「そこのあなた!ちょっといいかしら?」
振り返るとあら、驚き。
絵に描いたような美人さんがおりました。
花咲川の制服を着てるけど、見たことはないな。
ド金髪だし、外人さんかな?
そう、思っているとチラシを手渡された。
「えと、ぽぴぱ…パピポ…ぱーてぃ~?」
何か口に出すだけで舌噛みそう。
「えぇ!今度ライブがあるの!是非あなたも来て頂戴!と~っても笑顔になれるわよ!」
笑顔ねぇ…ってライブってこれ
Poppin'Partyの主催ライブってやつやんか!
本当にやるんだな…疑ってたわけではないが。
「あの、これって…って居ねぇし。」
あの人瞬間移動でもしたん?
影も形もないけど。
「そうか、いよいよか。」
ライブハウスGalaxyって…確か朝日が
バイトしてるとこだったっけ。
そこでやるみたいだな。
つーか地図がアバウトすぎる。
駅から200歩て、本当に歩いてやろうか。
「~♪♪」
「ウッキウキやないかお前。遠足前の小学生か。」
「ひゃあっ!」
翌日、詳しいことを聞くため、朝日に話しかける。
ていうかびびりすぎだろ、こっちがびびるわ。
「…びっくりしたぁ…」
ていうか、こいつと話すのも何だか久しぶりだな。
「鼻歌なんか歌って良いことでもあったのか?」
「週末にライブがあるから、楽しみでつい…」
「ぽぴぱパピポぱーてぃ~ってやつ?」
うん、やっぱり舌噛みそう。
「うん!ポピパさんの主催ライブ!」
「っ!?」
そう言うと急に身を乗り出してきた。
ちょ、近い近い近いって!
急にテンション爆上がりしたんだけど
こいつ…どうしたんだ一体。
「朝日のバイト先のGalaxyでやるんだろ?」
「うん!もしかして、来てくれるの!?」
「いや、まぁ、行こうかなーとは思ってはいるんだけど…幼馴染の晴れ舞台だしさ…」
今までにないぐらいグイグイ来るな、こいつ。そんなにライブが楽しみなのか?
「お…」
お?
「お、お、お…」
どうした?急に壊れたぞ。
朝日さん?
「おーい?どした?」
「お…幼馴染…?」
「あぁ…市ヶ谷 有咲って人。ちっちゃい頃からの付き合いでな。」
「い、市ヶ谷先輩と…幼馴染やったん?」
「そうそう。バンド組んでるって聞いた時はびっくりしたなぁ。」
「で、でら羨ましいわぁー…」
「はぁ?」
マジでどしたん?
目がものすごくキラキラ輝いとりますが…
「いやいや、羨ましいって…もしかしてお前、ポピパさんとやらのファンか?」
「…うん。」
「じゃあ、憧れのバンドって…Poppin'Partyのこと?」
「うん…去年の夏に、SPACEっていうライブハウスで、ポピパさん達のライブを観て…私もバンドが組みたいって思ったの。」
「なるほどねぇ…で、肝心のバンドは?」
「そ、それは…」
「集まっとらんと…」
「はぁ…私、何でこんなにダメなんやろ…」
「…ダメなんかじゃねーよ。」
「え?」
「お前、すごかったじゃねーかよ。あん時のお前のあの演奏、俺は今でも覚えてるよ。」
「あ、あれは…」
「羽丘一年!朝日 六花です!ってな。マジでびっくりしたけどな…あの時は。」
「い、言わんといて…」
「あれ、即興だろ?」
「じ、実は…」
「はぁ?覚えてない?」
「う、うん…あの時は夢中で…」
マジでかよ…あんな演奏かましといて…
「…初めてだったよ、他人の演奏を素直にすげぇって思ったのはさ。」
「…ありがとう。」
「ただ、
まったく、皮肉なもんだ。
意図したアピールではないにしても、存在を知らしめるには絶好の機会だった。
それを、不意にしてしまった。
「まぁ、胸を張れよ。お前はすげぇギタリストだ。それは俺が保証するよ。」
「ど、どうして?」
「ん?」
「どうして、そこまで言ってくれるの?」
「んー、どうしてか…なんていうかほっとけないんだと思う…お前のこと…一人のギタリストとして…さ。」
「え、ギタ…リスト?」
「あぁ、こう見えても昔はギター少年だったんだぞ…俺。」
「優君、ギターやっとったん?」
「やっとったんよ…過去形だけどな。」
「バンド、組んでたの?」
「いや、バンドは組んでなかったけど、ミュージックスクールなるところには行かされてたな。市ヶ谷先輩と一緒に。専攻は違ったけど。」
「そ、そんな過去が…」
「意外だったか?でも、昔の話だよ。ギターもやめたしな…」
「…やめちゃったん?」
「あぁ…もう弾くこともない…って思ってたんだけどなぁ…やっぱり、そう簡単にやめられないんだと思う…きっとどこかに未練があるんだよ。どれだけ、否定したとしても。」
「だったら、やったほうがいいと思う!優君、ギター好きなんやろ?」
「はは、お前に気づかされるとは…思っても見なかった。お前のおかげだよ。ありがとうな、朝日。」
「え?急にお礼なんて…」
「恥ずかしがんなよ…俺の素直な気持ちだ。」
今なら、向き合える。
過去に。罪に。そして受け入れよう。
それら全てを。
「頑張れよ。」
「うん、ありがとう。」
さぁ、今こそ痛みを伴う過去に向き合う時だ。