「Roselia 完全復活!OVER THE FUTURE LIVE
大盛況!…だとさ。」
「…それがどうしたの?」
そう不機嫌そうな顔でこちらを睨み付けるはRAISE A SUIRENプロデューサーのチュチュ様。
大ガールズバンド時代に終止符を打たんとする
背丈と目標が釣り合っていない困ったちゃん。
「…悪かったわね、困ったちゃんで。」
…また、声に出ていたみたいだ。
「…そういえばさ、何気なくチュチュって呼んでるけど…本名は別にあるわけだろ?なんて名前なんだ?」
「…何でもいいでしょ…それで?Roseliaのことを言うために来たワケ?」
「いや、まぁぶっちゃけ暇だったんで来ただけ。ロック達は何か知らんけど、温泉旅行に行ってるみたいだし?お前は断ったみたいだからいるかなーっと思って。」
「あなたもいけば良かったじゃない。」
「やだよ。人多いみたいだし、温泉イベントってことは万が一にも俺が社会的に抹殺される可能性もあるわけで…デメリットのが圧倒的にでけぇ。」
Poppin'PartyにAftergrowとRoselia…あとは、ハロハピさんの大所帯だそうだ。RASからはレイヤさん、ますきさん、ロックの三人が行っているみたいだが。
この中に混ざる勇気は正直俺にはない。
しかし、パレオもいないとは珍しいこともあるもんだ。
「そんなわけで、暇だし忠告がてら来たってわけよ。お前のことだから手を抜くことは一切ないとは思うけど…気をつけろよって話。」
「No Problem!Roseliaが進化しているって話でしょ?それを言うならRASだって進化してるわよ。差は縮まるどころか広がっているの!」
「わかった…けど、根詰めすぎんなよ?
ブッ倒れでもしたら、それこそ本末転倒だぜ?」
「わかってる!」
わかってんのかは怪しいところだが…指摘したらしたで怒られそうなのでここは黙っておいた。
「こんなところで躓いてなんかいられない…」
「ちょっとさ、焦りすぎなんじゃねーの?」
細かいことはよくわからんが、コイツのやってることは多岐に渡り、なおかつ膨大ってことだけはわかる。
こんなんじゃ、いずれ…
「何でそんなに最強ってのに拘るんだよ?」
「…あなたには関係ないでしょ。」
ものすごく刺々しいな…何をそんなにカリカリしてんだか。
にしても、関係ない…ね。いつ聞いても効くなぁ…その言葉は。
「…お前の頑張りは認めてるよ。だからこそ
もっと周りを頼れよ…な?」
「メンバーにはそんなこと求めてないわ。ただ、私の求める音をカタチにして奏でればいいの。」
「そんなんじゃねーだろ…バンドって。」
「何よ…Poppin'Partyみたいな温いお友達ゴッコでもして、馴れ合えとでも言うの?ジャパニーズ
お得意の友情ってヤツ?そんなモノ不要なのよ!」
おっとっと?今のは聞き捨てならねーなぁ。
とはいえ、ヒートアップしてるコイツ相手に
俺までキレてちゃキリがない…ここは冷静に。
「その不要なモノってのがバンドってのを
形成していくんじゃねーの?俺はバンド経験が
ほぼないに等しいからわかんねーけどさ…
まるでプロデューサーの手足みたいな…そんなん寂しいじゃんかよ。」
「Shut Up!
言わないで!」
「…………」
静寂。
1分程それが続いただろうか。
「…そうかよ。」
そうだ。その通りだな。
俺は何も知らない。
「…確かにな。お前の言うとおりだ。お前のこと知ったつもりでいたけど、お前の名前も…お前が音楽をやる理由も…俺は何も知らなかったんだな。」
「………」
チュチュはちょっとばかし冷静になったようで
黙って俺の話を聞いていた。
「…俺さ、ちょっと前までは二度とギターなんかやらないって心に決めてたんだ。」
「…どうして?」
「人を傷つけたから。手を差しのべれば救えたはずだった…助けを求める手を俺は振り払っちまったんだよ。」
ギターを見ると思い出してしまう。
その傷は呪いのように俺を蝕む。
だから、遠ざけた。
罪のない相棒を。
「どうでもよくなった。他人も自分も。一人でもいいと思ってた。でもな、現実はそれを許してくれなかった。何でか知らんけど、俺にお節介焼くやつとか、話しかけてくるやつがたくさんいてな…それも悪くないなーと思い始めてたんだ。」
戸山に宇田川にクラスの連中…日菜先輩etc.
そして…
「ある時…一人のギタリストの演奏を聞いて…俺はそれに心を奪われた…純粋にすげぇって思った。その時は気づかなかったけど…冷めてた心が熱を帯びたんだろうな。」
「…ようやくわかった気がするわ…優があの子を
推す理由が。」
「…それから、Poppin'Partyの主催ライブに行って…バンドっていいな…って思ったよ。絆ってのを感じた。」
「確かに…あれはちょっとだけ感動したわ。」
素直じゃねぇの。
「そして…お前が現れた。」
「………」
「何だこのチビは…それがお前への第一印象だった。ゴッコ遊びなら余所でやれよと…でも、違った。お前は本気だった。R・I・O・Tを聴いて一瞬でわかったよ。ガールズバンド時代を終わらせる…半端じゃない覚悟と実力を備えてるってな。」
大言壮語は簡単に言える。
しかし、それを実行するとなると果たして何人の人間が動き出せるのだろうか?
「…楽しかったぜ?一夜限りだったけど…
dubでやったあのライブは…俺はお前に
出会えて良かったと思ってるよ。」
…少しばかり、喋りすぎたかな。
「…だから、気が向いたらでいい…お前のことも
教えてくれよ。」
「…Sorry。少し言い過ぎたわ。」
「らしくねーな、気にすんなよ。」
「…どうして、私に話したの?言いたくないことだったハズでしょ?」
「さぁ、何でかね?相手のことを知るには
まず自分のことを知ってもらうことから始めろって親父に言われたことがあるからさ…」
「…そう。」
「つーわけで、邪魔したな。あ、ジャーキー置いてくから食っといてくれな。」
ていうか、食生活…いい加減何とかしろな。
「そういや、両親は海外にいるんだっけか?
寂しくねーの?」
「…別に。」
「ふーん、そっか。寂しくなったら言えよ?
俺でよければ相手してやるから。」
そう言い残し、スタジオを出る。
外に出るとちょうどよくパレオとすれ違った。
「お帰りですか?」
「あぁ、暇だったんでちょっと邪魔してた。」
「実はユウさんに少しご相談したいことが…」
「相談?」
「…へぇー、チュチュの誕生日か。」
「はい♪なので、ユウさんにもご協力いただきたいと思いまして…」
「そういうことなら、はりきっちゃうよ俺。
ますきさんと一緒にケーキでも作っちゃるか。」
「ありがとうございます!」
「あ、そうだ…パレオ。」
「はい?」
「あいつ、無茶しないようにさ…支えてやってくれよ。」
「もちろんです!」
「ん、さすがはチュチュ様のキーボードメイド。
パレオがいれば心配はいらないな。」
「お任せください♪」
「…って言ってたじゃねぇかよ。」
それが、どうして。
「どこにいるんだよ…パレオ。」
どうして、いなくなったんだよ。