奏でることを忘れた少年   作:TAKACHANKUN

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アイドル×女優×おねーちゃん

 

文化祭も2日目。

俺は空いた時間をどう潰すか思案していた。

 

「シフト入ってないっていっても、回る

ところもないんだよな。」

 

花咲川にでも行くか?

でも知り合いとかいないし…

市ヶ谷先輩は生徒会で忙しいだろうし…

さて、どうすっかな。

 

「Aftergrow、ライブやるんだって!」

「いいね!行こう!」

 

丁度よく耳寄りな情報が。行ってみるか?

 

「あ、優君!」

 

おっと?いきなり氷川日菜(ラスボス)遭遇(エンカウント)して

しまった。

 

たたかうとにげるってコマンドは

存在しないけどな。つまりは無理ゲー。

 

 

「今からおねーちゃんのとこ行くんだけど、優君も行く?」

「いや、俺は…」

「決まり!行こ!」

「だと思った。」

 

強制イベントだものね。

そりゃ、まぁ、こうなるよね。

はいはい。わかってましたよ。

遂に、ご対面か…氷川姉。

 

 

 

「おねーちゃーん!」

「ちょ、何も走ることないっしょ!」

 

こっちは全身筋肉痛なんだっつーの。

 

「あ、日菜ちゃん。」

「花音ちゃん!おねーちゃんいる?」

「う、うん。」

「つ、疲れたー…」

「ふえぇー!?」

 

ふえぇー!?ってそんな怖がらんでも…

 

「どうしたの花音…って貴方、大丈夫?」

「は、はい…何とか。」

「やっほー!千聖ちゃん。」

「え?」

 

千聖ちゃんって…白鷺千聖さん!?

この人、花咲川の生徒だったのかよ…

初耳なんですけど。こりゃさすがにびっくり。

 

「日菜ちゃん?駄目じゃない、無理矢理

連れてきちゃ。」

「えー!」

 

えー!じゃないわ。

ほぼ引き摺り回されてたからな?

こっちは。

 

「ごめんなさいね?日菜ちゃんに無理矢理連れて来られたんでしょう?」

「あ、いえ…」

 

菫色の引き込まれそうな瞳が俺を

覗き込む。

やべぇ、今俺は女優さんと会話をしているのか。

普通にテンパるわ。

 

「すみません…うちの日菜がご迷惑を。」

「え?」

 

声のしたほうへ向き直ると、日菜先輩と

瓜二つの顔があった。いや、瓜二つなんて

レベルじゃない。

制服取っ替えてもわからないレベルだ。

この人が、紗夜さんか。

 

「また貴方は…大体、生徒会の仕事はどうしたの?」

 

えっと…何か俺が抱いていたイメージと

全然違うんだが。

というか真逆…品行方正といった感じが

正しいか。

下級生の俺にも敬語を使う辺り、育ちの

良さが伺える。

 

日菜先輩…一体どこで間違えた?

 

「もう大体終わらせてあるし、いいじゃん!」

「そういう問題ではないでしょう。」

「あ、この子優君!あこちゃんと同じクラスなんだよ!」

 

お姉さん…貴方でも無理なんですね…

この人の制御は。

 

「終わったら一緒に回ろーね!」

「はぁ…」

 

本当に好きなんだな、姉のことが。

この年代の兄弟姉妹っつーのはもっとこう、ギスギスした感じだってのが常識だろうに。

この人もこの人で、ちょっと特殊なだけで

本質は真っ直ぐだからな。

俺には兄弟姉妹はいないけど、こういう

やり取りもいいのかもしれないなとほんの

少しばかり思ってしまった。

 

展示のテーマは花女の歴史。

正直言うとくっそつまんねぇ。

今すぐにでも夢の世界へいきたいぐらいだ。

しかし、この二人が醸し出す圧力が

半端なくやばいので寝るに寝られない。

何かオーラ見えてね?俺だけ?

結局、解放されたのは一時間ほど

経ってからであった。

何か授業受けた気分。

 

「えー!一緒に回ろって言ったじゃーん!」

「風紀委員の仕事があるの。貴方も

生徒会長でしょう?白金さんばかりに

任せてはダメよ。」

 

ぐうの音も出ないほどの正論。

俺もそう思うわ。

日菜先輩、もうちょっと自分の立場を考えてな。

 

「もしかしたら、つぐ先輩があたふたしてるかもですよ?」

「そっかー仕方ないかー。優君は?」

「せっかく来たんで、俺はもうちょっと回ってみます。」

「わかったよ!じゃあねー!」

 

台風みたいだなー本当に。

 

「自由ですねー。」

「えぇ、自由すぎです。もう少し周りを

顧みてくれると嬉しいのですが…」

 

そこはまぁ、同意。

 

「あの人、いつもお姉さんの話ばっかりしてて、よく俺も聞かされるんです。」

「そう、ですか。」

 

何だかんだで照れ臭そうな顔をしている。

真面目そうな印象を受けたが、やはりそこは姉妹なんだなと一人ながら納得した。

 

紗夜先輩と別れ、別の展示などを見て回ったが、特にこれといったものはなかった。

時間もそれなりに過ぎたことだし、羽丘に戻るか。

あいつらちゃんとやってんのかも気になるしな。

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