奏でることを忘れた少年   作:TAKACHANKUN

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お前の言うカッコいいってやつを

 

俺にとって、平日の昼飯というのは戦争である。

 

すなわち購買のパンを買うこと。

 

学食はあるにはあるのだが値が張るので

基本却下だ。

 

俺のお小遣いでは手が出ない。

 

食うより寝ることが好きな俺だが、腹減りのまま寝るのはイヤだ。

 

弁当を作ってくれば済む話なのだが、母ちゃんは作ってくれんし、俺もギリギリまで睡眠したい勢なのでこれも却下。

 

前置きが長くなったが、ここでパンを奪取できるかどうかが俺の今後を左右するということになる。

 

だが、よく考えてみてほしい。

 

当たり前だが売店は混雑する。

 

女子が殺到する。

 

そんな中俺が割って入れる隙があるだろうか?

 

結論。ありません。

 

だってさ、うっかり女子の身体に触れてみ?

 

セクハラだ変態だなどと糾弾された日には俺の居場所がなくなっちゃうのよ。

 

俺のモットーは平和に過ごすこと。

 

最近はちょっと色々な人と交流を深めていってる気がするが…そこはブレちゃいかん。

 

結果、昼飯=運ゲーと化す。訳ワカメ。

 

大抵は残りモノがあってくれるんだが…

 

「…ない。」

 

「いつも大変だねー。」

 

「はは…」

 

売店のおばちゃんの励ましにも乾いた笑いしか出ない。

 

くそ…今週の戦績は3勝2敗か。

 

誰だよ残りモノには福があるとか言った

ヤツ。

 

なんもねーわアホたれ。

 

「お困りかね~?青少年よ。」

 

「はい?」

 

泣きそうになっていると後ろから間延びした声が聞こえてきた。

 

誰だ…今の俺は気がたって…

 

「って多っ!?」

 

立っていたのは両手いっぱいにパンを抱えた女子生徒だった。

 

いや、両手いっぱいにパンを抱えたって

何やねんってツッコミが入るだろうが、

これマジな?

 

どんだけ買ってんだよ!

 

ただいま絶賛お困り中ですよ…アンタが

たくさんパンを買ったせいでな。

 

そもそも食いきれんのかそれ。

 

「一つ差し上げよう~。モカちゃんからのプレゼント、ありがたく受けとるがよいぞー。」

 

そう言って一つパンを差し出してくる。

 

「えっ…いいんですか?」

 

「もちろんだとも~。」

 

マジで?この人女神か何か?

 

「…ありがとうございます。」

 

さっきは悪態ついて申し訳ない…モカちゃんとやら…

 

ん?モカちゃん?

 

「えっと…いきなりつかぬことをお伺いするんですが…宇田川あこって女子生徒の子知ってますか?」

 

「あこちん?もちろん、知ってますとも~。」

 

やっぱり…宇田川の言ってたモカちんって恐らくこの人のことだな。

 

「もしかして、aftergrowってバンドのメンバーの方ですか?」

 

「ご名答ー。aftergrowのギタリスト、青葉モカちゃんとはあたしのことよー。」

 

「…ギタリスト。」

 

「…およ?どうかした~?」

 

「…あぁ、いえ…何でも。」

 

「君かね?トモちんの言ってた優君というのは~。」

 

トモちん…巴先輩のことかな?

 

「えぇ、宇田川あこのクラスメイトやってます。星川 優です。」

 

「よろしく~。」

 

「あ、こちらこそ。」

 

なんか、この人の喋り方といい声といいクセになる。

 

良い意味で。

 

しかし、ギタリストとは。

 

人は見かけによらないな。

 

ギターを持つと性格が変わったりするのだろうか。

 

「最近あの子、カッコいいを伝えたいとかなんとかって張り切っちゃってましてねー…先輩も相談に乗ってるとか聞きましたけど…」

 

「うむ。モカちゃんは国語が得意だからね~。」

 

全然そうは見えんが、失礼ながら。

 

「なんだかんだ、俺も協力することになりまして…先輩に会いたいとは思ってたんですよ。」

 

「モカちゃんに会いたいとは…なかなか

情熱的ですな~。」

 

「や、そういう意味ではなくてですね…」

 

なんちゅう勘違いしとんねん。

 

「ていうか、パン抱えたまま話すのもアレですし…またの機会にしますか。」

 

「そうですな~。またね~優ちん。」

 

…優ちん?

 

 

 

 

 

「よー何描いてんだ?」

 

「…ふっふっふ…我「なになに…超カッコいいロゼリア!大饗宴の始まり?」」

 

「もー!言わせてよー!」

 

「いやー、ついやっちゃうんだよ。わりーな。」

 

お約束ってやつだよ。

 

宇田川のやつスケッチブックに何描いてるのかと思ったら…そこまで真剣だったとはな。

 

「あすかやろっかには内緒だよ!」

 

「わかってるって…で、どうよ?形になりそうか?」

 

「うーん、もう少しで形にはなりそうなんだけど~…」

 

「ふーん、お前本当にRoseliaが好きなんだな。」

 

「うん!あこ、Roseliaのみーんなが大好き!」

 

「そうかそうか。」

 

Roseliaのことは全然知らねーけど、こいつがRoselia好きーってのはめっちゃ伝わってくるんだよなぁ…。

 

「じゃあ、見せつけてやろうぜ。」

 

「え?」

 

「お前の言うカッコいいってやつを。みんなにさ。」

 

「いいね!それいい!」

 

「やるんならド派手にだな…お前も好きだろ?」

 

「うん!」

 

「aftergrowの人達とか戸山や朝日に声かけてさ、どっかに集まってもらおうや。」

 

「そこで我が大魔姫あこの真なる饗宴が始まるというわけか…」

 

それは知らねーけど。

 

「わかった!あこ、休日でこのスケッチブック仕上げてくる!」

 

「ま、頑張れな。」

 

「うん!りんりんにも協力してもらうから!たぶん大丈夫だよ!」

 

りんりんって、確かRoseliaの…。

 

ということは少なくともこいつのこれはRoselia公認ってわけか。

 

一体どんなバンドなんだよRoselia。ちょっと気になってきたわ。

 

「ありがとね!優!」

 

「別に、俺何もしてねーけど…」

 

巴先輩に頼まれたからだかんな。

 

そこんとこ勘違いするなよ。

 

ちょっと嬉しいとか思ってないからな!

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