とある泊地に着任した提督のお話   作:ふじこれ

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約二か月ぶりの更新。勢いで書けたんで大事にしていきたい。


二章 61話『芙二たちは本営へ』

  

―続き

 

 朝六時、芙二は目を覚まし軽く身支度を終え準備をしていた。これから自分と夕張は本営に向かうが冷葉達に不測の事態が起きてしまっても対応できるように入念に準備をしていた。

 

芙二「侵入者が来たら妖精さんがタコ殴りにしてくれるからまぁ大丈夫でしょう。対深海棲艦に閃光弾を二発内蔵してあるしそれも大丈夫かな。それと――」

 

 

 

 芙二は準備を進めていく。時間は流れ一時間経とうとしていた時、突然扉が叩かれる。

 能力も使用せず、黙々と進めていた芙二はドキリと身体をびくつかせる。一度、作業から手を離れて扉の方へ歩き進めた。そして『どちらー?』と言いながらノブを捻る。

 

夕張「あ、提督! おはようございます!」

芙二「……夕張か。おはよう。俺を起こしに来たの?」

 

 扉の先には夕張が居た。彼女は芙二を見ると元気よく挨拶をした。芙二は冷葉が来たのだと思っていたので思わず目をパチクリ……しそうになるが寸での所でしなかった。

 このことを目の前の夕張に悟らせたくなかったから芙二も挨拶をする。

 

 要件はこれくらいだろうと思って軽く問う。しかし外れたようだ。芙二の問いかけに対し彼女はやんわりと否定してから『本営に呼び出された』ことについて話に来たのだと言った。

 

芙二「あー、そのことか……廊下で話すのはなんだから室内へどうぞ」

 

 ポリポリと頬を掻いて、室内へ夕張を招いた。先ほどまで準備していたので部屋は少し散らかっていた。夕張は部屋に入るや否や声こそ出さなかったが『うゎ!』という表情を浮かべた。

 

 『あー、今準備の途中だったんだよ。そんな顔すんなって……いつもは片付いてっから』と言い訳をしながらソファへ夕張を誘導する。

 

 『分かってますって』そういいながらソファに腰かける。

 芙二は『で、なんだっけ』と夕張に向かって聞いた。夕張は『昨夜、本営から電話が来ましたよね』と要件を話し始めた。芙二は夕張の話を聞きながら、薬缶に水を入れて火にかけお湯を沸かし始める。

 

 時折、相槌を返しながら。夕張の話はまだ続く。薬缶が沸きそうな感じがしたので相槌を打つタイミングでコーヒーかココアのどちらがいいか聞いた。

 

 夕張は少し黙ってココアがいいと言ったので芙二は来客用のマグカップにココアを入れ、自身にはコーヒーを入れた。

 マグカップ二つをトレーにいれ『……結局のところ夕張は怖いって事?』と言いながら夕張の元まで持って行く。

 

夕張「ちがっ……! そんなことは――いや怖いわ。提督が」

 

 芙二の言葉に否定しかけるもすぐに言い直す。しかし夕張が怖いと言っているのは本営ではなく芙二のようだ。

 

 トレーからココアの入ったマグカップを夕張の元へ置きながら『俺が怖いってどういうこと?』と言った。夕張が言う前にすかさずもう一言『人間じゃないから?』と。

 

夕張「人間じゃないのもあるけど……提督が不在の時、もしもですよ? 艦娘が轟沈したらどうしますか? それと不審者が侵入したら――私達に危害を加えたら?」

 

芙二「その辺は妖精さん達と話し合ってるから大丈夫。民間人にはここの艦娘をどうこうできないと思うけども。それと危害を加えたら? その時は()()()()()()さ」

 

 夕張を怖がらせないように微笑むが内心は『相手が選べる権利は死か地獄かってなまぁ八崎さんが居たら渡すけどさ』と黒いことを考えていた。

 

夕張「意外。提督って私達を溺愛してそうな雰囲気があったのに」

芙二「溺愛って……確かに俺は夕張達を大事にするけどもそこまでの領域には入ってないよ」

 

夕張「本当に……?」

芙二「ホントだってば。まぁうちの初期艦に言われてっからね。その辺は抜かりなくやるつもり」

 

