とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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※長いので分けました。R3 12/03


二章 21話『全てを曝け出す勇気 ②』

ー続き

 

 

 軽巡寮 内 大淀の部屋

 

 案内され扉の前まで来る。その道中、床が腐り何度か落ちたが。

 大淀の部屋というネームプレートが掛けられた扉をノックすると中から声が聞こえてきた。しかし当の本人は外で出る気はないようだ。神城は無視して続ける。

 

神城「大淀、居るか?」コンコン

大淀(東第三)「……はい。何か用ですか」 

 

 

神城「今、客が来てるんだ。そいつが会いたいと言っていて聞かないから連れてきた」

大淀(東第三)「なんで連れてくるんですか……? 馬鹿なんですか?」

 

 どうも、ここの大淀とは仲が悪いらしい……?と芙二は思っていると神城が続ける

 

神城「……こいつの話を聞いてほしいが埒が明かないから俺から話すわ。こいつはこれから飯を作ってくれるんだと。どうも、冷蔵庫の食材がすっからかんになってしまうらしい。それだから____」

 

大淀(東第三)「何でですか? なくなるなんてありえない事、でしょう?」

 

芙二「えっと俺からいいです?」

大淀「(東第三)聞いたことない声ですね。あなたがお客ですか?」

 

芙二「はい。東第一泊地で提督をやってます。芙二 凌也です。大淀さん、以後お見知りおきを。今回はここの食材を使わせていただくのですがもし、切らしてしまうと申し訳ないのでうちから出すということを報告に来ました」

 

大淀(東第三)「えっと、食材費を東第一泊地の提督が出してくれるという事ですか?」

芙二「そうです。あ、後で飯食いに来てもいいですよ」

 

大淀(東第三)「いえ、私は遠慮しておきます」

芙二「……もしかして一番深海化が進んでいるのです?」

 

大淀(東第三)、神城「「!!」」

 

芙二「あれ、ビンゴですか。どの程度まで進んでしまってます?」

神城「おい、芙二。これ以上の詮索は辞めてくれ」

 

 提督殿をつけなくなり、声の高さを1トーン下げて告げる神城。

 その言葉には怒りが含まれており芙二との間をピリピリとした空間にさせる。

 

 しかし大淀は芙二をジッと見つめ何かを考える素振りをしていた。

 1~2分沈黙が続く。芙二も神城もお互いに黙り続けた。そして大淀が口を開く

 

大淀(東第三)「どの程度、ですか」

芙二「えぇ。俺は()()()()()()()()()()()()()のでよかったら是非見せて貰えませんか?」

 

大淀(東第三)「(どうせ、貴方も今の私を見たらゾッとして逃げだします)いいですよ……貴方だけ入る事を許可します」

 

 大淀は芙二だけ許可するも何かに気づいた神城は止めようとする。

 

神城「! 大淀! それはっ……ダメだ!!」

大淀(東第三)「提督、この大馬鹿(おろか)者に痛い目を見せるだけですから。少し、失礼します」

 

 突然、扉が開き。驚く芙二と神城。しかし次の瞬間芙二だけ中に引きずり込まれていった。

 残された神城はただただ芙二が無事、戻ってくることを祈って待っているだけだった。

 

― 大淀の部屋

 

 

芙二「ん、ここは? あぁ大淀さんの部屋か……でもなんでこんなに暗いんだ?」

 

 引きずり込まれて、すぐに違和感に気づく。

 部屋があまりにも暗い。月も星もない夜と変わりなかった為、明かりを求めて辺りを彷徨う。すると気づくことがもう一つ。

 

 歩いてみての感想だがこの部屋はデカいという事。

 どれぐらいの大きさかは図ることが出来ないため今は明かりを求めて歩くしかなかった。

 

大淀(東第三)「……ねぇ、どうして?」

芙二「何がだ? 明かりをくれ。あまりにも見えん」

 

大淀(東第三)「質問に答えてください。どうして、深海化の進行を抑えるなんて法螺を吹くのですか」

芙二「いや事実だし。百聞は一見に如かずでしょ? 見せたいから明かり頂戴」

 

大淀(東第三)「……いいのですか? この姿を見たらどうせ貴方も震えあがるに決まってる。提督の様に」

 

芙二「いいよ、だから早く見せて。状態が分からないと何とも言えないから」

大淀(東第三)「いいですよ」

 

 大淀がそういうと“パッ”と明るくなる。

 急に明るくなったので芙二は目を瞑るも次第に慣れていく。

 

 そして目を開き驚く。

 そこに映っていたのは姫級のソレと何ら変わりない大淀が睨んでいた。すると納得するような手振りをして言葉を漏らす

 

 

