ー続き
―場面は変わり……
―医務室
あれから四十五分以上経ち、20時30分を過ぎる。寮の方でなにやらひと悶着あったそうで騒がしかった。
神城は今すぐにでも行きたいから、退けとなんどもいうが外へ出したら殺されるのはわかりきっていたので出さないでいる。
神城「くそっ! くそぉぉぉ……」
まだマシな艦娘を助けれない神城は自責の念に駆られてか医務室の壁を何度も殴りつけている。
瑞鳳はなにもすることが出来ずに、ただただ静かにしているだけだった。
そして、眠りについた艦娘は依然として目を覚まさない。
八崎「……瑞鳳殿。少しいいですかな」
瑞鳳(東第三)「え? あ、はい」
八崎「祥鳳殿はどこにいますか?」
瑞鳳(東第三)「祥鳳姉ぇは……寮の私達の部屋のベッドだよ。なんでそんなこと聞くの?」
八崎「先ほどから、悲鳴が絶えないのでまぁ連中が何かしらやっているのでしょう」
瑞鳳(東第三)「なにかしら……そういえば、吹雪ちゃんは……いや吹雪ちゃん達は……」
八崎「……恐らくは、ここの艦娘を殺して深海化してない
神城「なんだと……?」
八崎「まぁ憶測なのでなんともいえませんが。しかし、ここを乗っ取っても尚、マトモなのが居たら困るでしょう? 他の鎮守府や泊地にSOSを出されでもしたら困ると思います。マトモな艦娘は仲間とはいえ実際の所はスパイなわけですから」
神城「……それで一度殺して……深海棲艦の様にすると? いや殺されかけたってのを聞くと真実味が増して……あぁなんてことだ」
ワナワナと震えだす、神城。頭を抱え表情は死に始めていた。
そこで瑞鳳はふとした疑問を呟く
瑞鳳(東第三)「……でも、なんで吹雪ちゃんだけなのかな」
八崎「それはまた憶測なのですが。彼女が最初に切り込む人だったからではないですかね。騒ぎを起こして、注意散漫にして神城提督殿を殺しに行くと言った算段だったのか分からないですけど……」
神城「だとすると芙二提督殿は危なくないか? 加勢しに来てるのでは……」
八崎「まぁ何かあったら本人から要請なりなんなり来ますよ。でも、後30分後、帰ってこなかったら私が呼びに行きますね」
瑞鳳(東第三)「……え、憲兵殿が離れたら……」
八崎「大丈夫ですよ。芙二提督殿の意識がなくならない限りは大丈夫かと思われます」
瑞鳳(東第三)「でも長門さん達に……」
八崎「そのときはその時です。まぁまだ待機していましょう」
― 場面は再び 芙二と武蔵へ
砂浜に追い込む。
波打ち際がすぐそこだ。
芙二が人間であれば、何もすることができずに殺されるだけだ
そして武蔵は話しかける。
深海武蔵「血迷ったか。人間よ、貴様。名をなんと言う」
芙二「吾は芙二 凌也だ。汝は深海化した武蔵か。どうしてその道を選んだのだ」
深海武蔵「大和を殺されたからだ。愛しい姉を殺されて黙っていられるか……!!」
芙二「そうか。否、なぜ生き残った事を喜び噛みしめない。大和が殺されたのは確かに悲しい事かも知れぬがだ、戦災により愛しき者を喪い残された者共は、こうして恨みに身を任せ、帰ってこない者をダシに暴れるか」
深海武蔵「ダシだと、貴様ぁッ!!! 言うがな、やり返さない者は力なきものだ! 我等のやり方に手を出さないでもらいたい」
芙二「……吾は提督である神城に助けて欲しいと言われたのだ。荒療治をしに来ただけだ。ならば、貴様らも吾のやり方に手を出すな」
深海武蔵「……何? あの腰抜けが貴様に助けを求めた、だと。くっくっく……笑わせるではないか。まぁ所詮は雑魚同士で組まれただけの事。これ以上、邪魔をするのなら確実に殺させてもらう」
芙二「つまり、退かないという事でいいな? 武蔵、貴様は死を覚悟できているという事でいいな?」
深海武蔵「引かないも何も邪魔をするな……たかが人間如き、それだけの啖呵を切るのなら……分かっているな!!!」
武蔵が攻め込む。会話を遮って、頭蓋骨を粉砕してやろうと拳を握り振りかぶる
芙二「……お前は吾に勝てない。試製深海艤装、展開……リンク:狂獄龍忌呪」
深海武蔵「今更、ぶつぶつ独り言をッ!!! 後悔したか!? 圧倒的な力の差を理解して死ねィ!」
―ドッバァ!!!
