とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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話しが長いので分けました。


二章 28話『羅刹、宵にて ⑤』

ー続き

 

―鎮守府内 廊下

 

島風(東第三)「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」

 

 早く雷の元へ行きたい一心で疾走する島風。

 そんな島風に負けじとついていく叢雲達。その後ろに遅れて走る神城がいた。

 

叢雲「不思議ね。なんだか、静かすぎて怖いわ」

夕立「む、叢雲ちゃん! なんでそんなに話せるっぽい!?」

 

叢雲「さぁ。なんでかしらね? 司令官がドンパチやっていると思えないくらいに静か、ね」

時雨「そうだね。怖いくらいに静かだね」

 

夕立「な、ん、で……時雨も話っせっるのよ」

島風(東第三)「慣れ?」

叢雲「まぁ聞いてるだけでいいのよ?」

 

夕立「舌噛みたくないから黙ってるっぽい」

八崎「(いやいや流暢に話せてるじゃないですか)」

 

 叢雲達の会話を聞いて確かにそうだと納得しつつ、流暢に話せているではないかと突っ込みを入れる八崎であった。

 

 そしてようやく寮へ着いたものの入口は所々壁に穴が空き、ガラスが割れ落ちとてもじゃないが……と引いていた。

 

 それでも島風は廃墟の様になっている寮内へ足を踏み入れて自分たちの部屋へ駆けつける。幸い、一階の角部屋なのですぐに入ることが出来た。

 

 島風は部屋の中に入ると“雷ちゃん! 助けに来たよ!”と声を掛けているようだったので急いで雷をドッグへ入れる為に部屋中へ足を踏み入れた時、一同は茫然とする。

 

 島風は雷を抱え上げて必死に声を掛けるも雷からの反応はない。

 何度も何度も声を掛けるのだが段々と声が小さく、涙声になっていくも反応を返さなかった。

 部屋の前でそんな島風を見ていた八崎達は無言のまま部屋に入り、口を固く閉じて目を伏せる。

 

 異様な静けさの中、涙を流して雷の名前を呼ぶ島風の声だけが良く聞こえた。

 雷はすでに事切れていたのだ。頭から血を流し、目や口は半開きのまま揺さぶられるまま首がカクンカクン揺れ、その揺れが止まると丁度首が八崎達の方を向く。

 何も映さない目は八崎達を捉えた。

 

 虚ろな目と合ってしまうのを怖れたので反射的に逸らすも神城だけは信じる事が  出来ずにその目と合ってしまう。直後、悲鳴の様な泣き声を上げ島風と雷の方へ歩いて行く。

 

神城「雷ぃぃぃ……雷ぃぃぃ……」

島風(東第三)「提督……雷ちゃんはまだ生きている、よ?」

 

神城「……」

島風(東第三)「……提督?」

 

八崎「(まずい、このままでは二人壊れてしまう。死んでいると伝えたら……止むを得ないですが……嘘を吐きますか。その場しのぎでしかない)」

 

叢雲「雷はまだ生きているわ。でも今、まだ入渠させても目が覚めるか分からないから司令官を待ってみましょ?」

 

神城「……」

島風(東第三)「そうだよね? だってこんなにも……」

 

 叢雲の言葉を聞いてもう一度すでに事切れた雷を見るも言葉は続かずに俯く。

 しかしすぐに心配そうな顔を浮かべて大丈夫かと聞くのだがその瞳に光は灯していない。

 

島風(東第三)「……大丈夫、だよね? きっとまたお話できるようになるよね?」

神城「失礼、取り乱した。雷はまだ生きているからきっと大丈夫。良く寝かせれば起きてくるだろうから医務室へ行こうか?」

 

島風(東第三)「うん! 提督! 分かったよ!」

 

 すでに壊れてしまっているのか瞳は真っ暗なまま元気に返事をして神城と共に医務室へ行くのだった。

 去り際、神城は八崎達に“後は任せました”とそういって島風と共に雷を連れて行ったのであった。

 

八崎「……あの光景は中々きついですな。叢雲殿、今さっきはどうもありがとう」

叢雲「そうね。あのまま事実を伝えていたら確実に壊れていたわ。だけども、もう壊れかけているかもしれないわ」

 

時雨「あの目はダメだよ。現実(しんじつ)を知ったら……僕の様になる」

夕立「……許せないわ」

 

叢雲「夕立? それは私も同感よ」

時雨「……八崎さん」

 

