とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

174 / 387
また時間が空いてしまった。


四章 11話『会議前夜 東第四泊地ver』

 六月十九日 午後五時十二分 東第四泊地 執務室にて 

 

月見「……ねえ、グラーフ? 明日の会議に参加する東第一泊地の芙二提督殿って怪しくない?」

 

 月見沙良(つきみさら)。東第四泊地の女性提督である。髪の色は緑色で、髪型はおだんご。瞳の色は桃色。報告書を何枚か捲り、書かれている内容について眉間に皺を寄せては何度も読み直している。

 

 そんな彼女の秘書艦は独空母のグラーフ・ツェッペリン。彼女の特徴は色素の薄い肌とプラチナブロンドの髪、ボディラインのハッキリ出る白い軍服を上下来ている。

 

グラーフ「なんだadmiral……藪から棒に。挨拶のこない新人など放っておけばいいだろう。そんな新人に時間を使うのなら」

 

 

 着任当時は上に白い軍服、下に黒いスカート、黒タイツを着用していたのだが提督である月見の指示により海軍の軍服を着るよう命令されたが、当時のグラーフはそれに反発。紆余曲折を得て、今の白い軍服で落ち着いたのは内緒話だ。

 

 

月見「こら、グラーフ。admiralじゃなくてここでは提督と言っているでしょう。……放っておいちゃいけない問題のような気がするのだけど」

 

グラーフ「ん゛ん゛。え、えっとアドミ……提督。これで良いか?」

 

月見「えぇ。執務が終わったら頭を撫でてあげる。さっきの新人の話に戻るけど、報告書の内容が既に変なのよね……新種の姫級と戦闘、後に撃破。そしてドロップ艦と邂逅を果たす。あぁもー!指摘する所が沢山あるのだけどっ」

 

 報告書に書かれた一部内容を指の先でなぞりながら、呆れたような声を出す。ゴミとなりつつある紙の端をくしゃと掴むと自身の秘書艦であるグラーフの方を見て何か言いたそうな顔をしていた。

 

グラーフ「私の方を見てそんな表情をされても困るのだが。新種の姫級はなんて言ったか」

 

月見「確か【駆逐神棲姫】。随分仰々しい名前でしょ。名前に神が入っている。他の姫や鬼でもそんな名前をつけないのに。芙二提督殿はまだ少年心が抜けきってないのかしら」

 

グラーフ「提督、少年心とはなんだ?」

 

月見「男の子はだれしも一度は神や悪魔になってやろうと思うの。それで親戚の男の子が大変だったんだから……ってどうでもいいわね。それとどうしてか分からないけど非情派の人間に艦娘を誘拐されてるし、先日のニュースになっていた南西諸島海域の島が崩壊したのにも関わっている」

 

グラーフ「なるほど。ちゃんとした根拠があって言っているのか。それは怪しい。かなり怪しいな。非情派に目を付けられている、か。艦娘を裏で売買しているのかもしれないな。それかモルモットにでもしているか。どちらも許される話ではない」

 

 フン、と鼻を鳴らし手を顎に当てて考えこむ。最近流れている噂の中に海上を彷徨う異形の話がある。曰く艦娘の姿をしているのだとか、人智を超越した能力で敵を蹴散らすのだとか。

 

 グラーフ自身はそんな情報はただの噂でしかないと思っている。自身は艦娘である、人間では太刀打ちできない深海棲艦という脅威に有効な手段を持ち人間の女のような見た目をしておきながら高速修復材と言われる薬液と僅かな資材で人智を越える治癒能力を発揮できる。

 

月見「グラーフの話は最悪の想定だね。もしものことがあったら、そのときは任せてもいいかな?」

 

グラーフ「あぁお安い御用だ。提督も補佐も私の機銃でくず肉にしてやるさ」

 

 足や腕を吹き飛ばされ、痛みに喘いでも高速修復材(バケツ)と資材があれば何度でも脅威に立ち向かえるとグラーフはそう信じてやまない。何よりも大事なのは自分達を勝利へ導けるのは提督である月見沙良だけだと心酔していた。

 

 「さて」なんて言いながら席を立つ月見。グラーフが「休憩か?」そう聞くと頷いて「最悪の事態(いやな事)を考えるのも仕事のうちだけど今は嫌ね」秘書艦に背を向けたまま、扉を引いて執務室の外へ出て行った。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。