とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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エピローグ②


終幕 2話『エピローグ:口約束とエンディングへ』

 全員の蘇生が完了してから、四日が経過し本土の護送船。島の外が騒がしくなるや否やどっと人が駆け寄ってくる。その中には見知った顔も居り、古の神官服の格好では怪しまれると思い、以前のように白と紺の軍服の姿で場を過ごす。もちろん、血で汚すのを忘れずに。

 

「救護班一斑、到着しました!負傷者の確認と保護を行います!動ける者はこちらに、また動けない者は手をあげて待っていてください!」

 

 到着後、救命士たちが次々に捕虜となっていた提督や艦娘へ話しかけてる。

 本格的に助かったと安堵した者から声をあげて泣き出す者が出てきた。

 押し殺して泣き、生還したことを感謝する者だって見えた。

 

 肉体的には五体満足のように見えるが、精神的なダメージを負い再起不能となった者がそれでも現れてしまう。ギリギリ意思疎通が出来る者だけを先に本土へ送られる。

 

 それを芙二と冷葉は敬礼して見送る。カインは姿が見えないように術を使っているからバレる事はない。彼女にはしばらくこうしてもらうことにした。

 

 だがカインとも会話は出来る。口でも出来るし、テレパシーを飛ばしての会話も可能だ。何かあれば彼女から言ってくるだろうと、芙二は考えていた。

 

「肉体は五体満足といっても、やっぱり直接魂に作用するもんだから不調は出てきちまうか」

「命あるだけ十分だろ。責任を感じてるのか?」

 

「一応な。あんなことして、不完全なのが気にくわないが結局は産まれ持った器の話になっちまうからな……本人が望むなら施してやらなくもない」

 

「ふ、神の施しを直々に受ける事になるなんて、きっと本人も想像してないな。発狂しないようにしてやれよ?もっともおまえがそんなことをするとは微塵も思ってないが」

 

 ハハハと笑う冷葉。芙二は目を細めて、無言で頷く。そういう話をしたことがない為か、無言の肯定を疑問に思ったのか再度確認をする始末である。

 

「やらんよ。本人が望んでも、望まなくても施しなどというのはやらん。治療のようなものか。民間療法にきっとそういうのがあるだろうから。それにあやかるよ」

 

「そっかあ、おまえらしくていいと思ったんだけどな。それにしてもこれからどうなるのかね?」

 

「テロは収束するが戦争は続く。そしてアンタは東第一泊地の現提督として仕事をする。だがまあ今回の戦いで一度轟沈した者の練度は強制的にイチとなる。そのブランクを慣らすことが先かな」

 

 芙二は瓦礫に座り、顎に手を置いて話す。内容の前半部分については頷いたり、自分の考えを口にしてはいた。しかし後半部分を話始めると途端に冷葉からの相槌はめっきり減りなくなった。

 

「冷葉?なにかあっ――」

 

 目線だけを動かしながら、冷葉の方を向くと彼は目を丸くさせて、口を開けフリーズしていた。蘇生のラグが今来たのか?と芙二は呟くが冷葉は微動作にしなかった。

 

「芙二さん、私は少し離れます。何かあったら呼んでください」

 

 その一言を告げると、芙二の目の前から姿を消す。同時にフリーズしていた冷葉が再起動して大きな声を出して「練度が強制的にイチになるってどういうことだよ!」と言った。

 

 島中に響き渡ったのではないかという声量は流石に誰も無視はできなかった。しかも聞き捨てならないワードも入っている。その為か、艦娘や提督からの視線を集める事になった。

 

「まんまだよ。帰ったら後で確認してみてくれ。叢雲と時雨、サラトガ、ヴェールヌイの練度は変わってないかもしれないが、少なくともこの場にアンタと共に来た艦娘の練度はイチだから」

 

「おまえには分かるのか?それも能力みたいなものなのか?」

 

「いや先に見てただけ。いつもは建造後、または配属後に艦娘をデバイスに登録することで端末で状態や練度が見えるだろ?」

 

 その言葉に頷く。そこで提督になるには”妖精さんの姿が見えないと話にならない”という条件が出てくる。造りだされた艦娘をデバイスに登録するのは誰でもできるが、妖精さんが出すその艦娘のコードと言うのはそれが見える提督ではないといけない。

 

 結果として、素質を持つ者だけが提督となる。艦娘自身にも自分のコードは見えないし、提督の口から公言されなければ知る由はない。

 

