中二病の魔法使い   作:休も

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激情

ホグワーツには様々な授業がある。変身術、薬草学、魔法史に呪文学など。その中でも、ルークスが気に入った授業は二つだ。呪文学と魔法薬学だ。理由は単純明快。かっこいいからだ。正直、呪文学で扱う魔法はグリンデルバルトとの訓練で大体習得しているし、魔法薬学自体には興味はなかった。しかし、前者は圧倒的な強者ムーブができ、後者はマントを翻すスネイプ先生と薬品を調合している風景が現実離れしているため、琴線に触れた。また、アイリスとの距離を置けたことが大きい。

 

どうやらアイリスは自身の仮面には何も言う気はないようだが、いたずらっぽく笑いながら近づいてくるアイリスと話すたびにルークスは仮面がはがれそうになるため、周りに誰かがいる時には彼女との会話をなるべく避けていた。

 

しかし、アイリス以外の生徒には仮面をかぶった状態で話すため、ルークスには友人がいなかった。嫌われているというわけではない。意味深な発言と圧倒的な魔法の技術を持ち、女の子には後で後悔しそうなキザなセリフを吐くルークスはミステリアスで、注目の的ではあった。しかし、組み分けの時に使用した威圧の呪文の影響が大きかったらしく、誰も近づこうとしなかったのである。

 

おかげでまともに会話をしたのは、魔法薬学で熱心に質問しに行くスネイプ先生と時折話しかけてくるアイリスだけだった。

 

ルークスは中二病だ。故に、ルークスはボッチであるということを孤高であるという意味合いに変換し、一匹狼かっこいい!という思考になっていた。また、出会うものすべてが新しいものであり、マグルの孤児院で育った彼にとっては神秘的なものばかりであったことが彼の目を曇らせた一番の原因だった。

 

ホグワーツにあるあらゆるものが彼の好奇心を刺激し探求へと駆り立て、グリンデルバルドと共に培った魔法技能がそれを可能にしていた。おかげで、ルークスは夜中、寮を抜け出し校内を探検することが日課になっていた。

 

その日も、ルークスは寮を抜すためルームメイトが寝たことを確認してから部屋を出て談話室に向かった。いつもであれば、そのまま抜け出すことろだったが今回はそううまくはいかなかった。なぜなら、談話室には紅茶を片手に一人本を読んでいるアイリスがいたからだ。

 

「やあやあ、やっと来ましたか。最近こそこそ何をしているのかと思えば、やっぱり寮を抜け出してたんですね?まったく、なんて面白そうなことを」

 

予想外に事態にルークスは一瞬戸惑いを見せたが、一瞬で立て直しポーカーフェイスで嘘を並べようと口を開く。

 

「何のとこかわからないね。ぼくはただ———」

 

「その口調私の前ではやめてください。今は誰もいないですし素に戻っても問題ないでしょう?」

 

「………ハァ~で?何の用だ?全部わかった上で、ここにいるんだろ?」

 

諦めたようにルークスはため息をつく。どうして、目の前の少女相手にはうまく仮面がかぶれないのだろう。そんな悩みがルークスの頭をよぎった。

 

「いや~、私もついていこうかと思いましてー」

 

「は?」

 

「ですから、私も城の中を探検したいって言ってるんですよ!」

 

グイっと顔を近づけ、アイリスはルークスの瞳を覗き込む。吸い込まれてしまいそうなアメジスト色の大きな瞳がルークスを捉えて離さなかった。そして、いたずらっぽく微笑むアイリスを見てルークスは言葉に詰まった。

 

「答えはyes or yesですよ?」

 

「とんでもない選択肢だな」

 

「時として理不尽な選択肢もあるんだと祖父が言っていました」

 

「それはいまではないと信じたいな」

 

そう言いながらも、ルークスはあきらめたようにため息をつき杖を取り出した。

 

「ため気ばかりだと幸せが逃げかねませんよ?」

 

「誰のせいだ誰の」

 

「ところで何で杖を取り出したんですか?」

 

不思議そうに首をかしげるアイリスに静かに杖を向け一振り。するとアイリスの体は徐々に薄くなっていき、数秒後には完璧に当たりの景色に溶け込んだ。

 

「お~、驚きました!目くらましの呪文ですか?」

 

「ああ、夜中にもかかわらず見回りがいるからな。これがないと外を歩けないんだ」

 

そう言って、ルークスは自分にも目くらましの呪文を掛けた。ルークスは身体に冷たいものが流れるような感覚を覚える。同時に、周囲の質感と色彩に同化していく。

 

