とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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酷い出来


五章 22話『非日常の侵蝕Ⅱ』

 拘束され、ゆっくりと歩くアイリとカイン。その周囲にはどんよりとした暗いオーラが溢れだしており、近くにいる憲兵や艦娘は嫌な顔をしていた。騒ぎを聞き集まった職員も艦娘も何処かしらに包帯を巻いている状態だ。

 

 「そんな顔をするならこんなことをするなよ」そう誰かが言った。その言葉を耳にしたアイリの足は次歩を踏みしめずに止まった。後ろをついて歩くカインの足も必然的に止まる。声のした方に顔を向けて小面をつけたまま言葉を発した。

 

 ――それはカインの行動を許可するものでもあった。

 

アイリ「ほんとうに」

 

『おい、口を閉じて早く進め!』

 

アイリ「このままで終わると思うの? ねえ、答えろ?なぁ」

 

『だから口を閉じて早く進めと言っているだろうがっ!!』

 

 今自分の目の前にいる少女こそが今回の件の首謀者だということを知ってキレている憲兵がアイリの頭を強く殴った。手足を拘束され、枷を付けられている状態ではうまく受け身を取れなくて転ぶ。目の前で殴られ、倒れるアイリを見てカインは棍棒で殴られたような強い衝撃を胸に感じた。

 

カイン「あ、アイリ……? あぁ、あぁあああ!!」

 

 フードの上から頭を押さえて、悲鳴を上げる。耳から聞き取る鼓動の音が大きく、早くなる。顔中が汗ばんで、それは全身を湿らせていく。

 

 倒れたままのアイリと奇声をあげるカイン(少女)。声が癪に障った憲兵が黙らせるべく触れようとしたとき、カインはその手を思いきり、弾く。バチンと音が鳴って憲兵が腕だけになって落ちた。周囲からは悲鳴が上がる。死体とカインからみんな散る様に距離を取り出した。

 

 それは二人を拘束していた憲兵も周囲を見張っていた艦娘も距離を取っていながら月見に通信する者や仲間を招集しようとしている者もいた。

 

アイリ「あーあ。バレちゃったか。ほんとそれがトリガーの一つだなんて誰が思う? でもまぁ過去は捨てたし、目的を達成しに行こうか?」

 

カイン「アイリ、アイリィ……大丈夫か? 傷はないか? 本当に大丈夫か……?

 

 アイリを傷つける人間は全員、我が消してやろうか

 

アイリ「ステイ、ステイ。ダメだよ、まだ。一度に沢山反転させれるか、試したいんだ。だから集めよう」

 

カイン「……うぅ、分かった。だが、我の気は短い。人間共がすぐに行動したらそのときは――皆殺しにするが、いいな?」

 

アイリ「そうだ。見せしめにしよう。何なら全世界へ向けて放送しようか? それなら、それでいい。何ならベリィを呼ぼう」

 

カイン「誰を呼ぶにしても邪魔さえしなければ我はその存在を赦そう。その存在がここに来るまで、幾らかかる? 人間に先手を取られるのが癪だ。させないようにしておいてやる」

 

 「ありがと」と返し、アイリは自らで生成したホムンクルスを無線で呼び出す。かけた直後は発砲音が鳴り響いていたが、それはすぐに消え『あ、アイリじゃないか。連絡なんて珍しい。……失礼、雇い主さんの方がいいんだっけ?』と明るい口調で返事が来た。

 

アイリ「そっちの首尾は?」

 

『今のところ順調。ただ東第一泊地方面は全滅。百人以上派遣したのに返ってきたのはゼロ。どうします?向かわせますか?』

 

アイリ「いや必要はない……今そっちに動ける人数は何人いる?」

 

『僕とあと三人かな。何か必要? 道具が必要だったら言ってよ。あんまり――』

 

アイリ「この前に買い与えた携帯を持ってこい」

 

 「え?いいけど何をするの?」とベリィことホムンクルスの少年、ベリアルが聞く。二拍おいてからアイリは楽しそうな声色でつぶやいた。「公開処刑だよ。見せしめの為の、ね」と。続けて「全員殺す。艦娘は拷問を行いながら、人間は私の力で蘇生を繰り返しながら……世界に向けて放送してやるの」夢や目標を語る子供のように即興で考えついた内容を話す。