 そこで話を戻すが、芙二だけは自身の能力でデバイスを通じて知る必要はない。魂と言う本人の情報が全て入っているモノを通じて見ることが出来る。故に姿が変わっていたとしても、その魂に干渉し、覗き視る事で判別が出来る。

 

「艦娘自身が持つコードと練度、肉体、精神の状態くらいかな。(オレ)が視えるのは。それで話を続けるけど轟沈した艦娘についてはこの世界ではどうなるんだっけか?」

 

「消滅するか、深海化して深海棲艦としてこの世界に牙を剥く存在となる。そして二度と生き返ることはない。同一の個体がその場所から生まれる事も受け入れられることもない」

 

「だから東第一泊地(うち)の時雨やサラトガは異例ということになるのが理解できる。第三鎮守府や第四泊地での出来事もそうだな。だがその三つの場所で起きた事象は轟沈というべきではないと思っている」

 

 冷葉は時雨やサラトガ、第三鎮守府での話を思い出しながら頷いていた。気が付けば二人の傍には第一泊地所属の艦娘やその他所属の艦娘が集まってきていた。轟沈した、深海化した艦娘が艦娘として生還する。その驚くべきニュースは瞬く間に広まっていて誰もが知る事となっていた。

 

 しかし芙二を知らない者が上記の発言を耳にして、口をつくように「それは?」と聞いていた。

 

「轟沈ではないと(オレ)は思っている。前者はいわゆる仮死状態と。後者というか今回のように特殊な事例は轟沈として処理されたんじゃないかなと思っている。しかし区別が難しい部分ではあるけれどね」

 

「どうしてそういう風に思ったんですか?」

 

「んー、口外しないでほしいんだけど(オレ)が深海化から彼女らを艦娘に戻した張本人だからね。あとは説明不要で、いいよな?」

 

 その言葉の後には沈黙が生じる。それに笑ってとんでもないことを口にする人物だと認識させていた。この男がいたら、と。しかし察知したように芙二は話し始める。

 

(オレ)は軍を去るし、基本的にこの世界の法則に反することはしないかなあ。いやうちの艦娘達に少し手心を加えたことは認めるよ。第三の艦娘も成り行き、第四もそうだな。あのクソアマが関わっていたからな……このままだと世界が滅びる未来は確定したし。しゃーないか」

 

「その力を持っているのに、手助けはしないと仰るのですね。その力があれば、取り戻しが効かなくなった者も返ってくるかもしれない。それでもですか?」

 

「それでも断る。ああ報酬とかそういう話じゃない。――っと、なんだその眼。何が何でもってことか?武力行使は好きじゃない。それは理解してくれるかい?」

 

 口調の変化を見逃さない。物腰柔らかに見えて、相手の首に刃を突き立てるような圧を感じる。

 またにこりと笑う顔の裏には狂気や悦楽があるような気がする。

 

「分かりました。でも、どうしてそこまでして断るんですか」

 

「理由は簡単、面倒事には関わりたくない。冷葉や東第一泊地の人間の話だったら聞いてやる、友人だからな。あとはこの世界に招いたやつを探すこったな」

 

 哀愁漂う表情。芙二の話を聞いていた艦娘の一部はにやにやしていたり、抱きつこうとして他の艦娘に制されていた。今まで会話していた艦娘は”招いた”という単語に引っ掛かっていた。

 

「あの芙二さん、招いたというのは」

 

「まぁその話はおいおい。アンタが次に生きて、会えることを祈ってるよ。それで話を元に戻すけど……練度がイチになったからって弱くなるわけではないと思うよ。あとは反動かな」

 

「反動、ですか?」

 

「死から蘇った反動。知識はあるけど、身体がついていかないって感じか?」

 

 次から次へと質問が飛んでくる。しまいには抱きついてくる艦娘も現れる。一分も経たずに四肢は拘束され、立っていられなくなり座り込む。このままでは埒が明かないと感じた芙二が「まぁともあれ!」と一際大声を出す。

 

「生きていてよかったじゃないか。冷葉、あとで会おう」

 

 抱きつく艦娘を剥がして、次々に並べる。それぞれ頭を撫でながら「あっちでならもっと話せるよ」と説得させる。

 

「救護班の皆さん、時間をとってしまってすみません。みんなを任せますね。では、失礼します」

 

