とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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もっと別の方法があったような気がする。


五章 4話『シリアルキラーの晩餐』

『ハハハハッ!! マッドパーティーの始まりといこうじゃないか!』

 

 狂った雄叫びが悲鳴の中から群を抜いて、周囲に響く。突然起きた事態を飲み込めない人らは立ち止まり、やがては弱々しく腰を落として泣き始める。それは恐怖からくるモノだ。状況は依然変わらないが、この異常事態を飲みこみ、雄叫びの上がった方向を見て驚愕する。

 

『な、なにが起こっているの? いったい……あっ!?』

 

 爆発と同時に何人かが斬りつけられ、倒れ込む。そこに目元以外隠した人間が倒れた人物の雑に髪の毛を掴み、しゃちほこのように首を上に持ち上げた。髪を掴まれている人物は酷く怯えて、恐怖で歪ませていた。逆に掴み上げている者の目じりは上がり、息遣いが荒く傍観者らには印象深く映った。

 

 そしてナイフでその人の首に横一線を入れ、血が飛び散るのを見て酷く興奮したように騒ぎ始めた。

 

『ヒャハッ! ハハハハッ! おいおいおい、全員いい引きっぷりじゃあねえの! そうだ、こうやって地獄を創るんだよなぁ!』

 

 殺人鬼の楽しそうな声が上がると周囲は弾けるような勢いで逃げる者、産まれて初めて人が死ぬ瞬間を目の当たりにして吐いて逃走の瞬間を喪った者。警察かどこかに連絡をしている者など混沌としてきた。

 

『かくれんぼ、かぁ。いいね、いいねえ!! 夜が明けるまでに何人残っているかなぁっ!?』

 

『全員、解散!各々、欲のままに貪れェッ――歩みを止めた同胞は殺せ。二度、起きぬこと晩餐で遠慮する奴は必要ないッ!』

 

 黒い服を着たシリアルキラー共が総数百余名。片岡の指示のもと影に、闇に溶け込むように散らばり始めた。

 

 

 

 

 一方 東第一泊地 執務室 二十時 三十七分

 

大淀「て、提督! た、大変です。今入った情報なのですがっ」

芙二「どうした、大淀。血相変えて。あの長門が出てきたか?」

 

大淀「いえ、そうではありません。全国の軍施設、交通機関が無差別テロを受けました! それにより所々麻痺して動けないそうですっ!」

 

芙二「なに? 携帯は…くそっ圏外になっていやがる! 大淀、とりあえず冷葉に伝えて対策を考えろ! こっちにはまだテロリスト共は来ていないが商店街の方で何か起きているかもしれん!」

 

大淀「は、はい! 承知致しました! 確認後、提督はすぐ戻ってきてください!」

芙二「あい分かった! ちょいと各所に確認の連絡と確認をしてくる」

 

 携帯が使えない時点で察しがつくが、テロリスト共の後ろに強大な存在がいる気がする。執務室から門外へ移動し、そのまま近くのよそ様の家に侵入する。そこには怯えている住民と血みどろの殺人犯がいた。芙二に気が付くもそれどころではないようだった。芙二は住民最優先で動く。命が危険に晒されているので、魂を奪い捕食する。途端、殺人犯は白目を剥き、倒れ込む。

 

『ひぃぃ……な、なんで急に倒れた』

『お、おい死んでいるぞ。急に死んだ。なんだか嫌な気がする。離れ――』

 

芙二「はは…そこまで考えてんのか」

 

 家主が声を上げて、退避の旨を伝えようとした時だ。急に死体が風船のように膨らむと爆ぜた。パァンッ!と甲高い音が響くと同時に内容物の勢いが強いのか死体が持っていた凶器はもちろん、骨や内臓が壁を貫通し付着していた。幸い、芙二が不壊を付与していたので住民は怪我一つ負うことなくその場にへたり込んでいた。

 

芙二「……状況を教えてもらってもいいですか」

住民A「えっと、あなたは軍人さん、ですか」

 

芙二「そこの泊地で勤務しているだけのモブです。間一髪でしたね。全国で無差別テロが発生したと聞かされて、ここもと思ったのですが」

 

住民B「こ、怖かったです。それが私たちにもさっぱりで……急に押し入られたものですから」

芙二「なるほど、分かりました。……これを持っていてください。今日、明日の一日は持ってくれると思います」

 

住民A「これは、お守りですか? でもどうしてそんな言い方を……」

 

 芙二は陰陽の文字が書かれた勾玉を人数分配布した。この勾玉の効果は二つ。それを所持しているだけで死なないし、死傷人がその勾玉所持者の中にいると再び命を与え、傷を癒すというトンデモないもの。

 

 普段は一般人に渡さないけど、こういう場が起きてしまった以上仕方がない。護るべき命を守るよう動くだけだ。

 

芙二「すみません。今は説明している時間がないので……これを持って死傷者の方に近づいてあげてください。僅かでありますが、秩序と治癒の恩恵を受けられるでしょう」

 