八崎「はい。大丈夫ですよ。止めはしません。それに私は入渠施設へ報告はですぐにいきますから」

時雨「じゃあ任せたよ。僕たちは提督の方へ行くから」

 

八崎「……ご武運を」

 

 こうして神城達は医務室へ。八崎はドッグへ。叢雲達は芙二の元へ向かうのだった。

 

―芙二の場面へ

 

芙二「rrっらぁ!!」

 

 掛け声とともに繰り出される拳は空を切る。

 

深海木曽「危ないな……お前、本当に人間か?」

芙二「……」ポリポリ

 

深海吹雪「いや違いますよ。こいつは人間でもなんでもない、ただの化け物です」

芙二「……」ニィ

 

深海吹雪「来ます! 構えてください!」

芙二「……まずは」シュバッ

 

深海吹雪「!?」

深海瑞鶴「消えた!?」

 

 吹雪達の目の前から芙二が消える。

 辺りを見渡すが誰もいないので逃げたかと思わせ余計にイラつかせるのだった。

 

深海木曽「ははは……!! 腰抜けは最後まで腰抜けだったか……!!!」

深海吹雪「(おかしい。さっきの顔は何かやる顔だ……)」

 

深海涼月「……居ました。あれは何をやってるのでしょう?」

 

 そういって涼月は指を差す。

 指した方向を見てみると先ほど殴り飛ばした2名を起こして何かしている様だったのでそこへ砲撃をする。

 

 弾は直撃し煙が上がる。

 ざまぁみやがれと笑いながら言うもまだ木曽は知らない逆鱗に触れたことを。

 煙が晴れるとそこに芙二と先ほどの2名は居らず視点を移すと先ほどの場所に戻っていた。

 

芙二「待ってろ。すぐに相手してやっから」

深海木曽「……ふっ……なぜ、お前を待たねばならんのだ」

 

 そういって砲を構える木曽に対して芙二は目もくれず、満潮と荒潮に秘薬を与えて蒼龍達を飛ばした要領でやろうとするとき芙二の態度をみて挑発だと思った木曽は砲撃をする。

 

―ドガン!!

 

 直撃して煙が上がる。今度こそ、殺してやっただろうという気持ちもあったがまだまだ撃ってやろうという気持ちもあり次弾装填を済ませる。

 

深海木曽「まだやってやる!」

深海吹雪「いや木曽さん! 気をつけてください!」

 

 そんな木曽とは別に吹雪は気をつけろという。場の雰囲気が変わったのだ。

 さっきから様子見をしていた瑞鶴も涼月も驚く。

 

 突如、煙は吹き飛ぶ。衝撃波が吹雪達を襲う。

 あまりの事に対応できず目を瞑って身を護る。それに耐えるとゆっくりと目を見開くとさらに驚く。

 

 そこにはフード付きのコートを羽織ってあり、フードの中から見えるのは赤い鬼の仮面を被った人間(芙二)がいた。

 

深海木曽「なっ」

芙二「……」バシュ

 

 驚いている木曽目掛けて即座に飛んでいく芙二。

 芙二と木曽たちの間は20mもなかったが人間にしては早すぎるスピードで迫られる。

 

深海木曽「はっ……早「お前らは一度、死んだ方がいいぞ」なっ!?」

 

 防御の構えに入ろうとする時、芙二の言葉を聞いて驚く。

 “死んだ方がいい”とそういってどこから出したのか分からない主砲を木曽の腹部目掛けて放とうとする瞬間

 

??「危ないっ」

芙二「……お前から先にやってやるよ」ドォン

 

深海瑞鶴「なっ……ガッハ……」ビシャ……

 

 咄嗟に庇った瑞鶴の腹部に直撃しコンクリを跳ねて転がっていく。

 そして血を吐きながらも立ち上がるさまをみて()()()()()はタフだなと再確認するのであった。

 

深海木曽「……お前ぇ!!」

 

 庇われた木曽は瑞鶴の姿を目の当たりにして頭に血が上りサーベルを抜き斬りかかる。

 

芙二「……近づいてきてくれて助かるわ」

深海木曽「仲間をよくも……!!!」

 

 主砲から換装し、片手だけ盾に切り替えると木曽が振り下ろしたサーベルを弾く。

 弾かれた衝撃で後ろに仰け反った隙を突いて蹴り飛ばす。

 

深海木曽「ぐぁっ」

芙二「まだ行くぞ」シュバッ

 

 木曽が着地する前に今度は殴りつける。そのまま地面に激突し気絶する。

 

