とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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唐突に清霜の過去編を移動させてすみません。
あと、本編を思い出しながら書いたのでガバガバかもしれませんがご了承ください。




二章 52話『バシー海峡での戦い』

―続き

 

 4月16日 午前7時 食堂

 

 今日はバシー海峡を攻略しに行く。ゲーム時の攻略は割と楽だった印象がある。まぁ分岐でランダム()の女神様に負けてしまったら補給艦ワ級を含む艦隊と交戦して終わってしまうが、現実ではありえないと思いたい。

 

 少なくともボス戦まで行かなくてもはぐれ艦隊と何回か交戦するだろう。うちの艦隊の自慢ではないがその程度の相手だったら大丈夫だろう。イレギュラーと遭遇しても自分が殿になればどうにでもなる。もっとも退ける事が不可能と分かれば、即刻首を取るが。

 

 まぁそんなことを考えつつ朝食を作り上げていく。今日の朝食のメニューはベーコンエッグとコンソメスープ、バターロールだ。バターロールにはイチゴジャムかマーマレードジャムをつけてほしいと聞いてきた艦娘に説明していく予定だ。そんなことを考えながらしていると厨房の外から声が聞こえた。

 

 

赤城「提督、おはようございます」

芙二「おはよう。赤城。今日の朝食は――」

 

赤城「あ、大丈夫です。匂いで分かります。ベーコンエッグとコンソメスープですね? えっとこのパン?はなんていうんですか?」

 

 

 カウンターに顔を出した赤城が挨拶してきたので挨拶を返す。朝食のメニューの説明に入ろうとしたら先に言われてしまった。というか、匂いで分かるのは凄くないか? あ、いや予想はつくもんか。芙二は突っ込みを入れようとする時、冷葉がこちらに顔を出した。

 

 自分がやる工程は終わったのだろうか。冷葉だから問題はないか。

 

冷葉「匂いで分かるのか、すげぇな。このパンはバターロールってな? バターがパンの中に入ってるんだわ」

 

赤城「ほぉほぉ……! それは美味しそうですね。一人何個までですか?」

冷葉「今日は一人三個まで。急遽、作ってみただけだからギリ人数分を確保できた」

 

赤城「ふむ、ふむ。了解です! あ、提督、冷葉補佐。朝食いただけますか?」

芙二、冷葉「「はいよー」」

 

 

 赤城から注文が入ったので二人は厨房に戻り、出来上がった物を再加熱、盛り付ける。

トレーにメニューを乗せ、赤城に渡すと“ありがとうございます! とても美味しそうです!”とそういい、席について朝食を食べだした。少ししてからぞろぞろとここに足を踏み入れ、先に食べ始めている赤城に聞いている者、こちらに挨拶をしに来る者などいた。

 

 とりあえずここからラッシュが始まると勘づいたので急いで人数分盛り付けて、カウンターへ出す。冷たい水が入ったピッチャーとコップを持つ者と席を確保する者など役割を決めてさっさと動いていた。八崎さんや自分達を覗く全員に行き渡ったため、これにて料理番は一時終了だ。ふぅ。と息を吐く冷葉にお疲れ様と声を掛ける。

 

 

冷葉「芙二こそ、お疲れ様。慣れたけどもやっぱし人数が増えると疲れるもんだな」

芙二「だな。後は八崎さんの分だけど……あの人は寝坊でもしてんのかね」

 

冷葉「まぁ後で来るでしょ。朝食後に今日の予定を伝えなくちゃだな。攻略をしに行かないと」

芙二「だなぁ……なーんか、こう。感じるものがあるんだよな」

 

 

 モヤモヤするといい、身振り手振りで説明しようとするもいい言葉が見当たらない。

 

冷葉「それはお前の勘か? 当たりそうで怖いが……悪い方じゃなくて良い方に期待してるわ」

芙二「俺も同意。この海域はまだやる事が多すぎるからな」

 

冷葉「まぁな。俺らも飯食おうぜ」

芙二「だな」

 

 二人は片付けを後回しにして食事をして行く。

 食事が終わりそうになる時、バタバタと慌ただしい音が聞こえてくる。“八崎さん来たかー”と思っていたら本当に来たのである。汗をかいて、息を切らして。どう見ても焦ってきたのが丸わかりである。

