駄作に付き合っていただいてありがとうございます。
よければ、最後までお付き合いください。
非通知に応答した芙二はメイが何かこちらに伝えようと必死さが伝わってきた。とても焦燥感の漂う声色で『カインが拉致された』と聞かされ芙二の内心はメイと同じ心境であった。そして不知火と別れて詳しく聞きに向かっていた。
葉月宅へ到着した芙二が見た光景は、今もなお燃え盛る葉月の家であった。見る影もない業火に建物は飲み込まれ、ただ焼けていく。既に消防が駆け付けており、必死に鎮火活動を行っていた。
それでも豪邸ゆえか炎の勢いは決して弱まることなく、元保護者の家は音を立てて崩れていく。立ち尽くす芙二を見てか、消防隊の一人が『ここはきみの家か!?』と叫んで問いかけた。
芙二「知り合いの家だ。中に生存者は――いない。そもそも生命反応がない」
待ちなさい、と声が聞こえた。無視して燃え盛る建物へ近づく。高熱の風が肌を撫でる。肌が乾燥しひりひりと痛みだす。今は煩わしいと思い、人目もはばからず能力行使で無効にする。
『それでそのウルフマスクは……』
芙二「醜い火傷の後がある。あまり見せたくないが、見るか?」
返しを待たずにマスクと呼ばれた部分を取って、幻を見せる。そこには顔の大部分に赤紫色のケロイドがあり消防隊の隊員の表情を歪ませた。『すまない。だが、感謝する。先程通報があったのだが、実はその不審者と似ていたのでな』芙二は気にする素振りを見せない。しかし隊員は謝罪した後に応援要請をしている隊員の元へ向かっていた。
芙二「……さぁて疑いは晴れたし、どうしようか。とりあえずこの放火の犯人はアイリだとして。――あぁそうだ。反省するまで殺すか?」
テロリスト共の所為で他でも火災が発生している。だから家に対して消防車の数が足りていない。放水される水は無限じゃない。時間も記憶の中に残る思い出も無限ではない。
人に向けてはいけないどす黒い憎悪が心から染み出すのを感じていた。だが、背後から聞きたかった人物の言葉が返ってきたおかげでそれは鳴りを潜める。
葉月「殺してはダメだよ。芙二君。彼女もまた被害者なんだから」
芙二「……住むところ燃やされて、怒らないのは流石としか。葉月さん、話を聞かせてください。ここでなにがあったんですか」
葉月「場所を変えよう。ここで話すべき内容じゃないからね」
そう言われ、頷く。場所を変える為、歩いていると葉月が「とりあえず芙二君の身に不幸が降りかからなくて良かった」と落ち着いた声で言った。芙二こそ「その様子だとシェリルさんもメイさんも無事そうですね」そう返すしかなかった。
今回の騒動について各々の考えを口にしていると目的地の周辺に着いたようだ。そこには地下へ続く薄暗い階段が見える。葉月は特に気にすることなく下へ降りていく。芙二は「ここならまだマシか」そう思い下へついて行くのだった。
嫌な胸騒ぎと疼痛に襲われていたカインは昨日から寝る事が出来ずにあの日、芙二に負けて保護された家の寝室のベッドでただ胸騒ぎと疼痛が収まるのを待つしかなかった。
しかしそれは現実となる。最悪の形で。
暗く月明かりのみが照明となる部屋に突如、ガシャンと音を立てて窓が割れる。間髪入れずに何かが室内に飛び込んできた。突然のことだが、カインは酷く怯えてソレを見つめる事しか出来なかった。
『あちゃ~失敗失敗。でも目的地にはついたし、問題なし!』
カイン「……」
『おっ!この気配はちゃんといるようで安心、安心』
どこか聞いたことのある声。一緒にいた期間が長かったから分かる匂い。それでも部屋内は暗く、姿形は見えないけど。
カイン「……」
『悪いね。ここのひと。
自分の名前を口にした。知っている。ソレは私を、我を知っている。だが、思い出そうとするたびに傷が痛む。吐きそうだ。泣きそうだ。全身に虫が這う嫌な感覚が止まらなくなる。
カイン「アイ、リ?」
アイリ「えぇそうよ、カインちゃん。久しぶりだね」
嘘だ。嘘であってくれ。喪った彼女が目の前にいる。信じられないという思いと別にまた生きて再会したことが嬉しく自然と涙が頬を伝い、ベッドをおりて裸足で彼女の近くへ寄る。
カイン「……夢」
アイリ「……上ってくるか。カインちゃん、ごめん。私の手を取って。後できちんと説明するからっ!」
小さな声で呟いた声はアイリには聞こえていない。それよりも階段を上る音と荒い息遣いを耳にした彼女は自分に向かって手を差し出した。あの時のように囚われていたら、確実に手を取っていただろう。
カイン「……」
アイリ「その迷う気持ちは分かる!! でも今は一刻を争うから、はやく!」
困り顔をしていると彼女は口調を強めて、自分の右手首を強く掴み窓から外へ出ていった。落下はしない。人の形態であるときは落下するのが当たり前なのに。それが起こらない。恐る恐る、彼女に問おうとしたときだ。
バガァン! バリン、バリン!