深海瑞鶴「木曽さん!!」

芙二「煩いな。次は誰から行く? 誰でもいいが時間が惜しいからお前からな」

 

 そういって瑞鶴の方へ向かう。

 艤装(すがた)そのものを換装し先ほどのキメラ装備へ変え、空へ上がる。

 瞬く間に赤い点が空へ上がっていく。そのことに瑞鶴たちは驚きを隠せない

 

深海瑞鶴「あんな行動は人間の範疇じゃないわ!!」

深海吹雪「……もしかしてさっきのって」

 

 そんな時に限って叢雲達が到着するのだが遥か上空に居る芙二は気づいていない

 そして瑞鶴(マト)目掛けて音速で襲撃しに行く。

 

叢雲「……ようやくついた……」

夕立「あれ!? 提督さんがいないっぽい!」

 

時雨「本当だ。いないね……ねぇ、君達が殺したの?」

深海吹雪「違うわ。ねぇ、あなたたちの司令官って本当に人間?」

 

時雨「それはどういう事かな」

深海瑞鶴「私達は大丈夫かも知れないけど、身構えたら?」

 

叢雲「は?」

夕立「何を言って___「ほら、来たわよ」ぽい?」

 

突如、叢雲達の視界は白く染まり……

 

 ―ド ォ ォ ォ オ ォ ォ ン!!!!

 

 まるで隕石でも落ちたのではないかと言わんばかりの衝撃波と爆風が工廠を襲う。

 それに耐える事は出来ずに吹き飛ばれ、建物の壁に叩きつけられる

 

叢雲「~~~!!!」カハッ

 

 壁と衝撃波に挟まれ数秒呼吸が出来なくなるもすぐに止みその後ズシャと地面に落ちるのだった。

 

 事の原因は叢雲達に気づかずに、ターゲットだった瑞鶴の頭を掴み、見ると気絶していたので興味なしと放り投げるのだった。そして後、2体いたなぁときょろきょろと探すも見当たらず。

 

芙二「やりすぎたか……」

  

 一人で後悔している時、誰かが近づいてくるのでニコニコしながら振り向くと満身創痍な叢雲達が睨みつけていた。あまりにもボロボロな姿をしていたのでぎょっとする芙二。

 

芙二「ど、どうした?! まさか誰かにやられたのか!?」

叢雲「……吹雪達は?」ボロ

 

夕立「もしかして、さっき見た流れ星って提督さんがやったっぽい?」

時雨「……あの2人ならそこで気絶してるよ」

 

 ペストマスクをかぶっている為、表情は確認できないが声色からして驚いているのが丸わかりだった。

 そして時雨が指差す方向を見てみると白目を剥いて気絶している吹雪と涼月がいた。

 

時雨「あれ、という事は……終わり?」

夕立「そうっぽい……せっかく戦いに来たのに……」

 

叢雲「……そうだけど、なんだか複雑ね」

時雨「まぁ無駄な争いが無くなってよかったじゃないか……それはそうとして提督? 覚悟してね?」

 

芙二「え? 何の覚悟?」

時雨「それはもう、ね」

 

 不敵な笑みを浮かべる時雨にゾッとする芙二だったがしかし次の瞬間、その雰囲気は破られる。荒々しい雰囲気を放つ艦娘が立っていたのだ。

 

??「……なんだ、貴様。それは……まさか貴様が殺したのか」

 

 声の方を向くと水兵といった感じではなく、まさに軍人といった雰囲気の艦娘がこちらを見ていた。

 

芙二「名を名乗れ……いやいい。もしやその姿はガングートか?」

ガングート「ほぉ。奇妙な格好の奴だが私の名前は知っているのだな。そこにいるのは貴様の艦娘か?」

 

芙二「そうだ。神城に呼ばれてきたのだ。俺はやる事をやって帰るだけだ、邪魔をするならば____」ギロ

 

ガングート「そうか、邪魔をするならばなんだ。言ってみろ。だが、まさかこの私を殺すなどと言うものなら____銃殺刑にしてやろう」

 

芙二「……その前にお前は普通の艦娘か。見た感じ、深海化は進んでいないようだが」

ガングート「そうだが、なんだ。それがどうかしたか」

芙二「なら、関係ないな。どこかに避難してろ」

 

ガングート「関係ないとはどういうことだ」

芙二「長門達が起こした内乱みたいなもんだ。今起こってんのは」

 