武蔵が繰り出した拳が芙二に当たり、砂が舞い上がる。
芙二の声が聞こえない所為で完全に殺したと勘違いする武蔵は高らかに笑って馬鹿にする態度をとる。
深海武蔵「アッハッハッハ……!!! 馬鹿め、人間と
武蔵は笑い続ける。その声は静まり返った砂浜によく響く。ひとしきり笑った後にあの蛮勇の死体でも見てやろうと近づく。
深海武蔵「なっ!? いない!! ……いや海まで飛んでしまったか……浮いてるかも知れないな。見に行ってやるか」
そう言うと艤装を展開したまま、海上を進む。
しばらく、進むと沖へ出る。そして不審なモノを見つける。
深海武蔵「なんだ、これは……? 玉? 何故、こんなところに」
武蔵が見つけたモノは確かに、玉だ。正確には玉ではない事を瞬時に悟る。
それは触れてみたらドクン、ドクンと動いているからだ。
何かの卵と思うも、大きさが規格外なのだ。武蔵の背よりも少しだけ大きな卵。
気味悪く思ったので、砲撃を繰り出そうとした時。ピシッと
何かが出てくると思った武蔵はその卵から距離を取る。
そして、殻が割れて中身が現れる。
深海武蔵「なんだと……?!」
それは人の形をしていた。だが、形をしているだけで
― 頭には角が生え、顔は嘴の様なマスクを着け、身体は血に塗れた青い鎧に身を包み込んでいた。そして、腕には大きな鈎爪が指の数だけ装着してあった。尾の様なモノまで生えている。明らかに、この世のものではないといった思わせる生物がそこにはいた。
深海武蔵「……」ゴクリ
芙二「……む、さ、しぃ……」ギギギ
ぼそぼそと話始める。その言葉を理解すると驚いて声を張り上げる。
深海武蔵「!! まさか、殺したはずの人間かっ」
芙二「ああぁぁあああ!!!!!!」ギリギリ
突然、肉体を切り裂かれたような痛みが走り奇声を上げる芙二。武蔵はこけおどしかとイラついて砲撃をしようとするも芙二がギロリと睨みつける。
睨まれた武蔵は死を直感する。凄まじい殺意に思わず後退する
芙二「ふぅーッ……ふぅーッ……良し、これでいいな。っとこの姿はなんとも……誰の趣味だ??」
芙二は芙二でなんとか力の制御に成功する。そして自身の姿を見渡すとペストマスクに鎧、それに腕のは鈎爪って……まるで統一感がない。キメラ防具の様な見た目に疑問を抱く。
芙二「それよりも……時間っと」
空を見上げ星を見て時間を確認すると21時を回っていた。
芙二「うわ、わ……時間過ぎちゃってる……あれ? 武蔵は?」
そう思い、見渡すと岸へ向かっている武蔵が居たので注意を引くために追う。
コウモリの様な翼を4枚生やし、上へ、上へ高度をあげていく。
深海武蔵「……はぁ、はぁ……ここまで来ればっていない……?」ブルブル
武蔵は生命の恐怖を感じて岸近くまで逃げてきていた。
この事実を長門に伝えねばと思いっていたのも束の間。悪鬼は、逃がさない
―キュィィィン……―
ジェット機から聞こえそうな音が突如、辺りに響く。武蔵は何事かと思って見渡すも何も映らない。
だが……キュィィィン……その音は聞こえるどころかこちらに近づいてきているように聞こえる。
そして武蔵は目で捉えたのは赤い彗星の様な何かがこちらへ近づいてくるのだ。
逃げようと思ったときには時すでに遅し。
―バガ ァ ァ ァ ァ ン!!!
