とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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つなぎです。


五章 11話『状況確認 東第三鎮守府ver』

 七月一日 深夜〇時十九分 東第三鎮守府前にて。

 

芙二「さて、と。ついたものの……うわ、門とか原形を留めていないじゃないか。それに空襲警報がずっと鳴り響いているし、うちよりも深刻か?」

 

時雨「比べられないよ。そんなこと。こっちも泊地は冷葉補佐が重体だし、周辺の街は燃えていて死傷者が出ているから」

 

 ボロボロになった門の残骸を乗り越えて、鎮守府内に入ると執務室のある本棟は亀裂や一部の建物が崩れている。窓は枠ごと壊れ、棟内が丸見えな部分もある。近くで戦闘をしているのだろう、砲撃音や銃撃音、爆破音、悲鳴などが聞こえてきた。

 

芙二「早めに行った方が良さそうだな。時雨、すぐに――って(オレ)の方が遅かったか」

時雨「ボクは元々戦っていたからすぐに切り替えが聞くから。陸に上がろうとしているのを片っ端から殺せばいい?」

 

 【祟殻龍骸(すいかくりゅうがい)】と唱え、異形へ変化させる。そして背には薙刀【煙流】を背負い「お待たせ」と籠った声で話しかけた。時雨はこの姿を見るのは初めてだが、大して驚かず続きを促したのだ。

 

芙二「そうだ。だが、今回は遊ぶなよ。時間が惜しい。新たな被害が出る前に素早く殺せ。集中力が切れそうだったら、これを嚙み砕け」

時雨「さっきの飴玉じゃん。えぇ……提督みたく人外になりたくないんだけど」

 

芙二「この世界の型にはまっているから大丈夫だろう。吾は例外だが。ただし人間に食わせるな。多分死ぬから。艦娘や深海棲艦には食わせたらまぁまぁ面白い反応が見られると思うけどな」

 

時雨「非常事態でそんなことを考えれるのってやっぱ変だよ、提督はさ」

芙二「無駄話は後にして……あ、そうだ。数が数だから大技をうつかもしれないが避けろよな? 当たったら多分戦闘不能になるぞ、一撃で」

 

時雨「そんなに足元も巻き込むの? 提督の力で不死にできないの?」

芙二「範囲内でなければ大丈夫。ある程度の記憶を取り戻し成長した吾の力は生者特攻だ。この建物内に避難していれば、戦闘不能になることはない」

 

 「そっか」と諦めたように返事をしてここの出撃ドッグがある方へ走り出す。芙二も芙二で棟内に侵入して廊下を走り、開かなくなった扉や壁を貫いて探していく。神城の安否を確認したいと思っていた。

 

 

芙二「陸翔殿ッ!! 大丈夫ですかッ!!」

 

 ズッガァァァァン! 

 

 『ぴぎっ!?』

 

 執務室の扉が前方に勢いよく吹き飛んだ表紙に何者かに当たり、ガラスの砕ける音が聞こえた。崩れた壁や砕けた床から出た細かい塵などが舞い上がり、周囲を見えなくさせていた。

 

芙二(……陸翔殿は生きてはいる。一度つけた色が落ちていない。だが、窓側に何かいるな。……手足がある深海棲艦と仮定すると軽巡か重巡かあるいは姫とか鬼とか、か?)

 

 神城の生死が分かっただけでも来た意味があった、と考えた。隣には見知らぬ魂の形が二つ。窓側には弱っている魂と興奮しているのか赤く輝く魂があった。とりあえず窓側の魂のみに絞っては奪いとる。

 

 すぐには変換せずに生のままを維持する。そのとき思った、ナマの魂ってなんかレアではないかと。まぁ死んでから肉体も腐るし魂も霧散するから意味なんてないが。

 

芙二「……職員とかだったら面倒だから今から他人を貫こう」

 

神城「うわぁ、急に動かなくなった。音宮提督、漣さん。大丈夫ですか」

音宮「は、はい。急に扉が吹き飛んだときはなにが起きたのかさっぱりでしたが」

 

漣「いや神城提督の知り合いが来たんじゃないですかな? 呼んでいたように感じますけど……包囲網が突破されたときは冷や冷やしましたが」

 

 舞い上がった塵が落ち着いてきた頃に室内が見渡せるようになって初めて対峙する。神城は芙二だとすぐに分かったが、音宮と漣の表情は真剣な眼差しでその異形を見つめていた。

 

 見知らぬ魂二つは音宮と漣だったかと思った芙二。神城の顔を見ると既に自分だということは分かっているようだった。なので廊下へ戻り視線を遮ったのちに外へ向かおうかと思っていた時だ。

 

音宮「止まりなさい! あなたはラジオで注意喚起されている部隊の仲間ではありませんか!? 襲撃者(テロリスト)なのでは?! 目的を言いなさい!」

 

漣「ちょ、ちょ、ちょっとご主人様! 未知の相手にそんなに食って掛からないでください。相手は薙刀を所持しています。扉を吹き飛ばすほどですから他にも爆弾などを持っている場合もあります!」

 

音宮「変装しているんじゃないの!? そうやって頭のおかしな格好をして人殺しを為すのですよ!そういう輩はッ一度磔刑にされるべきです」

 

芙二「……そこのクソアマ。吾のことをとやかく言う前に避難したらどうだ。この建物、あと数回爆弾落とされたら崩れるぞ」

 

音宮「なんて口の利き方ッ――あなたに心配される筋合いはありませんっ! それに艦娘の皆様が戦っているのに見捨てて逃げるなんてことは出来ません!」

 

 