芙二「なるほどねぇ。これは……どうなってんだ? 髪に変化はない。きれいな黒髪だ。そして角は生えてる、な。左側に一本。で、肌はもう白すぎるな。うん」

 

 明かりによって晒された大淀の姿を舐めまわすように見る芙二に大淀は啞然としている。

 

大淀(東第三)「……驚かないのですか?」

芙二「うーん、最近居たからな。そういう奴。あ、艤装に変化はある?」

 

大淀(東第三)「ないです。ただ……」

芙二「ただ?」

 

大淀(東第三)「ときおり、猛烈に海に出たくなります。そして……止めてきた人間(ていとく)を、艦娘(なかま)を殺そうとしてしまいます」

 

芙二「……なるほどな。うん、行ける行ける。案外、行けそうで良かった」

大淀(東第三)「どうしてそう思うのですか? 脈絡がなさすぎます」

 

芙二「俺がどうしようもない馬鹿だから? 時間はないからとっととやるよ。そこに座って」

大淀(東第三)「……嘘だったら縊り殺しますから」

 

芙二「どうぞ」

大淀(東第三)「……」

 

芙二「……(さて、空間干渉。持ってくる物は黄昏の欠片……魂ごと、、ってこれは怨念じゃなくて恨みか。怨念になっていない純粋な恨みは初めてだな。魂は穢れてない? 膜を張ってる感じか)」

 

大淀(東第三)「……(どんな感じなんですかね)」

 

 

芙二「ふぅ……(まずは恨みを結晶化……っと。あれ? こんなに簡単だっけ?)大淀さんや、何処か異常はないかい」

大淀(東第三)「今の所はなにもないです」

 

芙二「なるほどな。このまま続ける(案外、楽なのか? この結晶を黄昏の欠片に吸わせてと。よし、これで恨みは取り除けたけども)」

大淀(東第三)「あれ、なんだか体が温かい? それに気分も楽に……」

 

芙二「どんな感じ? これで上手くいってなかったら殺されちゃうわけだけど」

大淀(東第三)「……声が聞こえません」

 

芙二「声?」

大淀(東第三)「怨嗟の声が聞こえません。それに身体がポカポカしてます。鏡を見てもいいですか?」

 

芙二「そうか。なら成功っぽいか? 鏡? そこにあるんじゃないのか?」

大淀(東第三)「……グス……あぁう……」ポロポロ

 

芙二「!? え、失敗した?!」

大淀(東第三)「い、いえ。元に戻れている事がとても嬉しくて。つい……」

 

芙二「だけどな、覚えておいて欲しいのは記憶までは元に戻せない」

大淀(東第三)「記憶……? あぁ、大丈夫です。悪夢として現れない限りは。私達は元々、戦闘するための兵器なので元々強く作られているんですよ……」ニコ

 

芙二「……そうか。って感じの方法で元に戻していくんだけど。そこで問題になるのが一つあってさ」

大淀(東第三)「どういった事でしょう?」

 

芙二「確か何名か人を貪り喰うやつ居なかったっけ」

大淀(東第三)「……いましたね。敵、味方の区別つかなくなってしまって。今は幽閉されていますが」

 

芙二「どこに?」

大淀(東第三)「駆逐寮の最奥に、です」

 

芙二「中身は全員駆逐艦?」

大淀(東第三)「いえ、戦艦、空母、重巡、軽巡は一隻ずつです。そして残りは駆逐です」

 

芙二「どんな感じになってる?」

 

大淀(東第三)「戦艦、空母はたまに戻っています。泣き叫ぶ声が聞こえてきますので。重巡、軽巡はやや深海棲艦と成りつつあります。時間の問題でしょう。最後に駆逐ですが……もう、理性も知性の欠片も見当たりません」

 

芙二「姉や妹、友人を殺されたかショックがデカすぎたか。いくら艦娘といえども、と言った感じか?」

 

大淀(東第三)「概ねそうですね。というか、そのような発想はどこから出てくるのです?」

芙二「少しだけ、学ぶ必要があったのだ。気にしないでくれ」

 

大淀(東第三)「そうですか。で、いつ頃からやるんですか?」

芙二「うちの艦娘を帰らせてからだから夕方か夜だ。明日は休日なんだ。先に休ませてあげたい」

 

大淀(東第三)「なるほど、分かりました」

芙二「という事で、疑いは晴れた?」

 

大淀(東第三)「大丈夫です、ですが本当に駆逐艦娘達はどうするのですか?」

芙二「荒療治だな。なんだっけか、一度沈んだ艦娘が帰って来たっていう報告ご存知?」

 

