とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

365 / 389
3章の入り口です。


3章 PV風

 冷気と、甘い腐臭が混ざり合った空気が、肺の奥まで沁み込んでくる。

 

 芙二は死体を装う。清掃員たちの会話を盗み聞きをした。

 彼らの会話を聞く限り、敵側へこちらの存在が筒抜けだと判断する。

 

 どうにかして、二人へ伝えなければならない。

 そんな責任を強く感じ始めたとき、二人の清掃員はちょっかいを出し合ってその場から去る。

 

 これは僥倖と言わんばかりに、芙二は行動を起こす。ジークの霊魂を探し、肉体へ留まっていることを確認。一方、レヴィアの霊魂は見つからない。

 

「レヴィアの霊魂は……ないか」

 

 彼女に黙祷を捧げているとき、背後から複数の足音が聞こえた。

 

「あれ~?? 一人生き残っているよ!」

 

 無邪気なその発言を聞いて、追手と判断した。

 芙二は変装を解き、龍神形態で応じる。

 

「誰だか、知らぬが……(オレ)に手を出したことを後悔させてやろう」

 

 特殊部隊の人間側から無辜の怪物側へ、格のシフトを変えた。

 芙二の周囲には禍々しい覇気が、濁流の如く溢れる。

 

「……その傷でまだ立てるんだな、ジャバウォック」

 

 険しい表情のブラックスワン。芙二は意識して、禍々しい覇気を解放した。二人のあいだの空気は最悪の一言に尽きる。

 一触即発の事態に発展しかけたとき、彼女の後ろにいた子供のうち、一人が口を開く。

 

「ブラックスワンちゃん! あたしたちは喧嘩をしに来たわけじゃないでしょ!」

 

 ぷりぷり、と怒る。ブラックスワンを指さし、子供は頬を膨らませた。

 彼女は子供の前に矛を収める。だが、鋭い殺気は解放されたまま。

 

「君の名前はストレンジ・ヴェルダーだと思っていたが、そうじゃないようだ。訂正しておかなければならないな」

 

 子供の発言を前に、芙二の警戒心は最高に達した。一度、収めた覇気を放出して、その身に纏わせる。

 

(おいおい、コードネームまでバレてんのか!)

 

 子供から数歩下がり、発言次第で行動できるように警戒を怠らない。問題は数ではない。情報が伝達されることを気に掛ける。それならば、先ほどの清掃員を片せばいいというのはナシだ。

 

「そんなに警戒しなくたって取って食ったりしないよ。……君は、だがね」

 

 リヴァイと名乗る子供は、意味ありげな言葉を口に笑う。

 

~~

 

 しばらく経ったのち、リヴァイは衝撃的な事を言う。

 

「私は幻獣型のクローン。そして我々は人々の幻想から作り出される存在」

 

 その言葉に目を丸くする。

 幻獣型。それは空想の存在を意味した単語。

 

(オレ)のような存在もこの世界に根付いているのか? そうだとしたら利用しない手はないな)

 

 彼らと同じ、と偽ること。その小さな決断が、後に幻獣型クローンの根幹を揺るがすことになるとは、このとき芙二は知る由もなかった。




次章――「3章 G.A.P」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。