 よく見れば普段の髪型は崩れぼさぼさになっていた。額を切っているのか血が出ており、瞼の下に垂れてきていた。だが、興奮しているのか音宮は血と泥で汚れた軍服のコートを脱いで芙二に投げつける。

 

 ダメージはないので避けずにいたが、視界が暗くなったとき後方に突き飛ばされた。ドスンと音を立ててしりもちをついた。コートが邪魔なので退かすとそこには泣いている音宮がいた。

 

芙二「どうして泣くんだ。奪われたことが悔しいからか」

 

音宮「その力をどうして私利私欲の為にしか使わないんですか」

 

芙二「それは吾の人生だからだ。一度きりの人生だから、どう転んでも後は自己責任が世界の理だろう?なら、思いきり暴れて楽しいことをした方が得だろ。さて茶番に付き合う趣味はない、邪魔をするな」

 

漣「……その薙刀で漣たちを殺すのですか」

 

芙二「邪魔をしなければ、殺さない。あんなのと同じにするな。吾は他の奴とは違う」

 

 泣き止んだ音宮は携帯でどこかに掛けようとしている。繋がった様で何かしゃべりだしたとき漣が「あなたは敵ですか?味方ですか?」とさっきとは違い面と向かって問う。芙二は「二度同じことを言わせるな。邪魔をしなければ、殺さない」と淡々と返した。正体を知っている神城は居心地の悪そうな顔をしながら、何を思ったのか仮病を演技し始めた。

 

神城「いてて……奴らの攻撃で腹が――」

芙二「なら慈悲をくれてやる、感謝しろ」

 

漣「? 何を言ってんです……?」

音宮「――そうなの! 海辺にいるなら数人……えっ!? 見たことない艦娘が暴れている!? しかも深海化の兆候があるですって!?」

 

芙二「そうか。フフ、そうか。暴れているか」

漣「え、もしかして仲間なんです、か? 暴れている艦娘は属していないヤツなん……」

 

 

 海上にいる艦娘が戦っているところに時雨が混じったらしく、その暴れっぷりはここに加勢に来ていた第二所属の艦娘や音宮、漣を驚かせている。芙二は内心いいぞ、楽しめなどと思っていたがそれは次のアナウンスで止める事にした。

 

『ウヴヴ――深海棲艦の艦載機群が接近中……ただちに屋内または防空壕へ避難してください――』

 

神城「今日は厄日か……?」

音宮「普段とは全く違う。こういう時は神城さん、漣ちゃん!一旦地下へ逃げましょう。命がないとなにもできませんから!」

 

漣「でもご主人様――そこの変質者は」

音宮「そんなのはいいの! 今は構っていられない、無視して避難しましょう!」

 

 窓から空を見上げると黒や白の球状物体が飛来してきている。数からして二百くらいだろうか。

 攻撃すべて落ちたら死ぬな、確実に。広範囲は不可能だし、どうしようか。ブレインイーター?ダメだ。範囲が狭い。なら神雷雨(じんらいう)?第二、第三の艦娘が死ぬから却下。ブラック・ビースト?変更する時に音宮提督と漣にバレる可能性があるから却下。グリム・リーパー……はいけるか?大鎌の力を乗せて飛ばしたらそれはそれで強そうだが。

 

 

芙二「狂獄がいけるか? あれっきり使っていないから出力がどうなっているか分からないけど」

 

神城「へ、変質者! 窓から落ちて死んでいろ!」

音宮「神城提督、煽らないでください!」

 

芙二「窓、そうか。窓があったな。おかげさまで上からいかなくて済んだ」

漣「ちょ、ちょっと! 変質者が飛び降りていこうとしていますけど! ここ三階ですよって……え?」

 

 ガシャ――ン!

 

 

 ガラスを突き破って落下していく変質者の姿を見た漣は大きな声で音宮と神城に声をかけていたときだ。漣は一瞬、大きな黒い影が上へ向かって行くのを見逃さなかった。自身の主人は神城に何故煽るような発言をしたのか聞いている。大きな影の正体を確認したくて崩れかけの窓から上を除くと既にそれは米粒ほどの点になっていて正体が確認できなかった。

 

音宮「漣ちゃん! 大丈夫? なにかされたの?」

漣「え、いや死体がないので気になってみたらいなくなっていたんです。逃げたのかなって」

 

音宮「ちっ運がいいなんてなんてやつ! そうじゃない、早く非難しないと……」

 

 ゴロゴロ ゴロゴロ ゴロゴロ

 

音宮「どこかが悪天候になっているのかしら?」

漣「いやご主人様……ここららしいですよ。奥を見てください。黒く巨大な竜巻が迫ってきています。んぐ!? けほっけほ。ついでに飴が降って来ました。甘いですね」

 

 ぽつり、ぽつりと雨ではなく飴玉が降ってきた。喋っていた漣の口の中にたまたま飴が入り、詰まらせないように咽ていた。口内で飴玉を転がしては味の感想を呟いていた。すかさずそこに音宮の突っ込みが入る。

 

音宮「ってなに呑気に食べているのよ! 上から降ってきたものなんて有害物質が混じっているかもしれないでしょ! 吐き出して、すぐに!!」

 

神城「え、でもこれすぐに溶けてなくなくなりますよ。それにべたべたしないなんて不思議な光景……」

 

音宮「もう! 二人して!奴らはそこに迫って来ているでしょ――え、どういうこと、なの?」

 

 飴玉に気を取られている二人に避難を呼びかけようとしたとき、外が激しい光が差したため除くと夜空に打ち上がる花火のように盛大に散り落ちる艦載機群のすがたがあったのだ。

 

 

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