中二病の魔法使い 作:休も
ルークスは先に寮の部屋に戻りトランクの中身を確認した。トランクには自分がこっそりと創った魔法薬がすべて入っていた。どうやら盗まれたわけではないらしい。
ルークスは次にスネイプのいる研究室に向かった。相変わらず薬品と保存薬の匂いで満たされている部屋だ。ルークスはそんなことを思いながらも薬品の置いてある棚に視線を向ける。
「なるほどな…可能性は三つかな」
「ちょうど我輩も君に用があったのだ」
スネイプはいつもよりも険しい表情をしていた。ルークスはローブの裾をギュッと掴みながらも静かに相手を威圧する笑みを浮かべる。
「今朝の件ですよね?僕としては覚えがない完璧な濡れ衣なんですけど、詳しく聞いてもいいですか?覚えのないことでからまれるのは面倒なので」
「………我輩は今朝方は生徒の治療にあたっていたため、君に対する事情聴取が遅れた。結果、何が起こっていたのかは容易に想像できる」
「………まずそちらの事情を説明してもらっても?」
「使用されたのは君が考案していた『新人薬』だ。感覚の強化を目的として君が考案したものだが、引き上げ過ぎた感覚は使用者を苦しめる結果となったぞ」
「でしょうね。だから改良の余地ありとご報告しましたしね」
「ではなぜ彼らを被検体にしたのかね?」
「濡れ衣ですよ」
「君が医務室から逃げるように走り去るのを見たという生徒が何人もいるが?」
「そうですね。想像は付きますが………というか先生も気づいているのではないですか?それとも気づいていないふりですか?」
ちらりとルークスは薬品の棚に視線を投げる。
「………」
「濡れ衣であると証明して見せるのでここの部屋弄らないでくださいね?それでは」
ルークスは夜の天文塔の上で対抗策を考えていた。向けられる感情もさることながら、スリザリン生が手を出して来そうな勢いなのがまずい。
「わっ!!!!!」
「ぎゃわッ!!!!?!??????}
後ろから大声で叫ばれルークスは音のない悲鳴を上げて転げまわった。
「フフッ、アハハハアハハハハハハ!!!!」
そこに立っていたのはアイリスだった。ルークスは困惑を隠すことなく言葉に出した。
「何でここにいるんだよ?」
「くははははっ…、ぎゃわって…、ふふぁははははははは!!」
アイリスはお腹を掛けたまま大爆笑していた。ルークスは今なら失神呪文を使ってもいいのではないかと思った。
「ひー、すいません。あまりにいい反応だったもので」
目じりに浮かべた涙を指で拭いながらアイリスは謝罪の言葉を吐いた。まったく悪いと思っていなかっただろうが。
「ここにきているんじゃないかなと」
「いやそもそも」
「何できているかって話ですよね?」
先ほどまでのふざけた雰囲気をしまい、真剣な表情を作る。
「ルークスって本当に馬鹿なんですね」
「は?俺はバカじゃない!」
「そういうことを言っているんじゃないです!」
「あ、はい」
ルークスは今のアイリスに勝てる気がしなかった。
「被害に遭ったレイブンクローの子に会ってきました。彼女は、すごくあなたに感謝していましたし貴方に賭けられている嫌疑は濡れ衣であると信じていました。これは私もシアも同様です」
ルークスには、向けられている負の感情は感知できても正の感情は感知できない。だから、目の前の少女が何を思っているのかが理解できない。ただ、自分に対して悪くない感情を向けている事だけは理解していた。
「私は、貴方のことを深くは知りません。でも、最初にあった時よりははるかにあなたのことを知りたいと思っています」
「だとしても、それがここに来る理由にはならない。スリザリン生の俺に対する敵意は少し異常だ。近くにいれば巻き込まれるぞ」
「わかっています」
「なら!」
「友人が心配だったから。これでは不思議ですか?」
「………ゆう、じん?」
「おや?友達という認識は私だけでしたか。では、同じ寮の仲間と言い直しましょう」
「いや、友人でいい」
なぜ、そんなことを言ったのかルークスは結論を出せないでいたが、今はそんなことを気にするべきではないと思った。
「では改めて、友人のピンチなので助けに来ました!」
銀色の髪を揺らしアイリスはその優れた容姿で柔らかで満足げな笑みを浮かべている。ルークスには、その笑顔はきっと自分には忘れることのできない類のものであるとわかっていた。
「本題に入りましょう。どうでしたか?」
「正直厳しいな。手口はわかったけど、証拠がないんだよな。いや、正確には足りないっていうか………。弱いんだよな」
「それは向こうも同じですけどね」
「同じ?」
「ええ、向こうだって確たる証拠はないわけですよね?証言と空き瓶だけ。魔法使いならどうとでもできそうですけど」
「………でもな流れができてしまっているからな。目撃者がいるっていうのがまずい。間違いなくポリジュース薬だけど、問題はどうやって俺の体の一部を盗んだのか………」
「同室の誰かが裏切者であるっと考えているわけですね」
「ああ、それでさっきディゴリーとも衝突したしな」
だからこうして部屋から出ていき、夜のホグワーツを散策していたのだ。ルークスが思わず引いてしまうほどすごい剣幕だった。そういえば、セドリックも仲間という単語を多用していた。ルークスにはわからない感性だった。理解はできても同調しづらい概念だった。
「朝に医務室の前を通っていた生徒が複数人いるというのも変な話ですよね」
「?」
「だって、医務室の前を通らなくても大広間には行けます。なのに、今日に限って複数の寮の生徒が都合よく同じ時間帯に医務室の前にいた。噂の真相を確かめたいっていう線もありますけど、朝から行くでしょうか?確認が取れていない以上所詮ただのゴシップです。普通に考えてスリザリンの生徒以外は怪我をしたか体調を崩した以外の理由で医務室にはいかないと思うんですよ」
その考えはルークスが持っていなかったものだった。確かに言われてみれば不自然だ。
「てっきりすでに気が付いているのかと思ってましたよ」
「盲点だった」
「やっぱり頭がいいのにバカなんですかね?」
「上げるか落とすかどっちかにしろよ………」
「というわけで、トンクス先輩とシアに調査を頼んできました!」
パチンと手を叩きアイリスは高らかに言い放った。
「?????}
シアとはあの汽車の中で会った少女のことだろうか?なぜ、彼女の名前が出てくるんだろうか?それに何を頼んだのだろうか?ルークスは疑問を止めることができなかった。
「まあ、こっちの方は任せておいてください。私が頑張っているわけではないですけど、いい結果が届くと思います」
自信満々のアイリスの笑みはルークスにとって胸をもやもやさせる何かだった。だが、ルークスは気が付かないうちに自然に筋肉の緊張がほぐれたかのような柔らかい笑みをうっすらと浮かべてた。