百合だらけの世界で私は京太郎くんに愛を叫びたい   作:うどんではない

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 作者様のブログ情報の世界観からお話を膨らませてみましたー。
 こんな二次はいかがでしょう?


ノーマル?

 生まれ変わり、ってあなたは信じるかしら?

 私は信じたくないわね。でも、実際に起きてしまったからには認めざるを得ないのよ。

 簡単に言えば、私は人生二回目。長野でぐだぐだ過ごしている今の人生の経験だけじゃなく、前世の記憶っていう面倒なのがあるの。

 

 前世は、高校生になる手前あたりで終わってるわね。もっとも通学する予定の高校のスカートのチェックの色がダサくてやだなとか、そんな記憶ばかりで前世の終わり、それこそ死んだ記憶はないの。

 そりゃあ、死の際の記憶なんてトラウマものでしょうからなくてもいいのだけれど、そんな区切りもない半端だったから私の中で前世の記憶と今の経験がごっちゃになってた時期があったのよね。

 幼い頃両親に、どうしてパパとママじゃなくてママとママなの、と聞いて不思議がられたこと、よく覚えているわ。曰く、私達の周りには異性婚なんていなかったのに、どうして知っているのかしら、って。

 

 いや、この世界普通に同性婚があるのよね。普通に同性同士で子供を作る技術確立してるし。だから、男同士、女同士で付き合うことなんて当たり前のようにあるの。

 そんなの摂理に反してないか、とはこの世界の人には流石に怖くて言えないわね。この世界だとそれってあたり前のことみたいだし。

 むしろ、おかしいとおもうことの方がおかしいの。そもそも、前世の記憶あり、なんて私のほうがよっぽどあっちゃダメなのは分かりきっているしね。

 

 まあ、でも幼心にそんな判断は出来ないわ。私、普通に両親に変な記憶があるって話しちゃったの。

 そうしたら、なんかオカルトがどうのこうので当時過ごしていた岩手から鹿児島くんだりまで旅行みたいに連れてかれてなんか怪しげな巫女さんたちに囲まれたことすらあったわ。あれは、怖かったわね。

 でもまあ、そのおかげでどうにも私には魂が二つ分あるってことが分かったの。

 すごいですね、とはそこでお姫様みたいに扱われてた、現私のマブダチ小蒔の言ね。ただ、実際そんな単純に思ってくれるひとは少ないわ。

 

 私が純粋な子じゃないって分かったら途端にママもママもどこかよそよそしくなっちゃったし、悲しかった。それに、私から私を引き剥がそうとママたちが言ったのも、辛かったわ。

 まるで私が私じゃダメであるみたい。それで、私もママたちに怒っちゃったの。ママも女同士で結婚していて気持ち悪いって。

 私は、わんわん泣いて。疲れて眠って起きたわ。そしたら私、起き抜けに二人のママにぎゅうぎゅうに抱かれていたのを知ったの。

 二人は言ったわ。貴女は聞き分けが良すぎるから、それが怖かったって。そんな貴女が本音を話して子供らしくしてくれたから、ようやく私達も安心できた、って。

 そこで認められたって知った私はまた泣いたわ。でも、それ以降はもう私、泣いたことなんてないの。まあ、ドラマの感動シーンとかでうるうるしちゃう時くらいはあるけど、それくらいね。

 もう、ママたちにあんまり心配かけさせたくないから。

 

 

 えっと、そんな風にして、私は受け入れられたの。でも、私はそれでもこの世界を受け入れきれなかった。

 違うところが他にほぼなかったから、かもしれないわね。ママとママは仕方ないにしても、どうにも同性同士の好きが恋であってもいいというのに馴染まなかった。

 前世の友達の、エツコとかなら男の子同士が好きだったから順応出来たかもしれないけれど、私にはちょっと無理。付き合うなら男の子じゃないと嫌。

 

 まあ、勿論異性婚もあるといえばあるから、私はそれほど気にせずに過ごしていたわ。

 女子同士仲良くして、ときに男子にちょっかい出したりして、小学時代の大半を岩手で普通にしていたはずだったの。

 けれども、前世の記憶に引っ張られてた私はやっぱりどこかおかしかったのね。

 きっかけとしては、私の家が長野への転居することを話したからかしら。友達の中でも特に仲良くしていた子――先輩なのにちっちゃくて可愛らしかったからつい構っちゃったのよね――胡桃から、言われちゃったの。

