―続き
夕張「芙二提督は……――人間じゃないんでしょ?」
芙二「ッッ!!」
夕張の一言により、芙二から“夕張の記憶に干渉する”という選択肢が消え去ったと同時に目を見開いて息を呑んだ。“なんで今その話題が出てくるのか”芙二には分からなかった。
芙二「ァッ……」
あまりにも急すぎて吸った息が喉元で詰まり小さな声が漏れるが気にしないで明石に視線を送る。“まさか話したのか?”と。しかし明石は無言で首を振った。
夕張「……そういう反応をするという事はだいたい合ってる、という解釈でいいのよね?」
芙二も明石も黙ったままだ。両方、夕張にはそのことは話していない。なのにどうしてその事実を知っているのかと問いたくなるが、問うと実質肯定することに――いや無言のままも同じか。
このまま情報漏洩するくらいなら――――“無理矢理干渉して、弄ってしまおう”かと思ったまま手を掛けた時、ふいに考えが湧いて出てきた。合ってるかは分からないが。そのまま呟くように小さな声を出した。
芙二「妖精さんか……?」
そう言った瞬間、聞こえたのか明石の視線がこちらへ向くのが分かった。夕張は真剣な眼差しをしたまま黙っていた。部屋の中の空気は徐々に下がっていくのが分かった。
妖精さんがそう結びつくヒントを喋ったのか、あるいは全部話してしまったのか分からないが……このまま話をずらせそうにない。夕張が聞いてきた手前、いいと言ってしまったので答えるしかない雰囲気にもなっていた。ムキになって怒って否定してもいいけどもそれだと後々――いや自身に関するワードを禁句にすればいいのかと考えた時、どこからか妖精さんが出てきて申し訳なさそうに口を開いた。
『あ、あの~~……夜分遅くに失礼します、芙二提督殿。自分の部下がつい言ってしまったそうで……』
芙二「……なんだと?」
申し訳なさそうに言う妖精さんに対して、芙二は怒りっぽい口調になった。眉間に皺を寄せて、青筋が出てきていた。表情を見た妖精さんもそれ以外もぎょっとしていた。告白してきた妖精に対して怒鳴り散らすのではないかと思ったからだ。
しかし芙二はそんなことをするつもりはない。それにこうなったのは自分のせいでもあり、自身の想定の甘さに対して思わず、という事なのだ。しかし話してしまった人物が特定出来てしまったので少々罰を与えねばと思い、気持ちは少し和らぐ。
怒りの表情から逆に微笑むような表情をする。場の雰囲気には目をやらず、とりあえず告白した妖精さんに対して言葉を掛けた。
芙二「素直に話してくれてありがとう。その、部下というのはどこにいるんだい?」
妖精さん「えっと……ゴクッ……な、なんという、か……」
極度の緊張が妖精さんを襲う。これ、殺される奴だと。ほんの一分前は部下がやらかして、詰問されてる部下に変わって自分が告白しに行ったのはいいものの芙二は効いた途端今にも怒鳴り散らしそうな雰囲気だったが急に微笑みだし、自身に優しい言葉を掛けてきたのだ。これは絶対に部下諸共、処される奴――“妖精さん?”――『ひっ!!』
自分が殺されるかもしれない緊張を感じているとき、微笑みながら芙二は声を掛けたがそれは逆効果だったようで怯えるような悲鳴を上げる。
妖精さん「ふ、ふ、芙二提督殿……今回の不始末は自分の所為でもあります!! なので、部下は……部下は処さないでやってくれませんか!!!!」
生まれてから初めてこんな声を出したと、後に妖精さんは語る。何を言っても殺されそうな雰囲気になっていた今はこれが精一杯だった。少しだけ間が空く。妖精さんにはその間が辛かった。目を瞑ったまま目の前にいる
妖精さん「え?」
芙二「いやいや俺自身は別にどうこうしないよ。これは俺の落ち度でこうなったし、他の面々は知ってるからね。――あ、やべ」
夕張「……やっぱりそうなのね。全く! なんでとっとと言わないの?」
芙二「え、夕張こそなんでそんな反応? あ、妖精さん、秘密を話しちゃった妖精さんの処罰は任せるけど、傷は残さないようにね。今回のは誰にだって起こり得たことなんだからさ」
『それじゃ、とっとと戻っていいよー』と妖精さんに話しかける。
