とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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短いですが、四章はこれで終わり。割と執筆の時間が取れないため、五章の始まりまでちょっと間が空くかもしれませんがご承知おきください。


四章 17話『口封じ 東第三鎮守府ver』

 夕食を済ませた芙二は自室から神城の元へ行こうとしていた。冷葉には外出する旨を伝えてある。もしもの時は躊躇わず掛けろと伝えてもある。

 

芙二「そいじゃ、まあ行きましょうかね」

 

 準備を済ませたので、転移しようとする。ちょうどその時、扉がノックされる。

 

時雨「提督ー? いるー?」

 

 声の主は時雨のようだ。まだ出掛けていないので返事をすると扉がゆっくりと開いた。室内に入ってきたのは時雨と夕立だ。出かける準備が終わっている芙二を見て夕立が「お出掛けっぽい?」首を傾げて聞いてきたので「そうだ」と返した。

 

芙二「で、何か用?」

 

時雨「いやこれから散歩をしようかと思うんだけどさ、提督もどう?って誘いに来たんだけど……」

 

芙二「間が悪かったな。帰宅は深夜頃になっちゃうから散歩はまた今度ということで」

 

夕立「提督さんはどこに行くっぽい?」

 

芙二「東第三鎮守府。陸翔殿に呼ばれててね。どうも(オレ)の事で話があるらしい」

 

時雨「提督、何か変わった? なんかこう傲慢な態度が――」

 

芙二「意図的に変えているからね、一応。いつもの人間向けというよりかは龍人族の方を意識してみてる。雰囲気も違うって言われるんだよね。妖精さんから」

 

夕立「確かに声が低くなってて、怒っているっぽい感じに……」

 

 (マジ?)と内心思ってしまう。いつか龍神となったときの為に今からイメージを作ろうとしていたのに……怒っている、そんな風に思われていたなんて。

 

芙二「あー……とりあえずは、だ。こんなテンションで陸翔殿のトコ行ってくるよ」

 

時雨「提督、僕もついて行っていいかい?」

 

夕立「夕立もついて行きたいっぽい!」

 

 まぁそうなるよね、と芙二は思った。(というか、いいのか?吾だけしか呼んじゃいけないオーラを感じたが。……気の所為でしょ。一応、知ってるし。いいよな☆)そう楽観的な判断をして東第三鎮守府の門前に転移した。

 

 

 

 

芙二「到着っと。……ん?海から来る風がジメついてやがるな、一雨でも来るか?」

 

時雨「相変わらず早いね。もう慣れたよ、僕はね」

 

夕立「夕立は慣れないっぽい。こう、時間差で疲れるような感じがするっ」

 

芙二「今度から開通できるようにチャレンジしてみるか。次元と次元の間を……まぁ出来たらで」

 

時雨「提督、どこに向かえばいいの?」

 

芙二「んーとりあえず執務室にでもトぶ?」

 

 その物言いに何故か不穏な気配を感じた時雨はすぐに聞き返す。「トぶってのはまんまよ」そう返されたのでもっと具体的に教えてと問う。すると芙二は何もない空間から自分達よりも倍以上の巨大な砲を取り出した。

 

 そこで時雨も夕立も察しが付く。砲撃の反動で飛ぼうとしている。しかも目的地は執務室の窓。壊れない、傷つかないようにして突っ込もうとしていた。

 

時雨「あー、それは辞めておこう?武装したここの艦娘が何事だと血相を変えてくる」

 

五十鈴「そうよ、時雨の言うことが正しいわ。芙二さん」

 

 自分達の後ろから声がして振りむくとそこには五十鈴がいた。「艦娘と巨大な砲を持つ不審者がいると聞いて来てみれば」そう言いながらこちらに近づいてくる。

 

五十鈴「チャイムを押したらすぐに対応するのだけど?」

 

 そう言い切った彼女の態度は呆れた様であった。芙二は今さっき来たばかりだというも「はいはい、こっちに提督がいるわ。ついてきて」と流すのであった。

 