ガングート「……長門、か。そうか、なら__「分かってくれたなら神城の方にでも行っとけ」それは出来ぬな、何故ならば貴様らを殺すから、だ」

夕立「なんでっぽい!?」

 

ガングート「よその艦娘だからだ。広められては敵わんからな。それに復讐の女神は私に力を貸してくれたのだ。そして私は姫と化したのだ。深海化などはしておらぬが、それでも十分といえよう。湧き上がるこの力……この力ならば、同志を救い出せる!! あの暗き檻から!!」

 

芙二「……すまん。時を急ぐからな。相手はしてやれん(同志という事は同じ露艦? だけど檻ってなんだ?)」

ガングート「ふはははは!!! 知らん、なぁ!」

 

 高らかに笑いながら躊躇いもなく主砲を撃ち鳴らす。

 精度がいいのか、弾は芙二達の方へ飛んでくる。たった今さっき満身創痍となった叢雲達では俊敏な動きは出来ない為、芙二は換装して盾を二枚出して防ぐ。

 

 解除しようとするも“まだまだ撃てるぞ!!”といい何発も繰り出すので埒が明かないが耐久してやろうかと思い弾切れまで話し合いをする。

 

芙二「さて、叢雲達に任せてもいいか?」

叢雲「大丈夫よ。それよりも吹雪達は大丈夫なの? 深海棲艦と成ってしまってるけども」

 

芙二「大丈夫。全部剥いでやるから……」ククク

叢雲「……変な事考えてない?」

 

芙二「まさか? ちょぉっと心を覗くだけ」

叢雲「まぁいいけど」

 

芙二「俺がガングートを海まで突き飛ばす。海上戦になったら叢雲達に任せる。倒したら引きずってでも連れてこい」

 

叢雲達「「了解」」

 

芙二「じゃあ行くぞ」

 

 芙二は動き始める

 自身が繰り出す砲撃以外の音が聞こえない為、調子に乗って笑いながら煽る。

 

ガングート「ふはははは!!! どうした、どうしたぁ!!!」

芙二「さっきから撃ちすぎなんだよなぁぁああ!!!!」

 

 煙の中から、こちらに向かって疾走してくる芙二を見て驚く。

 

ガングート「なにっ!? あれでも生きてるのか!?」

芙二「ったりめぇだわ!! 鉄の味でも見てみるか?!」フリアゲ

 

 怒り心頭。

 走りながら換装するとまた驚くガングート。

 

ガングート「!? 貴様、どこから取り出したのd「うるせぇ! 俺は長門を止めないと行けねぇからどけ!!」かぶっ」ゴス

 

 作戦通りに海まで盾で殴り飛ばす。バシャン、バシャンと海上を跳ねて起き上がる頃には岸が遠くに見えたのであった。

 

 ガングートは鼻から血が出ており、それを片手で拭うとさっきいた所に戻ろうとするもそこへ叢雲達が立ちはだかる。

 

叢雲「司令官の所へは行かせないわ」

夕立「そうっぽい!」

時雨「……君は大人しくしてほしいな」

 

ガングート「ふん。貴様らでは差がありすぎるという事をその身に分からせてやる!」

 

 こうして、vsガングート戦は開始されたのであった。

 

―戻って工廠

 

 

芙二「……さて、やるか。まずは涼月から、と」

 

 気絶している4名と芙二以外、誰もいなくなった工廠で独り言を呟きながら涼月の元へと歩く。

 

 倒れている所まで行き、能力を使用して魂に干渉する。

 触れている時に何故か違和感を感じるもそのまま取り除く。

 ズルっと涼月の身体から出す時、意識は戻らないが身体はびくりと僅かに動く。

 大きさは拳程の紫色に輝く結晶を黄昏の欠片へ吸わせる。

 

芙「……まずは1人目。にしても……」

 

 小さく溜息を吐き、辺りを見渡すと工廠は原形を留めていなかった。元々ボロボロで辛うじて工廠と分かる程度だったのだが先ほどの衝撃で辺りは瓦礫の山と化していた。

 

芙二「はぁ……元に戻すのは次かな……」

 

 ガクリと肩を落とし、次のターゲットの方へ向かう。

 

芙二「……木曽も木曽ですげぇ怒ってたな。まぁそれだけの思いや何やらを踏みにじられたからキレるのも当たり前か。やり方さえ違ったらどうとでもなったのかな……なんて後の祭りか」

 

 気絶している木曽の身体に触れ、魂に干渉する。

 またも違和感を覚える。なんだろうか、これは。触れる際、記憶が少しだけ覗けるのだがそれが一切見えない、のだ。

 黒くドロドロとした何かから白い塊をそっと掬い出してみると芙二の脳内に映像が流れてくる。

 

 以下、回想

 

木曽『今なら、まだ助かる!! だから、早く、手を伸ばせ!!!』

 

まるゆ『隊長、すみません……まるゆはもう、無理です。見てください、下に見えるの……です。仲間が迎えに来てくれてます。隊長は皆と生き残ってください! 道連れには出来ないですから……』

 

木曽『ま゛る゛ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛う゛う゛!!!