 

「百合、私と付き合って!」

 

 そんなどストレートな告白を。あ、百合って私の名前ね。小瀬川百合っていうのがフルネーム。ま、そんなことはいいかしら。まあそんな風に、真っ赤な顔で胡桃は勇気を出して私に告白したのよ。

 でも、私はそれに応えることは出来ないわ。むしろ、嫌だとすら思ったの。その上で、なんとか私は返事を返せたわ。

 

「ごめん」

「…………どうして?」

「え?」

 

 でも、そうしたら胡桃はこの世の終わりのような顔をして、聞いてきたのよね。よく分からなくて、私は何も返せなかった。

 そうしたら、まるで愛らしいこけしのようだった胡桃は――従妹の白望が言うには今もあまり変わらないみたいだけれど――言ったの。

 

「私のこと、好きじゃなかったの?」

「えっと……好きだけど、そっちの好きじゃなかったっていうか……」

「好きなら、付き合ってくれてもいいでしょ?」

「その……」

 

 私には、分からなかったわ。前世の当たり前を行っていた私に女子同士にも機微があったことなんて、分からなかった。

 どうも、やりすぎていたみたい。それでも、私は前世を引きずっていていたから。

 

「……気持ち悪い」

「え?」

 

 そんなことを口走って、胡桃を傷つけてしまった。

 あの子の頬をつうと流れた涙は、未だに忘れられない。ごめんねといくら謝ったところでずっと残る、これが私の後悔の記憶。

 

 

 

 ま、そんなのがトラウマになって、長野で過ごし始めてからも女子同士のふれあいに臆病になってしまったり、そこで同じく周りに馴染めていなかった子――咲っていうの。一番の親友ね――と仲良くなったりしながら、しばらく過ごしていたわ。

 で。中学生になったところで、私は出会ったの。とっても素敵な男の子と、ね。

 

 もっとも、進学した当初から私は彼をクラスメートの間柄として見知ってはいたの。けど、ちょっと格好いいなと思えども話をしたのは少し経ってから。

 放課後に彼が独り、グラウンドの壁にボールを投げ当てている――今思えばあれ、顧問に部員募集中な彼が唯一行えるハンドボールの練習だったのよね――ところ、投げ損ねたボールが通りがかりの私達の足元にぽこん。

 それを私がひょいと投げ返してあげると、彼――須賀京太郎――は朗らかに私達に声をかけてきたわ。

 

「あー……宮永と小瀬川か、すまん。ボール拾ってくれて」

「えっと……百合ちゃん」

「こら、咲。私の後ろに隠れないの。須賀くんも、気にしないで」

 

 この頃は特に人見知りだった咲に盾にされながら、私は京太郎くんと相対したわ。まず私が思ったのは、彼がおっきいなってこと。のっぽの高久田誠くんには負けるけど、京太郎くんは立派な長身男子。

 そして、私は京太郎くんの金色のてっぺんから視線を下ろしてその目にどきりとしたわ。優しげな緩みの中に、真剣な強さがあるというか、そんな素敵な視線を受けた私は一気に彼が気になったの。

 それで知らずに私は零しちゃうのよ。

 

「……あの、少し練習見てていい?」

「えっ?」

「ああ、別にいーぞ」

 

 女子どころかそもそも人付き合いを恐れていた私が、急に乗り気になったことに驚く咲を尻目に、承諾を得た私は早々に休みながら観れるポジションを見つけるために動いたわ。

 そして、おずおずついて来た咲と一緒にしばらく彼の格好いいところを見つめた。

 

「どうも、須賀くん」

「うう……」

「また来たのか?」

 

 その後私は咲を引き連れながら放課後に飽きるまで京太郎くんをみつめるルーチンを、何日も繰り返して。

 

「すまない、宮永、小瀬川」

「えっと、気にしないで、須賀君」

「もう、そこはありがとう、でしょ?」

「ああ、ありがとう。まさか俺と誠しかいないハンド部に二人もマネージャーとして入ってくれるなんて思わなくてさ。嬉しいよ」

 

 ハンドボール部のマネージャーとして半ば押しかけながら働くことになった。

 すると、私と咲も、京太郎くんとどんどん仲良くなって。

 

