とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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番外編もそろそろ終わりです。


認めない、絶対に

 軽井は廊下を駆ける。彼女たちの亡骸をその目で見る為に。皆を守ってくれた彼女たちに敬意を持って接するのだ。そして好意を抱いている彼女に会いたいと、安心させたいと強く願う。

 

軽井「この先へ行けば、渡り廊下だっ…!? リリア、アンリエル!おまえたち怪我はないか?」

 

 軽井の説明中に彼女たちは首を横に振る。服は煤がついているが、それ以外に目立った怪我はないと軽井はホッと胸を撫でおろす思いだ。そして自分の後ろを振り返って、

 

軽井「あちらに藤尾がいる。彼女と合流を――」

 

 そう言いかけたとき、顔の真横を何かがすり抜ける。今の軽井の動体視力で分かってしまう――黒い液体のついた短剣であった。勢いを失った短剣はカツンと音を立てて床を転がる。

 

軽井「な、なにをするんだ。当たったら危ないだろう。それにこの短剣についている液体はなんだ?いったい何のために……?」

 

リリア「それに付着しているのは粘性の高い油のようなものです。一度火をつければよく燃えるんですよ。小さな火花すらも大火へ変えるほどです。侵入者対策としてはもってこいでした」

 

軽井「そうか。おまえたち姉妹ならばそういう手のひとつやふたつ持っていてもなんら不思議ではないか。ではそれをどうして、私に投げつけたのか聞いてもいいか」

 

リリア「その傷でどこに行こうというの?藤尾さんが止めなかった?」

アンリ「彼女からは意識を奪ってもいいと言われた、というのが答えなのだけれど」

 

 軽井の問いにアンリエルが答え終わると、懐から刃全体が黒く染まった小さなメスを取り出して投げつける。まっすぐに飛んでくるメスを横に避けて、彼女らに訊く。

 

軽井「説明した後に攻撃を行うということは、私をどうしても彼女たちの亡骸に近づけたくないというのか。それは、私には彼女たちを弔う権利はないというのか」

 

 言い終えると軽井の体から感じたことがないほどの殺意があふれ始める。やがて殺意はどす黒い色をした煙となって、体をすっぽりと覆う。覆われても只管に溢れ出るどす黒い煙は、この場にいる彼女たちの本能に警鐘を鳴らさせる。負傷している人間とは思えないほどの眼差し。軽井の肉体精神共に瀕死の事態に陥っている所為か否かの判断がつかない。

 

 煙の中から左足が一歩前へ踏み出される。先ほどまで茶色の革靴であったのが変わり、赤銅色の光沢を放つ靴となっていた。軽井の足音がカシャン、カシャンと金属のような音へと変化する。しかし彼の変化はそれだけではない。赤と白を基調とした鎧に身を包み、クレイモアを右手で掴む。

 

 軽井が握るクレイモアの刀身は赤く高熱を放っているのか、剣の周囲に陽炎が揺らぐ。そして剣先を彼女たちに向けて、

 

軽井「もう一度訊こう。二人は私に彼女たちを弔う権利はないと、そういうのだね?……いいやわかりきっている答えを聞くのは愚かだな。そのまま動かなければ気絶で済むがーー」

 

 そういいながら、剣を軽く振るう。それだけで熱風が生じ、アンリエルの目の色が変わる。しかしリリアは釘付けになっているように微動だにしない。

 

アンリ「ねえ、リリア!呆けてないで、しっかりして!藤尾さんからこんなの聞いてないっ!あの人が、こんな風になっているなんて…私たちも本気で殺しにいかないと大怪我で済まないよ!」

 

リリア「軽井さん、なの?その姿は宮部所長と似ていて……あの人とは全く異なる……まるで天使みたいな」

 

アンリ「リリア!まだ呆けて――」

 

 軽井は剣先をリリアへと狙いを定める。口では気絶と言っていたが、定め狙う先は喉元。刺突でも斬撃でも当たれば生命の危機に瀕することは間違いない。

 

軽井「……リリアが先に落ちるか。ならば、最初の獲物として丁重に扱わねばな」

 