「…ルークスの杖はナナカマドの杖なんですね」

 

アイリスは、杖を少し見ただけで材質を見抜いて見せた。驚くルークスだったが、アイリスの名前がオリバンダーであることを思い出し納得した。

 

「一瞬で分かるものなんだな」

 

「いえ、汽車の中で一回見たので覚えてたんですよ。ナナカマドの杖は希少ですし、今年それを買っていった新入生は一人だけだそうですから」

 

アイリスは目を細める。

 

「ナナカマド、37センチ、不死鳥の羽が一枚入っている杖。どちらも希少な材料ですから、適合した客がいたことに祖父は驚いてました」

 

「本当はあと3本、感じのいい杖があったんだけどな。確かギンヨウボダイジュの杖、サンザシの杖、もう一本は…」

 

「イトスギですね。あんなにたくさんの杖に適合した人は珍しいと興奮気味で話してくれました」

 

客の個人情報駄々洩れだなとルークスは思ったが、その思いを口に出すことなかった。

 

「さて、無駄話もなんですし早く探検に行きましょう!」

 

「言い出したのはオリバンダーだけどな」

 

「アハハハ、何を言ってるのかわかりませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホグワーツ城は魔法で建造されていると思われ、勝手に動く階段、隠し通路、隠し部屋、合言葉が必要な寮の談話室などの特殊な仕掛けが満載である。また、教職員も知らない通路などがあるほどだ。ここは、少年少女の探求心や冒険心をあおり満たすのに十分な場所だった。

 

 

「夜中に抜け出して人気のない城の中を散歩するのって背徳感があってたまりませんね!」

 

「そうだろ?最高だよな!」

 

ルークスは、愉快そうに頬を緩め隣を歩くアイリス同様テンションが上がっていた。ルークスは、アイリスと小声で話しながら持っていた羊皮紙に視線を落とした。それは、未完成の地図であり入学してからルークスが夜な夜な歩いて作成したお手製の品だった。

 

「今日は何処に行くか…」

 

「あ、私、天文塔に行きたいです!」

 

「?天文塔?」

 

天文塔はホグワーツで最も高い位置にある塔だ。この塔の屋上で天文学の授業が行なわれ、授業以外は立ち入り禁止となっている。

 

「トンクス先輩があそこから見える景色は絶景だって言ってたんですよ」

 

「トンクス先輩?」

 

次々と知らない情報が出てきたルークスは混乱していく。やがて考えることをやめたのか、それとも夜中に城の内部で喋る危険性をいまさらながら思い出したのか、アイリスの提案を受け入れ、天文塔に向かった。

 

意外と簡単に天文塔にたどり着くことのできた二人は、その景色に息をのんだ。夜空の闇は真に黒く、手を伸ばせば指先が黒く染まりそうなほど暗闇が立ちこめているなか、星の散らばる空がもっとも明るかった。ずっと星を見ていたら、星が降ってきそうな錯覚に陥るほどに。

 

「わぁ~、綺麗ですね………」

 

「ああ」

 

想像以上の景色に二人は腰を下ろししばらく夜空を見上げていた。

 

「………一つ聞いてもいいですか?」

 

「聞くだけならな」

 

ルークスが横目でアイリスを見るとそこにはいつものおちゃらけた彼女はいなかった。アメジスト色の瞳でルークスを真っすぐに捉えながら、その質問を投げつけた。

 

「どうしてルークスはいつも誰かを演じてるんですか?」

 

ストレートな質問ではあったが、ルークスは驚かなかった。ある程度予想していたからだ。

 

「———さあな。何でこうなったんだろうな」

 

ルークスはその質問に答えられるだけの言葉を持っていなかった。

 

 

 

 

 

 

ハロウィンが近づいてきたある冬の日。ルークスは、魔法薬学を受けに一人で地下への階段を降り、牢屋の中へと足を踏み入れる。

 

壁にはガラス瓶がズラリと並び、その中にはアルコール漬けの様々な生物が浮いていた。その部屋の中ではすでにスネイプが教卓に立っており、生徒が揃ったのを確認すると出席を取り終えると質問を一つした。

 

「ミスター・ディゴリー、ポリジュース薬の原料は何かね?」

 

「はい!材料はクサカゲロウ、ヒル、満月草、ニワヤナギ、二角獣の角の粉末、毒ツルヘビの皮の千切り、そして変身したい人物の一部です」

 

「よろしい。では、ミスター・クロックベル!生ける屍の水薬の特徴と危険性について答えよ」

 

