百合だらけの世界で私は京太郎くんに愛を叫びたい 作:うどんではない
どうかなと思いましたが、続きを書いた方がいいということでしたので、急ぎ書いてみました!
楽しく読んでいただけたら幸いです!
改めましてこの作品は、咲の登場キャラの半数以上が同性愛者で女性×女性の子供で同性婚可能な世界、という作者様ブログの嘘かホントかな情報を本気にして書いていますー。
「むー、どうしたらいいのかしら?」
真新しい清澄高校の制服――前世の高校で着る予定だった蛍光チェックと違ってベーシックな感じ。でもこういう普通ので良いのよね――でふらふらと一人色んなところを見て回りながら、私は一人呟いたわ。
吹奏楽の遠い音を聞きながら、部活動に打ち込む先輩方やそれに混じって教えを受けている新入生を教室の外から見つめて、なんとなく私は嘆息した。皆すっごいなあ、って思って。
真剣と遊びが入り混じった熱気っていうのか、とにかく楽しそうで。ちょっとアレに混じるのは今の私には難しいかな、って思っちゃう。
「私って、別にハマってる趣味とかないしね。中学の時にマネージャーしてたのもちょっと邪な動機だったし。あーあ。好きを見つけるって難しいなあ」
何となく、私は白い――前世ではちょっとありえない自毛の色ね――前髪を弄りながら、悩む。以前途中で終わってしまった影響のためか未来に夢もなにも持てていない私に、改めて部活を選ぶというのは難しかった。
私達の中学から清澄高校に進学したのは、私に京太郎くんに咲に高久田くん。見事にハンド部のメンバーだけだった。
そして、京太郎くんと高久田くんは高校でも共にハンド部に入部済み。しかし時代遅れ気味に硬派な清澄ハンド部は女子マネージャーを募集していなかったので、私と咲はあぶれちゃったの。
でも、好きなもの、本を読む趣味を持っている咲は早々に文芸部に入っちゃった。ずっこいわよね。
「ったく、何が百合ちゃんも一緒に入ろうよ、よ。私が本を読むと眠くなっちゃう性分だって知らないはずもないでしょうに」
本をろくに読めない私は、だから咲の誘いを蹴ってから、こんな風に部活を探してうろうろしている今を過ごしているの。
部活には入っときたいのだけれど、なんか冷めてる私は場違いな感じがして二の足を踏み続けて。
「そう――――やっぱり好きがないとこの世に混じるのは難しいのかしらね?」
好きな人は、いる。言わずもがな、京太郎くんだ。もっとも、彼本人には言っていないから伝わっていないと思うけど。ただ、私が彼のことを好きなのは間違いない。
ただ、他に好きがなにかあるかと言われると疑問。この世界の普通に混じりたいと、いっぱい色んなことをしてきた私だけれど、何かにハマることなんてなかった。
「得意なことがないわけじゃないんだけどね。ただ人を負かすことって別に好きじゃないし」
性格は勝ち気とか言われるんだけど、どうにもね。他の人の悔しそうな顔なんて見たくないし、自分を勝利で飾ることだって、そんなの面倒。
まあ、ゲームならいいけど、それに真剣になるってのもどうもね。それにそもそも将棋部とか囲碁部とかあっても私、ルール分かんないしなあ。
と、そんな風にごちゃごちゃ私が考えていると、知らない間に目の前に女の子がぽつん。なんかふんぞり返ってるちっちゃな女の子がこっちを見てる。
よく周りを見てみたら、廊下に人気がないわ。つまり私に用があるということね。どうしたのかしらと思って私が首を傾げると。
「おおっ、暇そうな一年坊、見つけたじぇ!」
そんなことを言われたの。暇そう、なんて私の悩む姿を一言で片付けた彼女に私はちょっとカチンとくるわ。
でも、初対面の子に悪気があったかどうかなんてわからないもの。ムカつくのを抑えながら、私は彼女――このミニサイズは胡桃を思わせるわ――に相対したわ。
「……何よあんた」
「ふっふー、何を隠そう、私こそ高遠原中学出身の片岡優希様だじょ!」
「舌っ足らずねぇ。ちっこいし。ご飯ちゃんと食べてる?」
「なにおぅ! ついさっきタコスを平らげたばかりの私を欠食児童扱いするとは、太い奴だじぇ」
「ああ、だから口元にソースついてるのね。ほら」
「むぐ……ありがとうだじぇ!」
