とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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言葉って難しいなあ。


五章 3話『無差別テロの始まり』

 午後 十八時 四十七分 東第一泊地付近 商店街外れ

 

『各員、所定の場所に到着しただろうか。準備完了していたら、一班でも十七班からでもいいから報告をくれ』

 

 無線機から雇い主の言葉が聞こえてくる。一班のリーダは雇い主に『準備完了している』そう報告をする。しばらくの沈黙のあと『一班の諸君らが今いるところは――』と説明が始まった。

 

『――説明はこれで終わりだ。艦娘、憲兵を狙うのではなくて提督、補佐を狙いたまえ。私が考えた大人数を用意したから。総勢、100余名。大暴れしたまえ。この町の住人を襲うのもいいが、面倒な芽は先に潰しておいた方が得だろう?』

 

 無線機の向こうにいる雇い主はけらけらと笑っている。泊地及び周辺の町を襲おうとしているのに、罪悪感はないと言われればない、と言い切れる。これから廃墟となる場所に思い出などない。今は帰宅時間で多くの人が外にいる。そこを襲撃するのだ。死傷者は必ず出る。老人だろうが男、女、子供など関係ない。

 

 

『そこの提督、補佐は確実に始末しろ。作戦完了したらまた報告をくれればいい。すべての報告があり次第、作戦開始の合図を出す。それまで待機だ』

 

?「了解した。では、失礼する」

?「あ、あの雇い主はなんて言っていたんですか?」

 

 黒い坊主頭にごつごつとした顔、寡黙で少々不機嫌なリーダーに面と向かって聞くのは赤色に青のメッシュが入った気の弱そうな少女が問う。無言で無線機をしまい、溜息を吐くと班員の問いに素直に答えた。

 

片岡「俺は片岡(かたおか)。雇い主さまは合図があるまで待機しろって。ここの車に寿司詰めになってるから外で身体を動かしたいものだ」

 

少女「わたしの名前は軽井(かるい) 三樹(みき)っていいます。歳は13でお父さんと二人で暮らしています。リーダーの考え、分かります。早く暴れたいものですね」

 

片岡「じゅ、13!? ……こんなことをお父様は止めてくれなかったのか」

 

三樹「きっと聞いたら何が何でも止めると思います。でも、お金が必要なんです。だから――」

 

片岡「いい。それ以上は話すな。どうせ、すぐに始まったら互いに自己紹介とか全部忘れちまうんだからよ」

 

?「そーですね。確かに。なら、こうして話すのは辞めにしませんか。リーダー。我々は遊びに来ている訳じゃない。奪いに来ているんです」

 

 片岡と三樹が互いに自己紹介をしているとき、低くも高くもない中性的な声色が車内に響いた。その声の主は苛ついているのか怒気が肌を刺激する。

 

片岡「誰だ。座っていては分からん。立て」

?「リーダーの命令ならしかたねーっすわ」

 

 片岡に言われた男はやれやれといいながら立つ。背は170センチほど、黒髪ツーブロックでメガネをかけた男は名を「フィリオで。本名なんて名乗った所で意味ないでしょ」片方の手で頭を掻きながら言った。

 

フィリオ「今さっきいったようにこれから殺すし、奪うんですよ。なのに、どーしてそんなほんわかした雰囲気出せるんですか?」

 

片岡「ほんわかさせたつもりはないのだが」

 

フィリオ「まあ本人には分からない悩みでしょう。直に十九時を越えますけど、まだこない?先行部隊ということで行ってもいい?」

 

片岡「ダメだ。貴様一人が出ていくと他にも迷惑だ。なに、二十時前には許可が出るだろう。存分に暴れなさい。フィリオの行動を妨害するのは市民か警察か憲兵なのだから。殺して、殺して――」

 

フィリオ「いやそれ以上は聞きたくないです。楽しむために殺すんですよ。ぼくは奪って殺すのがとても好きなんです。特に弱者、それか強者のふりをしているだけの道化とか」

 

 口角を歪ませて、イヒヒッと嗤うフィリオ。異常な思考はここでは普遍的にとらえられる。むしろ異常なことを考えつかない方がどうかしているだろう。ここはそういう場なのだから。偽善者は首を狩られ、下は玩具にされる。歳、性別、出身は違えどこの場にいる人間は全員、悪人であり異常者なのだ。

 

『有名とか無名とか関係ない。なあそうだろう!! そこに山があるから登る。それとまったくおんなじだ。そこに人が、いるから奪って遊んで殺す!』

 

『そうだ。持たざる者が持つ者を羨ましく思うのは必然。だからこそ、富も何もかも再分配される必要がある。我はそれを行い――』

 

片岡「熱い演説の最中、失礼。雇い主から伝令だ。全十七班、確認が取れたそうだ。皆、健闘を。自分のしたいことをやれ、ケツはてめえで拭きな。バトルロワイアル、だな。東第一泊地が終わったら、次は二班の連中と合流して鎮守府を狙え。まずは安置を奪うぞッ!」

 

『いい、いい。カタオカ。我はこの場を持って百人の首を狩ると宣言しよう。他の後続車に乗っている同士もきけぃ!我は――』

 

 

 

 

 六月 三十日 二十時〇九分 ろくでなし共の無差別テロが全国の軍部、公共交通機関で行われることとなる。芙二のいる東第一泊地付近の商店街外れでもそれは発生する。

 

 二十時二十分過ぎ、商店街外れの空き倉庫が突然、大爆発を引き起こしその余波で家々に被害が出た。家屋が燃え、崩れ人の悲鳴が響いた。それを聞いたろくでなし共は合図ととって、行動を開始したのだ。

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