 鎧を着ているというのに、軽井の動きはとても軽やかに見えた。一瞬でクレイモアの斬撃が当たる範囲まで距離を詰められ彼女の首が飛ぶことはない。正気に戻ったリリアが寸でのところで後ろへ跳んで回避したからである。

 

 振るわれたクレイモアが肉や骨を断つことはないと知ると軽井は残念そうな態度をする。こうして短き攻防が幕を上げた。

 

 

※ 

 

 

 ヲ級は棟と棟を結ぶ、渡り廊下でようやく軽井の姿を見ることができた。しかしなぜかリリアとアンリと戦っている。鬼気迫る彼女らの容赦ない攻撃に抗うように彼も攻撃を繰り出していた。

 

 その余波で施設の崩壊が進んでいることに気が付いていないほど。軽井が何かを叫ぶと同時に彼の背からは翼が生えた。白く大きな翼。舞うような仕草のあとに数枚の羽根が抜け落ち、物理法則を無視し、彼女らに向けられる。

 

軽井「わた――――――()()ヲ級に会わせろよ。なあリリア、アンリエル!」

 

 これまでに見たことのない顔をして、自分の名を呼ぶ。いつもの少し笑みを浮かべ、優しく話す表情とは別の、悪い大人の顔を彼はしていた。よほど頭に血が上っているのか、活力的に笑みを浮かべ研究者らしからぬ動きをしていた。

 

 彼らしくない表情、言葉遣い、態度。その全てがヲ級には魅力的に見えた。いわゆる、ギャップ萌えであった。

 

 

 最初の記憶。生れ落ちて、知らない男に体を弄られる不快感、羞恥心に晒される中で彼は、軽井だけは違うように見えた。少々面倒くさがりながらも、自分の面倒を見てくれた事に感謝した。ただの深海棲艦であった日々は何も感じなかった。まったく覚えていない。だが、この施設で過ごしていくうちに少し危険な事も、嬉しいことも、体験したことがない文化の話も大切な思い出となった。

 一度朋の手により、喪いかけた怒りも、忘れ去られたお姫様たちのことも。悲劇的な一日の後にその後少しだけ変わってしまった彼のことも大切で、走馬灯ように物凄い速さで脳内を巡る。

 

 傷つき満身創痍のはずなのに、彼の、軽井の戦いを見ているだけで胸が疼く。甘く痺れるような思いを抱きながら、少しずつ近づいていく。周囲の様子を全く気にしていない振る舞いをする攻撃に彼女の青白い皮膚は裂け、血が花弁のように舞う。

 

ヲ級「か、軽井!そこにいたんだ。そんなにわたしのことを求めていたなんて――」

 

ドオォォンッ!

 

 凄まじい轟音が鳴り響くと共にヲ級の胴体に一発の砲撃が命中する。柔らかい皮膚に触れたコンマ5秒後に大きな衝撃が波紋のように広がり内側、外側へ伝わっていく。

 

 彼女の背を貫き、とても遅い速度で上半身は歪に形を変える。その凶弾は急所を抉り取った。素人目でも致命傷と分かる程の血飛沫が弧を描く。

 

 最愛の人との再会は虚しくもすぐに、今生の別れと変わる。

 

 それは用心深く残っていた艦娘による無情の発砲であった。

 

 戦っていた二人は悲鳴を上げ、砲撃音のした方を向く。

 

 物陰から、腰のあたりまで伸びた、黒色ポニーテール、緑色の目をした小柄な海兵服を着た少女――艦娘がこちらへ砲門を向けていた。

 

 

 艦娘が持つ艤装の砲門からは煙が立ち昇る。ソレはゆっくりとした動作で近づく。ヲ級が前のめりに倒れこむ際、音が生じるが搔き消すように一人が飛び出した。彼はリリアやアンリが警告する前に身に纏う白い翼を赤色に変化させ、音速で急接近するが、艦娘はその行動を予知していたように砲塔を振るい上げ、ハエ叩きの如く地に落とす。

 