大淀(東第三)「はい。深海棲艦とならずに帰って来た例はあれだけです」

芙二「そして朗報だ。俺はその方法を知っている」

 

大淀(東第三)「本当ですか!?」

芙二「いや誰でも思いつくことだ」

 

大淀(東第三)「それは……?」

芙二「一度、沈める。この世界じゃあタブーってのは知ってる。だが、ほぼ深海棲艦と成ってしまっている艦娘を救うのはこれしかないと思っている。現にうちの時雨も元深海棲艦だ」

 

大淀(東第三)「……ドロップする艦が稀という事も知っての事ですか」

芙二「あぁ、知っている。だけどよ、最低1人1回くらい奇跡を手にしてもいいと思わねぇかい?」

 

大淀(東第三)「それは……」

芙二「まぁそういうことだ。しかし実際に決めるのはお前達だからな」

 

大淀(東第三)「……」

芙二「一度飯食って考えて―な。さてと、行こうか」

 

大淀(東第三)「そうですね」

 

 そういって大淀と芙二は部屋を出たのであった。

 部屋を出ると大淀の姿を見て神城は目、口を大きく開けて立ち尽くす。

 

神城「……大、淀? その姿は……」

 

大淀(東第三)「お久しぶりです、提督。まさかこの姿に戻れるとは思ってもみなかったです」

神城「……」ポロポロ

 

 神城はあまりの事に泣き出してしまう。

 

大淀(東第三)「今は泣かないでくださいよ。まだ、私達にはすべき事があるでしょう?」

 

 そういって泣き出した神城を諭す。

 諭された神城は涙を拭き取り芙二に礼をいうも、芙二はまだ分からない、と言った

 

芙二「大淀さんのは偶々良かっただけかもしれない。やはりあまり期待しないでくれ」

神城「……そうか。でも、大淀の様に治る可能性もあるって事だよな」

 

芙二「そうだな……さて、食堂へ行こう。あ、そうだ。ついでに館内放送してもいい?」

神城「構わないが」

 

大淀(東第三)「何をするつもりですか? まさか全員呼ぶつもりで?」

芙二「その予定だが何か不都合が?」

 

大淀(東第三)「いえ……特には。あぁでも一つだけありました」

芙二「なんです?」

 

大淀(東第三)「……私はある意味では一番酷い状態でした。さっき話した10名のうち4名はまだ大丈夫かもしれません! だから早く、出来るだけ早く__」

 

芙二「先ほども言ったが最終的には大淀さん達で決めてくれ」

 

  “――――荒療治になるから、良く話し合ってくれ。“という意味を念押しする。大淀は押し黙ってしまうも神城が芙二に懇願するような表情で問う。

 

神城「芙二提督殿、まだ理性が残ってるかもしれない彼女らは治せないのか?」

 

芙二「分からん。会ってみないと、何とも言えない(というか、応用で怨念レーダーなる使い方してみればいいのでは? えっと、対象は先ほど入手した純粋な恨みはっと……は?)」

 

 実際に大淀の場合は何とかなったのだ。神城は芙二(こいつ)ならなんとかしてくれるのではと思っていた。

 芙二は芙二で能力を応用させて、自身を中心として半径20m以内を探知していた。その時導き出された答えを見て啞然とする。

 

神城「……とりあえず、芙二提督殿。俺についてきてくれ」

大淀(東第三)「そうです。今は彼女らも……」

 

芙二「ちょっと待ってくれ(……ゼロ、だぁ? 純粋な恨みで深海化が進んでたのは大淀さんだけだってのか? 他の面々は……あぁ、検索方法を変えてみよう、か)」

 

 そういい、今度は“怨念/深海化が進行している艦娘”と決めて調べるとまたも驚く。

 突然、芙二は重苦しい顔をしだす。それに気がついたのか神城は問い始める

 

神城「なんだ? あぁ、飯の事を放送しなくては行けないのか」

芙二「それもあるが……」

 

 この事実を話すかどうか悩んでいる時に大淀が話しかける。

 

大淀(東第三)「どうかされました?」

 

 大淀はキョトンとしており、神城は早く行こうと急かす。

 芙二は意を決して確認を取る。

 

芙二「……なぁ、もう一度確認だ。本当に重要なのは4人だけか?」

 

大淀(東第三)「そうだと思いますけど」

神城「そうだな。2日に一度確認に行かせてるからな。問題はないかと思うぞ。しかしこれで、あぁ……生き残った意味がある、のかもな」

 

芙二「……先に放送しよう。そっちに案内してほしい」

神城「そうか。放送関連は執務室だな。では(ここ)を離れよう」

大淀(東第三)「分かりました」

 

 そういって神城、芙二、大淀は寮を出て執務室へ戻ろうとしていたのであった

 

