奏でることを忘れた少年   作:TAKACHANKUN

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オリキャラ回です。
すみません、話は進んでないです。



過去と向き合う時

 

「へぇ、弾き語りか。」

 

初めて見た。

中学生ぐらいの女の子だろうか?

路上に座り込み、熱心にギターを弾き、歌っている。

 

歌も演奏もそれほど上手いとはいえなかったが、惹き付けられるものがあったのか、俺の足は自然とそちらへと向かっていた。

 

まったく、どういう心境の変化なのやら。

以前までなら確実にスルーしていたはずなのに。

女の子は熱中していたせいか、暫くは俺に気づいていない様子だった。

が、気づくと驚いたようで、演奏が中断された。

 

「悪い、邪魔したか?」

 

「うぅん、ちょっとびっくりしただけ。」

 

「気にせずに演奏してくれよ。」

 

「うん。」

 

終盤だったのかほどなくして、演奏は終わった。

 

「いいね、ちょっとしか聞いてないけど、良かった。」

 

「ありがとう。」

 

「それ、何て曲?」

 

「んー…決めてない。」

 

「自作楽曲かい。」

 

それを路上で弾いてたのか。

何て度胸してんだか。

 

「飲み物買ってくるけど、何かいる?

ついでに買ってきてあげるけど。」

 

「いいよ、お金持ってないし。」

 

「良い演奏のお礼だって。気にしなくていいよ。」

 

「じゃ、ブラックコーヒー。」

 

「飲めるのか?見栄は張らんほうがいいぞ?」

 

「…甘いので。」

 

「了解。」

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、半年か。」

 

「うん、だからそろそろいいかなーっと思って。」

 

「それで、路上ライブを。」

 

色々ぶっ飛ばしすぎだろうとは思ったが、口には出さないでおく。やり方は人それぞれだ。

 

「うん、でも全然誰も来なくって…お兄さんが初めての観客。」

 

「そうか、俺は記念すべき観客一号ってわけね。」

 

「そうなるね。」

 

「でも、大したもんだ。半年でそこまで

弾けりゃあさ。」

 

「わかるの?」

 

「まぁね。」

 

「ってことは、ギターやってたの?」

 

「昔ね。今はやってない。 」

 

「…どうして、やめちゃったの?」

 

「…大切な人を傷つけたから…かな。」

 

「えっ?」

 

「ははっ、冗談だよ。色々忙しくってさ、暇がないだけ。」

 

「そうなんだ。高校生?」

 

「うん、高校一年。君は、見たとこ中学生かな?」

 

「そう、中学二年生。」

 

「じゃーまだまだ伸び盛りだ。」

 

「そうかな?」

 

「あぁ。」

 

「でも、周りの子達は下手くそって言う。」

 

「言わせとけ。練習しまくってさ、上手くなってそいつらの度肝ぬいてやればいいじゃん。」

 

「…文化祭あるから、そこで演奏したいって思ってるんだ。」

 

「へぇ、いつ?」

 

「9月。」

 

9月ってことは、後3ヶ月くらいか。

 

「一人で弾くの?」

 

「うん。」

 

「バンドは?組みたいとか思わない?」

 

「いい。それに、楽器やってる人とかいないから。」

 

「そうか、まぁ、ギターソロでもやれるっちゃやれるからな。」

 

「…やっぱり、女の子がギターやってるのって変かな?」

 

「…全然、変じゃねーよ。」

 

「本当?」

 

「あぁ、この前な、俺の通ってる高校でも文化祭があって、そこで君とそんな変わらない女子高生がソロでギターを弾いたんだ。」

 

「へぇ…」

 

あの時のあの衝撃。

今でも鮮明に思い出せる。

 

「…正直言って、凄かった。圧倒されたよ。それまで自分が抱いてきた価値観とかを全部ぶっ壊された。」

 

「…そんなに凄かったんだ。」

 

「…あぁ、だから周りの視線とか声とかは気にすんな。」

 

その熱意があればきっとできる。

俺はそう思う。

こっ恥ずかしく口には出さないが。

 

「ありがとう。そんな風に言われたのは初めて。」

 

「どういたしまして…さてと、邪魔したな。俺はそろそろ行くから。」

 

「待って!」

 

「ん?」

 

「名前…教えて。」

 

「あぁ、優…星川 優ってんだ。」

 

「私、由佳莉って言うの。」

 

「由佳莉か、良い名前じゃねぇの。」

 

「…優の音も聞きたい。」

 

早速下の名前、しかも呼び捨てかい。

まったく、最近の女子はもう…

 

「あぁ、()()()な。」

 

「約束だよ!」

 

「あぁ、頑張れよ由佳莉。お前ならできるさ。」

 

何か俺も色々と決心がついたよ。

今さらだけど。

そうだよな。過去は変えられない。

罪は決して消えない。

だからって、それを理由に逃げ続けるなんてのはいけないよな。

自分より小さい女の子が頑張ってんだ。

いい加減俺も、前に進まなきゃな。

 

 

過去に向き合わなければならない。

辛くとも、傷つこうとも。

()()()は俺の何倍も傷ついたはずだから。

過去と向き合おう。そして、進もう。

それが俺のできる、あいつへの贖罪だから。

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