何かが目にもとまらぬ速度で砂浜にぶつかる。その衝撃波により武蔵は吹き飛ばされ宙を舞う。
ズシャと砂浜に着地し、身を起こして目にすると地面は大きなクレーターが出来ていた。
何かが落ちた場所付近にあった砂は融け吹き飛ばされており固い岩も所々剥き出しで融けていた為、自身に降りかかろうものならと思うとゾッとした
その砂ぼこりが晴れると中心にいた人物が武蔵の方へ歩き出したのを確認した。
あんなものを見せられて勝機など見えるわけもなく、諦めて座り尽くす武蔵
ガシャン、ガシャンと歩く音が近づくにつれて武蔵の緊張はピークに近づいて行く。
そして……
芙二「……よぉ、まだ死合うかい。吾としては身体が温まってきたから構わないぞ」ニィ
深海武蔵「……い、いや降参だ……命だけは……命だけはッ」ガクガクガクガク
“降参”といい尋常ではないくらい震え、汗も涙も流す。その様を見て芙二は命令をする
芙二「……首謀者は長門か」
深海武蔵「! なんで、それを……」
芙二「やはり長門だろうと思ったよ。貴様も深海棲艦になったかもしれないがそれはル級やタ級になっただけ。しかし、長門と……瑞鶴か? アレは姫や鬼にまでなっただろ」
深海武蔵「そうだ。私とは違い、姫や鬼となっ「仲間はどれぐらい、いる。目的も話せ。出なければ、臓物を引きずり出す」……分かった。話そう」
芙二の脅しに屈した武蔵は他の仲間を話し始める。後、目的も。
芙二「そうか。皆殺しにする事か。というか、理性も知性もない深海棲艦になった駆逐六名が合わねぇな。嘘をついているな?」
深海武蔵「いや、嘘はついていない……信じてくれ」
芙二「……はぁ。分かった、殺しはしないがそれ相応の痛みに悶えろ」ズズ……
武蔵の腹に向かって左手をずぶりと突き刺す。内臓を掻き回すのが目的ではないが話と違う事をされた武蔵は口から血を吐き、痛みに顔を顰める。
武蔵「いいか、武蔵。吾がこれからする事は他言無用にしておけよ」グチャリ、グチャリ
深海武蔵「ッガ……キ、貴様……」カッケツ
芙二「……返事は」ヌプ、グチャリ
深海武蔵「……分かっ……た」
仮契約は結べた、と思う芙二。武蔵の顔から血の気が引いてきたのを確認すると急いで魂に憑いている怨念を結晶化して腹から取り出す。そのついでに干渉して元に戻す。
深海武蔵「ッガ!!……はぁ、アレ? 腹の傷は……」
さっきまで自分の内臓を弄られていた武蔵は自身の腹部を探るも傷はどこにも見当たらない
芙二「さて、ダメ押しだ。喰らっとけ」
深海武蔵「は? これ以上なにッ……を」バタ
武蔵の腹部を思いきり殴り気絶させ、自身につく忌呪を解除する。(これでオンオフ可能になったわけだが)
気絶した武蔵を担ぐと医務室へ向かった。
??「……なにあれ、それに武蔵さんが殺された……!!!」
―医務室
芙二「八崎さーん、いるかい」コンコン
八崎「芙二提督殿!! ご無事で……? 誰ですか? まさか被害者?」
芙二「いや、武蔵だ。さっき仕留めてきた」
神城「え!? む、武蔵!? 深海化してたはずじゃ……」
芙二「もう大丈夫だ、当分は起きない」
神城「そ、そうですか……! 芙二提督殿、その血は!?」
芙二「それか? 武蔵の腹を貫き臓物を弄った時についたものだ……神城提督殿、武蔵を寝かせてやってくれ。俺はもう一度、治療をしてくる」カタヲカセ
神城「あぁ…」ウケトル
八崎「……芙二提督殿、この件の首謀者は「長門だ。それに姫や鬼が一体ずついるだから、ここから絶対に離れるな」……承知」
芙二「……少し、飲むわ」
そういうと赤色の小瓶の中身を飲み干す。空の瓶は床に投げ捨て、廊下へ行こうとする時、神城が芙二に問う
神城「……俺に出来る事はあるか」
芙二「今はない。この夜で終わりなわけがない。後の問題は少しずつやって行くぞ」
神城「……わかった」
芙二「あぁ、それと瑞鳳」
瑞鳳(東第三)「なに?」
芙二「後で、アイスクリームを作ってやっとくから食べてくれ」
瑞鳳(東第三)「……」
芙二「では、な」パタン
医務室を出た時、誰かに殴られそうになり紙一重で避けて体勢を変える。