住民B「ま、待ってくださ」

 

 芙二は外へ走り出した。悲鳴と爆発音のする中心へ。ついでに泊地のある一帯を中心とした簡易不死エリアを展開する。名の通りでそのエリアにいる限りは死なない。死ぬほどの痛みを受けても回復する。だが、欠点がありそれは痛覚は遮断されていないので地獄を味わうという点。

 

 今日、明日でここらに蔓延るシリアルキラーは滅殺するつもりで決断した。しかしそれがテロリストの意欲を高めてしまうことには気がつかなかった。

 

 

芙二「ついた……が、これは」

 

 目の前に広がる光景は凄惨なもので二ヵ月前に来ていた商店街が燃える廃墟同然となっていた。壊され、瓦礫が積み重なった間には人間の手、足が生えていた。商店街とだけあって一度燃えると消さない限り永遠と燃え続ける。近くから悲鳴が聞こえる。そこへ全速力で向かうと男の首を切りとって衣装掛けに刺しては腹を抱えて笑う、テロリスト共。そして涙を流し、女を犯すし、殴りつけて反応を見るクズ。

 

 

『おい、聞いたか?「キミはぼくが守る」って!! ハハハッそのキミは目の前で犯されてるがな!』

『もっと締めろ! 骨を折ったら痛みで締まるってか!』

 

『ころ、してえ……もう殺して』

 

『おいおい、ヒステリックになるなッよ! 』

 

 斧で女の右ふくらはぎを半分に割った。瞬間、女からは獣のような悲鳴が聞こえてきてはテロリスト共は笑っていた。芙二の姿に気が付いたテロリストの一人は『おいおい、ヒーローは遅れて参上ってか?』『死人が出てからじゃ遅いんだよな』そう仲間の顔を見ながら反応を見ていた。

 

 

芙二「……あー、そうか。(オレ)がやろうとしていたことはこういうことだったのね。だけど無秩序の犯行は許可しないなぁ――矛盾しているだろうけど」

 

 これまでに見た記憶、誕生日に見た記憶と今掘り起こされた記憶。それらが少しずつ結びついていく。こっちへ来る前の自分は今目の前にあることをやろうとしていたのでは、という疑問はやがて真実へ形を変えていく。

 

 頭の中でチカチカとしながら読むはずだった前世の記憶が断片的に流れては吸収される。自分が何者であったかを、それを知らしめるタイミングが今この瞬間とは。因果関係か。最も向こうで自身の一切は残っていないから話す事なんてできない、それだけ。

 

『なにをわけの分からない事を言ってやがんだ?』

『海軍さまは薬物でもやってるの??』

 

芙二「吾は首謀者だったのか。こんなタイミングで良くないな。最悪のタイミングだ」

 

 周囲を気にすることなく、ぼそぼそと呟く芙二が気になったテロリスト共は犯すことを辞めて、囲んでいた。三方向から銃口を押し付けられていたが。テロリスト共は快楽殺人を邪魔され苛立ち『殺すぞ』そう怒鳴っていたが何も気にならないほどに芙二の心の中は波風一つ立つことない。

 

芙二「こんな日はそうだ。コーヒーでも飲みながらスプラッタでも見ようか。ゲロ甘なカップルが殺人鬼に掻き回されて破滅へ追いやられるのは見ていて心躍る。まあ全てを終えてからだけども」

 

『なにをいってやがッ』

 

 サンッ トサトサッ

 

 目をゆっくりと瞑り、全部が終わったらなどと思っていたことを口にしていたようでテロリストは困惑していた中に上から物体を撫でるような鋭くもどこか柔らかい風が吹いた。テロリストの言葉も女の懇願も何も聞こえなくなり、軽く柔らかいものが崩れる音が聞こえた。正体は人である。

 

 テロリストも女も20ミリの薄さにカットされたのだ。何十、何百等分になったのか分からない。簡易不死エリア内にいる為テロリストも女も死ぬことはないが、再生してから痛みに哭く。その声が煩いので数回、魂を奪っては――と酷いことを繰り返した。痛みに反応、奪う魂も相手側のストックが残り僅かになった所で辞めた。

 

 

芙二「そういえば、大淀に戻って来いって言われているんだった」

 

 いろいろなものを倒れ流し僅かな痙攣しかしていない、テロリスト共、女を放置して泊地へ戻る前に既に殺されていた男も蘇生した。といっても意識は戻っていない。

 

 




芙二

->断片的な映像の吸収はかつての自分を思い起こすきっかけとなった。
これまでみたく一々、前世の体験を映像で確認する手間が省けた。
しかし、最悪のタイミングには違いない。

勾玉(御守り)

->ただの治癒アイテム。陰陽をイメージして芙二が作った。一般人にはかなり効果が出る。ただし精神的、肉体的に負傷していないものが近くにいると勾玉内にある悪いものを全て注ぐ。
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