「いっいや、あなたこそ必要だと思うのですが!確か殉職と報じられた、()()()()()()()()()()であるあなたこそ!そのまま去ると言うのなら、やむを得ません!」

 

 ひとりの救護班の女性が無線機で何処かに連絡をしながら、ホイッスルを勢いよく吹く。

 ピュィィイーー!!と甲高い音が聞こえると同時に芙二の周囲に憲兵が現れ銃口を向ける。

 

「重要参考人候補を逃すな!主犯格と繋がっているという情報もある!今逃げるということは、肯定されてもいいということだな?」

 

「逃げさせて堪るか、決して逃がさない。許せない。こんな男が提督であるという事実が」

 

「重要参考人の傍から離れてください!みんな、離れて!艦娘も提督も離れて!」

 

 憲兵の指示により、芙二の傍から勢いよく離れていく。冷葉は困惑した顔でゆっくりと離れていく。しかし本人は何も思っておらず、一歩踏み出した瞬間。銃声が響き、一発の弾丸が踏み出したつま先を掠めた。

 

「動くな!貴様、この銃が怖くないのか、ほんとに人間か!」

 

 周囲からは悲鳴が上がり、憲兵は叫んで静止を命令する。しかし芙二は気にせず、また一歩踏み出す。拳銃の引き金を引く前にターゲットを見失う。銃口をあちらこちらに向けて探るもいない。

 

「後ろだよ、バァカ。それと命の恩人に銃口を向けるほど、阿呆なのか?」

 

 ある憲兵の後ろに現れた芙二。耳元で息がかかる距離で話された憲兵は正気を失ったのか、息のかかった耳を抑えて振り向きながら即発砲する。

 

「あーっぶねえなァッ!」

 

 ガキィィインッ!!

 

 弾丸を跳ね返される音が響く。否、落ちた弾はツマからケツまで真っ二つに割れている。そして銃を握る腕がゆっくりとずれて落ちていく。いつの間にか芙二の手には刀が握られていた。

 

 ベチャっと水っぽい音が聞こえる。からんからんと音をたてて転がる銃を見て、後ずさる。

 

「おおお、おっおれの腕がぁああああ!!」

 

 目の前に両腕を寄せて、噴水のように血が噴き出る腕を見て叫ばずにいられない。

 

 「黙れよ、なぁ」冷たい声で憲兵の手を踏みつけて、泣き叫ぶ憲兵を見下ろす。血と涙、鼻水でぐちゃぐちゃになった憲兵を見つめて「空間ごと斬られたいか?」と訊く。

 

「……っそ、そこまでするなら鎮圧させていただきます」

 

 全員が芙二へ銃口を向けて、構える。艦娘と提督が更に離れる所か船へ乗せられていく。芙二はひとつの考えが思いつく。内容は不死への挑戦、である。

 

 刀を鞘に納め、身体のストレッチを開始する。呑気にストレッチをする芙二を見て、舐められていると感じたうちの一人が数発、発砲する。

 

「ストレッチ終わるまで待てねえのか、よぉ!」

 

 再び刀を抜いて、ことごとく弾丸を弾くついでに発砲した憲兵へ跳ぶ。そして軽やかな動作で四肢を切り落とす。刃についた血や体液を振り落とすと再び鞘へ納める。

 

 悲鳴の大合唱。四肢を落とされた者は陸に打ちあがった魚のように血を振り撒きながら跳ねる。やがて蟹のように泡を吹いて、震え始める。その他の憲兵も銃口を下ろし、青い顔をして膝をつく者、吐き気を抑えられない者も現れる。

 

 紫色の長髪。つり目の中から鮮やかな翠色が見える。長身の憲兵がひとり、穏やかな声色で近づいてくる。この阿鼻叫喚の地獄の中で飄々とした様子は異常と判断されかねない。

 

「やあ芙二君、楽しそうなことしてるね?」

 

 紫月の登場により、絶望に塗れた表情に希望が灯る。「か、神威さん!この重要参考人をひっとらえてーー」という言葉に反応することなく、芙二への動向を伺っていた。

 

「楽しそうに見えるか?事件を解決に治めた者にとって、酷い言いがかりを説き伏せたんだよ」

 

「……説き伏せた、ね。この地獄を作り出しておいて?彼らは助かるの?きっと君の事だから治したりはするんだろう?」

 

