とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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商店街は終わり。


五章 9話『忘却の産土神(嘘)』

芙二「……あと、十一人か」

 

 商店街で暴れている者共を殺しまわってようやく現在使っているスキルの弱点を見つけた。まず一つは姿を隠せないという点。深海棲艦以上の怪物が姿を隠すことも変装することもできず、彷徨う姿は恐怖の対象だろう。もう一つは広範囲の能力行使が出来なくなったということ。ほんの少し前に展開した簡易不死エリアが解除され、殺戮が行われるようになっていた。

 

 住民が殺されそうなところを芙二が襲撃する形でなんとかなったが、助けたはずの住民からは恐れられ話そうにも通じなかったので退散してきた。

 

芙二「結局、種の冠位とやらには到達できなかったか。いやまだ終わりではあるまい。膨大な時間と糧が必要なのはよぉく分かったことだが、欲しいタイミングで来ないのはどこも変わらんか」

 

?「おい、そこのコスプレイヤー!さっきから仲間を殺しているのは貴様だな! こういう場でヒーロー登場ってか、覚めるから他でやってくれよな」

 

芙二「……あとで方法を考えないとな」

 

 黒髪ツーブロックでメガネをかけた男の眉が動いた。

 

?「ぶはははっなんの方法だよ。もしかして私一人だと思った? 貴様を囲っているんだ。逃げ場はない」

 

芙二「あんた含めて十一人か、実に素晴らしい。探す手間が省けた。しかも運よく近くにいる。その言葉はハッタリではないようで安心した」

 

?「おいおいおい、聞いたか。今の発言! この人数相手で生き残れると思っている世間知らずらしい!先輩かのアドバイスだ。冥土の土産に丁度いいだろう?」

 

?「フィリオ!話し過ぎだ、貴様が長引かせるのなら俺が出るが」

 

フィリオ「ちっ分かりましたよ、リーダー。ということで、貴様との会話は終わりだ。くれぐれも立場を弁えろよ、こっちが有利なんだからな」

 

芙二「何が知りたい。(オレ)の正体か?目的か、動機か? それとも貴様がつかっているその手袋の正体か?」

 

フィリオ「前者。貴様はどこの人間だ? 海軍?民間人?目的も動機も興味がねえ『フィリオ、全てだ。全てを聞きだしなさい』って雇い主さんも知りたいのかっ?」

 

芙二「雇い主……。あぁなるほど、なるほど。この摩訶不思議な手袋は貴様が作ったのかアイリ・ブルグレス。なら、この事件の黒幕は貴様か。責任を今求めるつもりはない、だがその浅ましい知識で吾の宝物に傷をつけたツケは貴様の身体で払わせてやるからな」

 

 

 進化したばかりなので新たに備わった能力の範囲が広いので、フィリオのイヤホンから会話を盗み聞いてピンときた。テロリストが銃弾を消費するほど残りの命が減っていくのを不思議に思っていたが創造主がアイリ・ブルグレスなら容易に結びつく。

 

 この世界を恨んでいる。報酬大好きな者共をその甘言で集めては捨て駒として扱っていたのだろう、と芙二は考えた。

 

『ふぅん。そう。じゃあ海で出会った君が殺して回っているってこと、ね。君がどうしてそっち側につくのか私は理解出来ないけど……邪魔だから消すね』

 

芙二「やってみろ。吾の目的は貴様を我が故郷に帰す事。大人しく捕まっておけ、などとは言わん。この世界でのやらかしの落とし前はつけてから、だ」

 

フィリオ「おいおい、私たちを除いて熱く語り合わないでくれ、よなぁ!」

 

 銃を乱射する。銃撃音が周囲に響き、土煙が辺りに立ち込めては視界を悪くする。フィリオは機嫌が悪いのか、まだ乱射しているようだ。

 

芙二「部下の管理くらいちゃんとしとけ」

 

『嫌だね。たかが使い捨ての駒にそんな労力使いたくない。居場所は割れた。今から向かうよ』

 

芙二「なら、迎える体勢にしておかないとな。無論、綺麗にしておかないと」

 

フィリオ「まだ語ってんのかよォ!!」

 

芙二「いやもう終わった。一息だ、それで完結する」

 

フィリオ「やってみろよな…………!」

 

芙二「時間なぞ、必要ない。既に範囲と人数が分かっていたからな。これで終わりだ”ブレインイーター”」

 

 その瞬間、一人を除いて全員の首が飛び散った。隠れていた者、目の前にいたフィリオでさえも逃れる事は出来なかった。ドサドサと倒れる死体から魂と感情を回収する。魂結晶にするとすぐにしまい、概念の感情をまず物質に変換する。ひと一人の感情を物質にするとそこそこの燃料になる事が分かった。

 

 そこから負の感情を抽出することなく魂結晶と同様に加工する。しかし飴玉サイズに圧縮してから食べるとまた違った味が楽しめる為、好んで口直しのように扱っていた。

 

芙二「……飴玉のストックは残り200個。魂結晶は残り489個、怨念結晶は2000個。十分すぎるな。後で戻ったら、大淀と相談が必要だ」

 

 ワハハハと笑い、死体の元へ歩く。九体の死体内で飴玉の試行錯誤をしているとき、気が付く。生成してから飴玉を抜き取った時に同時処理でボロボロに朽ちてしまえばいい。

 

芙二「さて、生き残ってしまった哀れな生命に慈悲をくれてやらんこともない」

 

 瓦礫の内に回るとそこには赤色に青のメッシュが入った気の弱そうな少女がこちらに銃口を突きつけていた。目には涙を溜めて、ボロボロと零さないよう必死になっている。

 

少女「く、来るな! 化け物めっ」

 

芙二「若々しい嬢ちゃんじゃないか。こんな子も参加するとはやっぱり腐りきってやがるな」

 

少女「へ、なにをいって……片岡さんを返せ! 返せよォ!!」

 

芙二「片岡? あー、嬢ちゃんの傍にある男の死体の事か……どうしたい?」

 

少女「なにを」

 

芙二「今なら気分屋の吾がその片岡って男、蘇らせてあげるけど? あぁ代価には魂を売ってくれや。間違っても喰らう事なんてしない。裏切ったときの保険だな」

 

少女「……」

 

芙二「信じねえなら結構。嬢ちゃんはなんか殺せないから、男だけ奪っていく。十数えるうちに決めな」

 

 いーち、にーい……とゆっくりとカウントダウンを始めた。死体の身体をみて嬢ちゃん悩んでいる嬢ちゃんの魂に契りを結ばせる。裏切った瞬間に身体は消滅してすべてを喰われるという内容だ。

 

少女「決めました。蘇生してください……どうか、お願いします」

 

芙二「土下座なんて要らねえよ。ほら、ここの産土神(嘘)からの慈悲だ。二度とこの件に頭を突っ込むな。その手袋も置いていけ、もういらねーだろう?」

 

 「ありがとうございます……」そう言うと片岡の首がゆっくりと元に戻っていく。それをみて溜めていた涙はダムの放水の勢いで外へ。片岡の魂にもどうようのことをしてから周囲を見渡していく。

 

 

「住民の何十人かが死んだ。建物の被害も酷いものだ。だが、救える命は救った。まずはそれで良しとしよう。とりあえず泊地へ帰還しよう」

 

 鎮圧作業が終わったので、泊地へ転移する。時刻は二十三時に近づいているが、商店街のある周辺からは鎮火されたあとの煙がそこらじゅうから上がっているのだった。

 

 発生してから一日目の夜が誰の許可を乞わずに産声を上げた瞬間であった。

 

 

 

 

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