 

八崎「お、お、おはようございますぅ! まだ閉まってないですよね!?」

芙二「おはようございます。八崎さん。これから盛り付けるので席に座って深呼吸でもしていてください」

 

冷葉「そうだな。八崎さん、少し落ち着いたらどうです? あ、これ水ね」

 

 

 芙二は一度食事を止め、再び厨房に戻る。八崎さんは言われるがまま空いてる席について深呼吸していた。そこに冷葉が水を持って来て渡す。艦娘達の中には驚いている者や八崎を見てクスクスと笑う者と様々な反応を示した。

 

 

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 朝食も終わったタイミングで芙二は皆に呼びかける。それは今日、バシー海峡を攻略するに当たってということだ。メンバーを読み上げて、後でつけてほしい装備のメモを渡すので残ってほしいと伝える。呼ばれた神通らは返事をして、芙二は頷く。そして冷葉に交代する。

 

 冷葉は今日の演習、遠征メンバーを決めたのでホワイトボードに記載しておくので見てほしいと伝えた。後付けで“大淀さん、いつもは九時から執務室で執務開始だけど今回は先に工廠へ行って装備の開発を行う予定だからよろしくね”と言った。大淀は了承して、各報告書をファイリングして持って行くといい先に食堂を後にした。

 

 

冷葉「ということで、今日も一日頑張っていこう!」

 

 

 冷葉の言葉で朝食を含めた諸々の連絡事項を伝える会は終了した。

 ホワイトボードを見に行く艦娘や芙二の元に向かう神通達の二つに分かれた。

 

神通「提督。第一艦隊旗艦神通、参りました」

芙二「うん。神通もみんなもすぐに来てくれてありがとう」

 

龍驤「司令官? つけてほしい装備って? 流星や烈風とかか?」

 

芙二「そうそう。そういうの。いつまでも初期装備じゃあ、ね。今回も空母が出現すると思われる。だから艦戦を二スロ分お願い、とかそういうの。詳しくは工廠にいるであろう、明石に聞いて」

 

龍驤「了解や! メモ、貰える?」

芙二「いいぞ」

 

 龍驤にメモを渡し、受け取った龍驤は一人早く工廠へ向かった。それを聞いて他の面々から質問が飛び交ったが、一人一人の役割を説明してメモを渡していく。先に向かった龍驤を覗く他全員にメモが行き渡ったので、50分後に 出撃ドッグへ集合してくれと伝え、神通らと解散し、自身の支度をしに行った。

 

 

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 出撃ドッグにて

 

 集合五分前、芙二が出撃ドッグへ足を踏み入れるともう皆集まっていた。気がついた神通が声を掛けた。

 

神通「提督、準備完了しました。第一艦隊、全員すぐに出撃可能です」

芙二「了解した。バシー海峡は初めて向かうところだ。何が出てくるか分からないので警戒を厳にして行動するように。そして暁の水平線に勝利を――!!」

 

第一艦隊「「はい!」」

 

 芙二の問いかけに第一艦隊の皆は反応を返す。声は大きくドッグ内に響いた。

 

神通「旗艦神通、出撃致します!!」

 

 その声と共に神通らは海へ立ち、バシー海峡を目指して行った。

 

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 場面は工廠に移動する。開発を行うべく、冷葉と大淀、妖精たちは準備を行っていた。

 

 

妖精さん「こんにちは。冷葉! 建造ですか? 開発ですか? それとも――大型建造ですか?」

 

 え、なにその三択。帰ってきた人にするような文言は。いや恋人でもないし、いや乗っとくか? あ、大淀さん! 自分しっかりいうんで大丈夫です! そんな目しないで!