「まぁな。いい加減聞き飽きたところだ。元の状態に戻してやるか」

 

 紫月の態度にお見通しかと溜息を吐いて、親指と人差し指を擦り合わせて鳴らす。その瞬間、血や転がった部位が消えていき、切り落とされた部分は元に戻っていた。

 

「なにをしていたの?」

 

「幻覚。集団幻覚。斬られたら、斬れるよな。あった部分が失われたら、どうなるか。本人の想像力が豊かな分ダメージを負う。いや戦争を経験している人間には酷だったかもしれないな。実際、おまえにはどう見えた?」

 

 再び上がる悲鳴を無視して、紫月に問いかける。

 

「血だまりが出来て、動かなくなった憲兵がそこらじゅうにいたかな。でも彼らも悪いと僕は思うよ。君相手にそんな姿勢をする意味を僕が知らないわけないじゃないか。所謂、初見殺しだね」

 

 続けて「そうだろう?」と芙二の眼前に指を差した。その表情は自信ありげであった。眼は恐怖や未知の物を見る眼差しではなく真っ直ぐなものであった。

 

「まあそうだな、初見殺しだ。(オレ)がそもそも人を理由もなく殺すわけないだろ」

 

「今の君は、そう見えないなー。本当に僕が知る君だろうけど……うん。このまま大人しく拘束されてくれるわけないよね?」

 

「ないな! これからやることがあるからよ。それでもダメって文句つけてくるなら、力づくで解決するか?いいぞ、今度は幻覚じゃなくて本物の地獄を作ろうか?」

 

 ケタケタ、笑う仕草に紫月以外の憲兵は攻撃的な姿勢を見せる。涙と鼻水でぐちゃぐちゃな憲兵二人も持ち直しており、いつでも臨めるといった具合である。それよりも最初よりも人数が多くなってきているのは気のせいだろうか。

 

「紫月殿!早く指示を!」

「神威殿!我ら、いつでも行動可能です!」

「神威さんがいたら、安心だな!重要参考人を逃がすなよ!」

 

 他の憲兵の言葉に耳を傾けながら、腕を組んで考えていた。元々底の見えない相手だったのに、更に底が見えなくなったのだ。芙二も口でもああいっているが、確実に作るだろう。即死させない空間とかを作り出して、肉体や精神へ干渉して殺し合いすらさせそうである。

 

「芙二君」

「吾はどっちでもいいぞ。殺し合う必要もないしな。血を望むのであれば、だが」

 

 どっちでもいい、というのは本心だろう。しかしならば、正解はひとつしかない。

 

「今度……今度陸軍の方へ出向いてくれるって約束してくれるかい?」

「分かった。予定をあけたら、向かおうか。前後してしまうかもしれないが、少しお話と行こう」

 

 互いに握手をする。しかし他の憲兵からは不満の声があがる。その声を聞いて紫月は「どうせ、今すぐに取り調べなんて出来やしないからね」と呟く。芙二はふ、と僅かに口角をあげて「それもそうだな」と呟き、歩いていく。

 

「よし、僕らも本土へ帰ろう。これ以上、被害を出す前に撤退する。君たちの不満も分かりはするが、今は本土へ帰ろうか。約束もしてくれたわけだしね!」

 

「口約束じゃないですか!相手が破るっていうことだって考えられますよ!」

 

「彼はしないよ。僕が保証する。まぁまぁ僕たちは僕たちのすべきことをしようよ、ね?」

 

 にっこりと目がなくなるほどの笑顔で言う。

 その様子に紫月に食って掛かった女憲兵は目蓋を閉じて溜息を吐き、無言になる。それは肯定と捉えた紫月は他の憲兵へ指示を出す。指示を聞いた憲兵たちは大急ぎで任務にあたるのだった。

 

「また後でね、芙二君」

 

 彼が去っていった方向へ声をかけると、自らの任務に戻るのであった。

 

 

 島のはずれにて。

 

 ここは護送船が停泊してある位置から反対にある。しかし誰かが来ては迷惑なので、簡易結界を張り巡らす。大きさは畳10枚ほどの別エリア。そこに僅かな怨念魂晶を四隅に配置し近づくだけで鳥肌が立ち、動悸がする状態にもってきた。しかしカインは見当たらないので探して少し歩く。

 