妖精さんはぼそぼそと『はぁ~い……では失礼しました……』と言いながらゆっくり消えていった。妖精さんが消え、芙二は夕張に対して改めて話そうと思ったのだ。もっと驚かれると思ったが、この反応だったらとも思えた。
明石に目をやると“勝手にどうぞ”というような表情のまま頷かれた。
芙二「……コホン。では改めて自己紹介といこう。俺は夕張の言った通り人間じゃない」
夕張「そう。それはさっきも聞いたわよ。それならなに?」
芙二「俺は龍人だ。でも見た目はまんま人間でしょ?」
夕張「りゅう――じん? ね、ねぇ! 提督は――――ぅわっ!?」
芙二から知りたかった事実を知った途端、自身に掛かってる布団を乱暴に退かして芙二の元へ行こうとする。『提督はアレの仲間なの』と聞こうとするもベッドから落ちそうになり、芙二がキャッチしてそのまま続きを聞く。
芙二「提督は? なに? あれの仲間かどうかとかその辺?」
夕張「! そ、そう! あんな化け物、この世界の生物じゃないでしょ!!」
そう断言する夕張に対して芙二の脳内に『!』と悪い案が浮かんだ。
芙二「いや? いるかもしれないだろ?」
夕張「……それでも私が生きてきた中では会ったことはないわ」
ニヤニヤしながらつい悪ノリする芙二。夕張は目を逸らさず、言った。芙二が言い返そうとした時、明石が制す。
明石「提督。悪ノリしないでください。提督出身の世界だと溢れていてもこっちだと天災レベルなんですよ」
芙二「あ、はい。すんません。調子乗りました(?)でも、そうだよなぁ現代兵器は役に立たねぇから艦娘が出てきてやっと深海棲艦をまともに倒せる状況だしな~……それなのに深海棲艦すら食い物にする
夕張「それで芙二提督は仲間なの?」
芙二「いンや? ちゃう。仲間ではないし、面識すらない。……夕張さんや、ちょいとお手を拝借させてもらいますわ」
夕張「え? えぇ、いいけど……」
芙二が言ったことを半信半疑で聞くが表情も相まって本当に違うと分かってホッとしているとき、自身のことを“さん”付け呼びしたかと思えば“お手を借ります”とか意味のわからない事を言いだした。夕張はちょっと引きながら手を差し出した。
芙二「っと、失礼。これからちょいと覗きますけど……まぁ大丈夫でしょう」
夕張は芙二に手を握られたままセクハラと思われる発言をされる。すぐに引っ込めようとするも時すでに遅し。芙二は夕張の手をジッと見つめたまま、能力を使った。
芙二「……さぁて、何が出てくるか」
さっきとは違い神妙な顔つきになったかと思えば、意味の分からないことを呟く芙二に夕張は若干の恐怖を覚えた。それと同時に握られた手から“ピリピリ”といった弱い痺れのような物を感じた。
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脳内には夕張が出会ったであろう存在の大きさ、存在感が徐々に流れ込んでくる。
芙二「……おいおい。マジか……」
思わず声を出してしまう。夕張の目線で見た未知の存在の正体は
巨大だから分かる、という事ではなく。闇の中でもはっきりと分かるほどの見た目と存在感。その身体から放たれる光は神々しくまるで自分こそが神だ、と思わせるほど。対峙した者に畏敬の念を抱かせるような眼差し……何より完全四足歩行型の方かと思ったらまさかの二足直立型! カッコイイ! ってそうじゃない!
日本にいる腕の生えた蛇みたいなのじゃない! それにワイバーンでもない。え? 頭に山羊に似た角が生えてる? くるんって丸まってない方のか。まぁ見た目は色々違ったりするけど雰囲気はシャガル〇ガラ! 原種じゃなくて遷なんとか種の方!! やっべ、この状態でドンパチしたら南西諸島の島々何個か吹き飛ぶんじゃね? はぁ~~~~……。
芙二「っべぇ……だろ! これ、普通にやべぇだろ!!」
夕張の手を掴んだまま思わず叫ぶ。周りがどうとか気にする余裕はないが音漏れ対策は抜かりない。だがしかし叫ばずにはいられないかった。あと夕張が襲われた存在が如何に強敵という事か、分かった。
てか、俺勝てなくはないけど被害ゼロとか無理ぽ……。
サラから聞いた情報はまぁ過去のもの――って待てよ? もしかして俺みたいな人型形態とか存在するんじゃね? は? もしかして龍の形態と人型の形態を相手すんの?