「はぁ…大人しくしていればよかったのに。完全に敵が撤退してかの確認を怠った、あなたたちのせいだ。そこに人間も艦娘も深海棲艦も関係ない。一瞬の油断が命取りだって、仲間から教わらなかったの?―そっか、あなたたちは仲間意識なんてもたないか。その目は、その手は、その心は欲に塗れている。人間が侵し、犯す進化の、罪と同じで。また私たちも同じ道を辿るのだからね」

 

 叩き落したハエとターゲットを一瞥すると艦娘は艤装をしまい込むと、背を向けて去る。徐々に遠ざかる足音。こちらを嘲笑う声は艦娘が立ち去った後でも響いて聞こえる。痛む体を起こし、ヲ級の肩を掴んで声をかけるも応答はない。そして少しずつ体温が下がっているのに気が付く。

 

軽井「ヲ級! ヲ級!!大丈夫か、いや大丈夫ではないな……あぁ早く、早く修復材を持ってこないと。リリア、アンリ!お前たちなら、すぐに取りに行けるはずだ。だからーー」

 

リリア「軽井さんヲ級はもう長くないよ。彼女の終わりから、目を背けないであげて。そもそも連中が撤退命令を出す要因になったのはヲ級の奮闘あってのことなんだから」

 

軽井「ヲ級の……奮闘あってのこと?」

 

 ヲ級を抱いたまま、リリアの顔を見つめる。軽井は現状とこれから話す事実をすり合わせるまでもなく、ヲ級が一番の功労者であるということに気づいてしまった。頭を鈍器で殴られたような衝撃が伝わり、顔は絶望に染まる。感情の急激な変化により、彼が纏っていた武装は解除された。

 

 

 言い辛そうな表情でリリアは説明した。彼女の口からは信じることができない内容が吐き出される。それはあちらにも軽井や宮部と同じような人間がいたこと。艦娘も人間もかなりの手練れで誰も助ける、逃げることができなかったこと。その中で犠牲になったリ級やル級、そしてヲ級が必死に戦う中で向こうの戦力を大きく削ぐことができたことが要因で粛清部隊と名乗る特殊部隊が撤退したという事実。

 

 そのとき、わたしたちを守るために全力以上の力を振り絞って応戦したこと。こちらは三人に対し、あちらは百人を優に超える戦力が揃い、一人一人が化け物じみていた。罪を断罪せんと口遊む艦娘。罪を暴き、滅ぼすと嘯く海兵。ヲ級たちが抵抗する中でリリアは垣間見る。人間のおぞましいところを。罪、罪人という餌に食らいつく鱶の姿を。容赦のない銃撃、果てには手榴弾、閃光弾、火炎瓶といった投げ物も投擲される。

 

 ヲ級が最低限の視界を確保し、防御に徹し反撃の機会を伺っていたことも。

 決死の覚悟を胸に秘め、

 

ヲ級「もう二度と私は失わせない。奪わせない!!絶対にここから先はいかせない。彼女らに指一本触れさせて堪るかぁあああーー!」

 

 咆哮と共に放たれるひときわ大きな爆撃を行う。既にル級やリ級は斃れていた。視界に移る朋の亡骸が、ヲ級の感情を大きく揺れ動かした。着弾と同時に強烈な熱風が吹き付け、鉄をも溶かす風を浴びる敵兵、鉛のような味方の死体もろとも消し飛ばす。

 

 崩れていく建物を背に守り抜いたのだ。息を荒げ、自身の爆炎すらも浴びた満身創痍のヲ級であったが、目の前で立つ渋い顔をした男を見る。死体を肉壁にして防ぎ切られたと顰める。

 

『っくう、深海棲艦の出していい火力じゃあないぞ。ああ、撤退だ。仲間が大半やられちまった。艦娘もこれじゃあダメだ。こちらの生き残っている者を集めてP地点へ向かう』

 

 その言葉を最後に侵入者たちが去っていく。リリアは衝動的に殺人がよぎるが、他の者に羽交い絞めにされ、姿が見えなくなるまで拘束されていた。

 

 自分よりも後ろにいるリリアを一瞥すると、去る背を撃ちたいほどの衝動に駆られるが、ヲ級はその場に座り込んだ。緊張の糸を解き、体勢を大きく崩し、足元に転がる炭と鉄塊とも分からなくなったモノをかき集める。それでも仲間を失った悲しみ以上に気がかりな事があった。

