とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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四章 10話『東第二鎮守府からの連絡』

 

 大淀から自分と冷葉宛てに連絡が来ていると知り、駆け足で執務室へ戻る。執務机にある電話の受話器を手に取り「もしもし、芙二です」と相手に知らせると向こうも応じた。

 

音宮「こんにちは、東第二鎮守府の音宮です。芙二提督殿、今月二十日に行われる会議に連れていく艦娘は決まっていますか? それと参加する方は芙二提督殿だけでしょうか?」

 

芙二「参加するのは私だけです。連れて行く艦娘までは決めていないです。その……音宮提督殿。艦種の指定とかはあるのですか?」

 

 

音宮「いえ特にそう言うのはなかったかと思います。ただ……」

 

芙二「ただ?」

 

音宮「いいえ、気にしないでください。そうでした、言い忘れていました。連れてくる艦娘の人数は一人だけとさせてください」

 

芙二「分かりました。連れてくる者を決め次第、再度連絡します。メールの方がいいですか? それとも電話の方がいいですか?」

 

音宮「うーん……電話でよろしくお願いします。この番号で大丈夫です」

 

 「連絡ありがとうございます。では失礼します」その一言を音宮に言おうとしたとき、彼女が言葉を先に言ったので思わず黙った。先輩が何かを話そうとしているところに被せるのはどうかと思ったからだ。

 

 何を言われるのか思っていると、声のトーンがひとつ下げ「芙二提督殿とはこうして話すのは初めてではないですよね?」と問われた。

 

芙二「初めてですよ。もし私の声を聞いてデジャヴを感じているのなら、似たような声を聞いたことがあるだけだと思います」

 

音宮「う~ん、どこかで聞いたことがあるような……あ、漣ちゃん? あ、東第一泊地の芙二提督殿と今月うちで行われる会議について話しているんだけど」

 

 

 電話の向こうで何やら漣と会話し始めた音宮。二人が何やら話しているのを放っておいて芙二は連れて行く艦娘の候補を考えていた。初期艦の叢雲にするか、神通とか龍驤、霞とか。

 

 川内と夕立は除外で。いや公私分けてたらいいんだけどね、こうイメージがし辛い。本人たちには悪いんだけど。あとは時雨とか……いや最近戦闘で力を酷使したから療養させた方がいいか?

 

芙二「あ、大淀さんとか?」

 

音宮「はい? 芙二提督殿、何か言いましたか?」

 

芙二「ん゛ん゛! 失礼しました。なんでもありません」

 

音宮「ほら! 声を聞いたでしょ!? 漣ちゃん! 絶対に一度はあったことあるって!」

 

『ご主人、似たような声の人間は五万といますよ。先日、()()()()()()してた若者と名前が一致していただけですし、電話向こうの芙二提督殿と全くの別人なのでは?』

 

芙二(慰霊碑に黙祷。ほぉ~ん? あっちの漣は八割くらい確信してるじゃねーかよ。でもま、黙っとくほうがいいでしょ)

 

 

『私たちがこうして身内の会話をしているから芙二提督殿黙っちゃいましたよ。どうするんです?この空気』

 

音宮「芙二提督殿? 大丈夫ですか?」

 

芙二「え、あ、はい。えっと……」

 

音宮「あー、芙二提督殿とは無関係なので大丈夫です『微妙な空気になっちゃってますケド』漣ちゃんはちょっとお口チャック!」

 

芙二(お口チャック……! この人、可愛い言い方するな)

 

 

音宮「とりあえず! 用件は以上です。またお電話をお待ちしております。執務中失礼いたしました」

 

芙二「いえ、こちらこそ連絡ありがとうございます。では、失礼します」

 

 

 音宮と通話を終え、今の内容を冷葉にそのまま伝えようと携帯を取り出して連絡した。

 結果、相手に折り返しをするなら早い方がいいとなり執務室に冷葉が来ることになった。

 

 「鍵は掛けた方がいい?」と聞かれたが「不要だ」そう返し、冷葉の到着を待つのみだ。

 

芙二「実際に会って聞かれても隠すか……そういえば候補の一覧は――」

 

 視線を先ほど走り書きしたメモに移す。

 「書いてある。書いてある。大丈夫だろ」などと呟きながら椅子に腰を下ろした。

 

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冷葉「――――結局のところ、大淀さんで良くない? あの人だったらすぐに対応できると思う」

 

芙二「候補を考えてはいたけど、やっぱり大淀さんが適任か」

 

冷葉「そうだな。おまえも知ってのとおり、俺は大淀さんと執務をやってきた。まだ二ヵ月と期間は短いが、書類仕事や事務仕事を効率よくこなす姿は感心する。今回は遊びに行くわけじゃない。それはおまえが一番知っているだろう? 今回は大淀さんが一番の適任者だと俺は思う」

 

芙二「そこまで言うんなら、大淀さんで決定だな。明日にでも伝えよう。その日大淀さんがやる執務は他の艦娘に担当させてみよう」

 

 同行する艦娘は大淀に決めた二人。次に決める事は冷葉と共に執務をこなす秘書だ。「誰がいいか、時雨とか長門辺りか?」などと言うと冷葉が「おいおい、大淀さんと同じレベルを求めるなら……」と何か言いたそうなことを言っていたが芙二が二の句を継がせなかった。

 

芙二「なぁに。急に大淀さんの代わりをやらせるわけないだろ?おまえと共に執務をこなせそうなのは叢雲か?もともと初期艦として執務のあれやこれやは知っているだろう」

 

冷葉「それか俺かお前でその日の直前までに執務の量を調整するとか、か。おまえが言った内容だと他にも調整が必要そうだし」

 

芙二「その日を叢雲を非番にする都合とか? まぁ何とかなるだろ。交代できなかったら俺が海へ向かうよ。泊地一帯の深海棲艦すべてを駆逐してみせようか。少しは楽が出来る」

 

冷葉「……それは最終手段で。執務の量を調整する方向でいこう」

 

 当日までの方針を決めた二人は各々で課せられている仕事を確認するのだ。

 もしものためを予想して。泊地一の実力者が一日縛られる。

 

 そんなとき、深海の奴らが侵攻して来たら――無防備だったら深刻な事態を招きかねない。

 冷葉も芙二も深海の侵攻(そんなこと)を頭の片隅に置きつつ、動くのだった。

 

 

 

 

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