突然、深海棲艦の艦載機の一部が水葬姫がぶん殴った深海棲艦目掛けて急降下爆撃を行う。
けたたましい音と共に燃え上がる敵艦隊。最期の悲鳴すらかき消すほどの高威力を目の当たりにした水葬姫たちは何がなんだか分からない。
一つ言えることは、武蔵のような深海棲艦がいて、この惨状はそいつの仕業ということだ。実にありがたい、と思っていた。深海棲艦の艦隊はどうしてか、消えない。
水葬姫が統率者二名のうち一名を葬ったというのに、深海棲艦は消えずまた侵攻も止まるところを知らない。このままではジリ貧になると思っていた矢先のこの出来事。
鳥海「一瞬なにが起こったのか、分からなかったけど今のうちに片付けてしまいましょう!」
不知火「そうですね。敵が少なくなった今がチャンスですね」
鳥海と不知火の会話を聞いていた游も賛成気味といった様子で、的確に深海棲艦の急所を潰していく。水葬姫は
その姿は白くなり、抜け殻のようであった。仮面の部分がボロボロと剥がれ表情が見える。彼女への黙祷を捧げようとした手前、声をかけられる。
?「武蔵さんとあなたを狙っていたから援護をしたのだけど、大丈夫?」
水葬姫「えっと君は? 私は
先端が黒い角を頭に生やした白い髪の少女は「
瑞鶴「もしかしてだけど、間に合わなかった?」
水葬姫は首を横に振る。
「そう」瑞鶴は短く返事をし、今後について問う。
水葬姫「ん~……そうだね。戦艦神棲姫を逃しちゃったから、倒さないと。あいつ、私たちを恨むというよりかは人間を恨んでたよ」
瑞鶴「会話したの?」
「いや雰囲気。前の私とそっくりだったんだ」という。「ちょっとごめんね」としゃがみ込み、武蔵へ何かを言っている。瑞鶴は無粋な真似をせず、ただその行動が終わるまで待つ。
しばらくすると戦闘の音が聞こえなくなっていく。深海棲艦の撃破が済んでいる合図だと二人は感じていた。水葬姫は立ちあがって、待たせたねと言った。ついでに海乱鬼が奪取した十文字槍を取り戻す。
武蔵が築いた足場をのぼって辺りを見渡しながら「これ、全部武蔵さんが?」と聞く。
水葬姫「そうだよ。この足場もそこらじゅうで散らばる深海棲艦の残骸は、ね。あっちは私たちがやったの。艦娘生の中で一番倒したかな~」
瑞鶴「え、艦娘なの?その見た目で?うそでしょ……」
水葬姫「やっぱそう思うよね。でもこの姿は深海化を克服した姿なんだって!人によって違うみたいだけど、人の手が加わってるから私と游は浮いて見えちゃうよね」
瑞鶴「艦娘を弄る人がいるの?心当たりがあるのだけど」
水葬姫「私は数十人かな。色々実験させられてたし、提督には話してないけど鈍いんだよね、痛覚がっふぐっ!?」
水葬姫を抱きしめる瑞鶴。話しを途中で遮られ、少し驚く水葬姫。「もう十分。これ以上何も言わなくていいの」と言われてしまい悶々とする。本人的にはそこまで深刻な話ではないと思っていたが、瑞鶴の行動を見て初めて他人に話したことを少し後悔していた。
水葬姫「いやな事を聞かせちゃった?ごめんね、瑞鶴」
瑞鶴「私の方こそ、ごめんなさい。急に抱きついたりして……苦しかったでしょ?翔鶴
水葬姫「全然苦しくないよ。むしろ温かい気持ちになった。ありがとう」
へへ、と笑う水葬姫を見て恥ずかしさに少し頬を赤らめる瑞鶴。
「水葬姫さん、終わりましたよ~!」と、少し遠くから声が聞こえる。声のする方を見ると鳥海、不知火、游の三名がゆっくりと歩いてくる。傍には深海棲艦の気配は隣を除いてない。
「凄いわね。あの数を短時間で」と目を丸くして、声を漏らす。水葬姫は自慢げに頷く。
水葬姫と共に今後について、話そうとした時だ。彼女の背後から何か嫌な気配を察知した瑞鶴が押しのける。急に押しのけられた水葬姫は体勢を崩して、海面に手をつく。
水葬姫「瑞鶴? 一体どうしたっていうの」
ザバァァアアッ!!
水葬姫の目の前で大きな水飛沫が飛び上がり、あまりの事に小さな悲鳴をあげて顔を顰め手のひらで守るように隠す。水と共に長く何か硬いものが腹部にあたって、転がる。
次第に収まる水飛沫から目線を外し、腹部にあたって転がるソレを見た途端に絶叫が響く。
水葬姫「瑞鶴ッ!! 大丈夫ッ……お、おまえはァッ!」
『貴様らをリベラ様の元へは絶対に行かせん。ふむ、瑞鶴も武蔵も私たちを裏切ったのか。ならば、そのまま糧になるがいい。そして地獄で後悔しろ』
背から生える蛸のような触腕で瑞鶴の貫き、拘束する北方戦艦神棲鬼がいた。だが、万全な状態ではなく服の隙間から肉や骨が見える。少し話すたびに傷口から血が噴き出して表情を曇らせる。
瑞鶴「すい、そうき。逃げて、こいつはもう、深海棲艦でも、艦娘でもない。正真正銘の――」
『ほう! 私の正体に気づくとは流石中途半端に克服した奴だな。しかしもう喋るな、さっきから虫唾が走って仕方がない』
そういうと瑞鶴の首をそのまま締め上げる。
瑞鶴からはギュブブ、と小さな音が聞こえパタリと動かなくなる。
水葬姫「なあ、その手を離せよ」
『離さない。肉も骨も全て糧にすると決めている。ナガトよ、貴様の命も頂くぞ』
海面から僅かに顔を出す触手の塊は、海上に飛び出す。上部が少しゆるみ、中から戦艦棲姫の顔が見える。ガチガチと歯を鳴らし、恐怖に染まるその顔はこれからの全てを物語っている。
『……はい。それで気が済むのならッ』
言い終わる瞬間、触手の塊がしぼみ、ゴキュリと砕ける音を鳴らす。隙間から赤い液体が垂れ始めるとそれを確認した北方戦艦神棲鬼は大声で嗤い始める。
『貴様らも我が糧にしてやろう。これ以上の悦びなど、ないだろう?』
そういい、無数の黒い触手を伸ばす。水葬姫は游の方を向くと、顔を青くさせ立ち止まっている。「游、早く逃げよう!こいつはダメだ!」と叫ぶも周囲から無数の音が聞こえ始める。
音の方へ視線を送ると無数の深海棲艦がこちらを見ている。今までの比ではないほどの艦隊が水葬姫たちを取り囲んでいた。