 

冷葉「えっと開発で。建造の許可は出てないんだよね。ってか大型建造できるの? 資材飛ばない?」

 

妖精さん「かしこまりっ! 皆の衆! 皆の衆! 補佐(冷葉)は開発を所望しておるぞっ! 支度せぇ、支度せぇ!」

 

大淀「え、え? よ、妖精さん達どうかしたんですかね?」

冷葉「いや俺にも分からん。なんかそういう流行りでもあるんじゃないかな」

 

建造妖精B「冷葉ぁ!! なんで、建造しないんですかぁ!! あたい達、暇で暇で……! ぐすっ………」

 

開発妖精C「あー! 冷葉が泣かせた!! いーけないんだ! 提督に言いつけてやる!」

 

冷葉「え、いや許可してないのは芙二やんけ。俺関係ないし」

建造妖精C「それでも冷葉は建造しないじゃないか!!」

 

 

 えぇ……と驚いた顔をする冷葉。この状態の妖精さんは一切話を聞かない。こういう時はこういうことを言おう。確実ではないが――まぁいいだろう。

 

 

冷葉「今日、夜にでも芙二に聞いてみるよ。一隻か、或いは四隻か。建造が可能だと思うしさ」

建造妖精B「ぐすっ……ほんとです? 嘘ついたらヤですよ?」

 

 ぐすぐすとすすり泣きながら冷葉の顔を見る。

 

冷葉「ほんとだって。でも100%ではないことは分かってくれ」

建造妖精B「…………分かりました」

 

 決して納得したわけではないかも知れないが、妖精さんは泣きながら頷く。泣き止んだ妖精さんを見て、やっと執務を始めれると思い気持ちを切り替える。既に待機している開発のサポートをしてくれる妖精さんの元へ行き開発を行う。今回は小口径主砲、中口径主砲、副砲の開発を目指していく予定だ。狙うついでに大口径もと思うがどうなるかは神のみぞ知るところだろう。

 

 

冷葉「お待たせ。じゃぁとっとと開発していこう」

建造妖精D「今回は何を開発しますか?」

 

 

 開発妖精さんが聞いてきたので狙いを伝えると頷いて何処かへ行った。その前に資材数を確認する。冷葉は大淀に伝え、大淀はメモをする。そして自分と大淀は数値を設定し、各資材を投入する。こちらの準備は出来た。他の妖精さんに向かって大丈夫かどうかを聞いて行う。

 

 気がついた妖精さんが両手を使って〇を作っていたので開発を始めても大丈夫ということを大淀に伝え、開発を始めた。

 

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 結果を先に報告しよう。今回は小口径主砲×5、中口径主砲×3、大口径主砲×2が出来た。副産物の大口径は二個出たが、本命の副砲は出る事はなかった。

 

 冷葉は今回作られた装備をケースの中に放り込む。今、放り込んだケースは明石が気を利かせて置いといてくれたものだ。明石が専用装備を作る時にも活躍するとの事だ。

開発できた装備もしまう事が出来て、また明石が行う開発にも役立ててまさに一石二鳥ではないだろうか。いやそんなわけはないか…………あるか?

 

 

冷葉「大淀さーん! 最終的な資材数はどうなった?」

大淀「えっとですね! 今、ページを出すので少しだけお待ちください!」

 

 冷葉は大淀に資材数を確認した。今日開発を行った際、一桁単位の数字をずらしたので最終的な数字がわからなくなっていた。だからこそ、開発をサポートしてくれた大淀に質問した。彼女は彼女で開発報告書にまとめるべくメモを纏めていた。すぐにそのページを出すとから少し待ってくれと言われたので待つことにした。

 

 

冷葉「さっき確認したけど、かなり増えていたような…………まぁこんなもんなのか?」

 

 そうぼやいていたら、誰かが肩を叩く。振り替えるとそこには大淀がいた。伝える準備が出来たようだ。冷葉も冷葉でメモを取る準備をする。

 

冷葉「準備完了だぜ、大淀さん」

大淀「分かりました。では各資材数をお伝えします。燃料/弾薬/鋼材/ボーキの順で行きます」

 

 “はいよ”と返事をする冷葉。大淀は順番に読み上げた。細かなところまで言われたの聞き逃さずにメモを取る。

 

 <燃料:4,9046/弾薬:5,6731/鋼材:6,2453/ボーキ:4,7305>

 

 うーむ。十分なくらいに溜まってる。これは建造してもいいのでは? と思ったかもしれないがここには特異能力を持つ明石がいる。艦娘個人の専用装備を作るとなると資材の消費が半端ないのだ。そのことに気がついた冷葉は“まだ足りないか――”と溜息を吐いた。そこでふと思った事を隣にいる大淀に問う。