 芙二たちは執務室へ行き、内線を繋ぎ、全ての部屋に昼食の件を話す。

 ついでに今日のメニューはハヤシライスと+αという事も。すぐに行くから妖精さんと協力してほしいといい放送を終わる。

 芙二の話が終わると神城が口を開く。

 

 

神城「飯の前に行こう、芙二提督殿」

芙二「……ダメだ」

 

大淀(東第三)「どうしてですか、彼女らは今にでも踏みとどまってるんですよ! 治る手立てが見つかったのなら____」

 

芙二「少し遅かったようだ」

 

 ”遅かった”と芙二に言われると神城の顔はどんどん青くなっていった。しかし大淀はなにが少し遅かったのかを理解できないでいたようだった。いや理解したくないだけかもしれないが。

 

大淀(東第三)「……嘘ですよね?」

芙二「……残念ながら」

 

大淀(東第三)「……治せないのですか、私は治せて……」

芙二「俺は医者でも神様でもない。たまたま知っているだけ、ただそれだけ」

 

神城「……解体は」

芙二「できないでしょう。もう、()()してしまった」

 

大淀(東第三)「羽化……?」

 

 羽化という聞きなれない単語を聞いて首を傾げた。

 

芙二「艦娘という古い肉体を捨てて、深海棲艦という新しい肉体(すがた)に、です」

 

神城「……」

大淀(東第三)「……」

 

 二人は黙ってしまう。

 芙二にとても残酷な事を言われ、絶望の底へ落ちていったからだ。大淀はへなりと沈むように座り、神城はふらりと壁に背を預ける。

 

 神城が解体という最終手段を呟くも芙二が否定する。益々不味い。

 このことが明るみになれば神城は確実に捕まるだろうという事は安易に予想が出来た。

 

 しかし、大淀が元に戻ったことを見て昔の様に戻れるのであれば__という夢のような展開も2度と期待は出来ないと分かってしまった。

 

芙二「……神城」

神城「飯を食ったらとっとと帰ってくれ。夕方は来なくてもいい」

 

芙二「……希望の話は聞きたいか」

神城「どうせ、彼女らはもう治せないんだろ」 

 

 

芙二「……本当に荒い戦闘(治療)になるがいいか」 

神城「治る……もとい元に戻る可能性が1%でもあるのなら__大淀、いいよなぁ?」

 

 壊れた笑みを浮かべる神城。大淀も壊れかけており、狂気を含んだ笑みを浮かべる。

 

芙二「では、そのように」

 

 すると次の瞬間、芙二に対して土下座をする神城。大淀は止めようとせず、土下座はしないも深々と頭を下げていた。

 

芙二「……顔を上げてくれ」

神城「……しかし……俺は……詫びも含めてッ」

 

芙二「土下座なぞ、見たくない。もしかしたら俺がするかも知れんからな」

 

 芙二に言われ渋々態勢を変える神城だが“そんなことは……“と言いつつもすべてを言わずに口を閉じる。

 

芙二「さて、食堂へ戻って支度するかぁ」

 とだけ、言うと神城と大淀の手を引っ張って連れ出していくのだった。

 

 

 

 

 

 神城たちが食堂へ戻ると驚くことになる。

 そこはかつての賑わいを一時的に取り戻していた。

 

 まぁ東第一泊地(川内ら)が妖精さんと会話していたりした所為(ワケ)だが。

 

 東第三鎮守府の艦娘見て見なよ! 驚いてんじゃん!……え? 君たちも見えてなかったの?……へぇ……ほーん。ふーん……まぁいいか、皆に声かけて飯作ってくこー

 

芙二「コホン。川内達~放送聞いてた?」

川内「あ、提督! 傷は大丈夫?! 何処か痛くない?」

 

芙二「川内ありがとー……俺は雪風並みのラックの持主だからな。かすり傷程度大丈夫だ」

 

 はっはっは。と笑って答えてみせる芙二。その様子を見て川内達と長門達はほっと胸を撫でおろすも叢雲は疑いの眼差しを向けていた。

 

 その時、先ほどリーダーと呼ばれていた妖精さんが近づいてくる。

 

リーダー「芙二殿。食堂の掃除は終わりました。食器も使えますし、包丁も研いでおきました」

芙二「おぉ……ありがとう。じゃあ、後で届けるね」

 

リーダー「はい。待ってます」

 にこり、と笑いリーダーと呼ばれた妖精は姿を消していった。その後を追うようにして食堂にいた残りの妖精は艦娘に一礼して消えていった。

 

芙二「さてと、飯作るけど手伝いしてくれる人? 挙手!」

 