 森を抜けたその先、斜面の先にて鎧姿ではなく白いフード付きスカートの彼女がいた。座り込んで足を宙へ投げ出して、ぷらぷらとさせている。

 何も言わず、ただ海を眺めている。声を発する前に気づいたようだ。

 

「終わりましたか?何やら物騒な音が聞こえてましたが」

 

 一言「終わった」と返事をする。カインはゆっくりと立ち上がり、振り向く。ふいに風でフードが脱げて彼女の表情が露わになった。眼がいっぱいまで潤んでおり、ずずっと鼻を鳴らす。泣くまいと必死に堪えていても、防波堤を越える波のように涙が頬を伝うが汗を拭うように擦っていた。

 

 「……今ならいいぞ。誰も聞かないからな」と提案するも彼女は頭を何度も振って否定する。

 

「いいえ、大丈夫。大丈夫ですので本題へ入りましょう?」

「……分かった。これから葉月さん達をここへ招く。アンタの事、結構心配してたからな」

 

 「そうでしょうね、ふふ。攫われたんですもの」とやや諦めの表情で呟きながら、スカートの裾を皺ができるくらい強く握っていた。

 

「あ、もしもし?葉月さんですか?――はい。アイリとカインの鎮圧に成功しました。はい。すぐに向かうのでその場に待機していてください。――え?声が聞きたい?いいですけど」

 

 「はいよ、葉月さんがアンタの声を聞きたいってさ」と携帯電話をカインに渡す。

 

 「も、もしもし?」芙二から手渡された携帯電話越しの葉月の声は優しかった。本気で心配してくれていたと感じ取れるほどの声色。途中途中で聞こえるメイやシェリルの言葉にカインは涙腺が決壊し、すすり泣き始めた。涙声となり、少し聞き取りづらくなった言葉。しかし電話向こうの葉月はゆっくりと返事をしているようであった。

 

「……はい。アイリちゃんの事は残念でしたけど。それで存在したという証明もありますし、たまーに思い出したいと思います。博識で頼りがいのある、みんなのおねえちゃ、んを……」

 

 そこまでいうと芙二に携帯電話を押し付けるように返す。カインはというと、蹲るようにして、火がついたように泣き出した。何か聞こえるので再び、電話口に耳を近づける。

 

「芙二君、早く彼女に会いたい」

 

 という言葉が聞こえてくるや否や芙二の目の前に大きな白い扉が出現する。そして「迎えに行くのは辞めだ」と話ながらドアノブに手を掛けて、回す。

 

 ガチャン、ギィイイーー

 

 施錠の開く音が聞こえると同時に少し錆びた扉がゆっくりと開く音が聞こえる。そして「うわぁ!急になんだ?」という声と共に誰かが扉を通ってこの場に現れた。

 

 扉とそこから出てきた者の存在に気を取られているうちに通話を終了する。段差に躓いて転んだシルエットに対し、軽く会釈をして話しかける。

 

「……お久しぶりです、葉月さん、シェリルさん、メイさん。予定とは別の事をしてしまい、すみませんね。きっとこの方が善いと思ったので」

 

 腰を抑えながら、先に立ち上がる。腰まで長い緑色の髪、やや大きい垂れ眼で色は赤い。すらっと伸びた細身の女性ことシェリルが二人を見て口を開く。

 

「あ、え?芙二君? 生きてる、生きてるのよね?」

 

 芙二が返事をするまえに抱きしめて、豊満な胸で顔を埋める。茶髪にポニーテールと白色のシュシュをつけ、メイド服を着た少女ことメイは蹲り声をあげてなくカインの元へ走る。

 

 黒髪につり目、紺のジャケットを羽織り、灰色のジーパンを履いた青年こと葉月はシェリルの胸で何か言っているのに気が付いて芙二を剥がす。

 シェリルは「親子の再会に水を差さないで」と言うが気にせず芙二の方を向いて話を始めた。

 

「芙二君、それでまだ何かあるんだろう?」

「勿論。これからが真のエンディングといこうではないか!」

 

 再び、指を鳴らす。扉は消え、芙二の目の前には自動で魔法陣が描かれ始める。古代文字のような解読できない文字を魔法陣へ書き込む。文字が書かれた場所から順に輝きを放ち、オーロラのように宙へ浮かび上がる。

 

 シェリルとメイに抱きしめられていたカインであったが、キラキラと光る魔法陣は無視できず頭だけをそこへ向け、何が起こるか分からずにいた。

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