンカッコカリは自分達の上限を解放するための儀式って言ってたの。後者については止めた方がいいと釘を刺されたわね」

 

時雨「どうして?」

 

如月「前提が人間と艦娘だから。見た目は似ていても本質は相容れないから。愛を育んで結婚してしまったら、別れが寂しいからですって」

 

 

 時雨は黙って静かに頷く。如月には続きを促しているように見え、再び口を開き吹雪と話した内容を思い出しながら話す。

 

如月「それに過去に居たことは居たらしいけど……別れの後にその艦娘は後を追おうとしたんですって。でも死にきれないから、最後は……」

 

時雨「深海化で撃滅された、と。いやぁ……ただただ好きになっただけなのに。随分僕たちに対する仕打ちが酷い。僕らを作った神様は良い趣味してるよ、まったく!」

 

 『でも僕には関係ないけどね』と言いながら腕を組む。最初、吹雪から教えられたその事実は如月に衝撃を与えた。人間を好きになっただけで、こんなことが起きてしまうのだと。吹雪との会話中、一度だけ()()()に堕ちれば……と黒い思考がよぎった。

 

 

 そうすれば艦隊にとってひと手間かもしれないが、司令官に()()()()()()()のだから。でもそんな思考はすぐに捨てた。理由は単純。『好きな人に迷惑をかけたくない』それだけだった。

 

如月「でも吹雪さんはこうも言ったの。芙二提督殿なら私の願いを叶えてあげられるかもしれないって。つまりどういうことか、分かるわよね?」

 

時雨「ただの上限解放ではなく、愛の契りを交わしてくれるということかな。……如月、これは大前提だけど提督は人間ではなく僕たちとしてくれるんだよね?」

 

如月「………………そうね」

 

 問いに対して長い沈黙からの肯定。それは時雨の中にも衝撃を与えたようで微動だにしない。如月は目線を落とし『あーあ、言っちゃった』と内心少しがっかりしたように呟いた。

 

時雨「やったぁ……! これからとことんアプローチかけよう、それから僕が最初に指輪を貰うんだ。子供は――」

 

 恋敵に塩を送ってしまったと落胆している如月を放置して時雨は自分の世界に入りつつあった。告白からその後のことまで事細かく呟き始めた。

 

如月「あの時雨、ちゃん?」

 

 声は聞こえていないようで、呪詛みたくひたすらブツブツと繰り返していた。声を掛けようにも反応しない。どうしたものかと考えていた、そんなとき医務室の扉が開かれた。

 

 

叢雲「あら? 時雨に如月じゃない。医務室(ここ)に二人がいるなんて珍しいわね。それに如月、少し顔色が悪いんじゃないの?」

 

 中に入ってきたのは叢雲だ。自分の世界に入りつつある時雨は挨拶しないが、如月は返した。ベッドの上にいる如月に話しかけつつ、叢雲は慣れた動作で救急箱を持ち抱える。

 

如月「え、ええ……叢雲ちゃんはどうしてここに?」

 

叢雲「あー、それは工廠で冷葉補佐が少し怪我をしたみたいなのよ。切り傷とかそんな感じだったかしら?明石さんは夕張さんと私たちの艤装の修理だし、司令官は大淀さんと執務に追われているわ」

 

如月「叢雲ちゃんは近くに居たの?」

 

叢雲「まぁ……そうね。妖精さんも今はほとんどいないみたい。幸い、私も今日は非番で暇を持て余していたから、丁度いいと思ったの」

 

 『そうなのね』と如月が一言。

 

叢雲「それじゃもう行くわ。如月は今日非番?」

 

如月「ええ」

 

叢雲「それじゃそこで呪詛吐いてるバカを回収していくわ。昼食前に一度来るようにするけど……気分が悪かったら間宮さんたちにリクエストしてみるから」

 

 そこまで言うと時雨の頭目掛けてチョップを繰り出した。『いたっ!?』と驚き声を出す。叩かれた場所を擦りつつ『急に何するんだい』文句を言っていた。

 

叢雲「時雨、あんたなに呪詛吐いてるのよ。ここは呪いを吐き出す場じゃないわ。呪われてるなら、司令官に言って祓ってもらいなさい」

 

 『僕は呪詛なんて吐いてないよ!』という時雨の手を引きながら医務室を抜けていく叢雲。医務室に一人残った如月はようやくベッドに横になり、時雨を問答無用で退場させた叢雲を凄いなぁと思っていた。

 

如月「そういえば叢雲ちゃんも司令官のこと好きなのかな……?」

 

 自分には恋敵が多いなぁ、と思いながら仮眠に入ったのだった。

 

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