夕立「はいっ!」

芙二「おーおー。夕立、ありがとなー……後は?」

 

叢雲「夕立に先を越されたわ。司令官、私もいいわよ?」

芙二「叢雲もありがとな」

 

川内「はい! 提督! 私も神通もいいよ!!」

神通「あ、川内姉さんっ」

 

龍驤「うちもたまには手伝ったるで~」

榛名「はい、榛名もお手伝いしますね」

 

芙二「という事は、全員おk? という事か。よっしゃ、妖精さんカモン!」

 パチンと指を鳴らすと数名の妖精が現れ、芙二になんかようですか?と話しかける。

 

芙二「ちょっと、俺っちの艦娘見ててほしい。あ、後さ。料理できる妖精さん居たら軽く指南してあげて欲しい」

 

妖精さんA「あーそういうことなら、適任の子がいますよ」

妖精さんB、C「「うんうん」」

妖精さんD「ですね~……今、あいつはどこに?」

 

妖精さんE「あー分からないですねぇ……」

妖精さんF「まぁあたいらでもできるのでいいですけど……」

 

芙二「なるほどね~……じゃあ任せるよ?」

妖精さん達「「任されました!」」

 

 芙二は妖精さん達に投げて、米を研ぎにかかる。米を探していると神城が厨房へ入ってくる。

 

神城「あーえっと、米はそこじゃない。あそこに麻布があるだろ? そこだ」

芙二「おっけ。ありがとうございます、何合炊きます?」

 

神城「何合くらいだろうな……」

芙二「一人一合と考えて……30人? うちのと合わせれば50人近くいるんだっけか」

 

神城「そうだな……50合? しかし動けない者が10名だから40合かもしれない」

 

芙二「釜に入る米って最大いくつ?」

神城「確か、20?」

 

芙二「足りなくない?」

神城「だが、後二つある。しかし埃被って……ないか。使えそうだぞ」

 

芙二「おっけ。使えんなら……神城提督殿も手伝ってくだされ」

神城「まぁいいよ。俺らも共に食うわけだし」

 

芙二「てか、鍋も足りる?」

神城「あーどうだろうな……」

 

芙二「足りんかったら、どうしよっか」

神城「まぁ食費出してくれんだろ?」

 

芙二「勿論」

神城「なら、使っちまってもいいかも知れんな」

 

芙二「おっけー……じゃあ作っちまうかぁ。米やってこー」

神城「はいよ」

 

―芙二、神城米研ぎ終わり~……タイマーセット!

 

芙二「後、1時間くらいか……これが大音量で鳴ったら余計喧しそうだな」

神城「……思ったんだけどルー足りなくないか」

 

芙二「あ、そうだな。ちょっと買ってくるわ」

神城「いや俺が行った方が良くないか?」

 

芙二「んーまぁ、肉とか野菜とか切っといてよ。うちの艦娘と一緒に。それか神城提督殿の所の艦娘でもいいからさ」

 

神城「む……分かった。すぐではないが道なりに行けばスーパーマーケットがあるからな、そこでもいいしコンビニでもいいし……」

芙二「了解です。というか、何箱必要?」

 

神城「あー5箱くらいかな」

芙二「了解。では、しばらく失礼します」

 

 そういって芙二は厨房から抜け、食堂から出る。

 そこで芙二は思う。“建物内部の地図を頭に入れてないと”

 

 焦る芙二だが思ってみれば、能力行使で出口まで行けそうだという事に気づく。すかさ能力行使でここを出ようとする時、後ろから声が掛かりドキッとする。恐る恐る後ろを振り向くとそこにいたのは長門であった

 

長門(東第三)「やぁ、東第一泊地の提督殿。どこか行かれるのかな」

 

 そういってツカツカと歩きながら芙二の方へと寄ってくる。

 

芙二「あぁえっと、あの日に見た長門さんであってるのかな」

 少しだけ、後ろに下がって距離を取る。すると長門は眉間に皺を寄せ始める

 

長門(東第三)「……? どうして後退したのだ? まさかやましい事でも あ る の か?」

 

 芙二にビリビリと長門の気迫が伝わる。無言でいると長門は言葉を続ける。

 

長門(東第三)「提督殿には大淀の状態を治して頂いたことのお礼をすべきだと思ってきたのだ。しかし、どうして後ずさりなど……んん。まぁいい。礼を言わせてくれ。ありがとう」

 

芙二「いや、そんな礼を言われる事じゃない。しかし、お前は____既に()()()()()な」

 

長門(東第三)「________」

 

 目を見開いて驚きのあまり声を出せないでいる。

 

芙二「しかし……あぁまぁいいか。俺は買い物へ行かなくてはならないんだ。では、また会おう」

 

