意識を失い、白い床に倒れる特殊部隊の隊員をクローンたちに運ばせる。既にヴェルダー以外の者は、名前を、個としての存在を書き換え終えていた。
ミライは夕立だった少女の傍らに横たわる、ヴェルダーを見つめた。先ほどとは違い、姿や服装もここへ入場したときのものと遜色ない。
「ん~……もう少し強いと思っていたんだけどなぁ」
彼の頬を小突いても、少女の髪を乱暴に掴もうとも飛び起きる気配がない。
言いたいことだけを伝え、対策も取らせず強制的に終わりへ導いた。
「あっ! こっちの二人は部屋に隔離しておいて。あと、管理権などが詳細に書かれた書簡がここにある。それを娼館のアイツに渡しておいて」
無表情で作業するクローンへいくつか指示を出した。彼女らは頷き、夕立とヴェルダーを放して同じ場所へ運んでいく。
政治家や変態趣味の人間たちは体よく片付けることができて、内心で満足感を得ていた。残る二人の
「さて、素晴らしい手腕だったよ。ルナ・ケイジュくん」
コツコツ、と靴の音を鳴らしながら放心気味のルナ・ケイジュの元へ向かう。雇い主が近づいても、圧倒的な情報量の多さについていけてない。
彼の喉からは掠れた声だけが漏れ、ミライは頷いた。
「君が、家族と呼ぶ親しい間柄の人間を贄に捧げ――
一度に話しすぎたのか、ミライは「こほん」と咳ばらいを挟む。
「倒錯的、官能的な味わいだった。人生一度だけしか、体験できないなんて惜しい気持ちさ」
「そ、れは。ありがとう、ございます」
ミライの言葉に対し、ルナ・ケイジュはたどたどしく返事をする。話の途中で彼から視線を外し、茨の中で蹲るメリアの元へ歩く。
「メリア、いや
固く閉ざされた茨を前に呼びかけた。”プレゼント”という言葉に反応したのか、茨の蔓の間から、覗くように顔を出す。
短く切り揃えられた白髪、橙色の瞳、緑色の肌を持つ異形の娘。
彼女は、
「頑張ったわたしにご褒美があるの?」
と無邪気な子供ような笑みを作る。
「そうだとも、メリシア。渡しそびれたプレゼントが、そこにいる」
ミライはルナ・ケイジュを指さした。あやふやな記憶の中で傷を受け、致命傷を受けたメリシアは栄養を探していた。
「ありがとう! ミライ様!」
3章 完!
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