 

冷葉「なぁ大淀さんや。もし自分専用の装備が作れるとしたら欲しいと思う?」

 

大淀「なんです? 冷葉補佐。勿論ほしいですよ。冷葉補佐や提督、皆さんの役に立ちますから。きっと。事務的な面ではなく戦力としても重宝してもらえそうですし」

 

 

 微笑んでいう大淀を見ながら“そうだよなぁ”と一言。突然聞かれた大淀は“それがどうかしたんですか?”と聞くも冷葉は“もっと資材貯めねーとなー”と返すだけであった。

 

 

 ========

 

 

 場面は海上へ移る。

 

 

 バシー海峡を目指して進む神通達だが、現在は敵のはぐれ艦隊と会敵ののち戦闘を行っていた。編成はイ級二隻とロ級一隻。それを龍驤が発艦させた部隊の先制雷撃で難なく仕留める。敵はあっさりと沈んでいった。さっきから二戦、三戦とそういったはぐれ艦隊と会敵し、撃滅させていった。

 

 芙二は近場の空間に干渉し、沈んだ後のどざえもん前の死体に触れ魂を魂晶に。怨念を怨結晶に変えて取っていく。周囲を警戒して、何もないのを確認したら次へ進む。

 

 戦闘が終わり、緊張感を感じながらふぅと一息ついた秋雲はこういった。

 『さっきからはぐれ艦隊しか当たらないね―』と愚痴り出したが皆は口に出さないながらも同意していた。会敵するが敵は駆逐級のみ。軽巡級とも重巡級とも当たらない。

 

 慢心しているわけではないが、とても敵がいる海域とは思えないほどだった。それは決して穏やかな海という雰囲気ではない。見れば分かるのだが今いるところ(海の上)には肌を刺激するような何かが溢れているような感じがしており、敵を倒してもそれのせいで気分が落ち着かない。それは人体に直接害する毒ではない事も分かるが原因が分からないのでモヤモヤしてしまう神通達であった。

 

 

榛名「あの……皆さんが感じているかは分かりませんが、なんだか嫌な感じです」

霞「そうね、ここはなにか嫌だわ。こう、肌がピリピリするというか……」

 

青葉「分かります。実に分かります! バシー海峡に近づくと肌がピリピリする感じが段々と強くなってくるような……」

 

龍驤「そうやね。でもそれだけで、うちはまだ艦載機を出せそうや。なぁ司令官の方は何か分かりそう?」

 

芙二「そうだな。とりあえず、干渉っと。ん…………」

 

 艦娘たちは口々に自身の不調を口にした。しかし芙二は今の所なにも感じていないのでデッキから聞いていたので飛び降りるように海上へ。

 

芙二「ん~~……? 何も分からんな。人間がここにはいないから何とも言えないが……艦娘だけ何か不調をきたすよう電波でも出てるのか? 神通はどんな感じ?」

 

神通「私も肌がピリピリする感じです。提督はなにも感じないのですか……?」

 

芙二「うん、能力使っても何も出なかったんだよね。もしかしたら人体に直接掛かるような呪いの可能性が……もし呪いとかだったら俺には効かないんだよね。だから余計にって思ったから――――神通の身体少しだけ触るけどいい?」

 

神通「はぇっ!? え、えっと……少しだけなら構わないです、よ?」

 

 

 芙二が聞いたあと、ボンッ! という効果音が鳴りそうな速度で顔を赤らめる。それが恥ずかしいのか神通は顔を隠しながらそう言った。周りの面々は神通を見ながら芙二に対してデリカシーがないなという視線を向けた。

 

 霞に関しては噛みつきそうな勢いになっていた。最初、芙二はなんでそんな視線を向けられているのか理解が出来なかったが赤らめたままこちらへ寄ってくる神通を見ながら自分が言ったことを思い出していた。そして“あっ”と何か分かったように声を漏らした。

 

 

芙二「違う、違うんだ。身体というか、そんな弄るようじゃなくってだな……頭を撫でる程度にしようと思っていたんだけどな……言い方が悪くて申し訳ない」

 