 長門は一言も発さずにいたので芙二は切り上げて買い物へ行くと告げ、去っていった。

 

―芙二が離脱しました―

 

 

長門(東第三)「ふふ……ふふふふふ……」

 

長門(東第三)「ふはははははははは!!!!!!」

 

 長門は大声で笑う。すると姿が見る見るうちに変化していく。

 

戦■■姫「……ほぉ。完璧に隠せていたかと思ったが……まだ、甘いのか」

 

 そう呟き、長門()外へ出かけたのだった。

 

 

 

―東第二鎮守府 外

 

芙二「……近くにどこかないかなぁ……あったわ。歩くの面倒だからトんでいくか」

 

 

―スーパーあずまや ■■店

 

芙二「……ここにもあるのかよ」

 そう思いつつも店内に入っていくのだった。

 

??「おや? あれはフジ様……?」

 

 

 芙二はとっとと陳列棚にあるハヤシライスのルーが入った物を必要分かごに入れて会計を済ませスーパーを出て鎮守府へ帰宅しようとする時、背後から声が掛かる。

 呼ばれたような気がして振り向くとそこには……

 

??「まぁ! やはりフジ様、でしたか。こんな所で偶然ですね」

芙二「? えっと……え?! どうして、メイさんがここに!?」

 

メイ「私は葉月様の付き添いでこの辺りに居たのですよ。それで昼時になったのですが、どうも葉月様は忙しいようなので私が来たという次第です」

 

芙二「へぇ……なるほど。あ、そうだ」

メイ「なんですか?」

 

芙二「一つ聞きたいことがあるんですけどいいです?」

メイ「はい、私に答えられる範囲であれば……ですが」

 

芙二「つかぬ事を聞きますがドラグルド(向こう)の方で行方不明になってる方とかいます?」

メイ「行方不明……ですか? 物騒ですね、何かあったのですか?」

 

芙二「えっと……どこから話せばいいんだろう」

メイ「?」

 

芙二「実は____」

 メイに事情を話すとだんだん顔が曇っていく。

 

芙二「えっと、つまり龍人族がこの世界で暴れているかも知れないという事ですか?」

メイ「えぇ、そうです」

 

 メイはしばらく顎に手を置き考えていた。

 

芙二「(しかしまぁ、人間から龍人族へなんてことはあり得ないだろうしなぁ)」

 

 なんて考えているとメイが“はぁ。“と溜息をつく。

 

メイ「もしそれが本当だとしたら規律違反というかなんというか」

芙二「でしょうね……あの龍人族って攫われたりするんですか?」

 

メイ「偶に聞きますよ。確か、レヴィ様でしたっけ」

芙二「レヴィ? それって少女のような見た目をしてますか?」

 

メイ「えぇ。そんな感じでした。お知り合いですか?」

芙二「えっとまぁ自己紹介は済ませた仲です」

 

メイ「まぁ……! あ、すみません。話しが逸れました。レヴィ様もその昔攫われたと聞いてます。そして今は旅をなさっているとも」

芙二「ほぉ。その話を聞いてもらったというのが前提で聞いてほしい事があります」

 

メイ「なんでしょうか」

芙二「調べてきてほしいのです。龍人族で今も行方不明になっている方を。不謹慎かもしれませんが、どうか。お願いします」

 

メイ「分かりました。私の方でも調べてみます。あ、それと……」

芙二「ありがとうございます。それと?」

 

メイ「葉月様、シェリル様、陛下にもフジ様が元気だったと知らせておきます」

芙二「えぇ是非! ところで葉月さんは一体何を……」

 

メイ「んー、私にはよくわからないのですよね」

芙二「そうですか……あ、俺はもう行きますね。では、また」

 

メイ「えぇ。また、お邪魔させていただきます」

芙二「えぇ! また来てください」

 

 メイと別れた芙二は鎮守府へ帰っていくのだった。

 

メイ「さて、私も葉月様の所へ戻りましょうかね~」

 

 

 

―東第三鎮守府―

 

芙二「神城提督殿~芙二、ただいま戻りました」

神城「ご苦労。というか随分かかったな?」

 

芙二「あー知り合いに偶然出会いまして。少し盛りあがってしまったところです」

神城「そうか。しかし待ってもらってたんだぞ。皆に謝罪したのちすぐさま厨房へ入ってもらう」

 

芙二「了解であります」

神城「よろしい。では、支度を整えたら入りたまえ」

 

芙二「はい!」

神城「(ふぅ……これはこれで大変な作業だ)……俺は少し休ませてもらうよ」

 

 疲れた表情を見せるとスタスタと厨房から出ていった。

 神城と入れ違いで厨房へ入った芙二の所に妖精さん達が駆け寄る。

 