「水のように澄んだ色をしている液体です。水薬は非常に強力な眠り薬で成分が強すぎると、一生眠り続けることもありますね。材料はアスフォデルの球根の粉末、煎じたニガヨモギ、刻んだカノコソウの根、催眠豆の汁などです」

 

「…よろしい」

 

入学してからしばらくが立ち、ハッフルパフで有名になったのはこの二人だ。セドリックは、劣等性が多いとみられるハッフルパフでは優秀な生徒で、飛行訓練でも圧倒的なセンスを見せ周りから一目置かれている。ハッフルパフ生らしいフェアプレー精神にあふれた行動をとるため、上級生からも信頼を獲得したようだった。

 

ルークスも同様に非常に優秀な生徒であり、呪文系の授業や魔法薬学の授業では他を寄せ付けないほどの成績を取っている。加えて、口調も物腰も基本的には柔らかいため一目置かれてはいるものの時たま見せる冷たい表情や恐怖をあおる雰囲気から、避けられていた。

 

他の生徒の中にも優秀な人間はいたが、この二人が目立つためあまり目を向けられていなかった。

 

ハッフルパフの1年生のツートップは、他の寮でも有名になっているらしくグリフィンドールのウィーズリー兄弟を含め、学年の有名人だった。

 

「では本日の授業はここまでとする。解散したまえ」

 

ルークスが部屋を出ていこうとするとスネイプが呼び止めた。生徒たちが教室から出ていくのを待ってから、スネイプはルークスに切り出した。

 

「ミスター・クロックベル。君が提出したこの課題は何かね?」

 

「先生の指示にあった忘れ薬ですが?」

 

「そちらではない。我輩が言っているのは、もう片方の方だ」

 

そう言って、差し出したのは数枚の羊皮紙だった。

 

「ああ、それですか。是非とも、先生に意見をいただきたくて」

 

「………まずこれは何かね?」

 

「瞳の色を変える魔法薬と思ったように表情を変化させる薬、相手の恐怖感を極限まで煽る声色を出せるようになる薬、魔力を暴走させて地力を底上げし色々な魔法を暴発させる薬の制作方法を僕なりに考えたものです」

 

「瞳の色を変える必要は何かね?」

 

「オッドアイってかっこよくないですか?」

 

 

スネイプは頭を抱えたくなるような衝動にかられながらも、深呼吸をしルークスを見つめた。少し前からルークスがこのような提案をしてくることはしばしばあった。しかし、所詮は1年生の戯言。読む価値はないと思っていたのだが、目を通したスネイプは度肝を抜かれることになった。

 

レポートの内容こそくだらないものが多いが、その理論と考え方は1年生の域ではなく、発想だけを見れば学者顔負けであり、知識と経験を積んでいけば学者としてやっていけそうなほどだった。

 

ただ、いただけないのはルークスの考案する魔法薬の効果とそれを制作する動機だった。かっこいいという理由であれば笑い飛ばせるが、ルークスは時折本気の表情で恐るべきことを口にした。

 

「この薬の意義は何だね?どれも悪用されれば多大な被害を被る可能性がある劇薬だ。これらを創る必要があると?」

 

「フッ、何を言い出すかと思えば」

 

ルークスは、口角を釣り上げ演説をするような大げさな手ぶりで、教室内を歩き回る。

 

「魔法も魔法薬も使い方を変えれば、人を殺せるものばかりですよね?浮遊の呪文や妨害の呪文だって人を殺めることは使い方次第では可能です。僕から見れば、先生は窮屈そうに見えますけどね?」

 

「何が言いたい?」

 

ルークスは、スネイプに視線を合わせるとニコリと笑ってこう答えた。

 

「許されざる呪文を忌避しているあなた方は本質が見えていないのではないかと思いまして。ようは使い方次第。魔法とはもっと、(かっこよくてスタイリッシュでロマンあふれる)素晴らしいものです。臭いものにふたをして進化の道を閉ざすのは、どうかと思いますよ?………たとえそれが闇の魔術であっても」

 

「君の意見は極論だ」

 

「でしょうね。ですが、貴方ならよく分かってくださるのでは?魔法は、僕の目的のために(私生活を彩るために)必要なのです」

 

そう言い切ったルークスを見て、スネイプはダンブルドアの言葉を思い出していた。危うい。スネイプ自身もそう感じていた。かつて自身が闇の魔術に魅入られたのと同じような結末を迎えるのではないかと。

 