夕張「初期艦? 誰の事?」

芙二「ん、あぁ叢雲。初期艦に選んだからね。まぁここが稼働してからまだひと月も経ってないけど。あ~……でも初期艦ポジにもう一隻いるわ」

 

夕張「それは?」

芙二「それは本人から聞いて。あ、でも本人は気づいてないかもしれないから……一応、初期艦じゃなくても川内達は初日から居たからね。そっちに聞いてもいいかもね」

 

 やや冷めたコーヒーを一気に飲み干すとトレーの上に置く。夕張に対して『まだ熱いと思うから冷ましてから飲みな』と言って作業に戻った。

 

 まだやや熱いココアが冷めるまで待ちながら夕張は芙二の作業を見ていたのだった。

 

 

 =======

 

 

 泊地 玄関 午前九時

 

 

 芙二と夕張は玄関にて待機していた。昨夜の連絡によるともうすぐ迎えがくるはずだ。

 

夕張「ねぇ、本当に心配じゃないの?」

芙二「いや大丈夫だろ、あいつらなら」

 

 心配そうな顔をしているから夕張は自分に聞くんじゃないかと思った。まぁさっき話したから大丈夫だろうと思った。

 

 朝食の時に冷葉へ自分が不在の時の指示をし、万が一不測の事態が起こった時に迅速な対応ができるようの仮マニュアル本も手渡しておいた。

 冷葉は頷きながら『お前が手に負えない事態なんて早々来ないだろ!』と笑いながら言った。

 

 対して艦娘達にも同様の指示をした後、深海棲艦が出現した際はあまり深追いしないようにと聞かせた。遭遇した敵が自分達よりも強かったら出来るだけ――いや確実に逃げろと言った。

 

 それを聞いた艦娘達は皆、力強く頷く。任されたとも言わんばかりの表情を浮かべる者もいた。

 芙二は信頼されてるなぁと思い、夕張と共に食堂を後にしたのだ。

 

 

 

 さっきの表情を思い出しながらふいに呟いた。夕張にも聞こえないような声で。

 

芙二「もしもってわけじゃないけど。皆に俺からのプレゼントってね。まぁ明石のように専用装備!ってほどじゃないけど喜んでくれるといいな」

 

 そう言い終えると同時に迎えが到着した。中から運転手が出てきて二人に一礼し『お迎えに上がりました。芙二提督殿と夕張様。お荷物は……ないようなのでこちらへ』

 

 二人は一回礼をして、夕張から先に乗らせ芙二は次に車に乗り込んだ。

 

 目的地は大本営と言う名の檻。

 

 芙二と清霜たちの戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

 ======

 

 

 芙二たちを乗せた送迎車は本営の門を通り抜け、駐車場に止まった。運転手は起きている芙二に対して言った。

 

『到着しました。お忘れ物をしないよう、降りる際は今一度ご確認を……』

 

『ここまでありがとうございます』と運転手に礼を言いながら寝てしまっている夕張に声をかけ身体をさする。夕張は眠たそうな声を上げながら伸びをした際、伸ばした腕が車内の天井に当たりコツンと音を立てた。

 

 自身の腕に生じた感触と声を聞いて夕張の目蓋はゆっくりと上がっていく。隣にいる芙二を見て『あれ、もう着きました?』と聞いた。

 

芙二「あぁもう着いたよ。さて、行こう。本営の方々が待っている」

 

夕張にそう言うと芙二は車外へ行った。遅れて夕張も車外へ出て行った。

 

 

 二人を見送った運転手は無線機を取り出し、誰かへコールする。数コール目に相手は出て一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??『成功したか。次は――しろ』

運転手『了解。……しかしもう少しで東第一泊地の全てが手に入るのかね? 疑っちゃいないが……こうも警戒されてないとかえって不信感を募らせるんだがね』

 

??『貴様が気にすることはない。その辺りはもう手を打ってある。奴らは確実に掛かる』

 

運転手『そうか。では、失礼する』

 

 

 

 通信を終え、運転手は無線機を懐へ仕舞い嗤う。

 これからとても素晴らしい事が起こる。

 

 自分の欲しい物が手に入るのは数年振りだ。

 成功した暁には――救えない下衆と共に勝利の美酒でも。

 

―続く

 




役職:『運転手』はいつも同じ人が担当しているのではない
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