 

芙二「おぉ……お疲れ様。ありがと、妖精さん達」

妖精さんC「いえいえ。案外、怖いような事はなかったですよ」

 

芙二「そりゃよかった。ホッとしたよ」

妖精さんB「ですです。でもまぁ、神城殿の方が怖かったです……」

 

芙二「えぇ……ちなみにどんな感じだった?」

 

妖精さんA「なんてったって、切り方が包丁を対象に目掛けてストーン!ってやるの! それに野菜切る時も鷲掴みでスパって……指が飛ぶかと冷や冷やしたよ」

 

 苦笑いをしつつ話す妖精さん達。うちの艦娘よりも神城の方が危ないなんてそうそう思わないだろ……と思いつつ芙二は煮込まれている鍋の方へ近づく

 

夕立「あ、提督さん! 夕立、頑張ったっぽい! 後で撫でて~!」

叢雲「ちょっと、夕立。あんただけじゃないでしょ? みんなで頑張って作ったんだから()()()()()()()()()はあるわよね?」

 

芙二「はいはい、夕立の件は分かったよ(おっと?? 叢雲、こいつ策士か?? ちゃっかり叢雲本人も求めちゃってるし)確かに叢雲のいう通りかもしれないね。良し、一回だけ。一回だけ言う事を聞くよ」

 

叢雲「言質取ったわよ?」

神通「あ、あの提督。質問が……」キョシュ

 

芙二「なんだい」

神通「期限付きでしょうか?」

 

芙二「いんやないよ」

神通「そうですか……ありがとうございます」

川内「という事は今、使ってもいいの!?」

 

芙二「今はダメだ。飯作ってるから帰った後でならな」

川内「えぇ……いいじゃんかー」ブーイング

 

 

龍驤「ちなみに何をしてもらう予定だったん?」

川内「それはもちろん、夜s____「まだ夜じゃないで」はっ! そうだった。危ない危ない」

 

榛名「龍驤さんそれはダメじゃないでしょうか……? 提督は人間です。私達とは違って浮けませんし」

龍驤「そらそうやな。司令官、人間やったな」

 

芙二「川内……もしや発散できなかったからか?」チラ

川内「そうだよ! (夜戦)行くと思って温存してたのに……さ!!」プンスコ

 

叢雲「あー……それについては申し訳ないと思うわ。ごめんなさい、川内さん」ペコリ

夕立「夕立もごめんなさい」ペコリ

 

川内「あーいやいや大丈夫! 大丈夫! 怒ってるわけじゃないからさ」イヤイヤ

叢雲「お詫びになるか分からないけども私と夜戦、します?」チラ

 

川内「えぇ!? いいの、叢雲ちゃん!!」キラキラ

叢雲「大丈夫よ。それでいいのなら、ね」フゥ

 

川内「やった! じゃあ帰ってからすぐに__」

芙二「川内、それはNGだ。目に見えない疲労があるかもしれん」ダメヨ

 

川内「ぶー……いつならいいのさ」ブーイング

芙二「んーまぁかえってから相談だな……っと。神城提督殿、こっちの鍋にもルーを入れても?」

 

 するとカウンターの方から別の声がする。おや、と思いうちの艦娘に待ってと合図して厨房を出る。

 

??「提督は今いないわ。でも、いいんじゃないかしら?」

芙二「えっと、雷だね。初めまして」

 

雷(東第三)「初めまして。駆逐艦 雷よ。芙二提督でいいのかしら?」

芙二「あぁいいとも」

 

雷(東第三)「……」

芙二「?」

 

 互いに自己紹介を終えたのだが、雷は黙る。

 そして雷は厨房にいる芙二の所の艦娘に向かって羨望の眼差しを向けて話しだす。

 

雷(東第三)「少しだけ羨ましいわ」

芙二「……」

 

雷(東第三)「……いや忘れて」

芙二「……すまない。見せつけるような真似をして」

 

 きゃっきゃとはしゃぐ夕立達を見て純粋に“羨ましい”と口にする雷。しかし恥ずかしいと思ったのか忘れてくれとも言う。

 申し訳なく思った芙二は雷から目を逸らして謝罪するも____

 

雷(東第三)「……いいの。貴方の所の話でしょうし。雷があーだこーだ言う資格はないと思うの」

 

 そう言い続けて先ほど言った事を言い直していう。

 

雷(東第三)「でも嫉妬しちゃうわね? あんなに仲がいいなんて。雷たちの所じゃあ滅多とないわ」

芙二「雷……話は聞いたのか」

 

 

