※カイン(天獄龍)vsカイン(冥獄龍)戦は「」の前に名前を振らずにいきます。
予めご了承ください。
「我と同じ姿をするとは、気に食わん。それに魂の片割れとはいえ、赦せぬ所業よ」
『なぁにが気に食わんだ。それは我のセリフだ。あの邪悪な存在自体、貴様と共々消してやろう』
互いに翼を上下に動かさずに浮遊する。アイリから創られた龍神、冥獄龍カインと芙二から
天と冥、真逆の言葉を持つ二つの分かたれた魂の生存競争が今、開始したのだ。
「行くぞ、もう一人の我よ。互いに悔いのない、死合いを臨もうか」
『フン、死にぞこないはさっさと眠りにつくがいい』
以前のような怒りに身を委ねるのではなく、思考を切り替えながら決定打となる一撃を模索する。拳がダメなら、龍神として至った際に得た能力を用いて武器を作り出し、向かうも弾かれる。しかし諦めずにまた突撃を繰り返し行う。
『くどい! 蚊のような攻撃では、ただ時間をくうだけだ。本来の半分も出ていないような者の攻撃など我には効かぬことを教えてやろう!』
きゅっと身体をやや丸めるような姿勢をとり、エネルギーを自身の中心にかき集め凝縮させていく。それでも
ハルバードの刃が
「……それだけか?我本来の力の五分の一も出せていないように見えるな。アイリから新たな力を授けられたのではないのか?」
『フン、戯言は消滅する寸前であっても言える。あの卑怯者に助けられてなかったら、今頃消滅していたであろう脆弱な命など我の足元にも及ばぬ』
「卑怯者、か。我の目からしてみればあの男は何というか、道化のように見える」
『道化だと?貴様の目は節穴か?それにあのような理の外側にいる邪悪な存在を我は認めぬッ』
凄まじい殺気と共に
チッと舌打ちをして、ハルバードを横一直線にしてガントレットによる攻撃を防ぐ。それだけで衝撃を生み、互いの衣服や髪を大きく揺らす。それから二人による交互の攻防は霊体となった者ですら目で追う事は出来ないほど苛烈な戦いとなっていた。
「なんてことだ…」
「俺たちごと施設を壊滅させたやつは味方なのか?それとも敵か…?」
既に死んでいるはずの人間、艦娘の霊体は繰り広げられる四人の戦いについて言葉を失くしていた。自分達諸共、施設ごと壊滅状態にさせた人物は海へと姿を消し。
海域の空中では翼や羽を生やした女の子同士が互いの得物を手に取り、楽しそうに、狂気的な笑みを浮かべて、あるいは競い合うように高速での戦闘に勤しんでいる。
いつのまにか白髪の少女と灰色髪の少女の攻守は逆転し、ハルバードを持った少女の攻撃頻度が増していく。それでも高速で切り替えられる突き、斬り、打ちの動作の中で白髪の少女は負傷を最低限にするべく努めていることも見て取れる。
「がんばれ」と小さな声が聞こえる。周囲が驚くも死人ゆえに音は生じず、代わりに言葉の出所を探すように視線が全方向に泳ぐ。
応援の言葉を呟いたのは、見た目がボロボロの提督の姿。彼の顔は左目の辺りに包帯が巻かれていた。目の辺りにも赤い染みが滲み痛々しく見える。軍服は所々破け、赤黒い染みが出来ておりこの場で理不尽な目に遭い亡くなったのはその場にいる誰もが理解できた。
しかしどうして、あの人智を越えた者を応援するような言葉が出たのか、彼以外誰も理解が出来ないでいた。自分達を玩び、命を嘲る様に殺した者たちと同類かもしれないのに。
「君はどうして、あの者たちを応援するんだい?」
銀色に光る錨のマークがついた黒い帽子を被り、白いひげを蓄えた白い軍服を着た老人が訊ねる。ボロボロの軍服を着ていた提督である青年は少女たちのうちひとつ、ハルバードを手に取り戦う少女を指差して、言った。
「それは…私が信頼できる人物が用意した切り札だからです」
その言葉を聞いた老人は目を細めて、聞き返した。
「信頼できる人物と切り札、か。テロ事件の首謀者と海へ消えたあの人物の事であるな?」
表情とは裏腹に語気が穏やかな老人の言葉に提督である青年は首を縦に振る。そのジェスチャーだけで他の者には希望の光が差す。青紫色の煙と共に現れた人物と灰色髪の少女は味方である可能性が高いということ。
「ならば、我々は――」
老人が口を開いた直後、一段と大きな音と衝撃が下へいる霊体たちにも伝わる。上へ視線を変えると互いの得物がぶつかり鍔迫り合いをしている姿があった。そして白髪の少女が灰色髪の少女を海へ突き落した。落ちる最中、翼が一枚一枚消失する様は敗北を表している風に見えた。
『はぁ、はぁ……これで我の勝ちということだ。海中へ沈んで消滅する前に回収しに行かねば――ぐあぁぁッ!?』
息も絶え絶えである
気が付けば、目下は闇が発生しており何も見えず、
歯ぎしりをし、激昂して目下の闇へ突入していく。がしかし、すぐに先ほどまで戦っていた二人が闇を突き破るように、何度も衝突して飛び出てきた。
『なんだ――まだ生きているではないかァ!探す手間が省けたというもの!』
「はぁ、元気な小娘だ。勝ちを確信している貴様をはやく打ち負かしたいぞ」
溜息を吐く目の前の相手に対し、
『束ねるは死者の霊魂。命在る境を取り払い、冥獄の神たる我が宣言する。永遠の消失を怖れる霊魂よ、我の糧となることを許す。≪
世に対する未練、そして死への恐れを強く抱く者は
『――あぁ、満たされる。我の中で幾つもの命が混ざり合いひとつになるこの感覚。これもまたひとつの救いか。さぁ、もう一人の我よ!命尽きるまで楽しもうではないか?』
黒い軽鎧に身を包み、赤と黒い紋様が入り混じるガントレットを身に着ける少女が楽しそうな表情をして、