優君は基本豆腐メンタルです。
中学の頃は文化祭というものにはそれほど思い入れはなかった。
友達と呼べる存在もいなかったし、俺自身どうでもいいと感じていた部分もあったから。だから、思い出なんか何もない。
『優も、ギター弾けば?』
そう、何もなかった。
『せっかくの文化祭だよ?私も歌うからさ!』
だから、やめろ。
忘れろ。
思い起こすな。
『一緒にやろうよ!』
くそっ、何でだよ?
何で今更になって━━
「優?」
「…え?」
戸山の心配そうな声が俺を現実へと
引き戻した。
「凄く怖い顔してたけど、具合でも悪いの?」
「あ、あぁ…ちょっと、腹痛くてな…」
「大丈夫?」
「大したことねーって。それよりほら、
姉ちゃんには会えたのか?」
「うん。うちのクラスに来たよ。」
「へー、良かったな。」
うまく、誤魔化せたか?
にしてもそんな顔してたのか…俺。
「そういや、戸山の言ったこと、当たってたわ。」
「当たってたって?」
「幼馴染がさ、花咲川にいたんだよ。」
「へぇー、偶然だね。」
「生徒会やってるみたいで忙しそうだったけどな…」
「でも、良かったじゃん。」
「まーな。あ、それからバンド組んでて、文化祭で演奏するって言ってたな。」
「バンド?何て名前?」
「やべ…聞き忘れた。」
「…ダメじゃん。」
でも、トリって言ってたし、プログラム
見りゃわかるかな。
「あったあった。えーっと…ポッピン…
パーティー…?」
何だか随分とかわいらしい名前だな。
「え、ポピパ!?」
「ポ、ポピ?」
どうした?戸山。急に変な呪文唱えて。
お前だけはバグらないと信じていたのに。
「…その人の名前って?」
「ん?市ヶ谷 有咲って人。ピアノが
これまたお上手なのよ。」
「市ヶ谷さん!?」
なんだよ、リアクションでかいな今日は。
文化祭でテンション上がってんのはわかるけどさぁ。
「知ってんの?」
「…お姉ちゃんの友達。」
「うそぉ!?」
…そうだったのかよ。
まさかまさかの繋がり。
しかし、あの堅物不器用ツンデレはそう
簡単には他人に心を開かないはずなんだが…実際俺も最初は苦労したし。一体どうやって攻略したんだ?
「市ヶ谷さんと幼馴染だったんだ。」
「うん。でも、変わったなぁ…
生徒会やったり、バンドやったり…」
「昔の市ヶ谷さんってどんな人だったの?」
「人見知り…で、泣き虫。いつも優君、
優君って後ろひっついて来てたな。」
「へぇー、意外。面倒見の良いお姉さんって感じだったから。」
「あの人が?」
「うん。」
そうなのか。
そっちのが意外だけど。
にわかには信じられん。
「いつの間にか俺の口調が移って、言葉使いも乱暴になってさ、名前も呼び捨てになったりしたけど…俺が引っ越すってなった時はそりゃもう泣きまくって大変だったな。」
「ふーん…でも、本当に良かったね。
また会えて。」
「…だな。」
運命なんてのは信じないけどな。
運命論者でもロマンチストでもねーし。
「なんにせよ、良かったよ。元気そうで。青春してんなーって感じ?」
「おじさんくさいね…優はしてないの?」
「俺?俺はそういう柄じゃねーよ。」
そんな資格もないしな。
俺はそんなキレイな人間じゃないんだよ。
お前らと同じステージに立って青春を謳歌するなんてのは許されない。
あってはならないんだ。
俺は、一人の少女の
引き裂いた━━最低最悪な男だから。