雷(東第三)「ここで起きた惨状でしょう? えぇさっき長門さんから初めて聞いたわ」

芙二「そっか。じゃあ、これからどうなるかも____」

 

 話をすべて聞いた上で何か言いかけるも雷が声量を1つ上げ被せるように話した。

 

雷(東第三)「勿論。でも、良かったわ」

芙二「良かった? (何が良かったのか聞くのは野暮か)」

 

 芙二が聞き返すと雷は話始めた。

 

雷(東第三)「いいわ、教えてあげる。1つ誤解が解けたのよ。司令官は雷達の事が嫌いかと思ってたもの。でも、それは違うって聞いて、解けたの……でも雷より、も生き残ったみんなが可哀そうね」

 

 淡々と話し続ける雷に芙二は驚く。この短時間で雷は____成長していた。

 もっと頼られたい、というのが雷の本当の姿だと芙二は思っていたし生き残った艦娘についてももっと感情を爆発させていくかと思った。

 

 しかしそれは違ったようで落ち着いている雰囲気を感じ取った。

 

芙二「……凄いな、雷」

雷(東第三)「あら? もっと褒めてもいいのよ?」

 

芙二「あぁ本当に。神城提督殿に変わって頭を撫でてやろう」

雷(東第三)「……子供扱いしないで欲しいわ。それに雷は貴方の艦娘ではないわ。ずっと見つめてる艦娘にしてあげたらどうかしら?」クス

 

 クスリと笑う雷。そこには子供っぽさはなく、たまに見る精神は大人という子供特有の何かがあった。そして芙二は言われるがまま視線を外してみるとそこには困った顔をした妖精さんと夕立が見えた。

 妖精さんはこちらに近づき芙二に話しかける

 

妖精さん1「お話がようやく終わりましたか。えっとルーなるものは入れ終わってます。鍋二つ分は完成しています」

 

芙二「お、ありがとう。料理、完成したんだね。でもどうして夕立があんなに見つめてくるか知ってる?」

妖精さん1「それは____」

 

 妖精さんが言う前に夕立が芙二の前に出てきて言った。

 

夕立「それは提督さんが雷ちゃんの頭を撫でようとしたからっぽい!」

 

芙二「えぇ……ごめんて。夕立」

 

夕立「……」プイ

 

 芙二が謝るも拗ねているようでいう事を聞かない。厨房にいる川内達にヘルプの視線を送るもニヤッと笑ってこういった。

 

川内「提督~? 他所の艦娘に浮気はダメだよ。夕立ちゃん、拗ねちゃってるじゃん。これは撫でないと終わらない流れだよ」

 

芙二「マジで? 東第一泊地(うち)でなくて東第三鎮守府(ここ)で!?」

叢雲「そうみたいよ? 少なくとも夕立は撫でてくれないとダメっぽいわよ」

 

 叢雲はそう、笑っていう。芙二は“マジか“と苦笑いでやる過ごそうとするも……

 

神城「芙二提督殿? どうかしたので?」

 

 休憩から帰って来た神城がキョトンとしながら歩いてくる。芙二は助け舟が出たと思い、昼食の完成を伝えようとするも、そうはいかない。

 

雷(東第三)「あら司令官? 休憩はもういいの?」

神城「あぁ。もう大丈夫。で、芙二提督殿はどうかしたのか?」

 

“あっちょ……”と言いかけるも雷は芙二の方を見ると小悪魔的な笑みを浮かべ楽しそうな表情で神城に告げる。

 

雷(東第三)「さっきね、東第一泊地(あっち)の司令官と雑談してたの」

神城「ふむ、ふむ」

 

 

雷(東第三)「で、なんというか。まぁ端的にいうと褒められたの。その時なんだけど……」

神城「褒めて貰ったのか。良かったじゃないか。で? その時になにかあったのか?」

 

雷(東第三)「雷の頭を撫でようとしてくれたのよ。その様子を東第一泊地(あっち)の艦娘が嫉妬してしまっただけ、よ」

 

神城「なるほど。芙二提督殿はロリコンだったのか?」

芙二「いや違うが」

 

神城「……まぁそのなんだ。ついでおくから、撫でてやればいいんじゃないか?」

芙二「え」

 

神城「あーうん、一人前で盛っとくから。あ、芙二提督殿の所の艦娘も手伝ってくれる?」

叢雲「構わないけど」

 

神城「ありがとう。あ、雷もいいかな?」

雷「えぇ、司令官。構わないわ」

 

神城「まぁここじゃやりにくいだろうから廊下で済ませたら?」

芙二「あ、じゃあそれで……(?)」

 

 神城が気を利かせたのか、退室を促す。芙二は流されるまま夕立を連れて外へ行ったのであった。

 

ー続く

 

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