奏でることを忘れた少年   作:TAKACHANKUN

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ようやく、登場です。


幼馴染

『今日の1位は水瓶座のあなたー!

昔の顔馴染みと再会できるかも?

ラッキーアイテムは傘です!』

 

「雨、降ってねーけど。」

 

思いっきり晴れてるし。

…昔の顔馴染みと再会ね。

占いのほうはもしかすると、もしかするかもな。

 

「優、のんびりしてると学校遅れるよ。」

「ん。」

 

いよいよ、明日。

早いもんで文化祭の開幕前日となった。

 

「形になったもんだな…セッション

カフェも。」

 

揃えられた機材の数々。飾り付け。思えば初めてかもしれない。こき使われたとはいえ、これほど頑張ったのは。

 

「いよいよか…」

「星川、明日は頼んだよー。」

「わーってるって。」

 

まったく、どこまでこき使えば気が済むんですかねぇ。この子らは。

 

「お前らこそ頼んだぞ。セッション

しなきゃ始まらねんだからな。」

「わかってるって。」

 

しかし、楽器を構える姿はなかなか様に

なってるな。

あの朝日ですら少しばかり補正がかかって見える。それにしても…

 

 

「朝日、ヘッドレスギターって…ずいぶんマニアックなの使ってんだな。」

「え、何?星川ってギター詳しかったりするの?」

「へ?いや、そんなことねーけど。」

 

しまった…と思うがもう手遅れ。

つい、口をついて出ちまった。

俺のあほ。ばか。おたんちん。

 

「常識だろ?そんくらい。」

「うそー?知ってる風な口調だったけど?」

「ギターやってるの?」

「やってねーよ。」

 

くそ、水を得た魚のようにお前らは。

 

「とにかくだ、明日は頑張ろうぜ。」

 

これ以上喋ると更に墓穴を掘りそうだ。

なので、強引に話を打ち切る。

 

「どっか行くの?」

「外の空気吸ってくる。」

 

 

 

「はー…良い天気ですな。」

 

外は清々しいまでの晴れやかさであった。

いいねーこの空気。

至福だわー。

文化祭前日ということもあり、今日は簡単な仕上げ、謂わば最終チェックの段階。

なので、予定としては比較的楽だ。

 

「頑張ったなぁ…俺。」

 

うん、褒めてやりたいよ。今回ばかりは

頑張った。だからかな、文化祭を良いものにしたいっていう気持ちも出てきたのは。

 

「って、これからだよな。」

 

そんな時である。

独り呟く俺の前を見覚えのある姿が横切った。

やっぱり、間違いない…!

あの人は…

 

「ちょ、ちょっ…!」

 

声をかけようとしたがやめた。

このままじゃ、味気ない。

どうせなら何かドラマチックな劇的な再会を果たしたい。

しかし、何たる偶然か。

合同で文化祭をやることになった他校に

昔の幼馴染がいるとは。

 

「勿体ないなーせっかく作ったのに、捨てちゃうなんて…」

「仕方ないよー」

 

お?良いところに…おあつらえ向きなものが。

 

「それ、頂いてもいいですか?」

「え?いいけど。」

「すんません。」

 

手に入れたのは般若(?)のような顔をした

被り物。なんでこんなの作った?

それはさておき、これで驚かせてやろうって寸法だ。

 

待っててくれよ、あーちゃん。

すげーもん見せてやるから。

 

 

 

 

 

 

 

「あのーすいません。」

「はい…ってうわあぁぁぁっ!?」

 

はは、良いリアクションだ。

 

「ふ、不審者!?曲者!?変質者!?」

 

なんつー三段活用だよ、全部似たような

意味だし。あーウケるわ。

弄りがいがあるのは変わってねーな。

 

「そのどれでもないですよ。

いやー久しぶりですねって…あれ、ちょっ

…あれ?」

 

……取れねぇ。

すっぽりおさまっちまったのか?