 

 

 

 

 案内されたところは工廠。そこにはここの明石と大淀、神城に速吸と神威がいた。夜の挨拶をすると明石を除く四人は挨拶を返した。明石だけは先日の戦闘で使われた艤装の修理をしている様だった。

 

芙二「こんばんは、陸翔殿。時雨と夕立がついて来ちゃったけど大丈夫?ダメなら帰すよ」

 

神城「いや大丈夫。むしろありがたい。時雨くんのような例は極めて稀。深海化を克服しているのだろう?うちの面々も未だ苦しむ者もいるからな。克服するにはどうしたらいいか、それも知りたかったんだ」

 

 

芙二「なるほどね。手間が省けるか。どっちから聞きたい? 速吸と神威がいるということは吾の件で口封じでしょうし? 身内でやるよりも、脅威を見せつけれるから呼んだわけね」

 

神城「理解が早くて助かる。今、見せれるものはあるか?」

 

芙二「あるけど……魔竜騎装。っとこんなものでいいかね? それと昨日開発した新装備もお披露目といこうかね?」

 

 工廠の明かりに照らされて黒い鎧を身に纏った芙二は目立つ。速吸も神威の二人が驚くのはもちろん、作業をしていた明石も驚き固まっていた。

 

神城「やっぱり現実離れしているな。それで新装備というのは? 艦娘の?それとも凌也殿が扱うモノ?」

 

芙二「ダマスカス鋼と怨念結晶を混ぜて作った薙刀っぽいけど棍棒みたいに打撃も扱えるようにしてある。いろいろ言ったが要は薙刀だな。名は【煙流(えんりゅう)】」

 

 薙刀の柄は鮮やかな赤の中に緩やかな白線が描かれており、刃は白く透き通っていた。他に装飾はなくシンプルな武器だ。棍棒といっていたので刃先の反対側は紅く熟した林檎ほどの大きさのコブがあった。

 

 殴られたらひとたまりもないだろうと神城は思った。芙二は「試し切りはまだしていない」そういうと虚空に向けて差し込むように薙刀を仕舞う。その光景も明石や速吸、神城は慣れていないようで声を出せず固まっていた。

 

 

芙二「とまぁ、話それちゃったけどさ。今見たことを口外しないでほしいな。破っちゃったら薙刀で試し切りの獲物にしちゃうよ☆ それと今開発中の触手くんの餌になってもらうかネ」

 

時雨「提督、今なんて?」

 

夕立「試し切りの下りじゃなくて触手? 秋雲さんの同人誌に出てくるぬるぬるしてそうなもの?」

 

芙二「秋雲……今度(地獄に)招待するか。っとそうじゃない。そうじゃない。そうそう、それ」

 

神城「え、凌也殿のところの秋雲はなにを……とそうじゃなく! 触手の餌にはさせないよ。だってそれ殺す為じゃないでしょ?!」

 

芙二「そらそう。生物が分泌する体液を食事の内容にしようと魔改造してるから、死にはしないけど二度と艦娘には戻れないと思うよ。人間がやったら数日で廃人になる」

 

時雨「……提督、あとで詳しく教えてほしいな?」

 

 ゴゴゴ……と音がなりそうなほど時雨の背後からは怒りが滲んでいた。隣にいる夕立は秋雲や芙二が行っている所業にドン引きしている様だった。もっというと芙二以外の全員がドン引きしていた。

 

 

芙二「こほん。話しが逸れそうだから次の話題に入ろうか。次は深海化を克服したいんだっけか?」

 

神城「そうだな。涼月、瑞鶴、吹雪、木曽、武蔵、筑摩は大丈夫なのだが…長門がたまに錯乱するんだ。それだけじゃなくて戦艦棲姫のような深海化の兆候もある。このままでは長門の精神が危ない気がして…」

 

芙二「うむ。長門を直接弄る? その場合だと一旦眠ってもらう必要がある。暴れたりしたら直接殴り伏せるが構わないか?」

 

