冷気と、甘い腐臭が混ざり合った空気が、肺の奥まで沁み込んでくる。
芙二は死体を装う。清掃員たちの会話を盗み聞きをした。
彼らの会話を聞く限り、敵側へこちらの存在が筒抜けだと判断する。
どうにかして、二人へ伝えなければならない。
そんな責任を強く感じ始めたとき、二人の清掃員はちょっかいを出し合ってその場から去る。
これは僥倖と言わんばかりに、芙二は行動を起こす。ジークの霊魂を探し、肉体へ留まっていることを確認。一方、レヴィアの霊魂は見つからない。
「レヴィアの霊魂は……ないか」
彼女に黙祷を捧げているとき、背後から複数の足音が聞こえた。
「あれ~?? 一人生き残っているよ!」
無邪気なその発言を聞いて、追手と判断した。
芙二は変装を解き、龍神形態で応じる。
「誰だか、知らぬが……
特殊部隊の人間側から無辜の怪物側へ、格のシフトを変えた。
芙二の周囲には禍々しい覇気が、濁流の如く溢れる。
「……その傷でまだ立てるんだな、ジャバウォック」
険しい表情のブラックスワン。芙二は意識して、禍々しい覇気を解放した。二人のあいだの空気は最悪の一言に尽きる。
一触即発の事態に発展しかけたとき、彼女の後ろにいた子供のうち、一人が口を開く。
「ブラックスワンちゃん! あたしたちは喧嘩をしに来たわけじゃないでしょ!」
ぷりぷり、と怒る。ブラックスワンを指さし、子供は頬を膨らませた。
彼女は子供の前に矛を収める。だが、鋭い殺気は解放されたまま。
「君の名前はストレンジ・ヴェルダーだと思っていたが、そうじゃないようだ。訂正しておかなければならないな」
子供の発言を前に、芙二の警戒心は最高に達した。一度、収めた覇気を放出して、その身に纏わせる。
(おいおい、コードネームまでバレてんのか!)
子供から数歩下がり、発言次第で行動できるように警戒を怠らない。問題は数ではない。情報が伝達されることを気に掛ける。それならば、先ほどの清掃員を片せばいいというのはナシだ。
「そんなに警戒しなくたって取って食ったりしないよ。……君は、だがね」
リヴァイと名乗る子供は、意味ありげな言葉を口に笑う。
~~
しばらく経ったのち、リヴァイは衝撃的な事を言う。
「私は幻獣型のクローン。そして我々は人々の幻想から作り出される存在」
その言葉に目を丸くする。
幻獣型。それは空想の存在を意味した単語。
(
彼らと同じ、と偽ること。その小さな決断が、後に幻獣型クローンの根幹を揺るがすことになるとは、このとき芙二は知る由もなかった。
次章――「3章 G.A.P」