二言三言言葉を交わしてから私は、ちっちゃい子片岡さんの頬にハンカチを当ててゴシゴシ。笑顔でお礼を言ってきた彼女に、私はわずかに額に寄ってた険を取る。
話してみるとなんだ、ただ子供っぽいだけだった。素直なだけね。怒るだけ損。
なんとなく、胡桃の世話をしていたことを思い出しながら、のほほんとした気分になる私。ソース取れたかー、と訊いてくる片岡さんに頷きで返した。
そうして彼女から離れた私。そこに、駆けてくる姿が。なんかぶるんぶるんとしたシルエットをした少女は、止まってから言う。
「何やってるんですか、ゆーき……そして、貴女は?」
「のどちゃん!」
「のど? ああ、私は小瀬川百合。歩いてたら、この子に絡まれてただけよ」
「そうでしたか……まったく、ゆーき。いけませんよ?」
そう言って、片岡さんをたしなめる彼女は、なるほど大人びていて可愛らしい。まあ、私ほどじゃあないけれどね。
というか、普乳の私と比べるにはこの子、ホルスタイン種に近すぎるわ。何よこれ。ふざけてるのかしら。
とんでもないものを持つ桃色髪の少女に戦慄すら覚える私を他所に、片岡さんは言い訳を始める。
「うう、誤解だじぇ。私はただこの……百合ちゃんでいいかだじょ? 百合ちゃんを麻雀部に誘おうと思っただけで……」
「麻雀部?」
そして、私は初耳に首を傾げた。
麻雀部。この学校にもあったのね。なんかこの世界では流行ってるみたいで中学では結構入部してる人多かったけど、そういえば部室棟とかで見なかったからあるって分かんなかった。
部活紹介の時間にも、紹介がなかったような……いや途中で私寝てたから定かではないわね。とにかく、麻雀部はあって、片岡さんは入っているみたい。
ひょっとして、と私はおっぱいの妖精みたいな――なんかここまでデカイとホント、ご利益ありそうよね。後で拝んでおきましょう――彼女の方を見る。
「申し遅れました、私は原村和と言います。優希と私は麻雀部に所属していまして……」
「ふぅん。原村さんね。ねえあんた」
「なんでしょう?」
そして、何だか気になった私は原村さんの勧誘を言葉を挟んで断ち切る。
で、首を可愛く傾げる彼女に私は、つい本音を零してしまうの。
「おっぱい大きいわね」
「へぇっ!?」
真顔の私に、真っ赤になる原村さん。横でどうしてだか片岡さんはけらけらと笑って。
あ、やらかしたと気づいた私が何か言い訳する前に。
「ふふ……面白い子」
いつの間にか私達に寄っていた学生議会長――要は生徒会長らしいわ――が、先日の壇上の上では見れなかったチェシャ猫みたいな笑みをして、私をそう評したわ。
「ほれ。おっぱい子。おんしの手番じゃぞ?」
「はい……あと染谷先輩、その呼び方は止めてもらえます?」
「ぷ、すまん、すまん。小瀬川さんだったのぉ」
なんか、どっかの地方のコテコテな言葉を操る先輩――染谷まこさんっていうみたい。二年生ね。この人も結構可愛いわ――の私につけた酷いあだ名に文句をつけてから、私は牌を引いてきて、がちゃがちゃ。
あまり慣れない本物の牌での麻雀に挑む。対面の人を食ったような染谷先輩のニヤケ顔に少しイラッとしながらも、私は一番要らない牌を直ぐ様捨てた。
「へぇ……」
途端に、私の後ろから出た感心の声。そう、試しに部活に参加してみた私を、竹井久部長――学生会議長だけじゃなくて麻雀部のトップまでやってるのね。凄いわ。当然のようにこの人も美人――が後ろで見てくれてるの。
なんか私の牌の優先順位をどうにも面白がっているみたいだけれど、おかしなところがあったら言って下さいと伝えてあるから、まあ私のやりかたも間違ってはいないでしょう。
「よし」
ほら。
と私が内心ほくそ笑みながら三筒を捨てたその時。大きな声が上がったわ。
「ふふ……ロン、だじぇ!」
「嘘。さっきから片岡、速すぎない? なんかズルしてんの?」
「そんなことしてないじょ! ただ東場だから調子がいいだけだじぇ……そういえば百合ちゃんは計算できないんだったんだじょ。今回は五千二百点だじぇ」
「はい……ええと、これが千点棒で……」
「これが百点棒です」
「ありがと」
慣れない支払いにまごつく私に、丁寧に声をかけてくれる原村さんに私は感謝。