 

―――――

ーーーー

ーー

 

木曽『まるゆは……まるゆはリランカ島沖で轟沈した。俺の所為だ、提督!! 俺を、俺を殴ってくれ!!』

 

木曽『なんで、そんな顔をするんだよ。お前、泣きながら笑ってんのか!? ……き、貴様ァアア!!』

 

――――ー

―――

ーー

 

 

多摩『……木曽、落ち着くにゃ』

球磨『そうだクマ』

 

多摩『提督を殴ったって沈んだまるゆは帰ってこないにゃ』

木曽『でもよぉ!! あいつは笑ってこういったんだぞ!!』

 

神城『良かった。これでまた一人仲間が苦しまなくてもいい……解放されたんだ。ふふ……ははは』

 

多摩『それは……』

球磨『……クマァ……』

 

木曽『姉貴たちは許せるのかよ!! 何十年も一緒だった仲間をそう言われてよぉ!!』

大井『そんなわけないでしょ!!』

 

木曽『姉貴……』

北上『……まぁ大井っちさ。今は放っておいてあげようよ』

 

大井『北上さんが言うのなら……』

木曽『(なんだ、俺は間違っているのか?)』ズズズ

 思考は深い闇に包まれていく。

 

―――――

――――

―――

 

??『急患だ!! どけどけ!!』

 

木曽『……は? 姉貴……?』ストン

 

 無残な姿と変わり果てた姉が運ばれるのを見て信じられずその場に座り込む。

 近くに長門が居たのでガクガクと揺れる膝を立たせ聞きに行く

 

木曽『長門さん!! 姉貴は一体どうし、て』ガクガク

長門『……作戦中にレ級含む艦隊と会敵したらしい。作戦を遂行するために殿を名乗り出たらしいのだ。その後の作戦は成功。しかし、メンバーが急いで戻るとそこには……』

 

 大体の事を聞いた木曽だったが、頭に血が上ると同時に心が闇に蝕まれていく。

 そして長門に食って掛かるような態度をしてそのメンバーが居る所を聞き出そうとする

 

木曽『……そのメンバーは今、どこにいるんだ』ズズズズ

長門『よせ、仲間割れしている時ではない____『どこにいるのかって聞いてんだよ!!』……ドッグ内だ』

 

木曽『……』

 

 居場所を知った木曽は怒りの形相をしたままドッグに乗り込んでいくのだった

 

―――――

ーーー

ーー

 

 

木曽『お前か、姉貴を囮に使った屑野郎は』

??『木曽さん! 囮だなんて……球磨さんが私達を逃してくれたのに『うるせぇ! 黙れ』や、やめてください』

 

木曽『問答無用だ。今この場で廃材に変えてやるよ』

 

 入渠していた艦娘の首を掴み、持ち上げるとそのまま殴りかかろうとする

 

多摩『木曽!! 何をしてるにゃ!』

木曽『姉貴! 俺はこいつに一発叩き込まねぇといけないんだ!!』

 

多摩『やめるにゃ!! 球磨も了承してこうなったんだにゃ!!』

木曽『……』

 

 木曽の腕から力が抜け、そのまま湯船の中へ落ちる艦娘。

 

??『ゲホゲホ……』ギロ

 

 そして噎せながらも睨みつけてこう言い放ったのを最後に__映像は消える

 

??『あいつは奴らと同じ目をしている!! 裏切り者(魔女)はあいつだ!!』

 

―――――

―――

ーー

 

芙二「案外長いな。これ、今まで見た中で一番長いんじゃないか? にしても課題は山積みだ……」

 

 記憶を少しだけ見てから魂に干渉する。というか、分離はしてあるのでそのまま怨念を結晶化して黄昏の欠片に吸わせる。木曽も涼月もそうだが、髪の色も肌の色も少しだけ残ってしまっていた。後遺症というのだろうか。

 