 

リリア「あっちょっと、ヲ級ちゃん! その傷でどこへいくというの!」

 

 駆け寄るリリアたちの言葉を振り切ってまで、変わり果てた施設の中でヲ級は最愛の人を探していた。片目は潰え、自身を守る装備も大破し焦げて使い物にならない。爆炎の中で仲間を守るために、重度の火傷を負う。腕も折れ、打撲痕が目立つ。一歩踏み出すのも苦痛であるというのに軽井に会うまでは、と諦めずから元気に振る舞う。ヲ級は彼の温もりを求めていた。探し求める中では彼のことだけを考えていた。傷ついていないか、痛い思いはしないでいるか。

 

 それらが原因で最愛の人間を失いたくはない。それがヲ級の中で一番、強い気持ちだった。

 

 

 命辛々に探す中で、彼らの戦いを見ている中で、知らない一面にまた惚れ直していた。それなのにこの結末である。今は最愛の人の腕の中に抱かれている。ヲ級はこれ以上ない幸せを味わう。

 

ヲ級「か、るい。やっと会えたのに……油断しちゃった。ごめんね…軽井」

 

 か細い声で謝罪をするも口から血をごぼっと吹き出し、細く今にも消えそうな涙を流す。

 

軽井「謝らないでくれ、ヲ級。私はさっきリリアから活躍話を聞いた。皆を守ってくれて、彼女らの犠牲に一矢報いてくれてありがとう。だけどまだ()にはヲ級、貴女が必要だ。今は少し辛いかもしれないが、そのあとはずうっとよくなる。なにせ、私はヲ級を一番よく知る者。そして研究者なのだからな!人体の構造と薬効には詳しいのだからな!」

 

 軽井はハハハと笑ってこの暗い雰囲気を吹き飛ばそうとしていた。深海棲艦は人間とは大きく異なり、ちょっとやそっとでは死なない。研究者としての経験が告げる。だが、それでも軽井には分かってしまう。今自身の胸に抱かれている深海棲艦の灯はない。胸に空いた穴からは彼女を感じさせる熱が行き場を失い流れ出ている。

 

軽井「認めない、絶対に私はヲ級を助け――」

 

 軽井の頬に涙が伝う。薄汚れた埃と混ざり、濁った色を見せる。研究者としての強がりを見せていたが徐々に鼓動を、体温を喪い続ける彼女を失いたくないあまり軽井は叫ぶ。

 

軽井「頼む、誰か彼女を、ヲ級を助けてやってくれえっ…このままだと……う、う、い、嫌だ。嫌だ嫌だ、私は彼女を死なせたくない。彼女は私の大切なヒトなんだよ」

 

ヲ級「ふ、ふふ。ありがと、軽井。深海棲艦である、私に愛を教えてくれて。このまま目的もわからず、無情に人を殺す兵器にならなくてよかった」

 

 泣き叫ぶ軽井に応えるように、ヲ級が頬に触れる。頬に触れたことで彼の涙が彼女の手を伝い落ちる。以前のような温かさからかけ離れた体温に軽井の視線が注がれる。

 

ヲ級「ふふっ。大丈夫、大丈夫だよ。泣かないでわたしの最愛の、ひと。かるい間違っても、あの艦娘に復讐をだなんて……考えないで。わたしと艦娘は戦う運命にあるの。それにわたしのことを想うのはありがたい、けど。血を血で洗う戦い、わたしは嫌かな?」

 

 穏やかな言葉を紡ぐたびに、ヲ級の体は冷たくなり、次第に光となって解けていく。つま先から徐々に死へ向かう彼女対して軽井は取りこぼさないように解けて消えつつある光を掴む。

 握った指の隙間から光が漏れ出ていく。どんなに掴もうとしてもすり抜けるならば、と逝く彼女を忘れない為に抱き締める力を強くするしかない。既に冷たくなってしまったとしても。

 

軽井「ヲ級…!ヲ級、聞いているかい。私の人生に光と思い出をくれてありがとう」

 