スネイプは、目の前の少年がただのバカなだけの天才なのか、それとも裏に闇を抱えた怪物なのか測りかねていた。故に、スネイプは一言

 

「学術的な検討価値はあると考えるが、実際に作成することは許可できない」

 

と言い残し、部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

スネイプと別れ、寮に戻る途中ルークスはふと中庭の方に視線を向けるとスリザリン生の一団がいた。体格的にどうやら1年生だけではないらしい。こんなことろで何をやっているのだろう。そう不思議に思ったルークスは目を凝らす。一団は、何かを囲むように立っており、中心の何かに向かってけったり煽ったりしているらしかった。

 

チラリと一団の中が見える。そこには、頭を抱えてうずくまっている生徒が見えた。体格的に、1年生の少女だろう。8対1の暴行。この時間帯は人目が少ないとはいえ、十分目につく範囲内である。

 

スリザリン生の中で最も身長が高い生徒が杖を取り出し、少女に向けた。一団は、少し距離を取るために輪を広げる。

 

ルークスにとって、集団暴行の現場は嫌悪の対象であった。だが、それと同時に敵対者排除のための数の暴力には肯定的でもあった。正直、人間自体が嫌いなルークスにとって塵芥の一つでしかなかった。気に食わないのは確かだが、自分が介入する程ではない。寮監にでも報告しておけばいいだろう。そう思い去ろうとしていた時、ルークスの目と杖を向けられている少女の目が合った。ルークスを見て、助けが来るとでも考えたのか杖を取り出して反撃しようと構えた。

 

「エクスペリアームズ!武器よ去れ!」

 

瞬間、スリザリン生の一人が跳ね飛ばされた。それを見た上級生らしき人物が、激高し杖を振るった。

 

「ディフィンド!」

 

「ッああああああああああ!!!!!!」

 

少女から悲鳴が上がり、芝生の上に血が滴っていた。

 

「へ!抵抗してんじゃねえよ!穢れた血が!」

 

そう吐き捨てたスリザリン生の姿はかつてルークスが何よりも厭悪した孤児院の子供たちに重なり、ルークスの血を頭に上らせる結果となった。

 

敵対者の排除の一環としての数の暴力は肯定しているルークスだが、ただ、一つルークスにとって我慢ならないのは、自身に危害を加えてきたあの孤児院の子供たちの様に手を出しているのに手を出されることに納得できないバカな人種が存在している事だった。

 

だからこそ、ルークスは何も語ることなくスリザリン生の一団がいるほうに歩いていく。その歩調は一定だったが、杖を握る強さは進むごとに強くなっていた。

 

「な、何だよ!」

 

ルークスに気づいた生徒が、ルークスに杖を向け声を上げる。全員の視線がルークスに集まったところで、ルークスは深呼吸をして自分に杖を向けている生徒に視線を向けた。

 

威圧の呪文を使用したルークスの視線は、気の弱いものを動転させるほど鋭く軽蔑するようなものだった。

 

「ヒッ………」

 

スリザリン生の一人が後ずさりをして膝をつく。ルークスは、スリザリン生の間を堂々と抜けて少女の元まで歩いた。

 

ルークスの異様な雰囲気にのまれて、誰もが動けない中ルークスは少女に杖を向けて魔法を使う。

 

「エピスキー 癒えよ」

 

ルークスは、対象の負傷部位に杖を向けて呪文を唱え、対象に応急処置を施す。出血は収まり、ある程度傷が小さくなった。

 

「君、レイブンクローの1年生だろう?急いで寮に戻ると良い。あ、マダム・ボンフリーのところにも行くようにね。ここからは君がいると邪魔だからさ。ほらはやく」

 

そう言って、ルークスは少女を立たせると廊下まで走らせる。

 

我に返ったスリザリン生の一人が、杖を向けて呪文を放ったがルークスの無言呪文によって阻まれた。

 

「お、お前!何で穢れた血を庇う!」

 

「バークさん!こいつ、クロックベルです!」

 

「あ?お前がクロックベルか…。ちょっと出来るだけの穢れた血が!目障りなんだよ!」

 

「ねえ、少し聞いてもいいかな?」

 

「あ?何でお前の質問に応えなきゃならねえんだよ!」

 

「いいから聞けよ」

 

「ッ…」

 

底冷えするようなルークスの声に上級生は気圧される。

 

「なあ、君たちは何で彼女を襲っていたのかな?何で抵抗された時に怒ったのかな?」

 