 

『それは僕にもやらせてくれるの?』

 

アイリ「勿論。ここの資材を使って、全員殺すんだ。邪魔が入ったら、それまでさ。その為のセキュリティ対策もしてある」

 

『それじゃ後でまた落ち合おうよ』

 

 通信を終え、辺りを見渡すと周囲十メートル四方に銃、砲先を構えた艦娘や憲兵が睨みつけていた。それだけじゃない。いつの間にか空中には報道局のヘリが数機飛んで自分達の事を取っているじゃないか。非常に目障りだ。視界を飛び交うハエや蚊のように思える。

 

アイリ「カイン、上のハエを落とすのは許可する。見せしめに派手に殺せ」

カイン「今更。だが、そうだな。落とすのは許可を受けたが、場所は我が決めてもいいな?」

 

 「勝手にどうぞ」ぶっきらぼうに言うと、カインはふんと鼻を鳴らした直後、背中から四枚の黒い翼を生やし空へ舞い上がる。風圧の所為でフードが脱げ、頭に生えた黒い三本の角が見えてしまった。左右の二本は後ろへ伸びており、額には一本の角が生えていた。ヘリの操縦士もリポーターも高速で飛来する堕天使のようなそれを見て硬直していた。

 

カイン「我が姿に魅了されていろ……これが貴様らが認識する最後の存在ということを、なぁ!」

 

 ヘリの上に高速で移動すると上から高速回転するプロペラを破壊した。機動力を失った鉄の塊(ヘリ)はその機体を縦にして落下し、そのまま大爆発を引き起こす。轟音と爆炎、煙などで周囲は騒然とするもカインはもの足なさを感じたのか、逃げるように飛行するヘリコプターの元までいくと扉を無理矢理こじ開けて、外へ放り投げる。

 

 機内が騒がしくなるとけらけらと笑いながら、広くもない機内を歩いて操縦桿の位置する場所へたどり着く。茫然としている操縦士をごと操縦桿を思いきり殴り壊す。すると強い衝撃を与えられ、操縦桿はギギギと異音を立てて動かなくなった。それで、だ。悲鳴を上げる人間たちごと自らも落下することに決めた。それもアイリの居る場所に。

 

カイン「アイリィ! 我は貴様の元へ落ちる。我を待たせた罰だと甘んじて受けろ、さっき決めたモノだ。名づけるとしたら、そう。【アイアンフォール】だ」

 

 中にいる人間の気持ちなど考えずに、思いきり爆発させる。本来爆発したらそれは下へ落下するものだが、カインが搭乗しているヘリコプターは軌道を変えて泊地内のアイリの居る場所へ真っ先に落ちていく。そのスピードも上がり、地上付近では大気圏に突入し激しく燃えるものの様に炎の塊となっていた。

 

 近づいて来たソレを見ては憲兵も艦娘も大慌てで建物の中に避難する。そこに残ったのはアイリだけとなった時、炎の塊は衝突する。音が消える。衝突のせいか耳がおかしくなったのかは分からないが。周囲の者同士でなにか話そうにも聞こえない――表情も霞んできていた。憲兵の一人がその異変を誰よりも早く感じ取った、その時だ。

 

 ―――ィィィィイン

 

 遮蔽物となる建物の中にいるのに、耳の奥で甲高い音が鳴り始めた。そして気が付いたら、異変に気が付いた憲兵は宙を舞っていた。空中に飛ぶという経験は今までなかったが、下から打ちあがる風によってぐるんと身体が一回転する。その隙に見えたのは半壊する建物、同じように舞い上がる仲間と艦娘。そしてより目を惹いたのは大きく窪んだ場所に立つ二人の少女だった。「あ、これが――」そう思った瞬間、目の前に巨大な破片が見えて意識は途切れた。

 

 

アイリ「私じゃなかったら死んでいたよ。で、そこのゴミはどうするの?」

カイン「既に死んでおる。生ごみではないだけマシだと思え。まあ焼けても臭くてかなわないが」

 