芙二「え? 俺でも無理な事はあるんだぜ?? つか、被害ゼロとか無理だろ。艦娘とか即死だぜ? 深海棲艦も、だ。ははは……いくら俺がチートオブチートだとしてもだ」
乾いた笑いをしながら夕張の手を放す。今なら話せそうと思った明石と夕張は声を掛ける。
明石「て、提督? どうかしたんですか?」
夕張「え、この人薬物でも打ってる?」
両者、違った事を言ったが芙二はそれどころじゃない。あの世界ではなくて
芙二「いや夕張の記憶を覗いてさ、色々分かったんだ。その前に夕張、良く生き残れたな」
夕張「え、えっとありがとう?」
明石「提督? 一体何を見たんですか? さっきから“無理だ”とか言ってましたけど、そんなにですか? 提督が無理ならこの世界は滅びそうな気がしますけどね」
芙二「まぁ無理は言い過ぎたけどさ、被害ゼロは無理だ。あんなのとドンパチしたら絶対に孤島は形も残さん。周辺の島民が犠牲になる前に避難誘導させた方がいい」
明石「……おおよその大きさって分かりますか? 記憶を覗いただけじゃ分からないと思いますけど……」
芙二「ん~~……あれが何メートルかは分からないが現生物に例えるとシロナガスクジラのサイズくらいって言ったら分かる?」
明石「そりゃ分かりますけど……え? 大きすぎやしません?」
芙二「それは俺も思った。絶対に俺と同じ世界の奴。名前も分かったし朝飯済ませたらちょいと冷葉に任せて俺はシェリルさんとこ行ってくる」
明石「名前も分かったんですか?」
芙二「あぁうん。最後に名乗るタイプで良かった。……まぁもとは人間だと思うよ。それがこの世界で何かあって変質したんだと思う。だからといって暴れて被害出しちゃならんのだけどさ」
目を伏せ、そう笑いながら言うも悲哀を言葉に滲ませながら。悲しそうな顔をする芙二を見ていると明石も夕張も何も言えないでいた。しかしその空気も悲哀の表情を浮かべる本人によって破かれる。
芙二「それと夕張――お前さんも
夕張「え? 何も持ってませんよ?」
きょとんとした顔をする夕張。『物』を持っていないという意味で返すが芙二は『能力に似たモノ』を持ってるという意味で話すが通じない。しかし明石は芙二が言いたい事を理解したようだ。
明石「!……提督の言いたいことが分かりました。だけど夕張さん自身は自覚していないようですが?」
芙二「あ~~まぁ多分明石と似たような感じだと思うけど、開花するまで明石に任せるよ」
明石「……という事は夕張さん、うちに着任なんですか?」
芙二「その予定。うちにまだ夕張いないし、申請はしておくつもり」
夕張「え!? じゃ、じゃあ私ここにいてもいいの!?」
芙二「まぁね。そもそも俺の秘密を知ってうちの所属じゃないのは――いやいるわ。少なくとも東第三の連中はそうだわ。まぁ神城さんは話せないでしょ」
目を細めて口角をやや上げて話す芙二を見て、良からぬことを思った夕張は訝しげに芙二に質問した。
夕張「? 弱みでも握ってるの?」
芙二「まぁね。具体的には言えないけどあそこの人間、艦娘共々抹殺できるくらいの爆弾抱えてるよ」
悪魔のような顔をしながら笑う芙二を見て、夕張はそっと身を引いた。明石は呆れていた。
夕張「そういえば今何時? さっき朝食がどうたらって言ってたけどもう出来てるの?」
芙二「今の時刻? 四時十八分だな。飯はあと三時間後くらいだ。寝直したらどうだ?」
夕張「え? まだそんな時間なの?! うっかり大声出しちゃったけど大丈夫?」
芙二「大丈夫。その辺も抜かりなし。っつぅか、俺の方がやべぇだろ?? 耳大丈夫?」
夕張「え、う、うん。さっきまではキーンとしたけどね」
芙二「それは良かった。夕張の容体を見に来たけど安定してそうだから明石に任せて俺は退室するよ」
明石「あ、はい。任されました。提督はこのまま休まれるんですか?」
芙二「ん、その予定。また朝飯の時にでも、ね」
そう言って芙二はドアノブに手をかけ部屋を出ようとした時、思い出したかのように明石の方を振り向く。
明石「? まだ何か?」
芙二「あぁえっと、同郷人の名前を知りたそうな顔をしていたからさ。フルネームじゃないけどまぁ許してね」
『あ、はい』と明石は言った。芙二は向き直すとこう口にした。
『同郷人の名はカイン。これは勘だけど俺とは違って
―続く
かつてないほどの危機かも?
あぁ艦娘の情報も載せないと……紫月憲兵のことも……やる事多いな。