R4 4月20日:サブタイトルを変更しました。
―続き
軽井「え? どういうことですか?」
つい反射的に言い返してしまった。目の前にいる人間のいう事が私には訳が分からなかった。もしかして例の隔離部屋へ行ったらリ級に殺されるとでも言う事か?……それでってことか?何が根拠で言ってるんだろうか。
唐突に死の宣告を受け、軽井の頭は混乱していた。しかし藤尾はそれを見越していたかのような素振りを見せながら続きを話す。
藤尾「あなたには死相が見えてるんですよ。私は人を殺してからそういうものが見えるようになったんですよね。それでなんですけどあの隔離部屋に収容されている個体へ一人で行くのはおすすめ出来ないです。今日は特に」
軽井「でも、ヲ級やル級に武装させてから向かおうと思って……いや、それでもダメか?」
いつもの口調を崩した言葉を使う。少し冷静を欠いてきた時に出てしまう口調だ。
そこまで言われたら隔離部屋を訪れるのを躊躇ってしまうではないか。
どうしてそこまで『不安』にさせる言い方をするんだろうと。
藤尾「ヲ級ちゃんやル級ちゃんはダメです。あれは一人としてあの個体にはカウントされません。せめて一匹か一体です」
軽井「……あの個体はなんだ。あの二人とは違うだろ」
藤尾「そうですね。軽井さん、我々が行っているこの実験についてどう考えますか」
軽井「どうって……人類の未来のために」
藤尾「いやそうじゃなくて。それが生物視線から見たら善か悪かですよ」
軽井「間違いなく悪だろうな。他の命をほぼ選択肢がない状況でいっそう悪くなる方を選ばせている。艦娘や深海棲艦に至っては――」
藤尾「ですね。無垢な生物から見れば我々は悪ですよ。それが何の関係があるのか、と思うかもしれないですが……隔離部屋にいる個体にとって我々はなにに見えますか? またはどういった存在に見えますか?」
軽井「自分の身体を無許可に弄り回す、敵か悪い
藤尾「そうだと思いますよ。それともう一つの要因があります」
軽井「それは艦娘の血液、か?」
藤尾「ですです。艦娘の血液を介して記憶が混ざり合ってる状況かも知れません」
軽井「記憶?」
藤尾「試薬段階の薬でしたっけ? 投与されたのは。私には聞いた話でしかないのですが……あの薬を使ったら深海棲艦に言語能力ともう一つなにかしらの変化が起こるのですよね」
軽井「それが、あの個体の特異だと私は思ったが……他者の記憶を読み解いて自分の力に変換する」
藤尾「全然違うと思いますよ。あの個体はまだ変化の途中の段階で、拒絶反応を示してるんじゃないかと。私は研究者でもなんでもないので観察眼は育っていませんが」
軽井「あれがあいつの特異ではない? では、なんだ、と……あの個体の周囲や自身に纏わりつく黒い液体が特異? あんなおぞましいもの……」
藤尾「それは分からないですね。ただそれも変化の段階に生じたモノだと思ってしまいますが。あの訳の分からない薬を投与したんですよ。きっと我々の想像を遥かに超える事象が発生してもおかしなことはないと思います」
軽井「……藤尾さんを連れて行くメリットは? 私よりも少しは優れているかもしれないが……」
藤尾「私を連れて行くメリット……?そんなもの、人数を増やすだけの要因でしかないです。深海棲艦のような元々頑強な個体を変に魔改造したら手に負えない事になるって分かりますよね?」
軽井「……」
それについては言い返すことも出来なかった。藤尾の言う通りル級やヲ級のような状態はまだマシだ。手に負える段階だからだ。が、しかし今回のようなことはある意味では失敗だと痛感する。
実験動物が手に負えなくなって、永久隔離になる事態はあまり避けたい。
いずれは実戦投入したいと強く思っているからだ。それでも今回の事態のようになる確率は決して低くない。
次はどうするか、と改善点を考えていると続きを藤尾が話し始める。
藤尾「メリットはないですけど、理由ならあります。ヲ級ちゃんやル級ちゃんが好きだからです。甘酒を飲んでいた時の顔と――」
微笑みながら話し出した藤尾を見て意外だ、と軽井は思った。
あの少女愛好快楽殺人鬼でもそういったことを思うのか驚きを隠せなかった。
藤尾「――あの綺麗な身体に私の
途中までは良かったと思うがどこからか、彼女の性癖が混ざってきた段階で驚きが消えうせるのを感じていた。
なか?もしかして
徐々にドン引いていく軽井を余所に藤尾は妄想に耽っていく。
息遣いが荒くなっていくのを見ながら『まぁヲ級とル級はお前なんぞに渡さないがな』と思いながら冷たい視線を送った。
藤尾「ハァッ……ハァッ!あぁ……むむっ! 軽井さん今、私を軽蔑しましたね」
軽井「送ってないです。藤尾さんがついてくる意志が固いのは十分理解しました。ですので、興奮して耽っていたときに出た液体を拭ってください」
そういって部屋のタオルを手渡す。藤尾の顔は瞬く間に真っ赤になり恥ずかしそうにしながら拭いて行く。
藤尾「あ、ありがとう……?」
軽井「いいですよ。そのままヲ級たちの方へ行くといらぬ勘違いを生みますし、食堂の連中や他の研究員に見られて……そうですね。人間の方がずっと厄介ですよ」
藤尾「まぁ、そうね……このタオルは――」
軽井「捨てていいですよ。
藤尾「え、あ、そう? じゃあ――」
軽井「私はファンではないのでいらないですよ」
藤尾「…………逆に聞くけど私のファンって誰かいるの?」
軽井「さぁ。誰かいるんじゃないですか。(それほど大きな胸をしているのだったら)世の男性の中に数名はいるかと」
藤尾「……セクハラ発言しなかった?」
ジッと睨んでくる藤尾に対して軽井はなんともない顔でしれっと『してないですよ。とっととヲ級たちの所へ行きましょ』と促した。
藤尾は使用済みタオルを首に掛けると『早く行きましょう!』と言いながら軽井の手を引いた。
引っ張られながら歩く軽井の脳裏には今年一番に甘酒を飲んでいたル級に言われたことを思い出していた。
軽井(確かにル級が言う通りの人だな。これは、恐ろしい)
―続く
リハビリ。ぼちぼち本編を書いて行かないと本当に忘れてしまう。
全く関係ないですけどTwitterのトレンド、パワーワード強めの多くないですか。