さっき居た場所が次々に爆発を起こして、沸き上がった炎に飲み込まれていく。
カイン「え? 家が、爆発した?なんで」
アイリ「ん? これくらいしないと、セコムに追いつかれるからね」
遠ざかっていくが悲鳴が聞こえる。連れていかれる自分には何もできず、ただただ彼女の行く方向を信じるしかない。
七月一日 午前六時過ぎ アイリがかつて暮らしていた住居にて。
とても簡素な部屋。本棚とベッド、机くらいしかない。しかし机にはパソコンと山積みの書類がある。本棚には何かの本がぎっちりと詰められている。しかしカインが目移りしないようにそれらは雑に床へ落とされてしまったが。
コホンとわかりやすく咳込むとカインの目を見て話し出した。
アイリ「久しぶりだね、カインちゃん。こんなふうに拉致することになって……ごめんね」
カイン「本当に、アイリ……なのか? いやそんなこと……我はッ幻覚を見ている。アイリはこんなこと――」
アイリ「夢じゃないよ。でも、もう私の知るカインちゃんじゃないんだね。……ううん、ちゃんと生き残って保護されてるなんてよかったよ、ほんとう」
カイン「でもさっきの人の家は種族は違えどっ 大事な家族……だったのに。そ、それに」
アイリ「忌まわしいこの地に長く居た所為で絆されちゃったか。でも大丈夫、カインちゃん。私が、いや私と家族になろう?」
カイン「……ごめん、アイリ。嬉しいけど、それはなれない。どうして、こんなことをするの?」
アイリ「え、単純な事だよ。私はこの世界が嫌い。私たちを故郷から拉致して捨てたこの世界の人間がとても憎い。だから破壊して文明を消し去りたいの」
カイン「分からない、わけじゃない。我も、少なかれ憎悪はある。だが――」
アイリ「でしょう? ……なら、この世界を壊して共に二人ぼっちになろうよ!それが絶対に正しいんだよ!この世界の人間はクズだ、クソだよ。だって私たちを勝手に連れてきたのに、価値がないからって異世界に捨てて乞食になったかと思えば、善人気取りのクズに奴隷のように扱われて、ゼロから必死に得たものを取り上げられて、壊されてッ!!
昨日の自分を殺した気持ちを、かけがえのない大事なものを奪われた気持ちを、なにもしていないのに戸籍がないからって冤罪、大罪の罪を着せられる気持ちを、知らない人に指を差され、バカにされる気持ちを――たった一度の人生で忘れられるわけがないッ!!」
カイン「アイリ……少し落ち着いて」
アイリ「――最終確認だよ、カインちゃん。私に強力してくれるよね?」
カイン「ダメだ。それは出来ない。我はこの世界を破壊したいほど、ではないのだ」
アイリ「そっか。ありがとう、カインちゃん。それじゃあもう――要らないね」
カイン「アイリ……?」
微笑んだ。
拒否したのに。
彼女は自分の顔を見て微笑んだ。
それとは別に嫌な予感は強まったのを感じた。
再度『従ってくれない人格は要らない』と口にした。途端にカインの意識は糸が切れるように沈んでいなくなった。カインの自我は消えたが、主なき空の肉体は倒れる事はなく直立している。
アイリ「あーあ。人格まで奪うつもりはなかったのにな。仕方ない。時に時間は残酷なんだから。仕方がないよね?」
主なき肉体に術を付与する。
それはアイリがこの世界の破滅を熱望し続けた際に手に入れた能力。
生物、物質、気候、重力――とアイリが知る限りのモノを任意で反転させる。しかし規模の大きなものは制限時間がつく。最長で一時間。最短で一分。それには存在も含まれる。しかし空気のようなもの失くして真空にすることは出来ない。それでもこの世界を破壊するにはもってこいである。
アイリ「カインちゃん。私のお友達。ほんとの第一号は
楽しそうに反応を返さない肉体に付与していく。すると『あ、う』と言葉未満を発していく。数分が立つ頃にはカインの背には黒い翼刺青が描かれていた。それが意味するものは【堕天】。天獄龍であるカインの在り方が書き換えられたことを告げていた。
カイン「ぅ、頭が痛む我は、いったい……?アイリ。そうか、そうだったな。この世界に住まう
アイリ「そう、そうだよ!それじゃあ行こう。カインちゃん! まずは
カイン「……アイリは先に外へ行っていてくれ」
はーい!と元気よく返事をしたアイリ。先程とは打って変わってルンルンで部屋を退室していく。自ら残ったカインのオーラは闇に落ちて天獄龍よりも格段に強くなっていた。窓から名も知らぬ人々の家々を見つめては楽しそうな口調でこうつぶやいた。
カイン「冥獄龍となった我の憎悪を――この世界の猿共に見せつけてやるッ!精々、足掻け猿共。自分達の生きた証を守るためになぁ!」
高笑いをしながら、乱暴に窓から外へ出ていくのだった。
アイリは「これできっとうまくいく。待っていてよ、芙二君。最高のショーにしてあげる」とクスクスと笑っていた。
現在の状況
カイン
->アイリの能力で天獄龍から
アイリ
->元友人の初陣なのでワクワクしている。見に行こうと言っているが、彼女自身は東第四泊地を焦土にするつもりである。見せしめ的な。きっと死に物狂いで止めにくるであろう芙二に興味を持っている。
「精々、必死に足掻いてくれ。人間、ひいてはこの世界の為にね」
東第四泊地の現在
->深海成果やテロリストが攻めてきたら抵抗できず、酷い有様になるのは確定。