 

 申し訳なさそうな声をしながら神通に向かって謝罪した。神通は照れ視線を隠したまま大丈夫ですから……”と芙二に向かって言った。艦隊内で微妙な空気が流れたが芙二は神通の頭に触れ、原因の特定を急いだが結果は生物全般に作用する呪いのようなものだった。

 

 その呪いのようなものはバシー海峡全域を包んでいるらしいがあまり人体に影響はないようにも見えたので全員に【状態異常無効】を付与しておく。それの継続は一時的な効果(モノ)なのだが、今回はまぁ大丈夫だろうと思ったからだ。それに解呪出来ないほどになってしまったらその時こそは直接弄るまでだが。

 

 

芙二「原因は大したことないがとりあえず付与はしておいたから。後12時間は大丈夫だと思うよ」

 

 

 そう言っておけば少しは安心してくれるだろうか。いやまぁ自分達よりも化け物がそういうんだから気にしないか。聞かれたら聞かれたらで――『ねぇ司令官?』おっと、早くに質問が飛んできたか。内容は――『原因はなに? 電波的なの?』……オーマイ。

 

 

芙二「霞、逆に何だと思う?」

霞「え、質問を質問で返すのはどうなのよ」

 

 うっ……どこかの殺人鬼みたいなこと言われた。ですよねぇ、ダメですよねぇ。

 まぁ包み隠さず言っとくか。俺の正体もバレてるメンツだから大丈夫だろう。

 

芙二「えっと神通を診て分かったことだけども。呪いみたいなやつね。どーりで俺には効かないわけよ。んで、その呪い?の名前なんだけどさ」

 

霞「何よ。もったいぶらず言いなさいよ」

芙二「【天獄の檻(てんごくのおり)】って表示されたんだよね」

 

青葉「てんごくの……」

榛名「おり?」

 

 

芙二「そうそう。そもそもこれを呪いと言っていいのか分からないけども。んーまぁ今どんな感じ? 付与したから普通に動けそう?」

 

霞「え、えぇ。大丈夫よ」

神通「大丈夫です。では、皆さん。先へ進みますね」

 

 先に返事を返した霞、神通以外は動ける事を確認していく。確認し終わると“了解!”と声を出し、そのままついて行く。

 

 芙二は皆のうしろ姿を見送ると船内に入っていった。船のエンジンをかけ、後に続いて行こうとする。その時、脳内で引っ掛かった呪いのようなモノ(単語)について考えていた。

 

 

芙二「同郷の者の仕業だったりな……そんなわけないか」

 

 

 ======

 

 

 第一艦隊はバシー海峡に入るとそこにはワ級を旗艦とする補給部隊と会敵し、戦闘を行っていた。敵味方関係関係なく無数の砲を放つ音やそれらが外れていくつもの水柱を作り上げる音が周囲に響く。

 

 芙二は100m離れた所から戦闘を見守りながら無線を使って指示をする。幸い、龍驤の部隊が繰り出した開幕雷撃が敵艦隊に対して炸裂していったおかげで二隻いたワ級は撃沈していった。敵の攻撃はあまり当たることはなく被弾も少ない状況で勝利を収められた。勝利Sといったところだろうか。芙二は無線から神通に向かって労いの言葉を掛ける。

 

 

芙二「神通! 敵艦隊は全滅したようだ。戦闘、お疲れ様! すぐにそちらに向かうから周囲を警戒しつつ気を休めてくれ」

 

神通「はい、了解しました。提督もお気をつけてください」

 

芙二「了解。結晶に変えたらすぐに――神通! お前達の方から見て北、70の方に敵艦隊反応あり! こちらに向かってきている! 直ちに――ザザザッ――ガガッ――…………」

 

 突然、ノイズが入り芙二とは話せなくなる。神通は驚いて無線機に向かって大声で呼びかけるも返答はない。一瞬、向こうで何か起こったのかと思ったがあの提督だから万が一はないと思い、切り替えようとしたとき龍驤から声が掛かる。

 

 

