とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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五章 42話『衝突する勢力①』

吹雪「提督! 資材保管倉庫から火が出ています……!このままでは二次被害が――」

 

 息も絶え絶えにしながら執務室へ入ってきたのは吹雪である。神城は手に簡単であるが被害状況をまとめた紙を持ちながら、吹雪へ詳しいことを聞こうとした。だが彼女が続きを言い終える前に建物を揺らすほどの衝撃が伝わってきた。

 

神城「な、なんだ。この揺れは……!?」

蒼龍「失礼します、提督!倉庫の消火が間に合わず爆発しました! 私は近くにいなかったので被害の詳細は分かりません。しかしこちらが不利な戦況になったのは明確かと!」

 

神城「ああ、くっそ……参ったな、これは。深海棲艦の数はどうなった?観測隊の報告にあった姫級は確認できなかったが、それでもかなりの数を葬ったと思うが」

蒼龍「そうですね。我々はほとんど休憩が取れずにいますが、千体は沈めたかと。ですがもう一度言いますが、さきほど資材保管倉庫が爆発した為に我々は窮地へ追い込まれたと見た方がいいです」

 

 吹雪と蒼龍は神城の指示を待つ。

 ううん、と苦しそうに唸る。次から次へと来る想定外の内容が神城を苦しめ、気力を削ぐ。

 一つの案が完成する前に、新しいことが入ってくるお陰で頭が回らない。

 

 とりあえず、と一言。

 ほんとはこうした方がいいだろう、そんな事を考える前に指示を出す。

 

神城「吹雪は蒼龍と共に資材の残りを確認を。近くに誰かいたら、そのものと共に動いてくれ。さっきから艦載機が多すぎる。その点を踏まえるとこちらに空母棲鬼や装甲空母姫が来ている可能性がある。いつでも邀撃できる準備を全員へ通達しておいてくれ」

 

蒼龍「承知いたしました。提督はどうされますか」

 

 指示を受けた吹雪は頷き、蒼龍は質問をする。目を瞑り、首を捻りながら唸る。

 そのとき持っていた紙がくしゃくしゃになっていくのを二人は見落とさなかった。

 

神城「一か八かの賭けに出る。失敗しても、誰も犠牲にならない。そんな内容だ」

 

 最近は見せなかった表情に二人は不安感を抱く。

 二人が言葉の真意を聞こうとするのだが、神城は二人の手を握りながら執務室の外へ導いた。

 

 ちょっと、提督――半ば強制的に廊下へ出され、振り返ったときに扉は勢いよく閉じられる。

 二人は何か言いたげであったが受けた指示を遂行するために動き出した。

 

神城「さて、俺が言い出しっぺだがそれをやらずして共倒れなど、いち提督として情けない限りだ」

 

 深海棲艦の度重なる空襲により電話線が切断された今、頼みの綱は携帯のみとなった。

 海軍へ勤めて長い先輩方である二人へ要請をしようと液晶をタップする。

 

 

 

 結果を先に伝えると要請は通ったのだ。

 東第二鎮守府の音宮、東第四泊地の月見は神城の望みを快諾してくれた。

 上記の二人が担当する箇所へはあまり深海棲艦が攻めて来ておらず、最低限の人員さえいれば何とかなる。そういった状況であった。

 

 深海棲艦が密集している第三や第一とは大きく違い、戦力を持て余している状況でもある。そして戦いを物凄く好む艦娘がいる、と言われる彼女らは退屈さを感じていた。失礼を承知で言うが皆、戦いに狂っている。それが艦娘としての人生の中で最も生を実感するのだ。第二にも第四にも、そういった艦娘は一定数配属されており戦闘での貢献度が凄まじい。

 

 そんな彼女らを最低限の人員で事足りる場所で腐らせておくのは勿体ない、そう両提督は考えていた。神城との連絡を終えるとすぐに暇を持て余している艦娘たちへ声をかけるように伝達する。

 

『ふぅん?後輩の鎮守府が押され気味でよろしくないから、手伝えと?いいぞ。ついでに私が喝を入れてやろう!』

 

 報告を聞いて、自室のソファでだらけていた利根だが姿勢を正しながら起き上がる。

 伝達要員として来ていた筑摩は音宮へ自身の姉がやる気であることを伝える。

 

 利根はいつも以上に服をしっかりきて、工廠へ向かった。

 

『へぇ?なんで第三ばかり贔屓しているのでしょうか?こっちはカス同然の戦力を送られて不満が爆発寸前なんです』

 

『ちょ、鳥海!少しは落ち着けって……そんなに苛立っても解決しないって』

 

 摩耶から内容を聞かされた高雄型末妹である鳥海は笑顔で毒を吐く。

 妹の言葉遣いの悪さに眉を顰めながらもどっちなのかを聞こうとしたとき。

 

『勿論、OKですよ。ようやくストレス発散できそう。摩耶、私は恥も外聞も今回は無視します。気にしません。高雄さんや愛宕さんに何か言われたらお願いしますね』

 

 ストレッチしながら言葉を返す。摩耶は面倒くさそうに溜息を吐きながら月見へ連絡する。

 甚大な被害を受けた第四であってもこのような艦娘はいるのだ。

 泊地の復興はまだまだ続くし、何なら戦力もまだ十分に回復してない。今回は結果的に攻撃を受ける事はなかったものの、憤りを制御できない艦娘は多い。

 

 勝手な出撃はご法度である。だからこそ神城の要請は非常に有り難いことであった。

 第二も第四も出撃させられるメンバーに限りはあるが、それでも数々の戦場で勝利を収めた強者を含んだ艦隊が出来上がっていく。

 

 音宮と月見からの連絡を受けた神城は束の間の休息を取る。

 

神城「よ、良かった。これなら何とか持ち越せる。誰も犠牲にならなくて済む」

 

 一区切りついた、そう溜息を吐きながらアイマスクを取り出す。

 慣れた手つきで目蓋の上に置き、目を瞑った。

 

 

 

 ここは静かな執務室。

 神城以外誰もいない部屋の中で振り返る。

 

 今だけ、亡くなった艦娘たちを想いだす。

 決して忘れてはならない為に。傷も記憶も。

 

 祖父から継承した場所は既に一度廃墟同然となった。

 腐った連中に騙され、奪われ、終わりかけた。

 

 犠牲を出しながら、前に進んだ先で見たものは深海化した仲間である。 

 自らも殺されそうになったが、神と呼ぶに相応しい存在が現れ、救いを施した。

 

 だが失った者は二度と戻ってこない。

 各海で散った仲間は骨も拾えなかった。

 

 だが、その存在はいづれ全てを拾うと約束した。

 一つとして取りこぼさず。元に戻してやる。力強い眼差しで諭したのに。

 

 しかしその存在は死んだ。

 未曾有の災害とも呼べる存在を葬って。

 

 約束は果たされない。神と呼べる存在は消え、いつも通りの日常が来る。

 世界のどこかで蠢く闇。蔓延る混沌。非日常は幻想へ還る。

 

 どうして新米提督なんてやっているのか分からない、存在の名を無意識に呟く。

 

神城「芙二、凌也。本当に死んでしまったのか……?」

 

 その言葉はあまりにも小さく、弱々しいものであった。




新年あけましておめでとうございます。
エタらないように気をつけながら書いていこうと思います。
ちょっと内容が作者の脳内でとびとびになっているのは情けない話です。
駄作に最後までお付き合いしていただけると幸いです。
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