「あ?そんなのあいつが穢れた血だからに決まってるだろ!抵抗が許されるわけないだろう!」

 

「ハァ~、じゃあ、もういいや」

 

「わけわかんねえこと言ってんじゃねえぞ!1年が3年に勝てると思ってるのかよ!」

 

「もう黙れよ」

 

 

 

吹き荒れる魔力の暴風とともに、ルークスから殺気が放たれる。

 

「ッ!………この野郎!エクスパルソ 爆発せよ!」

 

恐怖にかられ、バークは呪文を放った。ルークスは放たれる光線を躱し、お返しに失神光線を放つ。直撃したバークは軽く吹っ飛び、後方で杖を構えていた生徒に激突した。

 

「ぐわあああああああああ!!!!!」

 

「いッ…」

 

「エクスペリアームス 武器よ去れ!」

 

「エクスパルソ!」

 

「ディフィンド!」

 

「インセンディオ」

 

爆破、武装解除、切り裂き、失神。あらゆる呪文が、ルークスを襲うがどれも当たる気配を見せない。ルークスはすべて最低限の動きで避けるか防御呪文で受け止める。

 

「何でだ!何で魔法が当たらないんだ!?」

 

「後ろに目でもついているっていうのか…」

 

「クハハハハッ!!!」

 

ルークスは笑う…鮮烈に、嗤う。哂う。笑う。ワラウ。威圧呪文の副作用である気分の高揚と全能感が、ルークスの性格をわずかに改変していた。

 

「そうだ。泣け、恐怖しろ。叫べ!お前たちのようなクズの嬌声こそが俺を救ってくれる!」

 

異常なまでの開心術の才能を持つルークスは、魔法がコントロールできていない幼少期には意識を向けることなく、常に相手の感情を受信していた。そして魔法のコントロールを学び、ルークスは開心術を会得した副産物として、ある魔法を完成させた。

 

それは相手が自身に向ける敵意や憎悪、殺意などの負の感情のみを感知するという魔法。グリンデルバルトは、この魔法を感受の呪いと名付けた。唯一の欠点と言えば、on、offの制御が効かないということだった。

 

この魔法のおかげで、ルークスは何処から狙われいつ攻撃が来るのかなんとなく察知することができていた。

 

赤や青、白の光線がルークスを襲撃するが魔法がルークスにあたることはなく、ルークスの放った魔法のみが正確にスリザリン生を捉えていた。

 

「理解できたかい?君たちが行っていることの意味が。杖を向けられる覚悟を持っているやつだけが杖を向けることを許されるという簡単な話がわからないほど馬鹿ではないと思いたいんだけどね?」

 

無言呪文を扱い、失神光線を乱射するルークスとまだまだ戦いに慣れていないスリザリン生。結果は初めから見えていたのだ。

 

案の定、数分後には3年生を含めたスリザリン生8人の体が、芝生の上に転がっていた。

 

「さて、僕は常々思っていたんだけどね?人の痛みを理解しないで振るう力程、質の悪いものはないと思っているんだ。そして、人の心が理解できないやつはどんな目に遭っても変わらない」

 

ルークスの口調は演じられたものだったが、その口から放たれる言葉はだんだん熱と芯を帯びて行っているとこの場にアイリスがいたのであれば感じただろう。

 

「本来であれば、ここで完全な無力化を図りたいところだけど、一応弁明くらいは聞いておかないとね」

 

ルークスは転がっているスリザリン生に杖を向ける。

 

エネルペート(・・・・・・) 活きよ」

 

エネルベート、失神呪文の反対呪文。本来であれば、スリザリン生は目を覚ますはずだったがここでルークスにとっての誤算が生じる。

 

ルークスは、偉大な闇の魔法使いから英才教育もどきを受けていた。しかし、だからこそ習得した魔法は偏っていた。知識としては知っていても実際に使えるかどうかは別。しかも、自衛や役に立ちそうにない魔法は積極的には覚えなかったルークスは、致命的なミスを犯した。

 

魔法の発音ミスは時に予想外の結果を招く。そして、今回はタイミング共に最悪なパターンを引いたと言っても過言ではない。

 

呪文を唱えた瞬間、生徒の体が炎上し大きな火柱を上げた。そのタイミングで、スネイプとマクゴナガルが中にはに入ってきたのだ。

 

幸い、火柱は一瞬で鎮火しスリザリン生徒にはわずかな火傷が残っているだけだったが、事態がそれだけで収まらないのは驚愕をあらわにしながらも杖を取り出した二人の教師を見れば火を見るより明らかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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