神通「提督!? どうし――「神通! 敵の艦載機がこっち来てる! 指示を無視してしまうけどそこは許してな! 発艦!」皆さん! 龍驤さんが動いたように敵はもうすぐそこまで来てます! 戦闘を開始します」

 

 

 戦闘のスイッチをオンにして警戒する。艦隊の空気は緊張感に包まれる。もう見えるはずの敵艦隊に対して一挙動も見逃すまいとしていた。提督は私達から見て距離は北70と言っていた。龍驤は艦載機が来てると言った。 

 

 彼女が発艦させた艦載機の音は静かな海上の中で最も響いた。しかしそれなのに敵の艦載機は見えないし、こちらに向かってきてるはずの艦載機すら見えない事に異変を感じていた。

 

神通「あ、あの龍驤さん」

龍驤「? なんや?」

 

神通「えっとさっきから静かなのですが……敵艦隊はこちらに向かってるんですよね?」

龍驤「そらな―、向かっては来てるのは分かるんだけどな? 向こうもこっちみたく自由に動けなそうなんだわ」

 

 つまり今、叩き放題なのでは?と龍驤除く一同は思った。こちらは提督の恩恵みたいなのを受けていて動ける状態である。提督曰く、効果が切れたらさっきの不快感に襲われるということ。今現在の深海棲艦と同じ状態になるのでは?とも。

 

 

神通「敵の艦載機はどうなったんですか?」

龍驤「あーえっと、艦載機も似たようなことなってな? うちの部隊がやる前に空中で止まり出して、海の中にぽちゃぽちゃって落ちてったらしいんよ」

 

 身振り手振りでパイロットの妖精さんが教えてくれたねん、と伝えた。

 

青葉「え? それなら今すぐに撃滅しに行きましょうよ!」

龍驤「そうやね。もう一度、発艦させてみるわ」

 

 そういうと龍驤は艦攻を発艦させ、先制雷撃を試みた。龍驤含む神通たちも芙二が言った方角へ進むとそこには苦しそうな顔をして蹲るヲ級達がいた。頭に目掛けて放てば殺せるほどであったがヲ級達はかなり近づいてる神通たちには気がついていない様だった。

 

ヲ級達「「…………!」」

 

 

 神通たちの中の誰かが少しだけ動いた際、少しだけ海面が揺らいだ。

 視線が落ちていたヲ級達だが神通たちに気がついたのか、睨みつかながら態勢を整えようとするも上手く立てない様だった。人型のヲ級、ル級、リ級、へ級はよろよろとしながら起き上がるもその様子はおかしくあった。激しい 戦闘を終えたのか、深海棲艦達の息づかいは荒く、身体の所々に裂傷が見られた。

 

 

 芙二(提督)が言っていた何とかの檻の影響だろうかとも考えたが、それでもその不調と裂傷はおかしいと思ったので一応、武装は解除しないで距離を置くことに決め指示を出した。誰一人として反発する者はおらず、皆同じ気持ちだということだった。いつも互いに殺し合っているはずなのに今、この時は見ている事しか出来なかった。

 

 

神通「(この違和感は一体なんでしょう?)無線はまだ……回復しませんね」

 

 違和感の正体を探る。神通の脳裏には効果が切れかかってるのでは、という思いが出てきていた。それとなく無線が回復しないことを気にかけていた時、随伴の霞から当たり前の指摘が入った。

 

霞「……神通さん、とっとと殺してしまいましょ」

 

神通「それは……」

霞「奴らは敵なのよ? 動けないうちに殺してしまえば誰も傷つかないわ」

 

龍驤「うちは神通達に任せるしかないわー。だってこんな近距離では艦載機扱えんし」

榛名「私は撃てますよ。今よりももう少しだけ距離を取れば、確実に殺せます。提督と早く合流したいですね」

 

 

秋雲「秋雲さん的には~……とっとと沈めて帰りたいところ! だってさ? 提督が与えてくれた物も一時的なんでしょ? それとこのくらい苦しんでるならとっとと解放してあげるのもいいんじゃないって思うんだわ」

 

 数分の間、神通達は深海棲艦達を観察しながら話し合った。話し合っている間ずっと苦しんでいるようだがたった今、状況が変わった。突然、深海棲艦達は青い液体を口から吐きながら一体、一体と水底へ沈んでいった。