アイリ「人間はダメになったね。あの高さから落ちて死んでいると思うし。打ちあがった艦娘でも……死ぬのかな?」

 

 「おーい」とこちらにかける声があった。アイリは来たか、と思いカインはまだ生き残りがいたのかと関心していた。近づいてくる数は四人。アイリが作り出したホムンクルスのベリアルとその部下三名。ベリアルは三名の部下に待機命令を出して、二人の元まで駆けて行く。待機命令を受けた三名は思い思いのままに周囲を見渡す。それは一夜明ける前とではまったく異なるほどであった。綺麗だった建物の面影はなく、周囲には血がこびりついた瓦礫が散乱していた。それを見て息を呑むのを忘れて戦慄した。自分の上司というか雇い主は明らかに常軌を逸している。

 

ベリアル「おーい。携帯持ってきて、適当なサイトで配信を行えってさ。サイトに入ったら、一度僕に携帯貸して。アイリさんが邪魔されないようにしてくれるんだって」

 

 そういうと三人の部下は自身の携帯で好きなサイトへ入ってはライブ配信を開始できる状態になった。そしてベリアルの指示通りに渡してから数分後に返された。すぐに携帯を確認するも異変や異常はなくすぐにも配信を始めれそうであった。「すぐに始められますが」というと「じゃあやっていいよ。だけど、素顔は出さないでね」と指示をしそれを受けた部下は一斉に始めた。

 

『やっほー! みんな見てる? これから始めるのは、提督と艦娘の拷問及び処刑だよ』

 

 開幕の挨拶を短めに済ませた後に淡々と内容を紹介していく。隠れているものを見つけて、日向へ引きずりだしてからゆっくりと始めるようにいう。一人一人がどうなっていくか、それを知らしめるためにも楽しそうに聞き取りやすい様にゆっくりと説明する。悲鳴と絶望を視聴者に伝える為にも。『それじゃあ』と言いながら泊地内を散策しては死体を移していく。状態の悪いもの、良いもの。機密だろうが、なんだろうが関係なしに映していく。

 

 

 午前九時 五十二分 葉月の隠れ家にて。

 

 それは芙二も見ていた。葉月から聞いた後に冷葉が教えてくれた情報の中にそれがあった。「あいつら……」と歯ぎしりをしながらすぐに駆け付けようとするも地下なので一度上がる必要がある。そのままで上がったら地下が崩れて生き埋めになる可能性があるからだ。芙二の能力なら生存は可能だが、今になって不調となりつつあることを実感していた。

 

 

芙二「葉月さん、カインとアイリを殺してしまうかもしれない。それぐらいに(オレ)は腹が立っているっ」

葉月「ダメとは言えないけど……まずは人質の確保を最優先に。艦娘や提督がいなくなったら海の脅威に立ち向かえないからね。それと最期は二人を俺の元まで連れて来てね?」

 

 何も返せない状況でとりあえず地上に駆け上がり【祟殻龍骸】を使用し空へ()()()行ってしまった。一度来たことのある泊地まで転移すれば一瞬であったのに、このときの芙二はそんな事が思いつかないほど激情に駆られていた。

 

芙二「吾の力を一部、集約させる……よし、これでいい。さぁ空から降る一本の災厄をここに。クズ共ごと飛び散れ――赫淵一閃(かくえんいっせん)

 

 唱えた瞬間、芙二の身体は赤い光を帯び始める。急激に上空に上がるそれは射出されたロケットのようでもある。だが、今は東第四泊地にいるテロリスト共の生放送の影響により誰もそれを見てはいなかった。一部を除いてだが。

 

 ジェット機以上の速度で飛行しているとすぐに目的地へ到着した。「さぁて、急降下といきますか」そう言っては翼をたたみ、空中で頭を下にする。そして真下に一直線で落ちていく。赤く赤く燃えたようなそれは圧倒的な光を放ちながら、地上に向かう。

 

 ゴミ共はすぐ目の前だ。

 




スキル:【赫焉一閃(かくえんいっせん)】→【赫淵一閃(かくえんいっせん)

読み方は変わらない。
バル〇ァルクの襲撃のようなもの。
すべてを吹き飛ばす一撃。
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