本当はこういうの、後ろに控えている部長が教えてくれるものなのだろうけど、まあ何か考えがあるのでしょう。大方、新入生同士仲良くしてほしい、とか思ってるのかしらね。
しばらく経ち、私は洗われて再びせり上がってきた牌をいただきながら、ふと口を開く。
「しかし、ありがとうとは言ったけど、ゲーム上だと原村さんってありがたくないのよね。片岡と勝負出来るくらいに速いし」
「ええと……そうですね。私は慣れていますから」
「インターミドルのチャンピオンなんだっけ? 凄いわねえ」
「そんなのどちゃん相手に、手加減しないでと言い張った百合ちゃんもある意味すごいじょ……」
「まあ、ねぇ……」
最強とか戦い甲斐がありそうだったから、という本音を隠したままに、うそぶくわたし。
しかし、今の所私はボコボコサンドバッグ。点棒も残り少ないままに、一回も和了れていない。
みんなそんなバカみたいな点数を出してくるわけじゃないけど、速いのよね。特に片岡。次に原村さん。染谷先輩もそれに合わせてる。
私は、あんまり低い点数で刻むのが
「ふむ」
「じょ……」
「……なるほど」
でもまあ、それでもずっと最高速が出るものではないって私は知ってる。最効率で駆け回ろうが、このゲームは畢竟運だもの。
悪い時は悪くって、それが皆に重なることだってある。
「チャンスね」
それを感じた私は、真っ先に既に揃っている順子を切っていく。私が最初に捨てた五萬に。
「ふふ」
竹井部長は笑ってた。
さて、私は魂が二つ重なった状態にあるっていうのは先に語った通り。
実際魂って二十一グラムだったっけ? 人が死んだ前と後を測ったらそれくらいの違いがあったって、聞いたことがあるわ。
体重計には表れない、秤に乗せれば傾く程度。でもまあ
運ってよく分からないものを、よく分からない魂の力で引き寄せる。そんな強引を出来るのが私の強み。
「ま、引力の違いね」
――――ほら、出来た。
「ツモ。――――たしかこれ、一番強い役よね?」
「嘘、だじょ?」
「そんな……」
「四暗刻、単騎……!」
「ふふ……とんでもない子が来ちゃったわね」
驚きの渦の中、竹井部長にそう称されながら、しかし私は原村さんのおっぱいの方がよっぽどとんでもないのでは、とぼやっと思うのだった。
「そっか、百合ちゃん麻雀部に入ったんだ」
「うん」
私は放課後の帰り道を咲と一緒に会話。今日の出来事を話す度に、どんどん憂いを増させている親友を気にしながら家路に就く。
足元のたんぽぽの綿毛を視界の端に、私は話を続ける。
「あんだけ求められちゃ、ね」
あの後。私は強めに受けた勧誘を跳ね除けきれずに渋々麻雀部への入部を承諾。笑顔の彼女らに、私はなんだかなあと思うのだった。
確かに私はああいうゲームは強いかもしれない。けれども、それだけ。
これで皆で大会に出ることが出来ると喜ぶ皆の他所に、私があんまり熱意を持てないのはどうなのかな、と思う。
さて、これからどう麻雀を好きになっていけばいいのかな、と悩む私に原村さんとは対照的にスレンダーな咲は、私の内心を知ってか知らでか、ぽつりと言った。
「……私、麻雀キライ」
「そうなの?」
初耳だ。いや、そもそも私は前世の弟と違って麻雀にハマった試しがないから話す機会がなかっただけか。
でも、遊戯が嫌い、というのはあまり分からない。この世界だと麻雀はあまり賭け事として行われていないというのは聞いているし、咲が苦手にしているのはどうしてだろうか。
首を傾げる私に、咲はおずおずと言う。
「百合ちゃんは、好きなの?」
なんとなく、縋るような視線。しかし、好きかどうか。そんなの私には分かりきったことだった。
「んーん。そうでもないわ」
だから、素直に私はそう言う。これから好きになるかもしれない。けれども今はどうでもいいものの一つ。
貴女のほうがよほど好き。それは言ってないからきっと伝わらないだろうけど。
「良かった」
でも、どうしてだか笑顔になる咲。彼女は曇り空を見上げる。そして私はなんとなく同じ空を見上げながら歩いて。
それきり、別れるまで私達は言葉を交わさなかった。
ご覧の通りに百合さんは麻雀強い設定ですが、このお話だとあまり意味がありません!