 

「ま、待ってろ!今通報してやるから!」

「ちょ、通報はシャレにならん!先輩!俺ですよ!俺!」

「誰だよ!アンタみたいな不審者に知り合いはいねー!」

「だって取れねーんですもん!ちょっとだけ時間くださいって!」

 

劇的な再会がカオスな再会へとなった瞬間である。どっちもテンパって会話が噛み合わない。

 

「ほら!羽丘の制服!俺、羽丘の生徒!」

「羽丘は女子高だろ!下手な嘘つくな!」

「違うんですって!今年から変わったんですよ!」

 

ダメだ、このままではキリがない。

せっかくの再会が台無しだ。

…自業自得ってやつか。

 

 

「あぁ、もう!昔よく遊んだじゃないですか!」

「…え?」

「覚えてません?あーちゃんって呼んでた子のこと。」

「お前…もしかして…優?」

 

あ、やっとわかってくれたかな。

 

「星川 優か!?」

 

良かった。忘れ去られてたらどうしようかと。

 

「あったりー…あーやっと取れた。」

「お前…何でこんなとこにいるんだよ!?」

「言ったっしょ?羽丘の生徒ですよ、俺。」

「そうじゃねぇ!静岡に引っ越したんじゃねーのかよ?」

「まぁ…色々とありまして…でも、びっくりしましたよ…先輩が花咲川にいただなんて。」

「そりゃ、こっちのセリフだ。」

「ですよねー。」

「ま、なんだ…久しぶりだな。」

「ですね。」

 

占いってやつも案外当たるもんなんだな。

こうして幼馴染と再会できたわけだし。

 

「何か変な感じだな。お前に敬語使われるとさ。」

「だって、俺らももう高校生ですよ?

さすがにあーちゃんはまずいでしょ。」

 

同級生に上級生を渾名で呼ぶやつもいるがな。

 

「そうか…お前ももう高校生か。」

「これからは、市ヶ谷先輩って呼びますね。」

「…気持ちわりー。」

「何で!?」

「しかし、でかくなったなお前も。」

「そういう先輩は、その…あんまし変わってないですね。」

「余計なお世話だ。」

 

いや、でも…

 

「…成長はしてるか。」

「やっぱり通報するか?変態がいるって。」

「冗談です。」

 

やっぱり、俺も男だし視線が自然とそこにいくのには抗えないわけですよ。

言ったら本当に通報されかねんので口には出さないが。

 

「…っといけね!これから生徒会なんだった!」

「生徒会?先輩がですか?」

「あぁ、悪いな。これ以上お前には構ってらんねーんだ。」

「なんだー残念。」

「それじゃあな。」

「えぇ。」

 

生徒会だなんて、いつの間にそんな…

成長したなぁ。ちょっと涙腺が…

 

「あ、そうだ。」

「ん?」

「あのさ、優。」

「どうかしました?」

 

急に恥ずかしそうにして…

まさか…。

 

「愛の告白とか?」

「ねーよ。」

 

そんな速攻否定せんでもええやん…

 

「私さ、学校の友達同士でバンド組んでんだ。」

「バンド?」

 

先輩もかよ!?

みんなさぁ、バンド組みすぎちゃう?

それとも偶然?

 

「あぁ、でさ、ウチら文化祭で演奏するんだよ。」

「え、演奏!?」

 

何それ。

絶対観るわそんなん。

 

「だから、その、お前にも観てほしいなって…」

「…何とかして最前列確保します。」

「いや、そこまではしなくていい。」

「そうか…バンドか…変わりましたね…先輩も。」

「そうか?」

「えぇ。昔なら絶対考えられなかった。」

 

何だよ、俺の心配は杞憂だったわけか。

バンドか…あのあーちゃんが。

友達つくって、生徒会入って、バンドもやって…

俺の知らない間にちゃんと青春してんじゃないの。

この人もこの人で、前に進んでたんだな。

 

「止まっているのは俺だけか…ってな。」

「は?何か言ったか?」

「いーえ…演奏、楽しみにしてますよ。」

「あぁ、一応トリってことになってるから。」

「トリですか…了解。」

「じゃあな。」

「じゃ、頑張ってくださいね。」

 

やべーと急ぐ先輩はどこか遠くの世界の人に見えた。誰よりも近い距離にいたはずなのに。

あの様子じゃ、バンドの人達ともうまくいってるのだろう。

 

「変われば変わるもんだな。」

 

成長を嬉しく思う反面、少し寂しくも思う。

 

「それに引き換え…俺は何をやってんだろうな。」

 

そう言いつつも心のどこかでは思ってるんだ。

もう、変わることはないのだと。

俺はこのまま、無気力に人生を消化していくのだと。

 

 

 

何かきっかけがほしい。

 

前に進むきっかけが。

 

何でもいい。

 

俺の人生観をひっくり返すような…そんな出来事が…起こってくれたりしないだろうか。

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