??「あら、ダメではないですか……」
芙二「……その顔は筑摩か」
??→深海筑摩
深海筑摩「あれ? 知ってたんですか。なら、提督を出してください」
筑摩が待機していたのだ。死角を狙って仕掛けるもそれだけじゃあ甘い。
芙二「ダメだ。殺すだろう」
深海筑摩「えぇ、殺します」
深海筑摩「早くだs「すまないな、今は遊んでやれないんだ」!? ぐぇっ」
先ほどの武蔵程ではないが腹を殴りそのまま、魂に触れる。
パッと見、外傷はないが筑摩は苦悶の表情を見せる。
そしてそのまま怨念を結晶に変え懐に入れる。
すると筑摩は元の状態に戻り、バタンと倒眠りにつく。
そしてまた医務室へ放り込み、先ほどの艤装を纏い泊地へ急行するのだった。
― 時間は1時間程戻り場面は東第一泊地 工廠
時刻は20時45分。
叢雲、時雨、サラトガの3名と夕立が加わり支度をしていた。
本来は3名のはずだったが、時雨がうっかり話してしまったらしい。それでついてくることになった。
時雨「……もうすぐ、だね」
叢雲「そうね。いよいよねぇ……ふふっ」
サラ「提督は本当に大丈夫でしょうか」
夕立「提督さんなら大丈夫っぽい!」
時雨「そうだね。提督ならきっと大丈夫」
叢雲「明石さん、いる?」
叢雲が明石を呼ぶ。すると明石__は出てこず、アビスが現れる。
叢雲「あれ? 司令官といつも一緒にいる妖精じゃない」
アビス「今明石は来れないです。まだ他の人の艤装修理が終わりません」
叢雲「……そう。ねぇ、あなた分からないの?」
アビス「なにがです?」
叢雲「司令官が今、どうなっているとか」
アビス「分からないですね」
叢雲「そう。そうよね、ごめんなさい」
アビス「いえいえ、質問に答えられなくて申し訳ないです」
夕立「なら、夕立の質問に答えて欲しいっぽい!!」
こうして13分に渡る、アビスへの質問会が行われたのだった。
時刻は21時。いよいよ、と一同が思うも一向に芙二は現れない。
“もしかして”と嫌な思考が過るもそれはないと否定する。
10分経つも現れる気配がない。
夕立「……あっ流れ星!」
待っていると流れ星が見えた!とテンション高めで夜空を指差す
時雨「本当だ。でも流れ星? 彗星の様に見えるけど」
叢雲「あれ、でも海に向かって落ちているわ」
サラ「わぁ! こんな所で見れるんですね!」
人それぞれに反応するも、その中でアビスだけは不穏な気配を察していた。
―流れ星という話題について、どうとか願い事はしたのかとかそんなくだらない事を話していたらあっという間に30分が経ち工廠内の時計の針は21時44分と指していた
いい加減に待ちくたびれてきていた叢雲達は一気に不安になる。こんな事はなかったからだ。
しかし、その不安は杞憂に終わる。
芙二「いやぁすまん、すまん。随分待たせちまった」
叢雲達の目の前に
あまりの事にサラトガは悲鳴を上げようになるも芙二は血のついてない方の手で口を押さえる。
サラトガに言い聞かせると塞いでいた手を外す。
時雨「もしかして提督なの? なにその姿……」
芙二「え? 吹雪達の怨念喰いまくったら忌呪をノーリスクで使えるようになってるだけ」
サラ「キジュ?」
芙二「呪いよ。俺、呪われてんの。生まれつき」
夕立「提督さん、赤いのはどうして? もしかして負傷してるっぽい?!」
芙二「あーうん、北上に刺されたり新手に3発殴られたり、武蔵に一発貰ったりしてたけど大丈夫よ」
叢雲「え!? 本当に大丈夫なの!?」
芙二「うん。今、ついてる血は武蔵のだからね」
サラ「!?」
時雨「提督? まさか殺したの?」
芙二「まさか。時雨の様になっていたから元に戻せたのは4名だけ。首謀者は長門らしいんだけどこれがどうもやっかいで」
叢雲「もしかして姫や鬼になってるの?」
芙二「そうそう。って話してるとあれだから、とっとといくよ。皆、俺の元へ来て。あぁアビスも」
アビス「分かりました」
芙二の元へ集まると音もなく消え、気がつけば東第三鎮守府の門前であった。
こうしてそれぞれの戦いが始まっていくのであるが惨劇は始まったばかりという事をまだ知らない。
―続く