「よいしょ、よいしょ……」

「咲、貸して。ここに置いといていいかな、須賀くん?」

「それでいいが……あー、小瀬川。そろそろ、名字呼びだと他人行儀な感じだから俺のことは、京太郎で良いぞ。宮永、お前もだ」

「え、私も?」

「ああ、俺も小瀬川に宮永を……百合と咲って呼ぶからさ。それでいいだろ?」

「えっと、京太郎、くん?」

「ああ、百合」

「うう……………きゃー!」

「あ、百合ちゃん逃げないでっ! 速いよぉ」

 

 私が逃避時に見せた健脚を陸上部に買われかけるなんて紆余曲折ありながら、結局下の名前で呼び合うことになったわ。

 

「咲」

「京ちゃん」

「むー……」

「えっと、百合ちゃんどうしたの?」

「どうしたもこうしたもないですー……」

 

 その後に、知らない間に抜け駆けしてた咲が京太郎くんをあだ名で呼んでることにほっぺを膨らませたこともあったわね。

 けれども、愛称で彼を呼ぶなんて怖くて出来なくって、私はそのまま。ひょっとしたら、このままだと咲が最大の恋仇になるのかなかと思ってたら意外とそんなこともなくて。

 

「おかしな百合ちゃん」

 

 ただ、彼女は笑顔で私の後をついて回ってた。

 

 

 試合ができるくらいの部員集めに、一年。試合で勝ち抜くための練習を積むのに一年。

 ハンドボールに打ち込む須賀くんを私と咲は多少の手助けをしながらただ、見守ったの。

 そして、集大成。三年生最後の県大会にてどんどんと勝ち上がっていく京太郎くんたちを私は固唾を呑みながら応援したわ。

 彼の頑張りの、その結果は。

 

「準優勝、か……」

「惜しかったね」

「ああ」

 

 あと一歩。もう少しが届かなくって皆泣いてた。そして顧問の先生の友達のお店で打ち上げしてからの帰り道、私は須賀くんとそんなお話をしたわ。

 夕に焼けた空の下、私達の影法師も遠くって。夏も終わるんだな、ってそんな気がした。

 なんとなく、私は京太郎くんをそっと見上げたわ。そうして何か彼が口を開こうとした時。

 

「京ちゃん」

「ん……咲」

 

 反対隣を歩いてた咲が先んじて京太郎くんの名前を言ったの。私は、なんとなく彼女が彼の邪魔をしたのだと察した。

 けれども、空気の読める私はだんまり。そうしてしばらくしてから。

 

「じゃあな、百合、咲」

「またね、京ちゃん」

「また明日」

 

 手を振り、私達は京太郎くんと別れたの。そして、一等長い影は遠ざかり、小さな二つが寄り添ったわ。

 でも、それはどうにも近すぎた。何となくそれが嫌になった私は一歩離れようとして。

 

「逃げないで、百合ちゃん」

「咲?」

 

 真っ直ぐ私を見つめる咲に捕まったの。

 いぶかしがる私に咲は、あの日の彼女と同じように顔を赤くして、口を開く。私は怖気を感じた。

 

「あのね、私。……百合ちゃんのことが好きだよ。愛してる」

「え? それって、京太郎くんじゃなくて?」

「それは、京ちゃんのことだって大好きだよ? でも私……百合ちゃんの方が大好きだから……」

 

 頬を染めてそんなことを口にする咲。私は、そんなこの世の普通の告白をうまく受け入れられない。

 どうしようもなく、気持ち悪くて。でも、今回ばかりは嘔気を我慢して、言う。

 

「あの、その……ごめんね」

 

 本当に申し訳なくて、私は頭を下げた。私が普通ではないせいで、大好きな人を惑わせちゃう。そんなの嫌なのに。

 泣きそうになりながらも我慢する私に、咲は。

 

「あはは……うん。その答えは分かってたかな。百合ちゃん、京ちゃんのこと大好きだもんね」

 

 そう言って、はにかむのだった。

 咲は、それ以上何も言わない。そのおかげで、私はその夕に痛みで別れることがなくて済んだのだった。

 

 

 

 

「……いっそのこと、二人共手に入れちゃうってのもアリかな?」

 

 手を振り別れた後の、そんな言葉を私は勿論知らない。

 

 




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