――ああ、ついにこの時がやってきたのだ。私は準備に費やしたこの十余年、この光景を待ちわびていた。目の前には全国、果ては南米までのろくでなし共が互いに話しあい、鼓舞し合っているではないか。駒の癖して素晴らしい、ことだ。おっとそろそろ、表に行かなくてはならない。
腰近くまで伸びた薄い水色の髪、切れ長で緑色の目。黒いコートを着て首元には白いファー巻きつけた少女がろくでなしの前に登壇した。騒がしかった場も静まる。普通だったら野次を飛ばすところだが、自分達の眼前にいる少女こそが、雇い主だと理解したからだ。
アイリ「諸君、こんな夜明けに集まってくれたこと感謝する。全国、果ては世界中のろくでなしがこの場に集まってくれたことが私は嬉しい。君たちがこれから行うことはこの国を変える事なのだ。素晴らしい活躍を期待している」
挨拶を終え、本題に入ろうとする時、真ん中にいる浅黒い肌の少年が挙手をした。アイリは少年に自身か自分達のする内容に関する質問をする権利を与え、その際に名乗れと言った。
アイザック「ぼ、ぼくはアイザック。軍や政府の帰還を壊したら、頑張りに応じて報酬を貰えるの、ですか?」
アイリ「そんなに怯えなくともよい。アイザックくん、これを見たまえ」
隣にいた男に大きなジュラルミンケースをいくつか持ってきてもらい中身を開封する。中からは巨万の富とも言えるような数の宝石や金塊が零れ落ちてきた。それを見たアイザックは目の色を変えて元気よく「質問に答えていただき、ありがとうございました!」そう返した。
アイリが行ったこの行為はろくでなし共にはかなり効いたようだ。目に見えて態度が変わるものもいた。中には触らせてくれ、とがっつき暴力に出る者、空腹の時に旨そうな肉を見せられ、獲得するために一心不乱となる者もいたが自らで牽制するとそれらは大人しくなるどころか、他も黙っていく。
『お、ご? おへお? せなあぁ、み? く、いが』
『ぴぉ、が』
がっついて暴力を訴えた男は首が五回転し、そのまま動かなくなった。一心不乱になったものは一瞬で身体の表と裏が逆になり、ベチャと崩れ落ちた。場は悲鳴の大合唱となりそうだったが、声を出した瞬間そんな死にかたをするのはごめんだとみな、悪臭が満ちる屋内で思っていた。
アイリ「はぁい、私に注目! 不正に報酬を獲得しようとするともれなくこうなるから肝に銘じておいてね。悪口をいうのは別にいいけど、やることやらないとダメだよ? その時はこうしちゃうから」
二つの死体の足を鷲掴みにすると数回、ぶつけあう。鉄の匂い、腐敗臭らが混ぜ合って鼻を摘まみたくなるほどだ。だが、そこから死体が熱されて変形するプラスチックのように人間の形をしなくなっていき、死体同士は混ざりあう。
アイリ「粘土細工って子供の時以来」
ぐね、ぐねと捏ねていくと汚い色をした塊になった。それを二つ混ぜていくと茶色の肉塊が出来上がった。所々、髪の毛や腕、内臓、骨、肉がはみ出ているが。アイリ以外の血の気が引いていく。だが、当の本人は楽しそうな表情をして人型に形成していく。
アイリ「フフフ、酷き出来。これでこうしてっと」
かれこれ二十分くらい、肉人形を作っていた。人型らしくはあるが、人を形成するパーツが適当についているので、化け物のようになっていた。首はなんと二つ付いているが、目、鼻、口のいちが福笑いのように別々であり、場にいる人間はその場から逃げたくなってきていた。
アイリ「動いた。ほら、立って。新しい
『ほ、ほんとうにうごいて、る?!』
『アイリさんは何者なんだ……』
『でもそれだけの戦力がいるって事は勝てるぞ、このゲーム!』
片方の頭からは人間の足が二本生え、目の位置には鼻が二つ、口の位置には生殖器、縦になった口が交わるように。耳の位置にはそれぞれの骨が飛び出ていた。もう片方は時計のような十二本の出っ張りがあるだけだった。どこからくっつけたのか、分からないが手足は計十一本。まるで虫のようだ。
『アォォオオッ!』
アイリ「ちゃんと返事もできるなんて、いい子ね。それらで命尽きるまで徹底的に壊しなさい」
『ゴアァアッ』
濁音交じりの返事がかえってくるとアイリは後ろに回す。報酬提示も済んだことだ、次のステップに入ろうと決め、本命についてを話し始めるのだった。
アイリ「諸君らには海軍の施設を襲撃する者、公的機関を襲撃する者の二者に分かれてもらう……最終目標は警察だけど、おびき寄せる為にありったけ破壊活動を楽しんでほしい」
黙って聞く者、自分達の犯す罪の重さに気が付く者、弱者の命を
『なあアイリさんよ、俺らが使う武器はなにがあるんだ? 銃がないと話にならないだろう?』
アイリ「その話はこれからする。分かれた班員は各所に車で移動してもらう。車の中に銃、火器、爆薬、手榴弾など様々入っている。必要があれば……支給班を頼るといい。それとこれは餞別だ」
後ろに待機していた者共を招集し、段ボール箱を持ってこさせる。そして自身の力を用いて付与した黒い手袋を一人一人に渡す。受け取ったものは手袋を引っ張ったり、伸ばしたり、装着したりと様々な反応を見せた。
アイリ「この手袋をつけている限り、君たちは無敵の力を発揮することができる。……決してまやかしなどではない。それをつけたまま銃器を手に取り、破壊活動を始めたとき真価が分かるだろう」
「
アイリ「メールが全員に通ったようだな。……では少々、失礼」
ごほん、と咳ばらいをする。周りは通達された場所の当たりはずれの声でそれどころではなかったが。
『
アイリの言葉が終わるとみな、熱い大歓声を発した。声の大きさだけでびりびりと身体を震わせ、闘志の熱意を焚きつける。みな、狂ったような笑みを浮かべ屋外に止まっている車へ前進していく。