 肉体の崩壊が進み、腹部まで光となり解けていく。ヲ級は穏やかな表情をしながら、ゆっくりと頷くもどこか少し眠たそうにしていた。徐々に消えていく彼女を前に、今以上に目頭が熱くなり、鼻の奥がずっと痛む。流れる涙が乾き、ひりひりと痛むが気にせず軽井はヲ級に語りかける。

 

 出会いから、色々な役職の人間との交流。似たような境遇の仲間。死からの生還。他国から来ている職員から教わる祭りや風習。そして最初から今に至るまでの感謝と好意を伝える。彼女は否定することなく、受け入れる。死に際だというのに、嬉しさも忘れず重ねて礼を口にする。

 

ヲ級「……軽井。最後にひとつだけ。あの、少し変わった姿になれる?」

 

 目を閉じたまま、小さな声で囁く。言葉に出さず、軽井は赤と白を基調とした鎧に身を包む。畳まれていた白く大きな翼が伸びる様に開かれる。そして外界から聞こえる音を遮断するように二人を包み込む。自分たちだけの音に、声に集中したい。軽井の熱を、声を、発される匂いもすべて彼女に独占させてあげたいが為の行動だ。

 

ヲ級「暗い。寒い、体が冷たいの。傍にいると思うのだけど、貴方が見えない、感じ取れないの。胸を甘く痺れさせる愛おしい声も聞こえない。…お願い」

 

 軽井は答えを即座に行動で表した。まだ熱帯びる唇と冷たい氷のような唇を重ねあう。それは最期の贈り物であり彼女に対して軽井が彼女に渡す、心からの最初で最期の。ゆっくりと互いの口内を味わうように愛を与え合う。彼女に熱を分け与える。すぐに消えてしまうかもしれないが、それでも地獄を歩くときに迷わぬよう。今注いでいる熱が足元を照らす明かりとなることを祈って。

 

 ふいに軽井とヲ級を包み込んだ翼が開くと同時に大量の光が粒となり、上へ消える。武装を解除した軽井の唇は紅く、まるで口紅がついたよう。

 

リリア「ねえ、軽井さん。あの子の最期は穏やかだった?」

 

軽井「ああそうだ。彼女は最期は穏やかだったよ。地獄で私も会えるだろうか」

 

アンリ「どうだろうね。地獄ってたくさん種類があるって聞いたけど?でも時間はありそうだし、会えるんじゃないかしら?」

 

 少しまじめなアンリの言葉に思わず笑う。ややムッとしてそんなに面白いこと言ってないのだけど、と呟きながらむくれる。リリアが慰めていると、セーレと藤尾が合流する。

 

 ヲ級のことを尋ねられた際に、感情的にならず淡々と説明する。藤尾は怒髪天を衝いたような表情で報復をと言うが、対照的にとても冷静な軽井はその提案を断った。全身ボロボロの満身創痍だというのに、とても落ち着いていることを指摘されるもひらりと交わす。

 

 セーレに口元を指さされ、どうしたのか問われる。血を吐くほどの戦闘をしていたのかと。

 

軽井「ん?ああ、気にしないでくれ。これは宝のようなモノだ。しかしそうだな、宝ならば手元に保管しておきたい」

 

 軽井は服のポッケから白いハンカチを取り出すと口元に当てて、浸み込ませる。じわりと赤い色が付くと満足そうな表情で透明な袋の中に入れて胸元のポッケに仕舞い込んだ。普段の軽井ではしない行動なので誰もが驚いて固まる。指摘した当のセーレに至ってはドン引くレベルだ。

 

軽井「さて、これからどうしようか。新所長がこられるまで待機…はいいか。とりあえず被害状況の確認でもしようか?」

 

 周りをほっぽって考える。宮部が言うにはこれから新所長が来るまで適当に動こうと決めた。リリアとアンリは気を遣うような発言をするが、軽井は問題ないと答える。

 侵入者に徹底的に破壊されて、施設は壊滅。職員はほとんど誰もいないだろう。

 

軽井「とりあえず一番被害の大きかったところへ向かおうか」

 

 軽井は彼女たちを連れて、施設内を散策するのだった。

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