とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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リハビリ


目覚めると……

 

 軽井は意識を取り戻すと、思わず周囲を確認した。がしかしなんの変わりもない自室である事に確認ができると溜息を吐いた。

 

軽井「確か、暗い別館を歩いていて……意識を失う前――」

 

 思い出せない。何か怖いものに遭遇したような気がするのだが、内容が思い出せないのだ。ベッドで上体を起こし、頭を抱え唸っていても分からない。

 

 そこで『内容が思い出せない程度のこと』だと理解して部屋を出ようとした。その時、扉が数回ノックされる。急な来客に軽井は「誰だ?あいにく私は今手が空いていないのだが」そう返事をした。

 

 しかしノックした相手は軽井の言葉など無視して室内に入ってきた。

 

軽井「ぅお!? 私は空いていないと――ってヲ級か!? ど、どうしてそんなに泣いて――」

 

 

 開きっぱなしの扉の先には目に涙を溜めたヲ級が突っ立っており、軽井の反応を見ると少し怒った顔をして寝ている軽井の元へダイブした。

 

軽井「ぐぉぇッ!! いつつ……お、おい! ヲ級! 私は――」

 

ヲ級「よかった。軽井が目を覚ましたぁぁぁああ!! うわぁあああん!!!

 

 軽井が目を覚ましたことが嬉しくて大泣きするヲ級とどうしてこうなっているのか分からない軽井。とりあえず自身の上に乗っかっているヲ級の頭を撫でていると扉からぞろぞろと数人が向かってきた。その中にはブリツィオやダニエマと言った飯場の人間もいたし、リ級や藤尾もいた。誰かに話しを聞こうとした時、藤尾が口を開いた。

 

藤尾「軽井さん、落ち着いて聞いてくださいね。あなたは別館で倒れてるのが見つかってから半年は寝ていました。医療班がいうには最悪、植物状態であると……」

 

軽井「は、半年!? その間、誰が私の面倒を」

 

藤尾「ヲ級ちゃんですよ。あなたの仕事を代わりにしてあげましたのが、私です。ヲ級ちゃんは毎日、『おはよう』()から『おやすみなさい』()まで休みなくこの半年間尽くしてくれました。それでいて今日、あなたの意識が戻ったと知らせがあったんですよ」

 

軽井「なるほど。それだからここまで……」

 

 二の句は継がない。言ってしまうと、私がまるで冷徹な人間のような気がしたからだ。それはヲ級や藤尾(彼女ら)に申し訳ない。ヲ級の頭を感謝の念を込めて優しく撫でつつも藤尾に礼を言う。藤尾が照れくさそうに、また納得したような目線を送って来るので流石に鈍い私でも好意は分かってしまった。

 

軽井「ヲ級、ありがとう」

 

ヲ級「良かった。軽井が目覚めて、本当に……」

 

 先ほどまでではないがまだ泣いている様だった。このまま泣き止むまで撫でていようかとも思っていた矢先、藤尾が「感謝してるからってやりすぎると禿げちゃうますよ」そういうと軽井の手はピタと止まった。”深海棲艦が撫でるという行為だけで禿げる”とは聞いたことないが……などと思っていると表情に書いてあったのか、それとも手が止まった軽井を見て「私たちは禿げないと思う。だから、撫でて。続けて」続きを催促するヲ級。

 

軽井(私が寝ている半年間の間でヲ級はどれくらい賢くなったのだ……?)

 

藤尾「いや軽井さんの表情筋が正常に作用しているだけですから。それにヲ級ちゃんが賢くなった?みたいなことを考えているのはバレバレですよ」

 

 指摘に言葉を詰まらせていると、藤尾の隣に居たブリツィオが口を開いた。

 

ブリツィオ「あ、軽井さん。飯を食べれそうになったら食堂まで来てくださいよ。何かご馳走しますので。それじゃあとは若い二人の時間だから放っておいて飯の準備に入りましょうかね~」

 

 なんて言いながら一人、部屋を後にしていた。その後に「絶対に食べ来てね!!」と念を押してダニエマも部屋を出て行った。ル級は「目が覚めたか。なら存分にヲ級の相手をしてやれ。私はリ級の元へ向かう」そういうと部屋の窓から外へ行った。軽井も藤尾も思ってもいない行動にぽかんとしているとヲ級が「今夜は寝かさない」などと言い始めた。

 

軽井「藤尾さん、何か聞かせました?」

 

藤尾「いやいや! 私は何も聞かせてませんし、誘導もしていないですよ!!」

 

軽井「本当ですか? 少女愛好家の貴女のことですよ? 自らの愉悦の為に変なことを吹き込んだのではないですよね?」

 

藤尾「私のことそんな風に思っていたのね……心外よ。ヲ級ちゃんみたいな人外だけど美少女に如何わしいことを吹き込んで無知シチュを楽しみたい……そう考えていた時はあったわ。でも思う相手がいない事が前提。思う相手がいるなら、それは私のポリシーに反するもの」

 

軽井「前半はともかく後半で分かりました」

 

藤尾「そうよ! ……ともあれ植物状態から人間の状態になってよかったですね」

 

 「ブリツィオさんじゃないけど、後はお二人でどうぞ」茶化しながら微笑み部屋を退室した。室内には軽いとヲ級だけになった。軽井が気まずそうな表情をしていると察してかヲ級が口を開いた。

 

 

 

 

ヲ級「軽井。こんな状態で言うのもなんだけど、私の話を聞いてくれる?」

 

軽井「……真面目な話か」

 

ヲ級「うん。とても真面目な話。私は軽井の事が好き。実験動物(人類の敵)の私を好きでいてくれる?」

 

 

 告白。軽井の人生の中で初めての告白。しかも実験動物に求愛されるという事態。他から鈍いと言われる私でさえも流石に気がつくというもの。だから返事はこう伝えた。

 

 

軽井「私は人類の敵であり、実験動物のおまえが好きではない」

 

ヲ級「ッ!! そ、そうか。やはり私は……私では、ダメか」

 

 

 

 

 

 

軽井「話を最後まで聞いてくれ、ヲ級。人類の敵であり、実験動物のおまえではなく――……深海棲艦あるが、一個人としておまえが好きだ、ヲ級」

 

ヲ級「ヲ!? そ、れって……両想いだったってこと?」

 

軽井「恥ずかしくて顔を見れないのだが……くそっ。私としたことが――」

 

 慣れないことを、口上を伝えて赤面して天井を見上げていた。カァ~~っと顔が熱を帯びるのが分かる。この歳になって恋人ができるとは思わないだろう。だから仕方がない事だ。そう自分に言い聞かせる。

 

 

 

ヲ級「軽井、ごめん!!」

 

軽井「んむ?!」

 

 ヲ級に呼ばれて、挙句にはぶちゅっと唇同士が当たり押し倒される。半年間、植物状態であったので筋力も衰えており咄嗟のことに対応、理解が出来ない軽井だが慣れてくると自分がキスをされていることに気がついた。胸の内では「こいつなにしてんだ!?」などと叫んでいたが反抗する気も起きなくなっていた。

 

 軽井が気絶するまでの間、ヲ級はディープキスを続けた。

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