中二病の魔法使い 作:休も
変身術は第1学年からの必須科目であり、マクゴナガルによると最も難しい教科らしい。確かに、ルークスもこの3ヶ月かなり苦戦を強いられていた。
動物をものに変身させたり物体を別のものに変身または消去させたりする術などを訓練するのだが、思うようにいかなかった。ルークスは物体の変身はできても動物の変身ができなかった。
「いいですか。よくお聞きなさい。この変身呪文はふくろう試験では一番難しい課題の一つですが、間違いなく誰もができる呪文です。あなた方にとっては4年後の話になりますが、今から努力して損はない魔法です。本日は、数年後の体験ということで実際に杖を使用してやってみるのですよ」
マクゴナガルが喋っている間アイリスはずっと心ここにあらずだった。おそらく考え事をしていた。しかし、アイリスは何の苦労もなく考え事のついでにネズミを布に変身させて見せた。
ルークスはそれを横目で見ながらアイリスはもしかしなくても天才なのではないかと考えていた。
いつもはディゴリーの近くに座っているので見る機会がなかったが、自分よりもディゴリーよりも出来がいいと感じていた。
「注目なさい。いいですか、ふくろう試験では動物の消失か変身が出されることが多いですが、物体の変身も近年では頻度が上がっています。1年生の段階でできる必要はありませんが、現段階で強い興味を持てた生徒は私のところにおいでなさい」
結局、アイリス以外変身術が成功している生徒はいなかった。ルークスの成功率は物体の変身だけは五回に一回は成功するという感じだった。セドリックは逆に、動物の変身が得意なようだった。
「ではそこまでにしましょう。本日の授業はここまでにします」
教室に騒がしさが戻っていく。ぞろぞろと教室を後にする生徒たちを見ながらルークスもそろそろ教室を出ようと考えていた。
「ちょっといいですか?」
アイリスが教室から出ようとするアイリスを呼び止める。
「なんだよ?」
「三日前に天文塔でいったこと覚えていますか?」
「調査のやつか?」
「そうです。それです。結構有益というか黒い情報が出てきたんですけど、やっぱり決定的といえるほどの物的証拠はないかったみたいで………証言の確保はできると思うんですが」
「落としどころが難しいな。要するにどっちが大衆の流れを味方に付けられるかって話か」
廊下を歩きながらルークスとアイリスは思案する、ルークスは不意に自分に向けられた強烈な敵意に気が付く。しかし、その時にはすでに遅かった。紅い閃光が隣を歩いていたアイリスに直撃した。
アイリスはそのまま吹き飛びは壁に体を打ち付け倒れる………その光景に一瞬理解が追い付かなかったルークスは思考を一度凍らせるが、体は反射的に動いた。
後方に立っていたスリザリンらしき生徒に杖を向ける。
「俺はスリザリン6年のグリッドだ。弟の恨みだ!ここで倒れろ穢れた血!」
そう言うなりグリッドと名乗ったスリザリン生はルークスに杖を上げて赤い光線を打ち込んだ。ルークスはそれを杖を振るだけではじき飛ばした。グリッドはそれを見て驚きを隠せないようだった。ルークスを見る目にさらに油断がなくなった。
「ころす」
グリッドはそう言い放つと本気でルークスに呪文を向けてきた。ルークスはそれを盾の呪文でいなしながら相手の動きを見ていた。
二人は杖を向け合い、呪文を放ち合いながら動いている。二人が避けたり弾き飛ばした呪文が廊下の四方に散った。
一、二回、ローブがグリッドの呪文で焼け焦げ、他にも耳の端に呪文がかすり、そこから血が流れていた。
ルークスは開心術で敵の考えを覗いた。ノイズがひどいものの先読みは可能だった。しかし、対処しきれない。後ろのアイリスに気を取られているというのもあるが、1年生と6年生の間には技量的な問題で距離があった。
ルークスの実力は閉心術や開心術に関連したものを除けば4年生程度。だんだんと追い詰められていくのは当たり前だった。
「レダクト 砕けろ!」
床を砕きほこりで視界が狭まる。走って一気に距離を詰めるルークスに血走った眼で魔法を放つスリザリン生。
冷静であれば、こんな戦術はとらなかったし目の前のスリザリン生の様子が明らかにおかしいことに気が付いたであろう。しかし、ルークスは頭に血が上がっていた。
躱しきれなくなった魔法がルークスに直撃する。左腕を鈍い痛みと突き抜けるような痛みが襲った。
しかし止まらない。ルークスは杖を向ける。自身が現状最も使いやすく最も効果的な魔法を放とうとした。
瞬間
「「エクスペリアームズ!」」
横から飛んできた光線が二人の杖を取り上げた。 武装解除の呪文が飛んできた方向に目を向けるとそこには二人の生徒が立っていた。
「穏やかではないですね(わね)」
「ペネロピー・クリアウォーターァ!」
「あら、私のことをしているのね。光栄だわ」
「すぐに先生たちも来るわ。大人しくするのね」
「邪魔をするな!ニンファドーラ・トンクス!!!!」
ルークスはその名に聞き覚えがあった。だが、そんなことはどうでもよかった。後ろを振り向き、倒れているアイリスの元まで急いで戻る。
「あ!ちょっと!!!?」
膝をつきアイリスの傷の具合を見たが、ルークスには傷を治す呪文の知識も道具もなかった。外傷は壁に体を打ち付けた時に切ったのか少し血を流しているだけだが、他のダメージはわからない。
精々傷跡に布を当てるくらいしか彼にはできることがない。ルークスは自分の視界が揺れるのを感じていた。耳鳴りも傷の痛みもどうでもよかった。後悔だけが彼を苛んでいた。
遠くの方で先生たちが駆け寄ってくる音がする。そんなことを思いながらもルークスはその場から動けないでいた。