 

 それらを見ていた神通達の目には限界が来たようだと、そう映った。憎しみの目をしながら沈んでいくというよりかは神通たちを()()()()()()()()視線を送りながら最後の一体も沈んだ。そこに残ったのは神通たちと静寂だけであった。

 

 最後の一体が沈んでから少しした後、霞はゆっくりと仲間に向かって口を開いた。

 

霞「…………殺す必要はないようね」

榛名「そうですね。提督との通信は回復しましたかね?」

 

秋雲「戦闘は終わり?」

神通「いえ、まだ警戒を怠らないでください。通信は、まだですね」

 

龍驤「しっかしさっきの奴の目線……みょーに嫌な感じやったわ」

青葉「青葉たちを恨むのではなく、憐れんでいるようでしたね。私達の不幸を願っている、みたいなそんな感じでした」

 

 

 神通が警戒してくれと指示を出した。依然として芙二とは連絡がついていない。

本当に何かあってこうして駆けつけれないのでは、と悪いことを考えてしまう。そんな時、波を割く音を耳にしたので音の方を振り向くとそこには芙二が乗っていた装甲船が向かってきていた。

 

 

 船は徐々に速度を落として、こちらに近づいてくる。その時、神通らはデッキの上に誰かいることに気がつく。一人は薄い紫色の髪をした背の高い女性(?)ともう一人は薄緑色の髪の後頭部にリボンをつけている少女……いや艤装をつけてるから何処かの艦娘だろうか。 その二人はこちらに対して目を輝かせているようにも見えた。

 

 船は神通のすぐ近くに停泊する。デッキには見慣れた男がこちら向かって声を掛ける。

 

芙二「神通! すまん! 無線機おしゃかになって連絡出来んかった」

霞「はぁ? あんた能――「霞、それは口外してはいけないやろ?」あっ…………龍驤さん、ごめんなさい」

 

 霞は芙二の秘密を知らない者がいる前で言いそうになり、龍驤が咄嗟に塞ぐ。すぐに謝罪するも龍驤は気にしていない様だった。

 

龍驤「別にええけどぉ……司令官、その二人はなんや?」

芙二「話す事長くなるのだが、構わないか?」

 

青年「先に帰ってからにしませんか? 僕も行く所があるので。良いでしょう? 芙二提督殿?」

 

 龍驤と芙二の間を割って入る声が聞こえた。声のする方を振り返るとそこにはニヤッと笑う薄い紫色の髪をした女(?)がいた。その女(?)はまだ口を動かした。

 

青年「ね? 夕張言ったでしょう? これでいい。これなら君をここに着任させることが出来るはず」

 

 隣にいる少女の名を呼んだのだろうか。薄緑色の髪の少女は驚いた顔をして女(?)に向かって声を上げた。

 

夕張「ちょ、ちょっと紫月さん! なんで、私が艦娘だってことを言っちゃうの!?」

紫月「え、いや君、今自白したでしょ? 艦娘って。僕はただ夕張と呼んだだけでしょ?」

 

夕張「あっ…………」

 

 しまった!という顔をする夕張。そして紫月と呼ばれた女(?)は神通らに改めて自己紹介をした。

 

紫月「こんにちは。東第一泊地の艦娘の皆さん。僕は現在行方不明届が出されている憲兵、神威こと紫月 澪(しづき れい)です。よろしくお願いしますね。次は夕張。君の番だ」

 

 こう見えても男です!と最後に付け加え、夕張に託す。いや託すものなどないと思うが。

 

夕張「ええぇ!? えぇっと……軽巡夕張です。一応、野良艦娘です。よろしくお願いしま……す」

 

 突然、二人の自己紹介が始まり終わる。芙二は皆の顔を見ると驚いた顔をしている。まぁそうなるな、と。細かいことは後にして今は帰投しようと思い、声を掛けるのだった。

 

 

―続く

 




新キャラクター 

 行方不明届を出されていた憲兵、神威こと紫月 澪

 遭難野良艦娘 夕張


 今回を書くのは難しかったけどようやく始まりました。動き出したって感じです。
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