とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

354 / 390
2章の内容を大まかに、PV風へしてみました。


2章 PV風

「おー、おー……ヴェルダーよ。君はとんでもない恰好で来たものだ」

 

 若干顔を引きつらせて、ヴェルダーの格好を指摘する。

 

 黒を基調とした青いスーツの上下。白のネクタイを締め、濃紺色の革靴を履く。

 藍色髪のオールバックに、メガネというインテリ感のあるファッション。

 

 対して、他の面々は至って普通の私服。

 

 完全に浮いている。アントに至っては、

「俺には私腹を肥やしてるっていうツラに見えるぜ」と皮肉を言い始める始末。

 

 オウルは豪快に笑いながら、そういう客もいる、と励ます。ヴェルダーは少し恥ずかしそうに、俯いて、「ありがとう」と言う。

 

 場が和んだ隙を見て、オウルは咳ばらいをする。

 

「これより、我らは一般人として潜入する。伴い、わしのことは武田。ラビットは筧、アントはジークと呼ぶように」

 

 武田の言葉に、二人は頷く。

 

「そしてヴェルダー、差し支えなければ」

 

 武田はどこか、申し訳なさそうな表情をする。

 

「芙二だ。芙蓉の()()は数字の二、だ」

 

 武田は芙二のスマホを手に取り、画面を拡大して声をあげる。スマホを片手に、小さなメモ帳へ書き込む。そしてすぐに芙二へスマホを返却した。

 

「武田さん! もう改札へ向かわないと、乗り遅れてしまいますよ」

 

 急かすような、ジークの言い方。言葉を聞いてか、頷き、改札へ向かう。

 

 

~~~

 

 

 白鳥駅行きの寝台列車へ乗った四人は、到着までの一日間は思い出に花を咲かせる。幼い頃に両親と遊びに行った、修学旅行先は決まってここだった、など芙二にとっては馴染み辛さを実感。

 

 芙二はこの世界へ来てからというもの、海軍と深海棲艦漬けな生活。娯楽のある日常とは無縁の生活を送っている。

 

 時間は流れ、ジークが家族との思い出を楽し気に話す姿を見た。こいつも笑えんじゃねえか、と芙二はふ、と笑う。ツンツン、皮肉めいた言葉じゃなくて、当時を振り返りながら楽しそうに話す姿は子供のよう。

 

「そういえば小さい頃にオレに姉ちゃんが居て」

 

 武田と筧は、孫の会話を見守るような表情で聞いていた。だが、以降の会話が続かず、どうしたのか、と問う。

 

 当の本人は、

「楽しい思い出が頭の中に押し寄せてきて、こんがらがってしまった」と、頬を掻いて笑う。

 

 武田と筧の両者は、顔を見合わせる。強張った顔を緩め、ジークへ、ゆっくりと話していいと諭す。ジークは頷き、ありがとうございます、と言い続きを話すのだった。

 

 

~~

 

「うひゃ~……あのアトラクション、5時間待ち!?」

 

 白鳥へ来てから、人の多さに驚いたのも束の間。いちアトラクションに並ぶ人の数で、ドン引きしていた。ああ、までして乗りたいものかと。

 

 どこを歩いても人、人、人!端から端まで人で詰まっているんじゃないかってくらいの多さ。

 

「そのくらいだと、人の波に攫われて迷子とか絶対ありますよ」

 

 比較的に人が少ない、場所での休息。ジークは、長椅子に腰を掛けてスポーツドリンクを飲みながら言う。

 

『うぇええ~ん!! おかあさぁん~!! どこ~!!』

 

 ジークは目を丸くさせ、飲みかけのペットボトルを落としそうになる。武田と筧、周囲の人の群れも一斉に騒めく。その中で四、五歳の子供の声だけがこだました。

 

「おい、坊。大丈夫か。(オレ)と共にお前さんのお母さんを見つけてやるよ」

 

 芙二だけが、泣く子供に近づいて励ました。不器用そうに、言葉を紡いで、能力に頼らず、手を引く。

 

「うむ、芙二の言う通りだな。わしらも一緒に探そうではないか。筧、頼めるか?」

 

「はあ。わかったわよ、そんなに見やんで!」

 

 芙二と迷子の元に武田と筧がやってくる。武田は筧の手を取り、じっくり見るや否や彼女が仕方なさそうに迷子を抱きかかえる。

 

 いつの間にか、いなくなったジークはどこからかスタッフを連れてきて、

 

「この子です。多分親か親戚の人と離れてしまったんだと思います」

 

 息を荒げて言う。しかしスタッフは筧と武田、芙二を見ると笑顔で、

 

「親御さんと再会できたようでよかったです。では、私はこれで戻りますね」

 

 と、言ってどこかへ行った。ジークは、何か言いたげでスタッフを追いかけようとする。

 

「ジーク。一度迷子センターへ向かうぞ」

 

 彼は足を止めて、武田の言葉に頷く。

 

 子供を抱きかかえる筧、の手を握る武田。その手を握る芙二。ジークは心底嫌そうな顔をして、芙二の手を握る。一歩を踏み出そうとしたその時。

 

「アーハッハハ! 迷子の子供の泣き声がするところに私あり! むむ、そこのお嬢さん。その子を返してもらおうか!」

 

 どこからか、声が聞こえる。人々が指差す方へ視線を向けると、ごてごての白い鎧に、白鳥をモチーフにしたヘルメットをつけた変人がいた。

 

 かなり高い所から飛び降りたが、鈍い音ひとつせず、すぐに立つ。

 

「私の名前はウィングスワン! 悪の軍団、キメラーズの手先よ、かかってこい!」

 

 ニチアサ戦隊のような決め台詞、ポーズを取ると観客が湧き上がる。芙二は鳥肌が立ち、その場から離れたくなる。

 

 だが、三人は思い出の魅了されたように役になりきろうとしていた。

 

「さあ、子供を返してもらおうか!!」

 

 ウィングスワンが筧の元へ駆けだした。

 ここから、彼らの“一般人の一日”は終わる。

 

次章――「2章 アミューズメントパーク 白鳥(しらとり)




一部、加筆しました。
ついにヴェルダーは、艦娘が囚われているアミューズメント施設へ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。