神城「他にはないのか? 時雨さんも……当人なら何かアドバイスを」

 

時雨「そうだね……僕の場合は提督に調整してもらってたのと、使いどきを考えて毎回戦っていたよ。あとは感情の昂りを利用する、とか」

 

 他にはないのか?と時雨に聞く神城。聞かれた本人は唸りながら何とかしてアドバイスをしようとしていた。

 

時雨「なんだろう。詳しい事は後でガングートに聞いてみたら? この場にいる夕立もそうだけど、僕さ結構酷かったよね?」

 

夕立「あれは酷かった。ガングートさんと戦ってたら急に深海化しだすし、挙句の果て敵が味方になって大変だったっぽい!」

 

神城「やっぱり急になるのか……」

 

 一考し始める神城と「制御できるようになって良かったね」時雨にそういう夕立がいた。芙二は鎧を着たままだったが明石から「これ良く見せて貰えませんか?」興味津々に聞かれたので近くに寄った。

 

 

 しばらく考えていた神城は時雨に「今は制御できているなら見せてくれないか?」そう聞くと時雨はすんなりOKを出した。

 

時雨「ちょっと待ってね……ッ! ――ふぅ」

 

 その言葉の後に少しだけ力む。すると黒い髪色に白が混じり始める。肌の色はそのまま変わらずだが、目つきも変わっていき色も青い色から藍色に変化していく。身に纏う艤装も黒く変色していく。腕や足に装着するモノは黒くトゲトゲした物になっていた。

 

時雨「――もう終わる」

 

 柔らかく熱を帯びる指から黒く、細い硬い骨のような指に。足には黒を基調としたブーツを。服はセーラー服からスカートに変化していた。

 

神城「おぉ……これが克服した者の形」

 

速吸「どっちつかずですが、綺麗ですね……姫や鬼のような装甲になっています」

 

神威「艤装にも変化が……力はどれくらいなのでしょう」

 

時雨「ボクはまぁこんな感じ。力? 単純なパワーだったら生きてる深海棲艦の艤装を剥ぐことも可能だけど。それに駆逐艦だから砲撃も得意だし雷撃も得意。でも接近戦の方が好きかな」

 

神城「それは何でだ? 艦娘の利点は砲撃だろう?」

 

時雨「ん~? 提督に教わったから?こうした方が互いの熱を感じられていいんだ。それに案外、ココとか弱いよ。どちらも」

 

 トントンと腹部を押す。続けて「思いきり殴ると気持ちのいい感触がするんだ」表情を変えてキシシと笑う。神城は(女の子にとって大事なところだろ、そこは……。)思うも口に出さずにいた。

 

 そしてふと思ったことを聞いた。

 

神城「後遺症はないのか?」

 

時雨「あるよ。思考が若干サイコパスじみてしまうのと、ボクの場合は静電気をちょっとだけ扱える。感電はもちろんのこと、何かに含ませることでそれ自体が爆弾になって敵を巻きんで大爆発をも誘発できる」

 

神城「……それは――」

 

時雨「ボクだけだと思うよ。そもそも提督が落とした雷を何十、何百発も受けないといけないしね」

 

神城「長門は調整だけでいいよな、五十鈴」

 

五十鈴「そうね。時間がかかるかもしれないけど調整していけば、克服できるかもしれないわ」

 

 神城は部屋にいるであろう長門を呼びに向かい、五十鈴は芙二の元へ歩いて行く。時雨は夕立、速吸、神威と深海化したときのことなどを話していたのだった。

 

 

 

 




>時雨:深海化克服状態 ほぼ完成形。これ以上の進化は殆どない。

>長門:あの件以来たまに錯乱して、深海化しだす。不安定な状態。早急な治療が必要となっている。

>薙刀【煙流(えんりゅう)】:煙のように軽やかに敵をバラ斬りしていきたいという思いの元、作成された武器。今の所の使用者は芙二のみ。
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