 そしてその足で吹雪の元へ行く。

 吹雪に触ろうとする時、声が掛かる。

 

深海吹雪「……殺し……にきたのです、か?」

芙二「勿論、殺しに来たよ。でもこれから地獄を見るんだから何回か死ぬかもね」

 

深海吹雪「……ならとっとと……やってください」

芙二「おk」

 

 短く返事をして腹部にずぶりと腕を刺して吹雪の魂を握る。

深海吹雪「~~!?」

 

 びっくりして声にならない悲鳴を上げてジタバタと暴れる。

 それでも芙二は止めずにそのまま力を入れ、魂を握りつぶそうとする。

 

深海吹雪「~~~~~!!!」

 

 先ほどとは打って変わって絶命寸前の生物みたく痙攣し始める。

 その間にも能力を使用しているのだが魂に触れられているという事は何ものにも耐えがたい苦痛や逆に感じたことのない快楽に堪え切れず失禁する。

 

 そんな吹雪を見ても無言のまま、怨結晶のみを引き抜くと吹雪は短い悲鳴を上げて白目を剥き気絶したのだった。

 吹雪がそんな状態になっていることにようやく気がつくもその昔聞いたことのある話を思い出す。

 

芙二「あ、やりすぎた。ん? てか、なんでこいつ漏らして……あれか? 死ぬ時の快楽は何百倍とかってやつ? まぁいいか、生きてるし。最後は瑞鶴だな」

 

 瑞鶴は少し離れた所にいる為に小走りで向かう。

 すると芙二は驚く。瑞鶴も吹雪と同じで起きていて尚且つ、胡坐をかいていた。

 芙二が向かってくるのが分かり次第、大声でこう叫ぶ

 

深海瑞鶴「近づくな!! 変態!!

芙二「え?」

 

 身を隠して少し後ろに退く瑞鶴。涙目でこちらを睨んでくる。これだけの元気があるならばまだ行けるかと思い、ずかずかと歩いて近づく。

 それでも吹雪の失態を見てからというか瑞鶴はかなり警戒している様で逃げていく。

 芙二は逃げる瑞鶴を何処かに追い込もうと考えつつ、治療を施し尚も寝ている3名をドッグへ飛ばす。

 

 全員を飛ばした後に瑞鶴を見失う芙二。困ったという素振りを見せるもすぐにニヤつく。

 どこに行こうとしているのかが分かるからだ。

 

芙二「ふむふむ……瑞鶴は寮内へ侵入したのか? あれ、もう一つ反応があるぞ」

 

 黒い点が2つ、示しだされる。一人は瑞鶴だろうがもう一つは?

 その考えの答えはすぐに見つかる。

 

芙二「長門か……いや戦艦棲姫といった方がいいのか」

 

 面倒だなと頭を掻きつつ寮内へ向かっていく。

 

―寮内 ??の部屋

 

深海瑞鶴「長門さん。もう残ってるのが私と長門さんしかいないよ……どうしよう」

深海長門「そうか。ときに瑞鶴よ、姫と化しても勝てぬのか? 殺せぬか」

 

深海瑞鶴「悔しいけど格が違ったわ。あれは正真正銘の化け物よ。その、長門さんはこのまま向かうの?」

 

深海長門「愚問だな。仲間の仇を討たねばいけないのだ。それに私はもう、身も心も堕ちてしまったのだからな……話はそれだけか?」

 

深海瑞鶴「……引き留めてごめんなさい」

深海長門「ふふ、構わんさ。しかしガングートは見なかったか? 奴も奴なりに暴れていると思うのだが」

 

深海瑞鶴「見てないわ。あ、でもさっき東第一泊地の艦娘が居なかったからもしかしたら戦っているのかも知れないわね」

 

深海長門「そうか。瑞鶴はどうするのだ? 皆殺し(任務)を遂行するのか、降りるのか……いやその身体ではまともに動くことも出来ないか」

 

深海瑞鶴「いや私も戻れないからこそ、進むわ。陸でも揮えるまだ力は残っているから……最後に立っているのが長門さんだといいわ」

深海長門「私は負けない。この身、魂まで朽ち果てようとも負けを認める気はない。さぁ行くぞ、瑞鶴よ」

 

深海瑞鶴「えぇ。じゃぁ、またね」

 

 そう言うと長門は部屋から出て、芙二の元へ行く。

 残った瑞鶴は震える身体を無理矢理、起こして生者を探して建物の中を彷徨うのだった。 

 

 

―続く

 




うん、もうちょい短くしよう
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